当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において判断したものであります。
(1)経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況及び分析
当連結会計年度(2021年4月1日~2022年3月31日)の経営成績は、売上収益が1,713億44百万円(前年同期比5.0%減)、コア営業利益が53億89百万円(前年同期はコア営業損失64億99百万円)、営業利益が21億96百万円(前年同期は営業損失216億37百万円)、税引前当期利益が14億10百万円(前年同期は税引前当期損失225億56百万円)、親会社の所有者に帰属する当期利益は2億39百万円(前年同期は親会社の所有者に帰属する当期損失171億49百万円)と減収増益でした。
売上収益では、構造改革に伴うブランド終息や店舗閉鎖が減少要因となっているほか、引き続き新型コロナウイルス感染症の拡大等に応じた人流・行動の制限や消費マインドの低迷が主に店舗販路で売上確保を困難にしております。事実、2020年8月に公表した構造改革に伴う退店で前連結会計年度末迄に約300店舗減少し、さらに2021年2月に公表した構造改革の一環で当連結会計年度を通して約530店舗の退店を完了しました。また、EC販路ではブランド終息に伴う減収影響が前年対比10ポイントほどに及びました。コロナ感染による影響は緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発令が継続していた上半期を中心に大きな影響を及ぼし、下半期においても、1月以降の感染者再拡大を背景とした自粛モードによる客足の鈍化が見られました。しかしながら、前年と比較して店舗の休業や、営業時間の短縮が少なかったこと、また外出需要の回復を受けてアパレルを中心に秋・冬物需要の旺盛さが継続したこと、加えて春のセレモニー需要が根強かったことなどから、既存店売上は上期に続いて下期も前年同期を上回り、通期では5.2ポイント上回る結果となりました。
利益面においては、値引きロスで採算悪化を招いた前年(特に、前上半期)の反省を活かし、当連結会計年度は店舗・EC両方で粗利益率の改善に注力しました。春夏商品に続いて秋冬商品でも予め仕入れのタイミングや量をコントロールして、大半のブランドでプロパー中心の販売を重視することで売り方の改善に努めました。結果として、売上総利益率は前年同期比3.7ポイントの上昇となりました。販売費及び一般管理費では、前年に対して一時帰休などに伴う雇用調整助成金収入の減少や営業再開による家賃・賃借料の増加はありましたが、これら以上に構造改革に伴う経費削減の効果が大きく寄与したことから、販管費率は54.4%と前年同期比3.0ポイントの改善となりました。
これらの結果、全ての利益段階において、前年より大きく増益となりました。売上総利益は売上の減少を粗利益率の改善でカバーして前年同期比16億円の増益となり、コア営業利益は同119億円の大幅な増益で黒字転換を果たしました。加えて、前連結会計年度に計上した構造改革に伴う一時費用がなくなったことから、営業利益以下の各利益段階での増益幅は一段と大きくなりました。
なお、2022年1月13日付け「業績予想の修正に関するお知らせ」にて公表のとおり、株式会社ナルミヤ・インターナショナルが持分法適用関連会社から連結子会社となった影響で、連結子会社となった2022年3月一カ月分の同社の売上収益、コア営業利益が増収増益に寄与しておりますが、持分法適用関連会社から連結子会社となる段階取得に適用されるIFRSの会計処理により、その他の費用に約13億円の一時損失を計上しております。
セグメント別の状況は次のとおりです。
a. ブランド事業
ブランド事業においては、ブランドポートフォリオ戦略を機動的に修正し、ブランド事業セグメント全体最適の視点で成長性と収益性のバランスを図っています。
百貨店を中心に展開するミドルアッパーブランドは、差別化された付加価値の高い商品開発を行う一方で、生活様式の変化に伴う通勤着需要の減少などに対し、ブランドらしさを残しながらカジュアル化へ修正するなどの変化が求められています。また、接客機会が減少する中、今まで以上にお客様とのより強いつながりを構築するため、リモートによる受注イベントの開催といった新たな関係性の構築に積極的に取り組んでおります。
ショッピングセンターを中心に展開するミドルロワーブランドにおいては、近年プロパー販売月とセール月の境目がなくなりつつある中で、春夏や秋冬といった従来の大きなシーズン括りに捉われず、仕入から販売期間が終わるまでの商品ライフサイクルを今まで以上に短く捉え、毎月毎月の店舗商品鮮度を高める企画の組み立てで、頻度高くご来店いただけるお客様にも常に新たな発見がある店舗を実現してまいります。
