(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度(2021年3月1日~2022年2月28日)における当社グループ(当社、連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度における当社グループを取り巻く環境は、新型コロナウイルス変異株流行の影響を受け、断続的に緊急事態宣言・まん延防止等重点措置が発出される状況が続きました。それに伴い、日本国内におけるイベントの開催や飲食を伴う懇親会の実施を自粛する動きが継続しました。しかし、2021年2月より新型コロナワクチンの接種が開始され、政府・自治体及び民間の職域接種の迅速な対応により、約1年間で国内における新型コロナワクチンの接種率は約8割となり、3回目の接種も順調に進捗しています。足許では、新規陽性者数は一定数が報告される状況が継続しながらも、2022年3月21日にまん延防止等重点措置が全面的に解除され、徐々に社会経済活動の正常化が進んでいます。
こうした状況のもと、当社は社会経済活動の正常化をいち早く実現すべく、2021年6月より当社施設を新型コロナワクチンの接種会場として一部無償提供、また、ワクチン接種会場のオペレーションや医療従事者手配等を総合的に行う「TKP職域ワクチンセンター」の運営を実施いたしました。結果として、延べ90万人へのワクチン接種を実現し、全国のワクチン接種率の向上に寄与いたしました。その後、ワクチン接種率の上昇、社会経済活動の緩やかな正常化に伴い貸会議室需要が徐々に高まり、売上高は当第2四半期以降回復基調となりました。
リージャスのレンタルオフィス事業においては、企業のオフィス縮小化の動きやサテライトオフィス需要の増加に伴い、顧客の入居が順調に進んだ結果、当第4四半期では四半期過去最高売上高を記録し、通期売上高も過去最高額となりました。また、今後の更なるフレキシブルオフィス市場の拡大を見越し、ビル一棟型施設である「SPACES六本木」「SPACES赤坂」「リージャス渋谷公園通りビジネスセンター」を中心として計8施設、3,388坪を新規オープンいたしました。
以上の取組みの結果、当連結会計年度における売上高は44,685百万円(前期比+3.6%)、EBITDA(注)は4,630百万円(前期比+50.7%)、営業損失は883百万円(前期は営業損失2,497百万円)、経常損失は1,585百万円(前期は経常損失2,321百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失は3,211百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失3,503百万円)となりました。
② 連結業績 (単位:百万円)
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2021年2月期 |
2022年2月期 |
増減額 |
前期比 |
売上高 |
43,138 |
44,685 |
+1,547 |
+3.6% |
EBITDA |
3,073 |
4,630 |
+1,557 |
+50.7% |
営業損失(△) |
△2,497 |
△883 |
+1,614 |
- |
経常損失(△) |
△2,321 |
△1,585 |
+736 |
- |
親会社株主に帰属する当期純損失(△) |
△3,503 |
△3,211 |
+292 |
- |
③財政状態の状況
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産は、前連結会計年度末に比べ1,430百万円増加し、22,803百万円となりました。主な要因は、その他の増加2,442百万円等によるものであります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産は、前連結会計年度末に比べ7,096百万円減少し、88,477百万円となりました。主な要因は、土地の減少2,607百万円、のれんの減少2,285百万円、顧客関連資産の減少2,054百万円等によるものであります。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債は、前連結会計年度末に比べ6,799百万円減少し、20,156百万円となりました。主な要因は、1年内返済予定の長期借入金の減少3,409百万円、未払法人税等の減少2,475百万円等によるものであります。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債は、前連結会計年度末に比べ3,471百万円減少し、51,377百万円となりました。主な要因は、社債の減少1,169百万円、長期借入金の減少2,451百万円等によるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べ4,604百万円増加し、39,746百万円となりました。主な要因は、資本金の増加3,846百万円、資本剰余金の増加3,844百万円等によるものであります。
④キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ1,264百万円減少し、13,931百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により支出した資金は、2,892百万円(前期同期は7,022百万円の収入)となりました。主な要因は、非資金項目調整7,833百万円があった一方で、税金等調整前当期純損失が3,420百万円、未収入金の増加2,270百万円、法人税等の支払額3,329百万円等があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により得られた資金は、1,228百万円(前年同期比7.8%増)となりました。主な要因は、有形固定資産の取得による支出1,510百万円があった一方で、有形固定資産の売却による収入2,930百万円等があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により得られた資金は、292百万円(前期同期は2,191百万円の支出)となりました。主な要因は、長期借入金の返済及び社債の償還による支出11,917百万円があった一方で、新株予約権の行使による株式の発行による収入7,659百万円、長期借入れによる収入5,200百万円等があったことによるものであります。
