(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルスワクチン接種の進展に伴う活動制限の緩和を背景に景気は回復傾向にあるものの、急激な需要の拡大や資源価格の高騰を背景としたインフレ、物流混乱に伴う輸送コストの高騰、ロシアのウクライナ侵攻など様々な懸念材料を抱えており、依然として先行き不透明な状況が続いております。米国では、長期化するインフレが企業活動の足かせとなった一方、コロナ禍で積みあがった貯蓄の取り崩しにより個人消費等の内需が堅調さを維持したことで、景気回復は持続いたしました。欧州では、ワクチン接種の進展に伴い多くの国が活動制限の緩和に踏み切ったことで、経済活動の正常化が進み、景気は新型コロナウイルス流行前の水準まで回復しております。中国では、景気は回復基調が続いているものの、一部の地域で春節と五輪を見据えた「ゼロコロナ」政策が実施され、活動制限が強化されたことにより、景気回復は鈍化いたしました。日本では、景気は持ち直しの傾向にあるものの、感染再拡大に伴うまん延防止等重点措置の発令や自粛ムードの高まりを受け、景気回復は鈍化いたしました。
当社グループが属する自動車業界においては、タイでは、新規感染者数の減少に伴う活動制限の緩和や先進国経済の正常化に伴い、市場環境は持ち直しの傾向にあるものの、変異株による感染再拡大及び原材料価格の高騰等不安定要素も多く、依然として先行き不透明な状況が続いております。中国では、新エネルギー車市場は好調を維持したものの、半導体供給不足及び原材料価格高騰等の影響は大きく、市場は依然として不安定な状況が続いております。日本では、10月に緊急事態宣言が解除されたことで、生産は回復基調が続いていたものの、2022年以降に変異株による感染が再拡大したことにより、各自動車メーカーで工場の稼働停止が相次ぎ、生産台数は前年比で減少となるなど、依然として厳しい状況で推移いたしました。
このような状況のもと、当社グループは、中長期5か年計画の4年目として、競争力基盤の確立及び財務体質の向上に努めてまいりました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は45,663百万円(前年同期比1.9%増)、営業利益は2,931百万円(前年同期比34.3%減)、経常利益は2,679百万円(前年同期比36.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,996百万円(前年同期比20.5%減)となりました。
当社グループでは、競争力基盤の確立としてボディ部品事業(車体骨格部品事業)を「主力事業」、電動化部品事業及び金型事業を「戦略事業(次の10年に飛躍するための成長ドライバー)」に位置づけ、効率経営と競争力強化を目指し、売上高営業利益率をKPI(重要業績評価指標)としております。売上高営業利益率については、中長期5か年計画最終年度となります2023年3月期において9.0%以上を目標数値としておりますが、当連結会計年度では半導体供給不足等による減産影響及び原材料価格高騰等の影響により6.4%となりました。
セグメントごとの概況は、次のとおりであります。
なお、タイ(タイ・マルジュン社)、広州(広州丸順汽車配件有限公司)及び武漢(武漢丸順汽車配件有限公司)の決算日は12月31日であり、連結財務諸表作成に当たっては同決算日現在の財務諸表を使用しております。
(丸順)
丸順においては、半導体供給不足に伴う主要客先の減産影響及び金型設備等の販売が減少したこと等により、売上高は減少いたしました。なお、生産効率改善による労務費及び物流効率改善による経費等の継続的な原価低減活動を推進したものの、原材料価格の高騰及び売上高減少の影響が大きく、利益は減少いたしました。
以上の結果、売上高は14,307百万円(前年同期比9.7%減)、経常利益は1,357百万円(前年同期比32.0%減)となりました。
丸順においては、資本業務提携先である東プレ株式会社とのシナジーの最大化を図る等、中長期5か年計画を強力に推進しております。また、次期中長期計画に向けては、受注強化のための新たな生産拠点の整備を進める等、更なる経営基盤の強化を目指し、グループ全体の成長を牽引しております。
(タイ)
タイにおいては、主要客先の国内向け及び輸出向け自動車部品並びに汎用エンジン部品等を中心とした生産の回復により売上高は増加いたしました。なお、生産部品の内製化推進による購入費等の原価低減活動の推進に加え、構造改革に伴う固定費削減等の利益体質改善の推進により、損失は減少いたしました。
以上の結果、売上高は 5,933 百万円(前年同期比 5.1 %増)、経常損失は 40 百万円(前年同期は 308 百万円の経常損失)となりました。
タイにおいては、タイ国内及び輸出先である周辺国における市場が成熟化する中、自動車安全装備部品の市場拡大に対応した受注強化を展開しております。また、安定的な利益体質構築に向けた構造改革の取り組みを推進し、その効果が表れてきております。
(広州)
広州においては、新型コロナウイルス影響は回復傾向にあるものの、半導体供給不足に伴う主要客先の減産影響等により売上高は現地通貨ベースでは前年同期と同水準となりましたが、円安による為替変動により邦貨ベースでは増加いたしました。なお、生産効率改善による要員適正化に伴う労務費等の原価低減活動を推進したものの、原材料価格の高騰及び主要客先の生産変動に伴う労務費負担の増加等の影響により、利益は減少いたしました。
以上の結果、売上高は 17,334 百万円(前年同期比 9.7 %増)、経常利益は 709 百万円(前年同期比 47.4 %減)となりました。
広州においては、中国拠点のマザー機能を有し、今後成長性の高い電動化部品等の新規受注拡大に取り組むとともに、事業提携戦略を推進し、中核拠点として更なる収益拡大に努めております。
(武漢)
