課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

当社グループは「オプティカル事業」、「ライフサイエンス・機器開発事業」及び「その他事業(電子科学株式会社を含む)」の3つの事業を有しております。

 

(1) 経営方針

当社は、「世の中にないオンリーワンの技術により製品を作り出し、広く社会に貢献する」ことを経営理念に掲げ、各種産業分野の技術発展に寄与し、創薬や再生医療をはじめとした先端技術の研究及び実用化の促進に役立つことにより、「科学技術イノベーションの創出に貢献する製品開発を推進する」ことを経営方針に定めております。

 

(2) 経営環境等

当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により鈍化の動きがみられたものの、経済・社会活動に対する制限の緩和により、徐々に正常化に向かう動きを見せつつあります。一方で、世界的には長期化するウクライナ情勢、ゼロコロナ対策に伴う中国経済の停滞、急激なインフレの懸念など、先行きの不透明感が強まっております。

オプティカル事業においては、中国ではゼロコロナ政策による各種活動の制限が続いておりますが、世界の放射光施設では、国内や欧米各国にて投資計画が進み、コロナ関連の基礎研究や治療薬などの研究開発が積極的に行われるなど、研究活動が復調してきております。

2021年6月3日の米国、同年11月29日の中国、2022年1月17日の日本と、各種高精度ミラーの大型受注のお知らせを公表いたしましたが、これら以外にも世界各地で大型放射光施設及びⅩ線自由電子レーザー施設の新設及び第4世代へのアップグレードが計画されており、受注活動が活発になってまいりました。

このように、当社ミラーの市場は伸びている状況であるため、勝機を逃がさずに特に当社の得意とする超高精度ミラーや第4世代向けミラーを中心に投入することにより売上増加に注力してまいります。

ライフサイエンス・機器開発事業においては、大型自動細胞培養装置や簡易型自動細胞培養装置「MakCell®」に注力するとともに、水晶振動子ウエハ加工システムにおいて国内外の水晶振動子メーカーに向けた拡販に注力してまいります。

また、2022年5月30日に公表しましたInnovation2030に記載している通り、今後の取り組みとして、既存市場のみならず半導体等の新市場への参入を目指してまいります。

特に注力する分野として、プラズマCVM加工技術を用いた水晶振動子ウエハ加工システムの実績をさらに伸ばしていくほか、新しい加工技術であるCAREの実用化を推進しており、次世代パワー半導体等の各種デバイスに対応した研磨装置の開発に注力してまいります。

また、子会社の電子科学株式会社の主力製品である昇温脱離分析装置(TDS)においては、現在の半導体や液晶業界向けのみならず、鉄鋼、電機、自動車、水晶振動子等の様々な産業分野にも市場拡大が見込まれるため、機能を絞った低価格装置を開発し販売するなど新規顧客開拓に注力してまいります。

 

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 事業活動に関わる課題

(オプティカル事業)

・放射光施設関連

オプティカル事業の主なユーザーである国内外の放射光施設及びⅩ線自由電子レーザー施設は研究活動が復調してきており、ミラーの需要もコロナ前の状態に回復してきております。

欧州、米国、中国では新設及び第4世代へのアップグレードに伴う新設ビームラインの中期的な開発計画が提案され、すでに多くの各種超高精度ミラーの問い合わせを頂いており、仕様の検討、議論に着手しております。一方国内においても、大型放射光施設SPring-8や自由電子レーザー施設SACLAだけでなく、2024年稼働予定の東北大学に隣接する次世代放射光施設(Nano Terasu)からの引合いも増え、受注も順調に推移しております。

当社は、このように世界規模で拡大している放射光施設及びⅩ線自由電子レーザー施設向けの高精度Ⅹ線ミラーの需要に応えるため、生産施設の増強、生産工程の効率化を図り、更なる高精度化を進めていくことが引続き重要課題であると認識しております。栃木に新設した生産技術開発センターにおいては、前加工工程の連携強化を図り生産工程全体の効率化を目指してまいります。

