業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において帝人グループが判断したものです。

(1) 経営成績等の状況の概要

① 財政状態及び経営成績の状況

2021年度は、前期に引き続き新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が蔓延し、グローバルレベルで社会・経済活動の制限が継続しました。自動車産業や航空機産業を中心に需要が回復に向かう一方、各産業においてサプライチェーンが停滞したほか、半導体不足や原燃料価格・物流費の高騰などが企業業績に大きな影響をもたらしました。またロシアによるウクライナ侵攻勃発後、エネルギーや鉱物などの価格が供給不安によって上昇するなど、経済の先行き不透明感が増大しました。

帝人グループは、持続可能な社会の実現に貢献し、「未来の社会を支える会社」になるという長期ビジョンのもと、2020年度から3か年の中期経営計画を「成長基盤の確立期」と位置づけ、各施策を推進しています。中期経営計画2年目である当期においては、COVID-19の影響を受けながらも、将来の収益拡大に向けた投資として、マテリアル事業領域においてはオランダでパラアラミド繊維の生産能力増強の設備投資を進め、北米では自動車向け複合成形材料のテキサス新工場の建設や炭素繊維新工場の立ち上げを実行しました。また、ヘルスケア事業領域では武田薬品工業株式会社から糖尿病治療薬の販売権を取得し、着実に販売移管を進めるなど、収益基盤の強化と将来の事業拡大に向けた基盤構築を進めました。また、事業間の融合分野として参入した再生医療等製品事業について、子会社化した株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(以下、「J-TEC」)との事業計画を策定し、協同での取り組みに着手しました。このような状況のもと、帝人グループの当連結会計年度の経営成績及び財政状態は以下のとおりとなりました。

 

1)経営成績

帝人グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高9,261億円(前期対比10.7%増)、営業利益442億円(同19.5%減)、経常利益497億円(同7.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益232億円(前期 親会社株主に帰属する当期純損失 67億円)となりました。

                                           (単位:億円)

 

155期

(2021年3月期)

156期

(2022年3月期)

増減額

増減率

売上高

8,365

9,261

895

10.7%

営業利益

549

442

△107

△19.5%

経常利益

537

497

△40

△7.4%

親会社株主に帰属する

当期純利益又は親会社株主に帰属する当期純損失

△67

232

298

 

報告セグメントごとの経営成績の概況は次のとおりです。                 (単位:億円)

 

155期

(2021年3月期)

156期

(2022年3月期)

増減額

増減率

マテリアル

2,970

3,851

881

29.7%

ヘルスケア

1,487

1,836

349

23.5%

繊維・製品

3,149

2,825

△325

△10.3%

IT

581

538

△43

△7.5%

その他

178

212

33

18.6%

合計

8,365

9,261

895

10.7%

マテリアル

10

△57

△67

ヘルスケア

315

432

116

37.0%

繊維・製品

175

56

△119

△67.8%

IT

104

97

△7

△6.7%

その他

△2

△21

△19

消去又は全社

△52

△64

△12

合計

549

442

△107

△19.5%

 

マテリアル事業領域

:[売上高 3,851億円(前期比29.7%増)、営業損失 57億円(前期 営業利益 10億円)]

売上高は3,851億円と前期比881億円の増収、営業損失は57億円と前期比67億円の減益となりました。

 

ヘルスケア事業領域

:[売上高 1,836億円(前期比23.5%増)、営業利益 432億円(同37.0%増)]

売上高は1,836億円と前期比349億円の増収、営業利益は432億円と前期比116億円の増益となりました。

 

繊維・製品事業

:[売上高 2,825億円(前期比10.3%減)、営業利益 56億円(同67.8%減)]

売上高は2,825億円と前期比325億円の減収、営業利益は56億円と前期比119億円の減益となりました。

 

IT事業

:[売上高 538億円(前期比7.5%減)、営業利益 97億円(同6.7%減)]

売上高は538億円と前期比43億円の減収、営業利益は97億円と前期比7億円の減益となりました。

 

その他

:[売上高 212億円(前期比18.6%増)、営業損失 21億円(前期 営業損失 2億円)]

売上高は212億円と前期比33億円の増収、営業損失は21億円と前期比19億円の減益となりました。

 

2)財政状態

 

