業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

本項の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの分析は、将来のリスク、不確実性及び仮定を伴う予測情報を含んでいます。これらの記述は、現時点で当社が入手している情報を踏まえた一定の前提条件や見解に基づくものであり、「2 事業等のリスク」等に記載された事項及びその他の要因により、当社グループの実際の業績はこれらの予測された内容とは大幅に異なる可能性があります。

 

(1) 経営成績等の状況の概要及び経営者の視点による分析・検討内容

① 経営成績

Ⅰ 当社グループ全体

当社グループの当連結会計年度(2021年4月1日~2022年3月31日、以下、「当期」)における世界経済は、各国の財政・金融政策による下支えが行われ、COVID-19感染拡大防止のための経済活動制限措置が各国で段階的に緩和されたことを受け、欧米を中心に景気が世界的に持ち直す一方で、需給が逼迫し、原材料不足や原燃料価格の高騰が生じるなど、経営のかじ取りが難しい経済環境が継続しました。

このような環境を受けて、当社グループの連結業績は、マテリアル及び住宅領域ではCOVID-19の感染拡大による影響を大きく受けた前連結会計年度(以下、「前期」)比で大幅な増収となりました。また、ヘルスケア領域では、前期のCOVID-19の治療等に貢献する事業の増収要因がなくなったものの、それ以外の事業が堅調に推移したことにより微増収となったことから、売上高は 2兆4,613億円となり前期比3,553億円の増収、営業利益は2,026億円で前期比308億円の増益、経常利益は2,121億円で前期比340億円の増益となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期に発生した半導体工場火災関連の費用やVeloxis Pharmaceuticals, Inc.の組織再編に伴う税金費用の低減があったことから、1,619億円と前期比821億円大幅な増益となりました。その結果、EPS(1株当たりの当期純利益)は116.68円と前期比59.19円の増加となりました。

資本効率については、2021年度はROIC:6.6%と前期比1.7%の改善、ROE:10.3%と前期比4.7%の改善となりました。当期の資本効率改善の主な原因は、利益成長に伴う自己資本の増加や、M&A等成長のための投資に伴う資金調達による有利子負債の増加の一方で、営業利益及び親会社株主に帰属する当期純利益が上述のとおり増益したことによるものです。

財務健全性については、D/Eレシオは前期末から横ばいの0.45となりました。

 

〈当社グループの業績〉

 

経営指標

2019年度

2020年度

2021年度

前期との

差異

収益性

売上高

(億円)

21,516

21,061

24,613

+3,553

営業利益

(億円)

1,773

1,718

2,026

+308

売上高営業利益率

(%)

8.2

8.2

8.2

-

EBITDA

(億円)

2,956

3,051

3,508

+457

売上高EBITDA率

(%)

13.7

14.5

14.3

△0.2

親会社株主に帰属する当期純利益

(億円)

1,039

798

1,619

+821

EPS

(円)

74.85

57.49

116.68

59.19

資本効率

ROIC

(%)

6.6

4.9

6.6

+1.7

ROE

(%)

7.6

5.6

10.3

+4.7

財務健全性

D/Eレシオ

 

0.52

0.45

0.45

-

 

 

 

Ⅱ セグメント別

ⅰ 「マテリアル」セグメント(価値提供注力分野:「Environment & Energy」「Mobility」「Life Material」)

自動車関連市場の回復に伴うエンジニアリング樹脂等の販売数量増加及び原材料価格高騰に伴う価格転嫁、半導体市況の活況を背景としたデジタル関連ソリューション事業の販売数量増加に加え、需要回復等を背景に石化製品市況が急速に上昇したことなどから、売上高は 1兆1,982億円前期比2,070億円の増収、営業利益は1,103億円438億円の増益となりました

 

・ 基盤マテリアル事業

世界経済の回復に伴い、各製品の販売数量が増加したことや在庫受払差が増益方向に作用したことなどにより増収増益となりました。主力事業であるアクリロニトリル事業については、市況が上昇し、交易条件が改善したことにより増益となりました。なお、同事業では、販売価格の原材料連動フォーミュラ化を進めるなど、市況の影響を受けにくい安定的な収益を創出できるよう努めています

 

・ パフォーマンスプロダクツ事業

本事業は、繊維、エンジニアリング樹脂や合成ゴム等、自動車用途の製品の割合が大きいため、その業績は、グローバルでの自動車生産台数増減の影響を強く受けます。エンジニアリング樹脂については、COVID-19による需要減少からの回復により販売量が増加したことや、原燃料価格高騰の一方で価格転嫁が進み、交易条件が改善したことにより増収増益となりました。繊維事業については、COVID-19感染拡大による需要減少を受けた前期に対して、自動車関連市場向けや衣料関連市場向けで販売量が増加したことや、前期に買収したAdient plcを新規連結したことにより、増収増益となりました。

