文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営の基本方針
当社グループは、創業以来「最大の企業たらんより最良の企業たれ」を社是とし、常に豊かな感性と大胆な発想によって時代の変化に対応した様々なシャツファッションを提案し、生活文化の向上に貢献することを基本理念としております。
また、「株主・顧客・社員・取引先から信頼される企業」を行動指針とし、収益の向上とともに共存共栄を図ってまいります。
(2)中長期的なグループ経営戦略
当社グループは、既に発表しております2022年度(第71期)からスタートする『新中期3ヵ年経営計画』において、山喜フェニックスプランと称して、力強く羽ばたく不死鳥のイメージで、「FANFUN150」のスローガンのもと、業績の回復と収益基盤の安定化を目指してまいります。その具体的な概要は以下のとおりであります。
① 「FANFUN150」のスローガン
お客様に一生を通してシャツを選んで頂く楽しさ、お客様がシャツに袖を通す喜び、当社の商品を通して山のような喜びをご提供することで、山喜のファンになって頂くこと。つまり新規顧客へのアプローチにより、山喜のファンを150倍に増やすこと・・・『FAN』
そのためには、シャツの広がりを創造する楽しさ、お客様の生活文化の向上に貢献できる楽しさ、お客様の幸せな笑顔を感じる楽しさを追求し、2024年度(73期)には、売上高150億円を達成し、全社員が楽しみながら仕事をし、生活を豊かにしていくこと・・・『FUN』
以上のような想いが、このスローガンには込められています。
② オリジナルブランドの構築
消費者直接対応の小売型販売管理体制の強化策としては、山喜のファンになって頂くために、お客様にご提供するオリジナル商品の強化、即ちオリジナルブランドの構築を行います。
・SWANブランドの復活とメンズ&レディースでの展開に挑戦
量販店シャツ売場にて、当社オリジナルブランドSHIRT HOUSE(シャツハウス)のコンセ店舗を展開しており、現在の96店舗から、3年後には150店舗まで拡大する目標を掲げております。このコンセ店舗を足掛かかりに、SWANブランドの企画・製造・販売をメンズ&レディースで展開することで、SWANブランドの復活を図ります。
・CHOYAブランドのブランディングとコーナー化・1社化・ショップ化
百貨店の既製ドレスシャツ売場およびオーダーシャツ売場にて、CHOYAブランドのコーナー化・1社化でシェアを拡大中であり、現在のシェア75%を更に高めることで売場の1社化・ショップ化を図り、CHOYA ブランドの構築を実行してまいります。
③ BtoCの強化による収益アップ
・3年後のネット売上20億円、自社サイト会員数12万人を目指す
実店舗と同様にネット販売を拡大するため、お客様がインターネットで発注しやすいシンプルな画面の設計、ネット販売専用のオリジナルブランドの商品開発に取り組み、更に自社サイトの会員数増加に向けた販売促進策を強化し、3年後にはネット売上20億円、自社サイト会員数12万人を目指します。
・リアル店舗とネット販売サイトのオムニチャネル化
百貨店シャツ売場や、量販店シャツコンセ売場にご来店頂いたお客様と、山喜公式サイトにご来店頂いたお客様が、店頭売場とネット販売サイトの双方向から、当社商品をお買い回り頂けるプラットフォームを整備することでオムニチャネル化を促進し、売上・利益の拡大を図ります。
・SWANブランド売場・CHOYAブランド売場の収益改善
量販店、百貨店の衣料品売場縮小、コンセやテナント売場拡大の方針転換により、SWANブランド展開予定の量販店シャツコンセ売場「SHIRT HOUSE」や、CHOYAブランドを展開している百貨店シャツ売場での取引条件改定を促進し、収益改善に繋げてまいります。
④ ドレス・カジュアル・レディース・ユニフォームの新商品開発と売上拡大
ビジネススタイルのカジュアル化に伴い、スーツからジャケットやシャツが主役となるニュー・ワーク・スタイルに変化していることから、カジュアル化に対応したシャツジャケット・シャツワンピース・カットソーアイテム等の企画・生産・販売の強化を図ります。
・新商品開発の機能強化
従来のシャツビジネスで培った紡績・合繊メーカーとの素材開発機能や縫製技術を駆使し、シャツジャケットやシャツワンピースの企画・生産や、カットソー素材を使用した高機能なビジカジシャツの新商品開発を強化してまいります。
・OEM受注型営業からODM提案型営業への転換
得意先様から素材、パターンが提供されるOEM受注と、当社から素材、デザインを提案するODM受注の二通りの営業形態がありますが、収益性を高める上でも前述の新商品開発の機能を強化し、ODM提案型の営業に切り替えていきます。
・新規得意先の開拓
長年シャツビジネスで培った素材開発機能と自社工場での縫製技術を活かし、カジュアル事業、レディース事業、ユニフォーム事業はもちろんのこと、生活雑貨・ファッショングッズ等を扱うライフスタイル事業まで営業活動を拡げ、新しいビジネスモデルの構築に向けて、新規得意先の開拓を強化してまいります。
⑤ 物流効率の向上
・物流機能集約による全社物流費の削減
2022年3月期の市川物流センター閉鎖に伴い、物流センターを再編し、物流機能の集約化を実施したことで、更なる全社物流費の削減と、サービスの向上に努めてまいります。
・デジタル化による物流効率改善
ネット販売の売上拡大に伴う出荷単位の小口化に対応すべく、更なるデジタル化を図り、物流効率改善に努めてまいります。
⑥ 国内外の自社工場・海外販売子会社の収益改善
・国内4工場1社化(山喜ソーイング)による連携強化