また、世界各地で放射光施設やⅩ線自由電子レーザー施設の新設や第4世代放射光施設へのバージョンアップによって光源の強化が図られており、当社の主力製品である高精度KB型集光ミラーのみならず、それらに対応できる新しい光学系の構築が求められております。形状可変ミラー、回転楕円ミラー、各種ウォルターミラー等の次世代放射光施設向けの新しい集光系のⅩ線ミラーの開発・販売を推進してまいります。

 

・宇宙・半導体等に関連する光学部品への展開

各種Ⅹ線ミラー(光学素子)は、従来技術では不可能であった表面形状の超高精度化を実現することができ、さまざまな産業分野においてビジネスを展開するための技術的ポテンシャルを有しております。

例えば、宇宙や半導体といった産業において光学部品は必要不可欠な存在であり、これらに対し、当社がこれまで大阪大学との共同研究で開発を進めてきたナノ加工技術(EEM、プラズマCVM、CARE)とナノ計測技術(RADSI、MSI)が精度的に十分活用できるレベルにあるため、特に高性能化傾向が強く量産化速度の高い半導体分野に参入する上で重要な要素技術となります。

現在、宇宙ならびに半導体の露光、検査に関わる高精度光学部品の問い合わせを複数頂いており、技術検討から開始し、すでに開発・試作フェーズに進んでいる案件も多くあります。当社は今後、積極的かつ迅速に新規技術開発と多角的な営業活動を進め、従来の放射光分野の枠を超えた新規市場の開拓を図ってまいります。

 

(ライフサイエンス・機器開発事業)

・ライフサイエンス事業

新型コロナウイルス感染症拡大の影響が続く中、コロナ治療薬の探索のために、自動細胞培養装置「CellMeister®」のカスタム製品の引合いが増えております。さらに、新型コロナウイルス感染症対策でテレワークや時差出勤などを推奨している企業が多く、手軽な汎用型自動細胞培養装置「MakCell®」の引合いも増えており、今後は海外展開も含め営業活動を推進してまいります。

また、2017年1月に上市したiPS細胞用の回転浮遊培養装置「CellPet 3D-iPS®」やオルガノイド向け回転浮遊培養装置「CellPet®CUBE」は、プロモーションを継続的に行い、着実に販売台数を増やしてきております。海外では、まず中国、米国にてマーケティングを開始しており、日本での研究成果発表を追い風に拡販を行ってまいります。

さらに、AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)からの委託事業であり、これまで長らく公立大学法人横浜市立大学と神奈川県立こども医療センターと推進してきた弾性軟骨デバイスによる鼻咽腔閉鎖機能不全症の再生医療について、臨床治験に向け本格的な準備が整いました。

また、医療機器の開発も積極的に進めており、特にAMEDからの競争的資金を受け、公益財団法人神戸医療産業都市推進機構及び日本光電工業株式会社と進めている、脳梗塞治療用の幹細胞分離機器(医療機器)の共同開発も計画通り推進してまいります。

 

・機器開発事業

当社設立当初より各種自動細胞培養装置を開発してまいりましたが、その自動化設計技術を活かし、当社の高精度KB型集光ミラーを用いた集光装置や各種OEM製品の製品開発を手掛けてまいりました。

また、新規事業として独自のプラズマCVM加工技術を適用し進めてきた、水晶振動子ウェハ加工システムの商品化に成功しウェハの厚みの均一加工に導入いたしました。

さらに、現在参入を目指しているパワー半導体や電子デバイス関連の産業では、さらなる高性能・高速化がトレンドとなっており、基本材料となるSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)等に対し高精度化の要求が急速に高まってきております。当社の有する独自の加工技術であるプラズマCVMや新技術であるCAREが、この高精度化を実現できる要素技術と認知され、既に多くの企業より問い合わせを受けその有効性の確認をしており、次の段階として量産を視野に入れた装置開発と実装を迅速に進め、広く普及されるよう努めてまいります。

 