         0102010_007.png

当期末の総資産は、前期末に比べて1,665億円増加し、12,076億円となりました。流動資産は、現金及び預金や売掛債権、その他流動資産等の増減により、前期末に比べて374億円増加しました。固定資産は、償却を上回る設備投資により有形固定資産が327億円増加したことや、武田薬品工業株式会社からの2型糖尿病治療剤の販売権取得により販売権が1,182億円増加した一方で、主に退職給付信託への拠出資産を一部返還したことにより、退職給付に係る資産が228億円減少しており、前期末に比べて1,290億円増加しました。

負債は、前期末に比べて1,320億円増加し、7,428億円となりました。主に販売権の取得資金として社債を発行したことで、有利子負債が1,051億円増加しました。

純資産は、前期末に比べて344億円増加し、4,648億円となりました。主に親会社株主に帰属する当期純利益232億円の計上、及び主要通貨に対する円安の進行による為替換算調整勘定の増加によるものです。

これらの結果、Ⅾ/Eレシオは1.10倍、自己資本比率は36.4%となりました。(前期末 Ⅾ/Eレシオ0.94倍、自己資本比率39.0%)

なお、当期末のBS換算レートは、122円/米ドル、137円/ユーロ、1.12米ドル/ユーロ(前期末111円/米ドル、130円/ユーロ、1.17米ドル/ユーロ)となっています。

 

② キャッシュ・フローの状況

      0102010_008.png

 

当期の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益の計上や、減価償却費等の非資金項目、退職給付信託に拠出していた資産の一部返還による収入があった一方、運転資本の増加による支出等があり、合計で897億円の収入(前期は1,077億円の収入)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却による収入があった一方、主に武田薬品工業株式会社からの2型糖尿病治療剤の販売権の取得や、設備投資等の支出により、1,984億円の支出(前期は796億円の支出)となりました。

この結果、営業活動に投資活動を加えたフリー・キャッシュ・フローは1,087億円の支出(前期は281億円の収入)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、配当の支払があった一方、主に社債の発行や短期・長期借入金の借入による収入により、711億円の収入(前期は209億円の支出)となりました。

これらの結果、現金及び現金同等物に係る換算差額等も加え、当期における最終的な現金及び現金同等物の減少額は358億円となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

帝人グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その形態、単位等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多いため、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。

このため生産、受注及び販売の状況については、「① 財政状態及び経営成績の状況」における各報告セグメントの経営成績に関連付けて示しています。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容等

 経営者の視点による帝人グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
  なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

帝人グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しています。その作成においては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性の存在により、これらの見積りと異なる場合があります。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。

また、帝人グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載していますが、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に影響を及ぼすと考えています。

1) 貸倒引当金の計上基準

帝人グループでは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を繰入計上しています。将来、顧客の財務状況等が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上または貸倒損失が発生する可能性があります。

2) 棚卸資産の評価基準

帝人グループの販売する製品の価格は、市場相場変動の影響を強く受ける傾向にあるので、その評価基準として主に原価法(貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定しています。)を採用しています。

3) 投資有価証券の減損処理

帝人グループは、金融機関や、製造・販売等に係る取引会社及び関係会社の株式を保有しています。これらの株式は、株式市場の価格変動リスクや、経営状態・財務状況の悪化による価値下落リスクを負っているため、合理的な基準に基づき、投資有価証券の減損処理を行っています。

4) のれんを含む固定資産の評価

帝人グループは、のれんを含む固定資産について、「固定資産の減損に係る会計基準」、IFRS及び米国会計基準に基づき、減損処理の要否を検討しています。事業損益見込みの悪化や事業撤収の決定等があった場合には、将来キャッシュ・フローや回収可能価額を合理的に見積り、減損損失を計上しています。

5) 繰延税金資産の回収可能性

帝人グループは、繰延税金資産の回収可能性の評価に際し、将来の課税所得を合理的に見積っています。繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の見積りに依存するので、課税所得の見積額が減少した場合は繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 

1) 経営成績等

a) 経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

帝人グループの当期の経営成績は、売上高が前期対比10.7%増の9,261億円となり、営業利益は同19.5%減の442億円となりました。経常利益は持分法投資利益の計上等により前期対比7.4%減の497億円、親会社株主に帰属する当期純利益は減損損失の計上等により232億円(前期は67億円の損失)となりました。営業利益に関して、ヘルスケア事業領域では、好調な「フェブリク」販売や糖尿病治療薬の販売承継効果で大幅増益となり、IT事業も底堅い収益を確保しました。一方、マテリアル事業領域では自動車用途や航空機用途を中心に、COVID-19影響から需要が回復し販売量が増加したものの、第2四半期から顕在化した半導体不足の影響や、原燃料価格・物流費の高騰、一部事業での定修や停電による生産休止の影響を受け減益となり、繊維・製品事業も医療用防護具(ガウン)の官需が収束した影響で減益となりました。

