事業の内容

3【事業の内容】

当社グループ(当社及び当社の関係会社)は、当社(株式会社ジェイテックコーポレーション)、及び子会社1社(電子科学株式会社)により構成しております。

当社は、「世の中にないオンリーワンの技術により製品を作り出し、広く社会に貢献する」を経営理念とし、「科学技術イノベーションの創出に貢献する製品開発を推進する」という経営方針のもと、産学連携を中心に技術開発、製品開発を推進しております。

当社グループの事業内容は次のとおりであり、「オプティカル事業」、「ライフサイエンス・機器開発事業」及び「その他事業(電子科学株式会社を含む)」の3つの事業を有しております。

 

(1) オプティカル事業

当事業では、兵庫県にある大型放射光施設「SPring-8」<注1>やX線自由電子レーザー施設「SACLA」<注2>のような国内外の先端的な放射光施設やX線自由電子レーザー施設等で使われる反射表面の形状精度が1ナノメートル(10億分の1メートル、以下nmと表記。)以下の超高精度の表面形状をした集光ミラー、高調波カットミラーや回折格子基板等各種X線ミラーをユーザーに合わせて設計し、カスタムメイドで製造・販売しております。

本X線ミラーは、2005年に大阪大学と理化学研究所が共同開発した世界で初めて硬X線領域で回折限界まで集光すること(最小集光径36nm×48nm)に成功したX線ナノ集光ミラーを実用化したもので、大阪大学の独自のナノ加工、ナノ計測技術により製造し“OsakaMirror”と商標登録し、2006年より販売を開始し、現在も世界の特に先端的な放射光施設やX線自由電子レーザー施設の研究者から高い評価を得ております。

本X線ミラーの顧客は主に国内外の国立研究機関や大学の研究者であり、毎年積極的に新しい研究が提案され、当社ではその新しい光学系に対応した各種X線ミラーの開発に応えてまいりました。

近年、これら施設は各国の多様な地域発研究開発・実証拠点(リサーチコンプレックス)において、コアな機関として位置づけられ、イノベーションを強力に推進しており、現在の世界的なウィズ・コロナの時代、概ね通常稼働状態に戻ってきており、国内の東北次世代放射光施設 Nano Terasu(旧称 SLiT-J)<注3>をはじめ、中国及び欧米の放射光施設の第4世代へのバージョンアップや新設計画がされており、より高度な分析が求められ、光を扱う技術への高度化の需要は世界レベルで高まり、例年より多くの当社“OsakaMirror”の受注を獲得することができ、今後もさらなる需要の拡大を期待しております。

当連結会計年度は、海外の競合他社に対して技術的優位性を保持するために独自のナノ加工、ナノ計測技術の高度化を進めるだけでなく、分析の多様化に伴った新しい次世代放射光向けのX線ミラーとして、形状可変ミラー、回転楕円ミラー、回転ウォルターミラー等を提案・納入するなど、研究開発を進め、魅力のある新製品を継続的に提案してまいりました。

一方、半導体及び宇宙分野などの成長産業分野で用いられる光学部品において従来の加工技術では不可能なナノメートルレベルの表面形状精度が望まれ、そのニーズに応えるため、現在のナノ加工技術EEMや大阪大学の表面加工技術であるプラズマCVMやCARE(触媒基準エッチング法)加工技術などの実用化開発を進めております。

またこのような成長分野に新規参入を図るために昨年に引き続き、競争的資金をもとに大阪大学、名古屋大学及びJAXA(宇宙航空研究開発機構)と共同で、新しいX線計測・分析技術の開発を推進し、さらに高精度の2次元集光X線ミラーの製造方法の確立を目指しております。

 

 

〔事業系統図〕

以上述べた事項を事業系統図によって示すと次のとおりであります。

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図1.オプティカル事業系統図

 

なお、2022年6月期のオプティカル事業の顧客属性別の売上高(売上高比率)については、大学が37,818千円(4.9%)、企業が74,166千円(9.5%)、公的研究機関が667,907千円(85.6%)となっております。

 

 

(2) ライフサイエンス・機器開発事業

当事業では、創業当初より創薬スクリーニングに関連する各種細胞培養操作の自動化の開発を手掛け、カスタム製品である各種の大型自動細胞培養装置「CellMeister®」を製造販売してまいりました。その後、独自の3次元浮遊培養技術「CELLFLOAT®」をもとに再生医療分野に展開し、また汎用型の各種自動細胞培養装置やiPS細胞用の各種細胞培養装置の開発・製造・販売を推進してまいりました。

当社の自動細胞培養装置「CellMeister®」は、顧客ごとに異なる独自の操作手順を提案し、カスタムメイドで自動化装置の製造・販売を行ってまいりました。しかし、iPS細胞の出現により、従来の高価な大型の自動細胞培養装置に対して、小規模な研究室でも広く使ってもらえる安価な量産汎用型を目指し、2013年に日本で初めてiPS細胞専用の培地交換に特化した自動細胞培養装置CellPet®の開発をし、現在は後継機種「MakCell®」にバージョンアップし販売を推進してまいりました。

当連結会計年度は昨年同様に新型コロナウイルス感染症が続く中、その治療薬の探索のために、設立当初より開発・販売してまいりました「CellMeister®」の引合いが増え受注を獲得し、「MakCell®」もテレワークが推進され就業時間の短縮化が求められるため、手軽な自動化装置として引き合いが活発になってきております。

再生医療分野においては、産業技術総合研究所と長年にわたり共同研究を推進してきた独自の3次元浮遊培養技術「CELLFLOAT®」をもとに、再生医療向け3次元細胞培養システムCellMeister® 3Dの試作開発に成功し、2016年度からは国立研究開発法人日本医療研究開発機構(以下、AMED)の競争的資金を得ながら、横浜市立大学及び神奈川県立こども医療センターと再生医療の医師主導の治験を目指し、共同研究を推進しております。さらに、大阪大学医学部と心筋細胞の培養の共同研究を推進してまいります。

