有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクには、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)消費者嗜好の変化のリスク
当社の主力アイテムであるドレスシャツは実用衣料に近く、比較的ファッショントレンドに需要が左右されることの少ないアイテムですが、近年ワークスタイルの変化からスーツ離れが進み、ドレスシャツとカジュアルシャツの区分けがなくなりつつあります。また、ドレスシャツに替わりニット素材のカットソーやTシャツなどの代替アイテムもビジネススタイルに取り入れられ、よりトレンド変化の影響を受けるリスクが高まっております。当該リスクをチャンスと捉え、大手紡績メーカーと協力して新しい素材の開発や商品企画の立案を行い、積極的にニュー・ワーク・スタイルの商品企画を行っております。
(2)天候・自然災害等によるリスク
最近の気候変動、地球温暖化の影響による異常気象により、売上が低迷するリスクがあります。ドレスシャツの年2回の実需期は4月から7月の春夏物販売期間と10月から1月の秋冬物販売期間であり、この間の冷夏や長雨、局地的な暴風雨や洪水、秋冬の台風や大雪の自然災害により、当社の販売先である小売店の売上や、消費全般が低迷するリスクがあります。当該リスクの対策としては、春夏に需要のピークを迎えるドレスシャツ以外のカジュアルアイテムや、秋冬の防寒アイテムの販売にも注力し、商品の季節波動の平準化に努めております。
また、当社の海外自社工場の立地国や日本輸送途上において、地震・台風等の自然災害により、生産現場や生産設備が被災し、生産や輸送の遅延が発生するリスクがあります。当該リスクの対策としては、一定在庫を確保することで、納期に間に合わない場合の代替品を提供し、お客様の店頭に常に品揃えができる体制を整えております。
(3)品質に関するリスク
当社は品質重視の企業ポリシーのもと、海外生産においても厳しい品質管理基準やチェック体制を敷いて、品質の維持に努めておりますが、大量の不良品や製造物責任にかかる事故が発生した場合には、企業イメージの低下等のダメージを被るリスクがあります。当該リスクを回避するため、当社独自の品質管理マニュアルを作成し、品質の安定に努めると同時に、協力工場への技術者の派遣、定期的な巡回指導やオンライン会議による品質確認を実施し、不良品の発生防止に努めております。
(4)海外生産に関するカントリーリスク
当社の国内販売商品の90%は海外生産となっており、生産国における政情不安や紛争・テロ・治安の悪化や大規模災害等が発生した場合、商品の供給が滞るリスクがあります。このようなリスクを回避するため、海外の生産地域を分散し、カントリーリスクが1か所に集中しない様にしております。国別では、国内に4工場、海外ではタイとラオスに自社工場があり、その他中国、ベトナム、インドネシア、バングラデシュなどに協力工場があります。
(5)取引先に関するリスク
取引にあたっては、取引先の信用調査等を行い、取引の可否や取引条件の決定等を行っておりますが、取引先の倒産や予期せぬ経営破たんが生じた場合には、貸倒れの発生や商品供給の遅延などを被るリスクがあります。このようなリスクを回避するため、取引先の与信情報については、与信管理サービスの活用による情報収集を定期的に行っております。また、保証会社による取引先のポートフォリオ分析を毎年度行い、一定の基準を設けて包括的なバルク特約付保証取引契約を締結することで、売掛金の貸倒れの発生に備えております。
(6)為替変動に関するリスク
海外工場との取引においては外貨建て支払い条件となっている場合が大半であり、為替レートの変動による原価の変動を抑制するため、仕入に係る為替予約を実施し、リスクの最小化に努めております。しかし、原価の上昇自体を完全にコントロールすることは不可能なため、円安ドル高による原価上昇により、利益幅の縮小等のリスクがあります。また、期末時点の為替レートにより、外貨建て資産の換算額から為替差損益が発生するリスクがあります。当該リスクに対しては、外貨建ての短期借入を行うことで、為替リスクを抑制しております。
(7)ライセンスブランドに関するリスク
百貨店向け販売商品を中心として、ライセンスを受けた商標による商品展開を行っておりますが、ライセンス契約の中止や打ち切りにより、当該商標による商品の展開が休止に追い込まれ、売上が減少するリスクがあります。
