文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
(基本理念)
当社グループでは、グループ共通の価値観として、グループ基本理念「OUR PHILOSOPHY」を策定し、公表しています。「OUR PHILOSOPHY」は、グループの経営、企業活動、役員や社員などの構成員において、大切にする考え方やあり方を幅広く明確化しており、当社グループのすべての営みはこの「OUR PHILOSOPHY」を軸に行われます。当社グループは、社会に対して果たすべき役割として、「デジタル技術を駆使したムーバーとして、未来の景色に鮮やかな彩りをつける」存在を目指してまいります。
また、当社グループでは2017年5月に、この先10年を見据えた目指すべき企業像として新たなグループビジョンを定めました。このグループビジョンをTISインテックグループの全員で共有し、一人ひとりが日常業務の中で実践することで、TISインテックグループが目指す理想の実現及び更なる企業価値の向上を目指してまいります。
(グループビジョン)
①目指す企業像
「Create Exciting Future」をグループ共通の価値観として、先進技術・ノウハウを駆使しビジネスの革新と市場創造を実現します。顧客からは戦略パートナーとして頼りにされ、既成業界・市場の変革に常にチャレンジし、新たな市場を創造するイノベーターとなることを目指します。
②戦略ドメイン
目指す企業像を実現すべく、4つの戦略ドメインを定義しました。
ストラテジックパートナーシップビジネス |
業界トップクラスの顧客に対して、業界に関する先見性と他社が追随できないビジネス・知見を武器として、事業戦略を共に検討・推進し、ビジネスの根幹を担う。 |
ITオファリングサービス |
当社グループに蓄積したノウハウと、保有している先進技術を組み合わせることで、顧客より先回りしたITソリューションサービスを創出し、スピーディーに提供する。 |
ビジネスファンクションサービス |
当社グループに蓄積した業界・業務に関する知見を組み合わせ、先進技術を活用することにより、顧客バリューチェーンのビジネス機能群を、先回りしてサービスとして提供する。 |
フロンティア市場創造ビジネス |
当社グループが保有する技術・業務ノウハウ、顧客基盤を活かして、社会・業界の新たなニーズに応える新市場/ビジネスモデルを創造し、自らが事業主体となってビジネスを展開する。 |
(2)経営戦略等
新型コロナウイルス感染症拡大、ニューノーマルの定着、グローバルのITプラットフォーマーの躍進、DX市場における競争激化など、経営環境および競争環境が大きく変動する中、当社グループはIT業界のリーディングカンパニーとして、豊かな未来社会実現の一翼を担う企業グループを目指しております。
中期経営計画(2021-2023)では、「Be a Digital Mover 2023」をスローガンに、グループビジョン2026の達成に向けた成長加速のため、DX提供価値の向上を基軸とした、事業構造転換の実現に取り組んでまいります。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、事業規模・収益性および資本効率性を重視した経営指標を設定し、これらの拡大を目指しています。中期経営計画(2021-2023)では、「売上高5,000億円」「営業利益(営業利益率)580億円(11.6%)」「EPS(1株当たり当期純利益)の年平均成長率10%超」「戦略ドメイン比率60%」「社会課題解決型サービス事業売上高500億円」を掲げています。
(4)経営環境
新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が徐々に緩和され、新たな労働環境が浸透する中で、我が国経済は持ち直しの動きがみられました。しかしながら、先行きについては、世界経済の不透明化に伴う供給面での制約や原材料価格の動向による下振れリスク、変異株をはじめとする感染症による内外経済への影響等を注視する必要があります。
このような中、当社グループは国内市場においてはペイメント領域を中心に、事業の重要な企業インフラを構築し、かつ安定的に支え、柔軟な対応によりスピーディーなサービス提供の遂行を通じて成長してきました。また、更に事業を飛躍的に加速させる力となりうるのが、グローバルでのバリューチェーン連携だと認識し、海外のスピード感を取り入れ、日本における当社グループの強みを組み合わせることで、グローバルにおける競争力と当社の優位性のあるポジションを確立してまいりました。
当社グループが更なる持続的な成長を実現するためには、国内の既存事業領域における優位性をより高め、加えて社会課題解決につながる新規事業の創生と開拓が必要と認識しております。これらを推進していくためにDXを起点として、市場における信頼と実績を確立し、顧客や社会への提供価値の向上を目指してまいります。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、全方位のステークホルダーとの価値交換を通じて、継続的な事業拡大と持続可能な社会の実現を目指し、当社グループのミッションである「デジタル技術を駆使したムーバーとして、未来の景色に鮮やかな彩りをつける」を体現すべく、顧客や社会のデジタル化に向けた課題に対する戦略立案から解決策の実行まで一気通貫の価値提供を目指し、さらには社会課題解決の実現を目指してまいります。
実現に向けて注力すべき取組みとして、「DX提供価値の向上」「グローバル事業の拡大」「人材の先鋭化・多様化」「経営マネジメントの高度化」の4つを設定しています。
①DX提供価値の向上