 

・ スペシャルティソリューション事業

リチウムイオン電池用セパレータの業績は、電気自動車等の環境対応車やスマートフォン等の民生機器、また蓄電システム(ESS)等の需要動向に影響を受けます。セパレータ事業については、湿式タイプの「ハイポア™」は、上期においては増設が寄与し販売数量を伸ばしたものの、下期においては半導体不足などによる車載用途の需要減退の影響を受け、通期では前年並みの販売数量となり、自動車向けの鉛蓄電池用セパレータがCOVID-19の影響を大きく受けた前年から販売数量を伸ばしたことなどから増収となりましたが、鉛蓄電池用セパレータや乾式タイプの「セルガード®」で原燃料価格や物流コスト高騰の影響を大きく受けたことにより、減益となりました。一方で、機能性コーティング材料が工業・建築用途等で販売堅調だったことや、電子材料事業が半導体市況活況の恩恵を受けたことなどから、事業全体としては増収増益となりました。

 

ⅱ 「住宅」セグメント(価値提供注力分野:「Home & Living」)

北米事業が木材価格変動に伴い大幅に増益となったことに加え、建築請負部門で、COVID-19影響による前期の受注減や原材料価格高騰の影響を受けたものの、物件の大型化・高付加価値化が進んだことにより、売上高は 8,334億円で前期比1,407億円の増収、営業利益は732億円前期比96億円の増益となりました。


・ 住宅事業

建築請負部門については、前期のCOVID-19感染拡大の影響を受けて受注が減少し、販売棟数は減少した一方で、大型化・高付加価値化へのシフトにより平均単価が上昇したことや固定費減により、増収増益となりました。海外事業については、北米事業の伸長と豪州のMcDonald Jones Homes Pty Ltdの新規連結により、増収増益となりました

 

ⅲ 「ヘルスケア」セグメント(価値提供注力分野:「Health Care」)

クリティカルケア事業は、COVID-19の影響により前期に需要が急増した人工呼吸器の販売数量が世界的な需給バランスの正常化に伴い大幅に減少したものの、除細動器等の主力事業が好調に推移したことにより減益幅は抑えられた一方で、医薬・医療事業は、主力製品の販売が堅調に推移したものの、ライセンス導入等の将来の成長に向けた施策により販管費が増加したことにより、売上高は 4,159億円前期比80億円の増収、営業利益は522億円前期比154億円の減益となりました

 

・ 医薬・医療事業

医薬事業においては、「テリボン®オートインジェクター」、「ケブザラ®」、「プラケニル®」、「Envarsus XR」の販売数量が伸びましたが、MR(医療情報担当者)のオンライン活動拡大のための経費などの増加やライセンス契約の導入費用等の支払いにより、増収減益となりました。医療事業においては、生物学的製剤の市場拡大に加えて、COVID-19治療薬関連の需要の増加により、ウイルス除去フィルター「プラノバ™」の販売数量が増加し、増収増益となりました

 

・ クリティカルケア事業

COVID-19の影響により前期に需要が急増した人工呼吸器の販売数量が世界的な需給バランスの正常化に伴い大幅に減少したものの、除細動器や「LifeVest®」が前期のCOVID-19感染拡大の影響から回復して販売量を拡大させたことにより、減益幅を抑えられました

 

Ⅲ 生産、受注及び販売の状況

ⅰ 生産実績

当社グループの生産品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではないため、セグメントごとに生産規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。

このため、生産の状況については、「Ⅱ セグメント別」における各セグメントの業績に関連付けて示しています。

 

ⅱ 受注状況

当社グループは注文住宅に関して受注生産を行っており、その受注状況は次のとおりです。その他の製品については主として見込生産を行っているため、特記すべき受注生産はありません。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

住宅

384,300

117.7

533,264

101.1

 

 

ⅲ 販売実績

当期における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

販売実績(百万円)

前期比(%)

マテリアル

1,198,246

120.9

住宅

833,351

120.3

ヘルスケア

415,883

102.0

その他

13,838

96.9

合計

2,461,317

116.9

 

(注) 1 セグメント間の取引については、相殺消去しています。

2 前期及び当期において、主要な販売先として記載すべきものはありません。

 

 

② 財政状態

当期末の総資産は、市況上昇や円安による売上債権、棚卸資産の増加に加え、買収に伴いのれんや無形資産を計上したことなどから、前期比4,301億円増加し、3兆3,491億円となりました。