当該リスクに対しては、欧米のライセンスブランドからオリジナルブランドへのシフトを行っております。特にCHOYAブランドについては、百貨店売場のブランドコーナー展開や、日本製ブランドの拘りを海外にも訴求し、ブランド価値を高めることにより、ライセンスブランドに頼らない商品政策を行っております。
(8)新型コロナウイルス感染症によるリスク
政府による緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発出時の当社グループの対応としましては、感染予防や拡大防止に向けた対策を実施し、グループ全体の状況把握に努め、在宅勤務や時差出勤を実施しております。また、当社グループの百貨店・量販店の店頭販売員も各自治体の基準に従い、感染および拡散の防止を最優先に対応しております。
今後の同感染症長期化のリスク対策は、以下のとおりです
① 新型コロナウイルス感染症の長期化によるリスク
同感染症の収束時期は現時点では不透明であり、同感染症の長期化が当社に及ぼす影響は甚大であります。現状、2023年3月期末まで同感染症の影響が継続するものの、ワクチン接種が行き渡る段階で、業績は緩やかに回復軌道に乗るという前提に基づいて、今後の業績見通しを試算しておりますが、同感染症の影響が長期化した場合は、収益が減少する可能性があります。これらの対策として、仕入抑制と在庫販売の強化による製品在庫の削減を実行していくことで、有利子負債の削減に努め、さらに、キャッシュ・フローの改善策の一環として、生活応援セールなどの販売促進強化により、更なるネット販売の売上拡大を図り、手元流動性の高い現金及び預金を増やすと同時に、調整可能経費の更なる削減を実施してまいります。
② 従業員の感染リスクと事業継続について
従業員が同感染症に罹患し、社員の間で感染が拡大した場合には、工場における生産業務や物流センターの出荷業務に支障をきたし、操業を停止する可能性があります。これらの対策として当社グループにおいては、社内外への感染防止と従業員およびその家族の健康と安全を確保するため、在宅勤務と時差出勤を実施しております。従業員の感染については、細心の注意を払い、本人やその家族に発熱等の症状が出た場合、行政の基準に基づいて、一定期間出勤を控えるなど速やかに対応しております。
③ サプライチェーンの途絶のリスクについて
製造セグメントは、生産拠点や原材料調達地域の分散化を進めてまいりましたが、一部原材料は特定の地域や取引先に依存しており、同感染症の拡大により、供給が困難になる可能性があります。特に原材料の生産地域及び縫製基地であります中国・ベトナム・インドネシア・バングラデシュなどの国々において、同感染症の拡大により、原材料の生産や物流機能がストップし、製品納期に間に合わない可能性があります。当社としては、生産計画の見直しと、更なる生産地域の分散化、および一定数の在庫を確保することで、リスクの低減に努めてまいります。
(9)継続企業の前提に関する重要事象等
当社グループは、2019年度から2021年度までの中期3ヵ年経営計画に基づき、国内販売事業を中心に事業改革を進めた結果、計画初年度である2020年3月期においては、売上、利益は計画未達成も黒字化を果たしました。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響により、計画2期目の2021年3月期および計画3期目の2022年3月期において営業損失、経常損失および親会社株主に帰属する当期純損失を計上いたしました。また前連結会計年度に引き続き当連結会計年度においても、借入契約の一部について、財務制限条項に抵触していることから、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております。しかしながら、当該借入金については期限の利益の喪失の権利行使をしないことについて、取引先金融機関の同意を得ております。資金面におきましては、当連結会計年度末に、シンジケートローン型のタームローンを契約し、手元流動性の高い現金及び預金の確保を行うとともに、コミットメントラインの融資枠および当座貸越枠の継続を予定しておりますので、短期間での手元流動性の問題は生じないと考えております。また、2022年度からスタートする『新中期3ヵ年経営計画』の施策を継続的に実行していくことで、売上回復・収益改善に努めてまいります。
以上により、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。
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