ライフスタイルブランドでは、「暮らしの今を、もっと素敵に!もっと楽しく!」をテーマに、暮らしに寄り添った衣・食・住を生活雑貨や服飾雑貨で提案し、引き続きお客様の支持拡大に努めています。また、ブランドのコンディションに応じて、店舗大型化や積極出店など成長を目指す子会社、抜本的な収益構造の改革に取り組む子会社、ローンチ間もなく収益基盤を固める子会社など、それぞれ異なるミッションを追求しています。
一方、投資グループにおいては、プラットフォームやシステムの導入によるシナジー効果の追求や収益構造の向上・確立をテーマに掲げております。開発・改革ブランドでは引き続き構造改革とそれに続く成長戦略の推進に取り組んでいます。また、M&Aブランドでは「靴」のバリューチェーンの大半を自社でカバーする神戸レザークロス㈱や、質の高い革小物で世代を跨って支持を得る㈱ヒロフを展開しています。
そうしたなか、当連結会計年度におきましては、上期において、緊急事態宣言の長期化や新型コロナウイルス感染症の感染者数急拡大の影響を受けた外出自粛による消費マインドの低迷により、客足が少ない状況が続きましたが、第3四半期連結会計期間以降において、緊急事態宣言の解除や、天候・気候等の追い風を背景に、客足の回復が見られました。
こうした環境下、アパレルブランドにおいては、前連結会計年度より引き続きリアル店舗とEコマースの両販路でプロパー販売に拘った採算重視の戦い方を推進して粗利率の改善による収益力の向上に努めたことに加えて、緊急事態宣言の解除された10月以降は、「インディヴィ」といった百貨店レディースの既存店売上が軒並み前年同期比で2桁の伸びとなるなど、ほぼ全てのブランドにおいて伸長し、上期より力強い回復となりました。1月後半以降に再び新型コロナウイルス感染症の感染者数急拡大により2月中旬まで客数の減少はみられたものの、2月下旬は気温上昇に伴って春物需要の動きが出てきて回復基調となりました。
また、2020年8月、2021年2月に公表した収益性の低い複数ブランドの終息を柱とした構造改革の施策を当初計画に沿って着実に推進したことも、利益率の改善に寄与し、店舗数減少による売上減のインパクトを打ち返し、コア営業利益を押し上げました。
一方でライフスタイルブランドでは、コロナ禍での家の過ごし方を充実させる生活雑貨業態において、バラエティに富んだ生活雑貨を取り扱う「ワンズテラス」や、内食需要をうまく取り込んだ「212キッチンストア」が引き続き健闘しました。ブランド事業では、この生活雑貨業態を成長分野と位置付けて、Eコマースの体制や出店・改装等の投資を継続強化しております。
この結果、ブランド事業の経営成績は、一連の構造改革の断行が売上の減少を招いた反面、利益の押し上げ効果に寄与したことなどから、売上収益が1,439億5百万円(前年同期比5.4%減(うち外部収益は1,406億6百万円(前年同期比5.4%減))、コア営業利益(セグメント利益)が30億97百万円(前年同期はコア営業損失(セグメント損失)100億89百万円)と減収増益になりました。
b. デジタル事業
デジタル事業においては、「B2Bソリューション」と「B2Cネオエコノミー」から成り立っており、デジタル技術を梃子にしたトランスフォーメーションの牽引役として、当社グループにおける重点投資の領域と位置付けております。
B2Bソリューションでは、主に、Eコマースの運営受託とデジタルソリューションを行っております。
Eコマースの運営受託では、自社ブランドを中心に販売する直営ファッション通販サイト「ワールドオンラインストア」などの運営を受託しており、ブランド事業の直営店舗とのシームレスなサービス提供に向けて総力をあげて取り組んでいます。また、デジタルソリューションでは、自社の物流コスト抑制の取組みや基幹システムの刷新に留まらず、他社から在庫コントロールシステムの導入やEC・物流業務の運用サービスを受託しており、将来的には基幹システムやBI(Business Intelligence)ソリューションの提供なども進め、メニュー拡充による業容の拡大に注力してまいります。
B2Cネオエコノミーにおいては、「シェアリング」や「カスタマイズ」といったキーワードを中心に事業を展開しております。ラクサス・テクノロジーズ㈱ではブランドバッグに特化したサブスクリプション型レンタルサービスを営み、TVCMでの認知度拡大などを図りながらシェアリングエコノミーの浸透を図っております。一方、米国・Original Inc.は、オンラインカスタムシャツブランド「オリジナルスティッチ」を運営し、キャラクターを活用したIP(知的財産)ビジネス強化や原料ロスゼロへの挑戦といった価値創造の活動を本格化しています。