ライフサイエンス・機器開発事業においては、ライフサイエンス分野や半導体分野における独自の製品開発を積極的に進めて顧客を獲得するとともに、市場の拡大に備えるために優秀な技術者の確保、生産体制の強化、保守サービスの構築が重要課題であると認識しております。このため当社では、優秀な技術者の確保のために積極的な中途採用活動を展開する一方で、生産体制の強化や保守サービスの構築につきましては、電子科学株式会社や新たな協力会社との関係構築によって対応してまいります。

 

(電子科学株式会社)

電子科学は、超高真空環境下で試料を加熱することで放出される微量の気体成分(主に水素、水)を高精度に分析する昇温脱離分析装置(TDS)を製造・販売しており、半導体や液晶業界を中心に材料の研究や、製造工程の評価、品質管理において高い評価を得ております。昨年度は海外におけるコロナ禍の影響を大きく受けましたが、今年度は以前からの主要な市場である韓国、台湾に加え日本国内からの引き合いが急増し、すでに複数案件の受注を獲得し納品も開始しております。

今後は、電子科学の分析技術と当社の自動化技術との連携を行い、第一弾として水素脆化に特化した新製品の共同開発を進めてまいります。海外営業についても、当社のオプティカル事業の海外チャンネルを用いて積極的に推進し、販売台数と受託分析件数の増加を図ってまいります。

 

② 技術開発体制の構築

当社グループの顧客の多くは基礎研究に取り組んでいる研究機関・大学・企業の研究者であり、この基礎研究の分野で成長するためには、最先端の技術動向のキャッチアップと継続的な技術開発を行う体制を構築し、継続的に付加価値を提供することが重要であると考えております。

このような認識のもと、オプティカル事業では国内外で開催される国際学会での企業展示だけでなく、当社の製品や最新の技術紹介等を積極的に発信してまいります。また、ライフサイエンス・機器開発事業においては細胞培養センターを活用し、オープンイノベーションの拠点として、最先端の技術開発に取り組んでいる研究機関や大学との共同研究や企業との事業連携を積極的に推進してまいります。

 

③ 営業力の強化

当社グループにおいて、事業規模を拡大させるためには営業力の強化が重要であると考えております。しかしながら、取り扱う製品はコンサルティング営業ができるような技術知識が必要となるため、即戦力となる営業人材の確保が難しく、継続的な営業人材の確保と強化が重要な課題であると考えております。具体的には、技術者の社内ローテーションや物理学等の基礎学力を有している人材の採用活動によって営業人材を確保し、加えて既存営業マンによる継続的な現場教育の推進によって営業力の強化に注力してまいります。

オプティカル事業においては、世界的に新型コロナウイルス感染症拡大の影響が終息しつつあり世界各地で外出禁制限や自粛要請が解除され、展示会や学会なども従来どおり開催されるようになりましたが、特に海外においては営業効率を考慮し、今まで培ったWEB会議も併用して商談を有効に進めてまいります。

ライフサイエンス・機器開発事業においても、訪問とWEB会議を組み合わせて有効に営業活動を進めてまいります。また、同事業においても海外展開を視野に入れており、まずは中国、米国での代理店網の構築を進めてまいります。

 

④ 生産管理体制の強化

オプティカル事業において、需要が拡大しグローバルな競争に生き残っていくためには、生産管理の役割が大きくなっており、組織力強化が重要であると考えております。一方、ライフサイエンス・機器開発事業は、ファブレスによる柔軟な生産体制にて事業を展開しており、協力企業と緊密な連携体制が重要であると考えております。

さらに、今後の量産化に向けて、それぞれの製造工程、生産管理や品質管理等における最適なチェック体制を構築し、安定した品質を維持する仕組みが必要不可欠となるため、生産管理体制を強化してまいります。

 

⑤ 内部管理体制の強化

ここ数年の当社の急速な成長に伴い、内部管理に関係する業務が多岐にわたって発生しておりますが、今後のさらなる成長のためには内部管理体制の一層の強化を図る必要があると認識しております。そのためには、内部管理の重要性に対する全社的な認識の強化を図り、また経理・人事・広報・法務等に精通した人材も積極的に登用することによって、業務の有効性と効率性を高めてまいります。

 

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