国内4工場の安定的な収益基盤の構築と高付加価値商品の生産体制へシフトすることを目的として、長崎工場、郡山工場(福島)、鹿児島工場、信州工場(長野)の2022年4月1日付での1社化(山喜ソーイング)により、更なる連携を強化しながら収益を改善すると同時に、技術力を活かしたオーダーシャツはもちろんのこと、新しいアイテムの生産にもチャレンジしてまいります。
・タイ山喜・ラオ山喜の連携強化
中国の将来的な人件費、諸経費の高騰と、2022年1月に施行された東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)協定(RCEP「アールセップ」、Regional Comprehensive Economic Partnershipの略)による関税撤廃の影響から、今後の原材料を含む縫製の生産拠点が中国からアセアンに更に集中することを見据えて、中国生産子会社である上海山喜・塩城山喜を閉鎖しました。今後は、その生産を移管した自社工場であるタイ山喜、ラオ山喜(ラオス)の両工場の特性を活かしながら、連携を強化するとともに、更に付加価値の高い商品の生産工場へシフトしてまいります。また、低価格商品の受注拡大を目的に、その生産拠点であるバングラデシュ協力工場の生産管理業務を、タイ山喜と連携して強化してまいります。
・海外販売体制の強化
中国生産子会社である上海山喜・塩城山喜の閉鎖に伴い、その営業事業を上海ジョイモントに移管し、従来の生産管理業務に営業業務を加えて、中国での既製品のODM・OEMの受注を強化してまいります。また、アセアン、オセアニア地区および欧米のオーダーに関しましては、タイ山喜・ラオ山喜を中心に、販売体制の強化を更に図ってまいります。
⑦ SDGsの取組み
持続可能な社会の形成として、ドレスシャツのプラスチック製付属品を2030年までに全廃する取り組みを始めており、環境省の「プラスチック・スマート(脱プラスチック)」運動にも登録し、活動を強化しております。また、国内自社工場の強みを生かし、衿・カフス取替等のリフォームサービス事業の継続拡大、また衣料品再生のリメイクサービス事業にもチャレンジしてまいります。
(3)経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
国内アパレル業界をめぐる環境は、景気の先行きが極めて不透明なことから、消費者の衣料品にかける支出は少なく、併せて低価格志向が更に強まっており、依然として非常に厳しい経営環境が続いております。
国内の小売市場も、今後ますます市場の変化が進むと考えております。小売店の競争環境の変化に伴い、地方百貨店の閉鎖、専門店の寡占化、中堅量販店の業態転換等、衣料品売場の縮小が今後も進むと思われます。
また、世界的なエネルギー資源の高騰や、日米金利差による円安ドル高により、原副材料価格の上昇や生産拠点における人件費の高騰、国内におきましても労働需給の逼迫による人件費、物流費上昇等により、製造原価や販売・流通コストは上昇傾向にあります。
このような状況を解消すべく、既に発表しております2022年度(第71期)からスタートする『新中期3ヵ年経営計画』において、山喜フェニックスプランと称して、力強く羽ばたく不死鳥のイメージで、「FANFUN150」のスローガンのもと、業績の回復と収益基盤の安定化を目指してまいります。
今後につきましては、百貨店、量販店のドレスシャツ売場での当社オリジナル商品のシェア拡大と取引条件の改定、山喜公式サイトを中心としたネット販売の売上拡大、品質、コスト競争力によるアパレル、セレクトショップ、シャツ専門店でのシェア拡大、差別化商品の企画開発力の強化による専門店、量販店のストアブランドの受注拡大、小ロット短サイクル生産の構築によるカジュアル事業、レディース事業での新規受注拡大、自社工場におけるドレスシャツ以外の多様なアイテムに対応すべく技術開発力を強化し、ユニフォーム事業での官公庁や企業の制服等の新規受注拡大など、継続的に進めている各施策を更に強化していくことで、売上回復、収益回復に努めてまいります。
現状では新型コロナウイルス感染症の影響が今暫く続くと思われますが、3回目のワクチン接種が行き渡る段階で、同感染症の勢いも徐々に弱まり、前述のような各施策に対する効果が表れ、新中期3ヵ年経営計画の初年度である2023年3月期の業績は改善するものと見込んでおります。しかし、同感染症の変異種の動向や脅威から、国内外の経済活動が停滞するリスクもあり、同感染症の影響がさらに長期化した場合は、収益が減少する可能性があります。そのような状況下におきましても、売上拡大、コストダウンや経費削減等の対策を継続し、利益の減少を最小限に抑えるよう努めてまいります。
また、同感染症の感染拡大とその長期化に対する備えとして、取引金融機関とシンジケート型のタームローンを2022年3月に契約し、手元流動性の高い現金及び預金を確保するとともに、コミットメントラインの融資枠および当座貸越枠の継続を予定しておりますので、短期間での手元流動性の問題は生じないと考えております。取引金融機関とは緊密な関係を維持していることから、今後も継続的な支援が得られるものと考えております。さらに、キャッシュ・フローの改善策の一環として、仕入抑制と在庫販売の強化による製品在庫の削減を実行していくことで、有利子負債の削減にも努めてまいります。
(4)目標とする経営指標
当社グループは、新型コロナウイルス感染症で転換期を迎えているアパレル業界において、事業戦略の見直しや新規事業を検討するなど、同感染症収束後を見据えた次なる成長への対策を講じて、3年後の2024年度(第73期)には、売上高150億円、経常利益4億円を目標として、業績の回復と収益基盤の安定化に努めてまいります。
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