流動資産は、受取手形、売掛金及び契約資産が960億円、棚卸資産が588億円、現金及び預金が229億円増加したことなどから、前期比1,974億円増加し、1兆3,342億円となりました。

固定資産は、投資有価証券が398億円減少したものの、無形固定資産が1,425億円、有形固定資産が880億円、繰延税金資産が332億円増加したことなどから、前期比2,327億円増加し、2兆149億円となりました。

流動負債は、前受金が161億円減少したものの、短期借入金が949億円、未払法人税等が368億円、支払手形及び買掛金が360億円、コマーシャル・ペーパーが290億円、未払費用が196億円増加したことなどから、前期比2,207億円増加し、9,239億円となりました。

固定負債は、社債が500億円増加したものの、長期借入金が666億円減少したことなどから、前期比148億円減少し、7,064億円となりました。

有利子負債は、前期比1,073億円増加し、7,663億円となりました。

純資産は、配当金の支払472億円があり、その他有価証券評価差額金が256億円減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益を1,619億円計上したことや為替換算調整勘定が1,168億円増加したことなどから、前期末の1兆4,945億円から2,243億円増加し、1兆7,188億円になりました。

その結果、1株当たり純資産は前期比158.72円増加し1,216.33円となり、自己資本比率は前期末の50.3%から50.4%となりました。D/E レシオは前期末から横ばいの0.45となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

Ⅰ キャッシュ・フローの状況

当期のフリー・キャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計額)は、固定資産の取得や連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出等による支出が税金等調整前当期純利益などを源泉とした収入を上回り、 377億円の支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローでは、短期借入金の増加などにより、423億円の収入となりました。

以上の要因に加え、現金及び現金同等物に係る換算差額等により、現金及び現金同等物の期末残高は、前期末に比べて267億円増加し2,429億円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当期の営業活動によるキャッシュ・フローは、棚卸資産の増加733億円、法人税等の支払591億円、売上債権及び契約資産の増加459億円などの支出があったものの、税金等調整前当期純利益2,151億円、減価償却費1,197億円、のれん償却額284億円などの収入があったことから、1,833億円の収入(前期比704億円の収入の減少)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当期の投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却による収入334億円などがあったものの、有形固定資産の取得による支出1,423億円、Itamar Medical Ltd.及びRespicardia, Inc.の買収やMcDonald Jones Homes Pty Ltd株式の追加取得などにより連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出809億円、無形固定資産の取得による支出275億円などがあったことから、2,210億円の支出(前期比633億円の支出の増加)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

期の財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出511億円、配当金の支払額472億円などの支出があったものの、短期借入金の増加656億円、社債の発行による収入500億円、コマーシャル・ペーパーの増加290億円などの収入があったことから、423億円の収入(前期比1,382億円の収入の増加)となりました。

 

当社グループの連結キャッシュ・フローの推移

(単位:億円)

 

2019年度

2020年度

2021年度

営業活動によるキャッシュ・フロー①

1,245

2,537

1,833

投資活動によるキャッシュ・フロー②

△3,182

△1,578

△2,210

フリー・キャッシュ・フロー③(①+②)

△1,937

959

△377

財務活動によるキャッシュ・フロー④

2,219

△959

423

現金及び現金同等物に係る換算差額⑤

△41

96

210

現金及び現金同等物の増減額⑥(③+④+⑤)

242

97

256

現金及び現金同等物の期首残高⑦

1,805

2,048

2,162

連結の範囲の変更に伴う増減額⑧

1

18

11

現金及び現金同等物の期末残高(⑥+⑦+⑧)

2,048

2,162

2,429

 

 

Ⅱ 流動性と資金調達の源泉

(資本の財源及び資金の流動性について)

2023年3月31日に終了する連結会計年度においては、各セグメントが安定的なキャッシュ・フローを創出することを見込んでいます。加えて、財務規律の強化や事業ポートフォリオ転換などを通じた収益体質の強化にも取り組み、更なるキャッシュの創出に継続的に努めています。

また、当社グループでは、D/Eレシオ0.4~0.7を目安に健全な財務体質を維持しつつ、これを背景に金融情勢に機動的に対応し、金融機関借入、社債やコマーシャル・ペーパーの発行など多様な調達手段により、安定的かつ低コストの資金調達を図ります。同時に資金の年度別返済の集中を避けることで借り換えリスクの低減も図っています。

これらの資金を、経営基盤の強化・変革、持続可能な社会の実現と企業価値の継続的な向上のための戦略的な投資、及び株主の皆様への還元に活用していきます。

なお、当社グループでは、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)とグローバル・ノーショナル・キャッシュ・プーリングを導入しており、国内外の金融子会社、海外現地法人などにおいて集中的な資金調達を行い、子会社へ資金供給するというグループファイナンスの考え方を基本としています。グローバル拡大への対応とグループ経営の深化の視点から、今後も連結ベースでの資金管理体制の更なる充実と資金効率化を図ります。