デジタル事業の経営成績については、B2Bソリューションにおいて、ブランド終息に伴う「ワールドオンラインストア」での減収を受けてEコマースの運営受託事業が苦戦したものの、システムデリバリーの実行と案件パイプラインの拡大を背景にデジタルソリューションの外販事業が着実に成長し、下期については黒字転換を果たしました。一方で、B2Cネオエコノミーでは、ラクサス・テクノロジーズ㈱でのTVCM費用やOriginal Inc.でのシステム開発費用など、将来成長に向けた投資負担が先行している段階であります。これらのネオエコノミー事業領域において、早期に収益基盤を確立してまいります。
この結果、デジタル事業の経営成績は、売上収益は260億32百万円(前年同期比1.1%減)(うち外部収益は108億90百万円(前年同期比14.9%増))、コア営業損失(セグメント損失)が13億48百万円(前年同期はコア営業損失(セグメント損失)19億15百万円)と減収増益になりました。
c. プラットフォーム事業
プラットフォーム事業においては、ワールドグループが培ってきた様々なノウハウと仕組みを活用したプラットフォームの外部企業へのオープン化を推進し、業界の枠組みを超えた新たな事業領域の拡大に取り組んでいます。
生産プラットフォームの㈱ワールドプロダクションパートナーズは、自ら商社機能を発揮して直接貿易に取り組み、製造子会社群の生産性改善を指導・支援するほか、他社アパレルの商品開発及び製造(OEM・ODM事業)も強化しております。
販売プラットフォームの㈱ワールドストアパートナーズは、全国を網羅する支店及び営業所できめ細やかな販売支援体制を整えており、最近では他業種小売業の運営受託案件も拡大しております。
ライフスタイルプラットフォームの㈱ワールドスペースソリューションズは、引き続きアパレル以外の業界にも営業活動を広げて、什器・家具の製造販売、空間・店舗デザインの提供を拡大したほか、一層の成長に向けて家具等のコントラクト・卸で多くの実績を残す㈱アスプルンドとの連携・協業の本格化に着手しました。
プラットフォーム事業の経営成績においては、生産プラットフォームでは、前連結会計年度の医療用ガウンの特需効果が当連結会計年度に剥落したことや海外生産地のロックダウンなどに伴う調達コストの増加などで収益が大きく減少しました。
販売プラットフォームではアウトレット店舗の運営や各種セール等の催事での集客が下期に回復したことが貢献したほか、ライフスタイルプラットフォームでも、㈱アスプルンドが家具等の卸の牽引で堅調に推移しましたが、前述した生産プラットフォームの収益落ち込みを補うには至りませんでした。
これらの結果、プラットフォーム事業の経営成績は、売上収益は777億1百万円(前年同期比20.9%減)(うち外部収益は196億68百万円(前年同期比11.3%減))、コア営業利益(セグメント利益)が11億85百万円(前年同期比65.7%減)と減収減益になりました。
d. 共通部門
事業セグメントに属さない共通部門においては、子会社からの配当や経営指導料等を収入として計上し、ホールディングスのコーポレートスタッフ等の費用を賄うことを基本的な収益構造としておりますが、子会社からの配当は予めセグメント利益から除いております。
共通部門は、「グループ企画本部」、「グループ支援本部」に加えて、グループの商品鮮度向上とソフト開発を監修する「クリエイティブ・マネジメント・センター」、グループブランディングの構築を牽引する「グループコミュニケーション推進室」や各事業のノウハウ・仕組みを横断的に外部企業へオープンにする活動を率先する「プラットフォーム事業推進室」などで成り立っています。ホールディングスは重点分野への集中投資という自らの役割を果たすため、子会社からホールディングスのスタッフ等の実費を上回る経営指導料等で回収することを原則としております。
共通部門においては、前連結会計年度の4月から5月にかけた緊急事態宣言による店舗の一時休業の影響が本年の同影響を大きく上回って前年同期と比較すると子会社の売上収益が増加しましたが、6月以降では一連の構造改革の断行による売上の減少により、それに伴う料率方式の経営指導料収入が減少しました。一方、経費に関してはメリハリのある活動を行い、抑制が効いた状態となっています。
この結果、共通部門の経営成績は、売上収益は67億28百万円(前年同期比5.4%減)(うち外部収益は1億80百万円(前年同期比89.9%増))、コア営業利益(セグメント利益)が24億14百万円(前年同期比4.0%増)と減収増益になりました。