武漢においては、新型コロナウイルス影響は回復傾向にあるものの、半導体供給不足に伴う主要客先の減産影響等により売上高は現地通貨ベースでは前年同期と同水準となりましたが、円安による為替変動により邦貨ベースでは増加いたしました。なお、調達業務改善による購入費及び物流効率改善による経費等の継続的な原価低減活動を推進したものの、原材料価格の高騰及び主要客先の生産変動に伴う労務費負担の増加等の影響に加え、前年同期は量産車種終了に伴う金型投資費用の未回収分の回収があったこと等により、利益は減少いたしました。
以上の結果、売上高は 11,673 百万円(前年同期比 7.4 %増)、経常利益は 1,036 百万円(前年同期比 42.4 %減)となりました。
武漢においては、生産効率化や原価低減活動による量産機能の強化に加え、異素材加工の技術確立に積極的に取り組む等、更なる事業基盤の強化に努めております。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は 6,091 百万円となり、前連結会計年度末に比べ 3,260 百万円減少しました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、2,979百万円の収入(前年同期は8,742百万円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益2,646百万円(前年同期は3,846百万円)、減価償却費3,597百万円(前年同期は3,713百万円)、棚卸資産の増加1,816百万円(前年同期は104百万円の増加)、法人税等の支払額918百万円(前年同期は941百万円)等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、3,934百万円の支出(前年同期は2,516百万円の支出)となりました。これは主に、定期預金の預入による支出686百万円(前年同期は―百万円の支出)、有形固定資産の取得による支出3,409百万円(前年同期は2,635百万円の支出)等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、2,922百万円の支出(前年同期は6,756百万円の支出)となりました。これは主に、短期借入金1,015百万円の減少(前年同期は4,333百万円の減少)、長期借入金1,010百万円の減少(前年同期は3,379百万円の減少)、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出661百万円(前年同期は47百万円の支出)等によるものであります。
当社グループでは、中長期5か年計画においてフリー・キャッシュフローを重視しており、「主力事業」及び「戦略事業」を中心とした事業戦略に基づき利益創出に取り組んでおります。また、投資については構造改革後の次なる成長に向けた戦略投資を実施しており、投資回収等を重視した最適投資を推進しております。獲得したフリー・キャッシュについては、財務体質強化に向けた有利子負債圧縮、将来の成長に向けての研究開発活動の原資及び株主への還元等に充当しております。
③ 生産、受注及び販売の状況
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 金額は、販売価格によります。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2 本表の金額には、消費税等は含まれておりません。
3 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2022年6月24日)現在において当社グループが判
断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般的に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。当社経営陣は連結財務諸表の作成にあたって、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー、特に以下に述べる項目に影響を与えるような見積り及び判断を行っております。経営陣は過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。
a.棚卸資産
棚卸資産のうち、仕掛品に含まれる販売目的の金型、治具及び検具等(販売用金型等)は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)(1)棚卸資産(販売用金型等)の評価」に記載の通りです。
b.繰延税金資産
繰延税金資産の回収可能性の判断については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)(2)繰延税金資産の回収可能性の判断」に記載の通りです。
c.退職給付引当金
当社は、退職給付債務の算定にあたり、退職給付見込額を当連結会計年度末までの期間に帰属させる方法については、給付算定式基準によっております。また、一部の連結子会社は、退職給付に係る負債及び退職給付費用の計算に、退職給付に係る期末自己都合要支給額を退職給付債務とする方法を用いた簡便法を適用しております。確定給付制度の退職給付債務及び関連する勤務費用は、数理計算上の仮定を用いて退職給付見込額を見積り、割り引くことにより算定しております。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する退職給付に係る負債及び退職給付費用の金額に重要な影響を与える可能性があります。
なお、当連結会計年度末の退職給付債務の算定に用いた主要な数理計算上の仮定は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(退職給付関係)2確定給付制度(8)数理計算上の計算基礎に関する事項」に記載のとおりであります。