 

(2) 重要な判断を要する会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりです。

当社グループは、退職給付会計、税効果会計、貸倒引当金、棚卸資産の評価、投資その他の資産の評価、訴訟等の偶発事象などに関して、過去の実績や当該取引の状況に照らして、合理的と考えられる見積り及び判断を行い、その結果を資産・負債の帳簿価額及び収益・費用の金額に反映して連結財務諸表を作成していますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの財政状態又は経営成績に対して重大な影響を与え得る会計上の見積り及び判断が必要となる項目は以下のとおりです。なお、COVID-19の影響に関する仮定についての情報は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載しています。また、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しています。

 

① 棚卸資産の評価

当社グループで保有する棚卸資産は取得原価をもって貸借対照表価額とし、収益性の低下により期末における回収可能価額が取得原価よりも下落している場合には、回収可能価額まで棚卸資産の評価を切り下げています。回収可能価額は、商品及び製品については正味売却価額に基づき、原材料等については再調達原価に基づいています。経営者は、棚卸資産の評価に用いられた方法及び前提条件は適切であると判断しています。ただし、当社グループは、主に「マテリアル」セグメントを中心として市場価格の変動リスクに晒されており、将来、経営環境の悪化等により市場価格が下落した場合には棚卸資産の簿価を切り下げることになります。

 

② 企業結合取引の結果取得した無形固定資産の企業結合日時点における時価

当社グループは、企業結合取引の結果取得した無形固定資産の企業結合日時点における時価について、コスト・アプローチ、マーケット・アプローチ、インカム・アプローチなどの合理的に算定された価額を基礎として算定しています。

経営者は、無形固定資産の時価の見積りに用いられた、事業計画に含まれる将来の販売数量の見込みや割引率等についての主要な仮定について合理的であると判断しています。

 

③ 有形固定資産及び無形固定資産(のれんを含む)の減損

当社グループは、有形固定資産及び無形固定資産(のれんを含む)について、帳簿価額が回収できない可能性を示す事象や状況の変化が生じた場合に、減損の兆候があるものとして、減損損失の認識の判定を行っています。減損の存在が相当程度に確実と判断した場合、減損損失の測定を行い、当該資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しています。回収可能価額は、使用価値と正味売却価額のうち、いずれか高い金額としています。使用価値は、将来の市場の成長度合い、収益と費用の予想、資産の予想使用期間、割引率等の前提条件に基づき将来キャッシュ・フローを見積もることにより算出しています。

経営者は、減損の兆候及び減損損失の認識に関する判断、及び回収可能価額の見積りに関する評価は合理的であると判断しています。ただし、予測不能な市場環境の悪化等により有形固定資産及び無形固定資産(のれんを含む)の評価に関する見積りの前提に重要な変化が生じた場合には、減損損失を計上する可能性があります。

 

④ 繰延税金資産の評価

当社グループは、繰延税金資産のうち、回収可能性に不確実性があり、将来において回収が見込まれない金額を評価性引当額として設定しています。繰延税金資産の回収可能性については、課税所得及びタックスプランニングの見積りにより計上していますが、特に課税所得の見積りには将来に関する予測や情報が含まれています。将来の予測や情報に基づき、繰延税金資産の一部又は全部が回収できない可能性が高いと判断した場合には、将来回収が可能と判断される額までを繰延税金資産に計上しています。経営者は、繰延税金資産の回収可能性の判断及び前提となる課税所得やタックスプランニングの見積りは適切であると判断しています。ただし、将来、経営環境の悪化等により、想定していた課税所得が見込まれなくなった場合は、評価性引当額を設定することにより繰延税金資産が取崩される可能性があります。

 

⑤ 退職給付債務及び費用

当社グループは主として従業員の確定給付制度に基づく退職給付債務及び費用について、割引率、昇給率、退職率、死亡率、年金資産の長期期待運用収益率等の前提条件を用いた数理計算により算出しています。割引率は測定日時点における、従業員の給付が実行されるまでの予想平均期間に応じた長期国債利回りに基づき決定し、各前提条件については定期的に見直しを行っています。長期期待運用収益率については、過去の年金資産の運用実績及び将来見通しを基礎として決定しています。

経営者は、年金数理計算上用いられた方法及び前提条件は適切であると判断しています。ただし、前提条件を変更した場合、あるいは前提条件と実際の数値に差異が生じた場合には、数理計算上の差異が発生し、当社グループの退職給付債務及び費用に影響を与える可能性があります。

 

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