<サステナビリティ(持続可能性)への取り組みについて>
当社グループは、『価値創造企業グループ』として長期的・持続的に価値を創造し提供し続けるためには、「持続可能な社会の実現」への貢献が不可欠であり、環境負荷及び社会活動に関する取り組みを企業経営における重要課題のひとつと位置づけております。
そこで、当社(ホールディングス)の経営がリードする形で、これまで目指してきた「ワールド・ファッション・エコシステム」の構築を一段と高次元なものに昇華させることで、新たな成長機会の創出や社会が共感できる価値の創造を図るべく、ワールドグループならではのサステナビリティ社会に向けた戦略指針の具体化に着手しました。これはワールドグループのSDGs基本方針としてまとめ、6月を目途に公表させていただく予定です。
特筆すべきこととしては、他社にはない独自の取組みの一例として、当社グループでは、ファッション産業全体における余剰在庫や商品廃棄の課題解消に向けて「ムダなモノを作らない」新たなビジネスモデルをB2Cネオエコノミー事業領域にてすでに推進していることです。
具体的には、米国・Original Inc.のオンラインカスタムシャツブランド「オリジナルスティッチ」において原料ロスゼロモデルの開発に取り組んでいるほか、㈱ティンパンアレイのユーズドセレクトショップ「ラグタグ」では、高感度なリユース品を買い取り販売する循環モデルを確立しています。
また、オフプライスストア業態「アンドブリッジ」を開発して産業全体の余剰在庫に新たな価値を付けて循環サイクルを廻す取り組みや、会員の保有するバッグの循環も含めたブランドバッグのシェアリングを可能とするサブスクリプション型レンタルサービスを展開するラクサス・テクノロジーズ㈱など、産業全体の構造的課題の解消に積極的に取り組んでいます。
②財政状態の状況及び分析
当社グループの財政状態の状況及びその要因につき、次のとおり分析しております。
(資産)
資産合計は2,484億55百万円と前連結会計年度末に比べて30億69百万円増加しました。
この主な要因は、これまで持分法適用関連会社だった㈱ナルミヤ・インターナショナルへの追加投資により、連結子会社化した結果、棚卸資産が約16億円、使用権資産が約16億円、のれんを含む無形資産が約36億円それぞれ増加した一方で、持分法で会計処理されている投資が約38億円減少したことによるものです。
(負債)
負債は1,673億52百万円と前連結会計年度末に比べて19億95百万円増加しました。
この主な要因は、これまで持分法適用関連会社だった㈱ナルミヤ・インターナショナルへの追加投資により、連結子会社化した結果、主に借入金が約35億円、リース負債が約13億円増加した一方で、前連結会計年度に計上した構造改革費用に対する引当金の履行に伴う取り崩しが完了し、流動負債の引当金が約22億円減少したことによるものです。
(資本合計)
資本合計は811億2百万円と前連結会計年度末に比べて10億73百万円増加しました。
この主な要因は、これまで持分法適用関連会社だった㈱ナルミヤ・インターナショナルへの追加投資により、連結子会社化したこと等から、非支配持分が約9億円、また、在外子会社の換算差額によりその他の包括利益として約3億円、それぞれ増加した一方で、親会社の所有者に帰属する当期利益として約2億円、その他資本性金融商品の所有者に対する利息の支払いとして約5億円を、それぞれ利益剰余金の増減として認識したことによるものです。なお、第1四半期連結会計期間において、欠損填補として約127億円を資本剰余金から利益剰余金へ振り替えております。
(在庫)
当社グループではブランド事業が売上収益の大半を占めておりますが、ブランド事業におけるアパレルブランドの事業特性から、売上債権と棚卸資産の合計から仕入債務を差し引いた運転資本のコントロール、とりわけ棚卸資産(在庫)の抑制を重視しております。
当連結会計年度末の運転資本は229億5百万円と前連結会計年度末に比べて26億85百万円の増加となりました。これは、これまで持分法適用関連会社だった㈱ナルミヤ・インターナショナルへの追加投資により、連結子会社化した結果、同社及びその子会社の運転資本として約32億円増加したことによります。また、当連結会計年度末の棚卸資産は233億51百万円と前連結会計年度末に比べて15億73百万円の増加となりました。新規連結子会社による影響で約32億円増加しましたが、仕入コントロールと在庫消化を徹底的に推進したことに加えて、当連結会計年度で一部ブランドが終息したため、約17億円減少しております。