その結果、収益性を示すROEは中期経営計画最終年度(2022年度)目標(10%以上)を大きく下回る5.5%となり、営業利益ROICについても中期経営計画最終年度目標(8%以上)を下回る5.5%となりましたが、キャッシュ創出力を示すEBITDAは前期(1,068億円)を上回る水準の1,130億円となりました。

 

セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析は次のとおりです。

 

マテリアル事業領域

:[売上高 3,851億円(前期比 29.7%増)、営業損失 57億円(前期 営業利益 10億円)、EBITDA 250億円(同 20.6%減)]

COVID-19影響からの需要回復により自動車用途や航空機用途を中心に販売量が増加したものの、半導体不足や原燃料価格・物流費高騰、一部事業の定修や生産休止などが収益に大きく影響しました。各事業分野で販売価格改定を進め、収益性の改善を図りました。

売上高は3,851億円と前期対比881億円の増収(29.7%増)、営業損失は57億円(前期は10億円の営業利益)となりました。EBITDAは前期対比65億円減の250億円となり、営業利益ROICは△2%となりました。

 

アラミド事業分野では、主力のパラアラミド繊維「トワロン」において、自動車用途を中心とし各市場において需要回復が進み、販売量が増加しました。一方、第1四半期に実施した大型定修とその期間延長、並びに第3四半期に発生した原料工場の停電による生産休止により在庫が逼迫し、販売量にも影響しました。また、欧州の天然ガス価格高騰による燃料コストの上昇を受けて、販売価格改定を進めました。結果、前期対比増収・減益となりました。

 

樹脂事業分野では、半導体不足、COVID-19による顧客における稼働減少の影響を受け、販売量は前期対比若干減少しました。また、主原料であるBPAの価格高騰影響を受けて、販売価格改定を進めました。結果、前期対比増収・増益となりました。

 

炭素繊維事業分野では、航空機、風力発電、レクレーションを含む用途全般において炭素繊維「テナックス」の販売量が増加しました。また、主原料であるANの需給逼迫による価格高騰を受けて、販売価格の改定を進めました。結果、前期対比増収・増益となりました。当期において北米新工場の稼働を開始しており、将来に向けた航空機向け中間材料開発を継続しています。

 

電池部材事業分野では、リチウムイオンバッテリー(LIB)用セパレータ「リエルソート」がスマートフォン向けの販売量を伸ばしました。また、ライセンス供与しているコーティング技術を使用した電気自動車向けLIB用セパレータの販売の進展に伴い、ライセンス対価の受領が始まっています。結果、前期対比増収・増益となりました。

 

複合成形材料事業分野では、半導体や部品の供給不足により主要顧客であるOEMの生産休止が継続したことで、Teijin Automotive Technologies* が米国において注力するSUV・ピックアップトラック向けの部材生産にもその影響が波及しました。また、需給逼迫による原材料価格の高騰が継続し、製造コストに大きく影響しました。そのため、顧客との販売価格改定交渉を進め、第4四半期より一部の顧客との間で価格改定を実現しました。米国における失業給付加算の終了後も低位に推移していた労働市場参加率は期後半より少しずつ改善の傾向を示しており、Teijin Automotive Technologies(米)における人員確保の状況は徐々に改善しました。結果、前期対比増収・減益となりました。

   * 自動車向け複合成形材料事業のグローバル事業ブランド

マテリアル事業領域のEBITDAの増減分析(前年対比)は以下のとおりです。

          0102010_009.png

 

 

ヘルスケア事業領域

:[売上高 1,836億円(前期比 23.5%増)、営業利益 432億円(同 37.0%増)、EBITDA 705億円(同 61.4%増)]

主力製品である「フェブリク」の販売や在宅医療機器のレンタルは堅調となりました。販売承継した糖尿病治療薬も順調に推移し、増収・増益に大きく貢献しました。2017年に米国メルク社へライセンス供与したアルツハイマー病治療薬候補のマイルストーン(一時金)収入がありました。過去最高の営業利益を計上しました。

売上高は1,836億円と前期対比349億円の増収(23.5%増)、営業利益は432億円と前期対比116億円の増益(37.0%増)となりました。EBITDAは前期対比268億円増の705億円となり、営業利益ROICは20%となりました。