(参考)
⑤生産、受注及び販売の実績
当社グループの事業は空間再生流通事業の単一セグメントですが、連結グループにおける売上高のうち大部分をTKP単体及び日本リージャス社が占めているため、その2社につきサービス別売上を記載いたします。
a.生産実績
当社グループは生産実績が僅少であるため、記載しておりません。
b.受注実績
当社グループは概ね受注から役務提供の開始までの期間が短いため、受注実績の記載を省略しております。
c.販売実績
TKP単体及び日本リージャス社のサービス別売上高は以下のとおり推移しております。
1)TKP単体 サービス別売上高四半期推移
2)日本リージャス社 サービス別売上高四半期推移
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成には、資産・負債及び収益・費用に影響を与える見積りを必要とする箇所がございます。
当社グループが採用している重要な会計方針及び重要な見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1)財政状態
「(1)経営成績等の状況の概要 ③財政状態の状況」に記載のとおりであります。
2)経営成績
「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載のとおりであります。
3)キャッシュ・フローの状況の分析
「(1)経営成績等の状況の概要 ④キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
4)資本の財源及び資金の流動性
(資金需要)
空間再生流通事業を推進するにあたって、オフィスビル等の不動産に関しては賃貸借契約を締結し、土地・建物を直接保有しないことで設備投資を抑制する運営を行っております。
(財務政策)
新型コロナウイルス感染症拡大が長期化するリスクへの対策及び、オフィスビルの空室率上昇が継続し、今後賃料相場が下落した際に機動的な出店を実施するため、手許流動性を厚めに確保しております。これらの資金は金融機関からの借入れ、第三者割当による新株予約権により調達しております。
なお、資金調達コストの低減に努める一方、過度に金利変動リスクに晒されないよう、金利スワップ等の手法を活用しております。
b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、空間再生流通事業の単一セグメントですが、参考のためTKP単体及び日本リージャスの状況につき以下に記載いたします。
1)TKP単体
(単位:百万円)
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2021年2月期 |
2022年2月期 |
前期比 |
売上高 |
23,838 |
24,892 |
+4.4% |
売上総利益 |
5,867 |
7,961 |
+35.7% |
販売費及び 一般管理費 |
7,752 |
7,398 |
△4.6% |
EBITDA |
△967 |
1,448 |
- |
営業利益又は 営業損失(△) |
△1,884 |
563 |
- |
TKPは、2022年2月期に7施設の出店を行った一方、賃借物件の契約期間満了やコロナ禍で不採算となった施設の撤退に伴い20施設を退店し、2022年2月末時点で238施設を運営しております。
2022年2月期においては、新型コロナウイルス変異株の流行に伴い、期初よりイベントや料飲を伴う懇親会等の開催自粛の動きが拡がり、当社貸会議室事業は大きな影響を受けました。しかし、秋口以降はワクチン接種率の上昇及び新型コロナウイルス感染状況の一時的な収束により、顧客企業内におけるイベント需要に戻りがあり、会議や少人数での懇親会、セミナー等の需要回復が見られました。さらに、当第4四半期においては、オミクロン株の流行により新規感染者数が過去最高となる中でもTKP単体の売上高が当第3四半期比増収となる等、コロナ禍における社会経済活動の正常化が徐々に進捗し、感染拡大の波が当社貸会議室需要に与える影響は徐々に軽減されてきています。
利益面においては、コロナ禍で不採算となった施設の撤退や需要が減少した料飲事業の縮小化、前期より実施している固定費削減の取組みが寄与し、売上高が増加しながらも費用の増加は限定的となりました。さらに、前期においては新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けた、当社がフランチャイジーとして運営するアパホテルについても、10棟中5棟を新型コロナウイルス軽症者用宿泊療養施設/感染対策用施設として貸し出すことで、前期と比較し大幅に収支が改善いたしました。
以上の結果、2022年2月期における売上高は24,892百万円(前期比+4.4%)、EBITDAは1,448百万円(前期はEBITDA△967百万円)、営業利益は563百万円(前期は営業損失1,884百万円)と、前期比で各段階利益が大きく改善し、通期で営業黒字化を達成いたしました。
なお、当第4四半期における貸会議室事業のKPI(重要業績評価指標)である坪あたり売上高は、同じく新型コロナウイルスの影響を大きく受けた前年同四半期と比較して1,806円改善いたしました。