DX領域に関しては、国内トップレベルのペイメント領域をはじめ、データアナリティクス、AI・ロボティクス、ヘルスケア、エネルギーマネジメントなどグループに培われた強みを中心として、顧客の現在の業務プロセス改革やインフラ改革、さらにはビジネス自体の革新まで、当社顧客のDXパートナーとして、継続的に事業の拡大に取り組んでいきます。
このDX提供価値の向上に必要な取り組みとして「ステークホルダーとの共創促進」「DXコンサルティング機能強化」「ITデリバリーの強化」を設定しています。
ステークホルダーとの共創促進においては、業種・業界において豊富なノウハウと経営基盤をお持ちの企業と、当社グループで培ってきた業務ノウハウやデリバリー力を強固に組み合わせて、展開力を強化し事業を推進してまいります。
また、社会課題、経営課題に応える構想力として、DXを推進展開するための戦略立案や課題形成に上流領域のコンサルティング機能が重要ととらえ、戦略的な経営資源配置と人材育成を推進してまいります。
そして、それらを実現するためのソリューションを提供する実装力については、スピーディーな対応とコストの最適化に継続的に取り組んでまいります。
②グローバル事業の拡大
ASEAN各国のパートナーとのアライアンスを強化し、最先端技術や破壊的テクノロジーを活用することで、グローバルでITオファリングサービス、フロンティア市場創造ビジネスを拡大してまいります。
連結子会社であるMFEC Public Company Limitedは、タイ国内エンタープライズ向けITソリューション提供のリーディングプレイヤーである地位を活かし、タイ国内事業は好調に進展しております。また、当社とのソリューションクロスセル、及び金融を中心とした日系深耕の強化が進んでおり、共同での大型案件の提案といった実績も出始めております。
さらに、東南アジア最大のデジタルペイメントプラットフォームを展開するGrab Holdings Inc.との戦略的パートナーシップ関係では、当社海外事業会社間の協業が本格化しており、東南アジア及び日本でのデジタルペイメントのインフラ強化や新たな決済技術の開発にも共同で取り組んでまいります。
加えて、中国トップクラスのブロックチェーン技術企業「杭州趣鏈科技有限会社(Hangzhou Qulian Technology Co., Ltd.)」やブロックチェーン技術を用いてTrade Financeプラットフォームを展開するシンガポールの 「Contour Pte. Ltd.」との資本・業務提携を行うなど、テクノロジー(技術)の観点でも引き続き有力企業との アライアンスを進めてまいります。
③人材の先鋭化・多様化
社員と会社の価値交換性の継続的な高度化を実現するために、個の多様化と先鋭化に着目した人材戦略を推進してまいります。多様な個が活躍できる環境・組織風土の整備、新たな労働環境を見据えた次世代の働き方改革の推進、人材データベースのデジタル化による人材ポートフォリオマネジメントの高度化などを通して、社員のエンゲージメント向上に取り組んでまいります。加えて、構造転換をさらに加速するため、コンサルティング、グローバル、サービスビジネスなど、先鋭人材の戦略的な確保と育成に努めるとともに、最適配置を進めてまいります。
この一例として、当社は、社員の柔軟な働き方を促進する遠隔地テレワークや、自発的なキャリア形成を尊重する成長支援制度を新たに整備するとともに、様々なライフステージや自己実現を支援するライフステージサポート制度を拡充するなどの取組みを進めています。
また、人材採用においても先端人材の採用強化を狙い、多様な人材制度や評価制度を充実させております。戦略的なブランド活動ともあいまって、採用においてはこれまで獲得が難しかった人材像へのアプローチと採用成果が出てきております。
④経営マネジメントの高度化
2021年度においては、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同およびその枠組みに沿った情報開示をするとともに、当社グループのオフィス・データセンターでの再生可能エネルギーの導入を進めております。また、国連のビジネスと人権に関する指導原則に則った人権方針を策定・開示するとともに、事業活動に伴う負の影響・リスクを特定し、是正・救済に向けたマネジメント体制・各種施策の整備を進めております。
あわせて、ガバナンス面においては、グループ税務方針の策定により、当社グループの海外ビジネス拡大に伴い発生する税源浸食と利益移転の課題等に適切に対応してまいります。
政策保有株式の縮減については、当社で定めるコーポレートガバナンス基本方針に従い、政策保有株式の貸借対照表計上額の連結純資産に対する比率を10%水準へ引き下げることを目標として継続的に取り組んでおります。なお、2022年3月期は、全量売却8銘柄を含む9銘柄の売却を進め、7,538百万円の縮減を実現しました。
また、さらなる経営マネジメント実効性の向上を目指して、資本コストを意識した事業マネジメントの導入、グループフォーメーションマネジメントの推進、国内外の企業のM&Aによる事業拡大や事業ポートフォリオの入れ替え、グループ間接業務のシェアード化とさらなる高度化に取り組んでおります。
同時に、企業価値の向上と認知度の向上への取り組みとして、テレビCMや広告媒体への記事掲載なども継続し、戦略的なブランド活動にも努めてまいります。現時点においても当社グループの認知度は向上し、それに応じて社員の働きがいや採用面での効果が得られるなど、ブランド活動に基づく成果は着実に表れています。
不確実性の高まる環境において、持続的な成長を目指していくために、継続的に成長投資(ソフトウエア投資、人材投資、研究開発投資、M&A・出資等)と、適正リターンを獲得するための投資マネジメントの一層の高度化を進め、プライム市場上場企業として相応しい経営ガバナンスの向上を目指してまいります。
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