 

医薬品分野では、2021年4月1日付で武田薬品工業株式会社より承継した2型糖尿病治療剤4製品の販売が順調に推移しました。また、主力製品である「フェブリク」や先端巨大症・下垂体性巨人症/神経内分泌腫瘍治療剤「ソマチュリン*」が順調に販売量を拡大しました。さらに、2021年6月に「下肢痙縮」の効能追加承認を取得した「ゼオマイン」も、堅調に販売量を拡大しました。2017年に米国メルク社へライセンス供与したアルツハイマー病治療薬候補の臨床試験開始に伴うマイルストーン収入(一時金)を2021年12月に受領しました。

* ソマチュリン®/Somatuline®は、Ipsen Pharma(仏)の登録商標です。

在宅医療分野では、在宅酸素療法(HOT)市場において、医療機関におけるCOVID-19向け病床確保のための入院抑制・在宅療養へのシフトが継続し、酸素濃縮器のレンタル台数が伸長しました(前期末対比約3%増)。また、在宅持続陽圧呼吸療法(CPAP)市場では、検査数が緩やかな回復基調となり、レンタル台数の増加が継続しました(前期末対比約8%増)。

結果、医薬品・在宅医療分野においては、前期対比増収・増益となりました。

ヘルスケア新事業分野では、人工関節・吸収性骨接合材等の埋め込み型医療機器事業において、手術数の回復

傾向に加え、新製品の販売が順調に伸長しました。ただし、地域包括ケア等の新規事業の先行費用の影響もあり、前期対比増収・減益となりました。

 

ヘルスケア事業領域のEBITDAの増減分析(前年対比)は以下のとおりです。

          0102010_010.png

 

繊維・製品事業

:[売上高 2,825億円(前期比 10.3%減)、営業利益 56億円(同 67.8%減)、EBITDA 121億円(同 49.3%減)]

売上高は2,825億円と前期対比325億円の減収(10.3%減)、営業利益は56億円と前期対比119億円の減益(67.8%減)となりました。EBITDAは前期対比118億円減の121億円となり、営業利益ROICは4%となりました。

衣料繊維は、欧米や中国向けの素材・製品の販売や重衣料の国内販売に回復が見られるものの、COVID-19による国内市況低迷や海外工場のロックダウン、原燃料価格や物流費の高騰により、全般的に苦戦しました。産業資材では、自動車関連部材や電子部品向けの化成品の販売は好調に推移し、水処理フィルター向けのポリエステル短繊維も好調を維持しましたが、第2四半期以降、半導体不足による自動車生産台数減少の影響を受けました。医療用防護具(ガウン)の官需が収束した影響があるものの、事業の選択と集中による基礎収益力の底上げや、コロナ禍に対応したデジタルツールの活用等による販管費減が業績に寄与しました。またコスト上昇に対する販売価格改定を進めました。

 

IT事業

:[売上高 538億円(前期比 7.5%減)、営業利益 97億円(同 6.7%減)、EBITDA 108億円(同 4.3%減)]

売上高は538億円と前期対比43億円の減収(7.5%減)、営業利益は97億円と前期対比7億円の減益(6.7%減)となりました。EBITDAは前期対比5億円減の108億円となり、営業利益ROICは61%となりました。

ネットビジネス分野では、電子コミックサービスにおいて前期の外出自粛による特需の収束や海賊版サイトの影響が続いたため減収となりましたが、広告費最適化により利益を確保しました。ITサービス分野では、COVID-19の影響が残る中、堅調に推移しました。なお、主にオフィス移転による販管費増のため全体では減益となっています。

 

その他

:[売上高 212億円(前期比 18.6%増)、営業損失 21億円(前期 営業損失2億円)]

 

売上高は212億円と前期対比33億円の増収(18.6%増)、営業損失は21億円(前期は営業損失2億円)となり、EBITDAは前期対比6億円減の1億円となりました。

J-TECにおいて、2021年6月に製造販売承認を取得した「オキュラル」(角膜上皮幹細胞疲弊症に対する口腔粘膜上皮細胞を用いた世界初の再生医療等製品)が2021年12月に保険収載され、販売を開始しました。また、2021年11月、他家(同種)培養表皮の治験を開始しました。再生医療製品事業及び研究開発支援事業の売上は拡大した一方で、前親会社でかつ主要取引先であった富士フイルム株式会社との受託開発取引停止に伴う再生医療受託事業の売上減少により、前期比減収となりました。