当社は、今後新型コロナウイルスの収束と社会経済活動の正常化により貸会議室需要の回復が本格化する中で、積極的な新規出店を推進するとともに、当社契約物件ポートフォリオの改革を実施いたします。当社の強みである「持たざる経営」による不動産市況への対応力と柔軟性を最大限活かし、よりビジネス需要が高いエリアかつ好条件の物件へシフトし、顧客満足度の向上と業績の躍進を図ります。また、コロナ禍で主流となったオンラインでのイベントやセミナー開催、BPO案件受託等の新たな実績をもとに、回復基調にある貸会議室需要を全方位的に取り込んでまいります。
会議室面積1坪あたり売上高の推移 (単位:円)
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第1四半期平均 |
第2四半期平均 |
第3四半期平均 |
第4四半期平均 |
2021年2月期(A) |
24,476 |
20,255 |
26,654 |
25,032 |
2022年2月期(B) |
22,825 |
29,687 |
24,141 |
26,838 |
(B)-(A) |
△1,651 |
+9,432 |
△2,513 |
+1,806 |
(注)売上高は会議室料と利用に付随するオプション・ケータリング料の合計
2)日本リージャス社
(単位:百万円)
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2021年2月期 |
2022年2月期 |
前期比 |
売上高 |
17,298 |
17,569 |
+1.6% |
売上総利益 |
5,296 |
3,668 |
△30.7% |
販売費及び 一般管理費 |
5,136 |
4,945 |
△3.7% |
EBITDA |
3,255 |
1,724 |
△47.0% |
営業利益又は 営業損失(△) |
160 |
△1,276 |
- |
(注)販売費及び一般管理費、営業利益又は営業損失については、日本リージャス買収に係るのれん償却費、顧客関連資産等の無形資産償却費を販売費及び一般管理費に加算し、算出しております。
日本リージャスは、2022年2月期に8施設の新規出店を行い、2022年2月末時点で170施設を運営しております。
顧客の平均契約期間が1年超である日本リージャスのレンタルオフィス事業においては、新型コロナウイルス感染拡大の影響をほとんど受けず、順調に売上高が積み上がりました。日本リージャスは、今後のフレキシブルオフィス市場の更なる拡大を見込み、積極的な出店を継続しており、当期は「SPACES六本木」「SPACES赤坂」「リージャス渋谷公園通りビジネスセンター」の、3施設のビル一棟型施設を含む8施設をオープンいたしました。六本木、赤坂、渋谷はともに好立地かつビジネス需要の高いエリアであり、これらの新規施設は、今後の日本リージャスの事業展開において重要となる旗艦店と位置付けております。
利益面においては、積極的な出店により家賃や人件費等の費用が増加いたしました。さらに、当第3四半期より、買収当初から予定していたフランチャイズフィーの引き上げが発生し、売上総利益以下利益率が低下しておりますが、今後新規施設の稼働率上昇に伴い、売上高・利益ともに増加する見込みです。
以上の結果、売上高は17,569百万円(前期比+1.6%)、EBITDAは1,724百万円(前期比△47.0%)、買収に係るのれん償却費及び顧客関連資産償却費(2,247百万円)を控除した後の営業損失は1,276百万円(前期は営業利益160百万円)となりました。
なお、2022年2月末における日本リージャスのKPIである全施設の平均稼働率は、オープン後2年未満の施設における稼働率が好調に推移したことに伴い、前年同期比+2.2ポイントの69.7%となりました。
日本リージャスの今後の出店計画につきましては、これまで通り不動産市況の変化に柔軟に対応し積極的な出店を継続するとともに、直営ではないサブフランチャイズ展開を新たに始動することにより、更にスピード感をもってネットワークの拡大に注力してまいります。
日本リージャス施設における稼働率推移
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第1四半期 |
第2四半期 |
第3四半期 |
第4四半期 |
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2021年 2月期 |
全施設 |
75.8% |
71.5% |
68.5% |
67.5% |
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|
オープン後2年未満 |
17.5% |
15.4% |
20.4% |
30.9% |
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オープン後2年以上経過 |
76.4% |
74.3% |
72.0% |
70.5% |
||
2022年 2月期 |
全施設 |
67.4% |
69.8% |
68.5% |
69.7% |
|
|
オープン後2年未満 |
37.9% |
45.0% |
41.6% |
48.0% |
|
オープン後2年以上経過 |
70.4% |
72.6% |
72.5% |
73.0% |
||
全施設平均の対前年同期増減 |
△8.4pt |
△1.7pt |
+0pt |
+2.2pt |
c.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状態を判断するための客観的な指標等
経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状態を判断するための客観的な指標等につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりです。
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