(D/Eレシオ)
当社グループは、資本合計に対する有利子負債※の割合であるデット・エクイティ・レシオ(D/Eレシオ)を財務体質の健全化の指標としており、中期的にD/Eレシオ0.5倍を目指しております。
当連結会計年度の有利子負債は、㈱ナルミヤ・インターナショナルを連結子会社化したことで、前連結会計年度末に比べ約35億円増加しました。一方で、資本合計は約11億円増加しました。これは主に㈱ナルミヤ・インターナショナルを連結子会社化したため、非支配持分が約9億円増加したことによるものです。その結果、当連結会計年度のD/Eレシオは前連結会計年度末の1.00倍から0.03ポイント悪化して1.03倍となりました。
当社グループでは、この財務健全性について、コロナ禍の影響が長引いていることから中長期的な目標値に未だ達してないと認識していますが、早期に収益力の回復を図ることで、再び目標値に向けて着実に改善できるよう努めてまいります。
なお、㈱ナルミヤ・インターナショナルを連結子会社化した影響を除くと、D/Eレシオは1倍下回る水準で前連結会計年度末より良化しました。
※ 有利子負債は、連結財政状態計算書に計上されている負債のうち利子を支払っている借入金を対象としております。
(ROA)
当社グループでは、売上収益に対する利益の割合だけではなく、資産(負債及び資本合計)に対する利益の割合も資産効率の観点で重視しており、総資産に対するコア営業利益の割合であるROA(コア営業利益ベース)を収益性の指標としております。
当連結会計年度においては、前連結会計年度で実施した構造改革後、追加的な店舗の出店状況の見直しや一部ブランドの終息により、棚卸資産、有形固定資産及び使用権資産を中心にさらに総資産が縮小した一方、㈱ナルミヤ・インターナショナルの連結子会社化で、各資産項目が増加した結果、分母となる当連結会計年度末の総資産は2,484億55百万円と前連結会計年度末に比べて約31億円増加しました。
一方、分子のコア営業利益については、緊急事態宣言発令に伴う休業要請期間を除いて前連結会計年度より客足が伸びたほか、ブランド事業でのプロパー販売による粗利率の改善や構造改革効果に伴う経費率の低下が寄与し、収益が回復基調で推移したことなどから53億89百万円となりました。
その結果、当連結会計年度末のROA(コア営業利益ベース)は2.2%(前期比4.7ポイント増)と改善しました。
③キャッシュ・フローの状況及び分析
当社グループの各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因につき、次のとおり分析しております。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
173億21百万円の収入(前年同期比131億67百万円 収入増)となりました。
この主な要因は、税引前当期利益が約240億円改善した一方、構造改革の進捗を背景として、構造改革費用が約97億円、事業構造改革引当金の増減額が約23億円、それぞれキャッシュ・フロー上における収入の減少要因となったことによります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
20億35百万円の支出(前年同期比6億44百万円 支出減)となりました。
この主な要因は、構造改革に伴う店舗撤退や出店計画の見直しの結果、差入保証金の差入による支出を約5億円抑制し、差入保証金の回収による収入が約6億円増加したことによります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
147億84百万円の支出(前年同期比136億39百万円 支出増)となりました。
この主な要因は、新型コロナウイルス感染症の長期的な影響に備え、これまで一時的に増加していた外部借入が約13億円減少したこと、主に店舗の賃貸借契約にかかるリース負債の支払額を約27億円抑制したこと、前連結会計年度に計上したその他資本性金融商品の発行による収入約146億円がキャッシュ・フロー上における収入の減少要因となったことによります。
これらの結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末より7億17百万円増加して、214億3百万円となりました。
④資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、主に非アパレルブランドの拡充やバリューチェーン補強を目的としたM&Aの推進、そしてデジタル軸における新たなサービスや全業務領域のシステム刷新に伴う開発投資を推進しており、計画通りに進捗しております。なお、これらの財源は、手許資金を充当いたします。