 

 

b) 財政状態及びキャッシュ・フローの状況

当連結会計年度の財政状態、キャッシュ・フローの状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 2)財政状態、② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 

(帝人グループの資本の財源及び資金の流動性について)

帝人グループは、持続可能な社会の実現に向けて、「環境価値」「安心・安全・防災」「少子高齢化・健康志向」の3つのソリューションを中心とした価値を提供することで「未来の社会を支える会社」になることを目指し、事業ポートフォリオ変革に取り組んでいます。そのため、獲得した資金は財務体質の健全性を維持しながら「将来の成長に向けての投資」に優先的に配分しますが、「安定的・継続的な配当」にも配慮し、中期的な配当性向は30%を目安とし、状況に応じて自己株式取得等も機動的に実施します。また、積極的な成長投資を実行しながら企業価値を向上させていくために、資本コストを意識した経営を行っており、ROEや営業利益ROICを最重要指標として位置付け、資本効率の向上に取り組んでいます。

帝人グループの資金需要の主なものは、製品製造のための原材料等の購入、製造費、販売費やサービス提供費用等の運転資金需要に加え、設備投資や研究開発活動費等の「将来の成長に向けての投資」としての資金需要があります。マテリアル事業領域では、パラアラミド繊維の生産能力増強の設備投資を進めた他、北米において自動車向け複合成形材料のテキサス新工場、および炭素繊維のサウスカロライナ新工場がそれぞれ完成し、稼働を開始しました。ヘルスケア事業領域では、2021年4月1日付で武田薬品工業株式会社から2型糖尿病治療剤の日本における販売移管等を実施し、承継価額は1,330億円となりました。また、再生医療等製品事業への参入を目的としたJ-TECのTOBによる子会社化を行うなど、大型投資を推し進めました。中期経営計画2020-2022『ALWAYS EVOLVING』の3年累計では、設備投資及びM&A枠として当初3,500億円の資源投入規模を設定していましたが、上記大型投資を踏まえて4,500億円まで拡大し、今後も「将来の成長に向けての投資」を継続していきます。研究開発費については、マテリアル事業領域の複合成形材料分野やヘルスケア事業領域を中心に同中期経営計画の3年累計で1,100億円の資源投入を計画しています。

 

帝人グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用、金融機関からの借入及び社債の発行等により資金調達を行っており、財務体質の健全性を維持(D/Eレシオ0.9が目安)しながら資本効率の維持・向上を図るべく、最適な選択を実施していきます。また、日米欧中の各拠点においては、グループ内余剰資金を活用するためにキャッシュ・マネジメント・システムを導入し、資金効率の向上に努めています。帝人グループは、国内格付機関である格付投資情報センターから格付を取得しており、本報告書提出時点においてはAマイナス(安定的)となっています。金融機関には十分な借入枠を有しており、帝人グループの事業運営に必要な運転資金や将来の成長に向けた投資資金の調達に関しては問題なく実施可能と認識するとともに、高水準で維持している現預金も含め、緊急時の流動性を確保しています。

なお、当連結会計年度末の有利子負債残高は4,852億円となりました。 資金調達コストの低減に努める一方、設備投資に対応する借入の大部分については、長期調達するとともに過度に金利変動リスクに晒されないよう金利スワップ等の手段を活用し、固定化しています。また、2021年4月1日付の2型糖尿病治療剤販売承継のための資金の一部として、格付会社より発行額の50%に対して資本性が認定されたハイブリッド社債を2021年7月21日付で600億円発行し、一時的に悪化する財務体質を改善し将来の収益源育成に向けた資源投入の実行を支える財務健全性を確保することとしました。今後はハイブリッド社債の資本性考慮後ベースにて「D/Eレシオ目安0.9」の水準までの早期改善を目指します。

 

2) 経営成績に重要な影響を与える要因

経営成績に重要な影響を与える要因については、「2 事業等のリスク」に記載のとおりです。

 

3) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

2020年2月に公表した中期経営計画2020-2022『ALWAYS EVOLVING』では、前中期経営計画に引き続き、投資効率を測るための指標としてROEと営業利益ROICを重視するとともに、効率だけでは無く稼ぐ力を測るための指標としてEBITDAも重視しています。中期経営計画においては、最終年度である2022年度でROEは10%以上、営業利益ROICは8%以上、またEBITDAは1,500億円という目標を掲げています。