さらに、本培養技術を用いたiPS細胞等向けの回転浮遊培養装置「CellPet 3D-iPS®」やスフェロイドを均一な小さな組織に分散する小片化装置「CellPet FT®」を販売しており、さらにオルガノイド培養向けに特化した培養装置「CellPet® CUBE」なども国内での実績を上げてまいりました。今後は「CellPet 3D-iPS®」や「CellPet® CUBE」の海外展開を図り、受注につなげてまいります。

また、東北大学医学部と開発を進めております「網膜色素変性症治療のための埋込型薬剤徐放デバイスの作成装置」や公益財団法人神戸医療産業都市推進機構(神戸)及び日本光電工業株式会社と共同開発を進めております「脳梗塞治療用の幹細胞分離機器」(AMED事業)は、引き続き医療機器としての製造・販売を目指してまいります。

 

一方、機器開発事業では、当社X線ミラーを用いた集光装置や独自のナノ加工技術を用いた加工装置関連の機器開発、企業からの委託開発業務及びOEM生産等も実施しており、当事業年度は従来からのOEM製品のロット生産、当社X線集光ミラー用の集光ユニットの製作だけでなく、また昨年パイロットユーザーに納入しました独自のプラズマCVM加工技術を用いた水晶振動子ウエハ量産加工システムを国内外の水晶振動子メ―カー等を中心に本格販売してまいりました。

また第二弾として大阪大学の表面加工技術であるプラズマCVMだけでなく、新しくCARE(触媒基準エッチング法)加工を技術導入して実用化開発を進めており、パワー半導体や半導体デバイス向けの研磨装置の開発を推進しております。

 

 

〔事業系統図〕

以上述べた事項を事業系統図によって示すと次のとおりであります。

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図2.ライフサイエンス・機器開発事業系統図

 

なお、2022年6月期のライフサイエンス・機器開発事業の顧客属性別の売上高(売上高比率)については、大学が8,767千円(3.3%)、企業が186,695千円(71.1%)、公的研究機関が67,089千円(25.6%)となっております。

 

(3) その他事業

当社は、2021年5月に電子科学株式会社を子会社化いたしました。同社は、昇温脱離分析装置(TDS)のメーカーで、本装置「TDS-1200Ⅱ」は、超高真空環境に設置した試料を独自の加熱方式(赤外線)により試料から微量に放出される成分(特に水素、水)を四重極質量分析装置(QMS)で、独自の分析ソフトウェアにより高感度でリアルタイムに検出する装置です。

現在、半導体、液晶、カラーフィルター業界を中心に材料の研究や、製造工程の評価、品質管理に用いられており、高い評価を得ております。しかしながら、当連結会計年度は主要取引先の韓国、台湾がコロナ禍の影響で営業の中断が余儀なくされましたが、今年度は回復の傾向にあります。

ところで本装置は、その他鉄鋼、電機、自動車、水晶振動子等様々な産業分野にも用いられるポテンシャルがあり最近では海外からの引合いもありますが、営業体制等の問題で積極的に取組めていない現状のため、当社のオプティカル事業の海外チャンネルを用いることにより、営業体制の強化による拡販が急務と考えております。

また、中長期の売上拡大を目指し、水素量に特化した昇温脱離水素分析装置「Cryo TDS-100H2」の開発を急いでおります。

 

 

注1:大型放射光施設「SPring-8」(Super Photon ring-8 GeV)

「SPring-8」とは、兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出すことができる大型放射光施設です。放射光とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、磁石によって進行方向を曲げた時に発生する、細く強力な電磁波のことです。「SPring-8」では、この放射光を用いて、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー等の基礎科学研究分野から、産業利用ニーズも高まりをみせ、化粧品、食料品、電池、タイヤ等身近な製品の開発も行われています。「SPring-8」の名前はSuper Photon ring-8 GeV(80億電子ボルト)に由来しています。

「SPring-8」は国内外の産学官の研究者等に開かれた共同利用施設であり、1997年から放射光を大学、公的研究機関や企業等のユーザーに提供しています。課題申請などの手続きを行い、採択されれば、誰でも利用することができます。

「SPring-8」の施設者は理化学研究所であり、「SPring-8」の運転・維持管理、並びに利用促進業務を高輝度光科学研究センターが行っています(図3参照)。

 

注2:X線自由電子レーザー施設「SACLA(SPring-8 Angstrom Compact Free Electron Laser)」

2006年3月に策定された第3期科学技術基本計画(2006年3月28日閣議決定)において国家基幹技術の一つとして選定されたX線自由電子レーザー施設として、2006年度から理化学研究所と「SPring-8」を運営する高輝度光科学研究センターが共同で施設の建設・整備を行い、2011年3月に完成、0.063nm(0.63Å(オングストローム:微小な長さを表すのに用いられる単位。1Å=0.1nm))の世界最短波長のX線レーザー生成に成功した施設であり、2012年3月7日より供用運転を開始しています(図3参照)。

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図3 大型放射光施設「SPring-8」、X線自由電子レーザー施設「SACLA」

 

注3:次世代放射光施設 Nano Terasu(旧称 SLiT-J)

東北大学青葉山新キャンパスに共創の場として設けられた「サイエンスパーク」エリアに、新たに軟X線向け放射光施設「次世代放射光施設」が計画されており、2023年完成目標で建設が進められております。(図4参照)

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図4 建設中のNano Terasu(ナノテラス):東北大学 ホームページより

 

 

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