⑤生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
ブランド事業 |
37 |
△17.0 |
プラットフォーム事業 |
4,376 |
△31.7 |
合計 |
4,414 |
△31.6 |
(注) 上記金額には、セグメント間の内部取引高を含んでおります。
b. 仕入実績
当連結会計年度の仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
ブランド事業 |
60,900 |
△8.9 |
デジタル事業 |
2,632 |
△8.6 |
プラットフォーム事業 |
60,383 |
△24.4 |
小計 |
123,915 |
△17.2 |
IFRS調整(注)2 |
197 |
158.2 |
合計 |
124,112 |
△17.1 |
(注)1 上記金額には、セグメント間の内部取引高を含んでおります。
2 IFRS調整は、為替予約における調整金額を記載しております。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績は次のとおりであります。
販路別売上状況
セグメント |
区分 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
ブランド事業 |
|
ミドルアッパー |
41,595 |
△3.4 |
ミドルロワー |
62,507 |
△5.9 |
||
国内アパレルブランド |
104,101 |
△4.9 |
||
国内ライフスタイルブランド |
25,715 |
△4.6 |
||
海外 |
966 |
2.2 |
||
|
開発・改革ブランド |
4,929 |
△30.1 |
|
|
M&Aブランド |
4,895 |
1.6 |
|
投資 |
9,824 |
△16.6 |
||
小計 |
140,606 |
△6.1 |
||
デジタル事業 |
B2Bソリューション |
4,186 |
43.5 |
|
B2Cネオエコノミー |
6,704 |
10.7 |
||
小計 |
10,890 |
22.4 |
||
プラット フォーム事業 |
生産プラットフォーム |
2,888 |
△38.5 |
|
販売プラットフォーム |
6,429 |
2.7 |
||
シェアードサービスプラットフォーム |
57 |
△41.8 |
||
ライフスタイルプラットフォーム |
10,294 |
△1.4 |
||
小計 |
19,668 |
△8.7 |
||
共通部門 |
180 |
92.9 |
||
売上収益 |
171,344 |
△5.0 |
なお、「受注実績」につきましては、該当事項はありません。
(参考)
当社グループのEC化率は以下のとおりであります。
EC化率 |
金額(百万円) |
% |
前年同期差 |
||||
|
|
20.75 |
△1.11 |
(注)EC化率とは商品の取扱高を分母にし、そのうちECの取扱高を分子にしたものであります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①経営成績に重要な影響を与える要因について
当社は、前記「2 事業等のリスク」に記載のとおり、経済情勢の変化、消費者の嗜好の変化、在庫管理、出店・閉店、仕入価格その他費用の増加等様々なリスク要因が当社の経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。
そのため、当社は常に市場環境等に留意しつつ、内部管理体制を強化し、優秀な人材を確保し、消費者や市場のニーズに適時適切に対応していくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切に対応を行って参ります。
②経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営成績等の状況に関する分析・検討内容につきましては、前記「(1) 経営成績等の状況の概要」をご参照下さい。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「連結財務諸表規則」という。)第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。
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