中期経営計画2年目となる当期においてはROEが5.5%、営業利益ROICは5.5%となり、EBITDAは1,130億円と前年度対比増加しました。

また、各種指標の推移は以下のとおりです。

 

第152期

(2018年3月期)

第153期

(2019年3月期)

第154期

(2020年3月期)

第155期

(2021年3月期)

第156期

(2022年3月期)

ROE(%)

12.5

11.2

6.3

△1.7

5.5

営業利益ROIC(%)

11.2

9.3

8.7

8.6

5.5

EBITDA(億円)

1,155

1,076

1,072

1,068

1,130

(注)各指標はいずれも当社連結ベースの財務数値を用いて算出しています。

・ROE:親会社株主に帰属する当期純利益/期首・期末平均自己資本

・営業利益ROIC:営業利益/期首・期末平均投下資本

  ※投下資本・・・純資産+有利子負債-現金及び預金

・EBITDA:営業利益+減価償却費(のれんを含む)

 

 

中期経営計画最終年度である2022年度の見通しは、COVID-19蔓延による経済への影響が未だ継続しており、予断を許さない状況ですが、世界各国でのワクチン接種や、経口抗ウイルス薬の普及等により、感染が一定程度収束することを前提としています。一方、ロシアによるウクライナへの侵攻に伴う社会不安の増大や急激な物価上昇の継続が懸念され、先行きは引き続き不透明感が強い状況にあることを踏まえ、2022年度経営指標の見通しを、ROE6%、営業利益ROIC6%、EBITDA1,250億円としています。ヘルスケア事業領域では主力製品である高尿酸血症・痛風治療剤「フェブリク」の後発品参入影響があるものの、マテリアルにおけるCOVID-19からの回復や各事業での生産能力増強、新工場稼働による販売数量の増加、継続する天然ガス・原材料価格高騰に対する販売価格改定やコスト削減施策の発現により、EBITDAは2021年度から増加を見込んでいますが、中期経営計画最終年度の目標に対して、ROE、営業利益ROIC、EBITDAのいずれも下回る見込みです。

EBITDAの中期計画目標未達の主な要因として、マテリアル事業領域では複合成形材料事業における原材料価格の想定以上の高騰や労務費高騰等による収益性改善遅れやアラミド事業の期首の販売可能在庫不足影響等を見込んでいます。一方、ヘルスケア事業領域では、武田薬品工業株式会社からの糖尿病治療薬販売承継が大きく貢献する一方で、M&Aの実施を含む新事業の収益化遅れ等を見込んでいます。

 

セグメント別の営業利益ROICおよびEBITDAの見通しは以下の通りです。

 

 

営業利益ROIC

 

2021年度

2022年度

見通し

(対2021年度)

 

2022年度

中期計画目標

(対中期計画)

マテリアル

△2%

 4%

6%

-

-

ヘルスケア

20%

13%

△7%

-

-

繊維・製品

4%

 6%

2%

-

-

IT

61%

58%

△3%

-

-

その他

-

-

-

-

-

合計

5.5%

6%

0%

8%

△2%

 

EBITDA                                      (億円)

 

2021年度

2022年度

見通し

(対2021年度)

 

2022年度

中期計画目標*

(対中期計画)

マテリアル

250

520

270

650

△130

ヘルスケア

705

525

△180

600

 △75

繊維・製品

121

150

29

 

250

 

 △45

IT

108

110

2

その他

△54

△55

△1

合計

1,130

1,250

120

1,500

△250

           *2021年5月 セグメント別内訳見直し後

 

 

          0102010_011.png

              * 繊維・製品、IT、 その他および消去又は全社の合計

 

 

また、当社は持続的な成長基盤の確立やESG観点を踏まえ、役員の業績連動報酬の評価指標の一部として、ポートフォリオ変革の達成度(Strategic Focus分野でのEBITDA割合)および女性役員と非日本人役員の人数目標といった非財務KPIを設定しています。こうした指標を評価指標として組み込むことで各種施策の積極的な推進を図っています。

業績連動型株式報酬の業績評価期間及び業績評価指標等(抜粋)

<非財務指標>

業績評価指標

目標値

役位別株式報酬基準額の構成割合(1年間分)

業績評価期間

1)Changing Portfolio

2022年度のStrategic Focus分野のEBITDAの割合≧15%

10%

2年間

2)Diversity and Inclusion

2022年度の女性役員6名以上、非日本人役員6名以上(※「役員」には、執行役員、理事を含む)

 

 

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