d.減損会計における将来キャッシュ・フロー
減損損失の認識及び測定において用いられる将来キャッシュ・フローは、当社グループが用いている内部の情報(予算)と経営環境などの外部要因に関する情報を整合的に修正し、資産グループの現在の使用状況や合理的な使用計画等を考慮して見積もっております。当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において新たな減損損失(特別損失)が発生する可能性があります。
<経営成績等>
当連結会計年度の経営成績等について、当社グループは、主要客先の生産受注変動及び原材料価格の高騰等の影響に加え、前年同期はタイ及び武漢において金型投資費用の未回収分の回収があったことにより、営業利益、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益において減益となりました。
当社グループの当連結会計年度における経営成績は、売上高は日本で減収となるものの、タイにおいて増収、中国拠点において円安による為替変動により邦貨ベースで増収となったことで、前年同期比1.9%増の45,663百万円となりました。
売上原価は、前連結会計年度の37,334百万円から39,729百万円に増加し、売上高に対する比率は3.7ポイント増加し87.0%となりました。
販売費及び一般管理費は、前連結会計年度の3,021百万円から3,002百万円に減少し、売上高に対する比率は0.1ポイント減少し6.6%となりました。以上の結果、営業利益は前連結会計年度の4,464百万円に対し、2,931百万円となりました。
営業外収益は、前連結会計年度の314百万円に対し、275百万円となりました。また、営業外費用は、前連結会計年度の531百万円に対し、527百万円となりました。以上の結果、経常利益は前連結会計年度の4,247百万円に対し、2,679百万円となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度の2,511百万円に対し、1,996百万円となりました。
当社グループの当連結会計年度末における資産総額は、46,736百万円となり、前連結会計年度末と比較し、2,007百万円の増加となりました。これは主に、現金及び預金が2,917百万円減少、売掛金が1,031百万円増加、仕掛品が865百万円増加、原材料及び貯蔵品が376百万円増加、機械装置及び運搬具、建設仮勘定、繰延税金資産等の固定資産が2,482百万円増加したこと等が要因であります。
負債総額は25,655百万円となり、前連結会計年度末と比較し、1,451百万円の減少となりました。これは主に、支払手形及び買掛金が622百万円増加、短期借入金が671百万円減少、未払法人税等が191百万円減少、長期借入金が1,013百万円減少したこと等が要因であります。
純資産は21,080百万円となり、前連結会計年度末と比較し、3,459百万円の増加となりました。これは主に、利益剰余金が1,853百万円増加、為替換算調整勘定が1,710百万円増加したこと等が要因であります。
当社グループでは、主力事業及び戦略事業の強化に加え、有利子負債の圧縮及び積極的な資本政策などによる財務体質の向上及び経営基盤の安定化を目指し、自己資本比率を当社グループKPIとしております。自己資本比率については、中長期5か年計画最終年度となります2023年3月期において40.0%以上を目標数値としており、当連結会計年度末では自己資本比率39.0%となり、目標値達成に向けて順調に推進しております。
当社グループの主たる事業である自動車部品の業界では、価格競争は大変厳しいものとなっており、激化する価格低減競争の環境下にあって、市場シェアの維持あるいは拡大ができず、利益を確保できない可能性があります。
また、当社グループは、その売上高の大部分を本田技研工業株式会社及びその関係会社に依存しているため、その業績の変動が、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの連結売上高に占める海外売上高の割合は70.7%と大きく、為替の変動が、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの有利子負債は総資産に占める比率が高く、借入金利の上昇は、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、当社グループの資金状況は、営業活動によるキャッシュ・フローでは2,979百万円の収入となり、投資活動によるキャッシュ・フローが3,934百万円の支出となりました。また、財務活動によるキャッシュ・フローが2,922百万円の支出となった結果、現金及び現金同等物の当期末残高は、前連結会計年度末に比べ3,260百万円減少し、6,091百万円となりました。
当社グループは、運転資金及び設備投資資金につきましては、内部資金、借入、社債、公募及び第三者割当増資により調達しております。このうち、公募及び第三者割当増資による調達に関しましては、2017年6月に第三者割当増資(586,200株)及び自己株式の処分(1,004,900株)、2018年6月に第三者割当増資(300,000株)及び有償一般募集(1,200,000株)を実施いたしました。また、借入による調達に関しましては、運転資金については短期借入金、生産設備などは、原則として長期借入金及び社債で調達しており、当連結会計年度末の連結貸借対照表に計上されている短期借入金の残高は6,298百万円、1年内返済予定の長期借入金の残高は1,010百万円、長期借入金の残高は4,438百万円、社債の残高は1,500百万円であります。
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