(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症流行の長期化の影響により全体的に厳しい状況が続きました。足元では、円安傾向の加速が経済に与える影響が懸念されます。先行きについては、ワクチンブースター接種の加速化および治療薬の普及による感染拡大防止策や重症化予防策を講じつつ、経済活動のレベルを上げていくという極めて難しい舵取りが要求されています。また、世界においては、新規感染者数が多い中でも、より積極的な経済活動を行うことを優先する動きが欧米を中心に見られる一方で、中国ではゼロコロナ政策の一環で一部都市のロックダウンが行われるなど、全体的には新型コロナウイルス感染症によるダメージからの経済の立ち直りにはまだまだ時間を要する状況です。また、ウクライナ情勢等の地政学的リスクが増大する中、原材料価格の上昇や供給面での制約等による下振れリスクが懸念されます。
当社グループの属する半導体業界では、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う巣ごもり需要はピークアウトしたものの様々な産業における旺盛な需要による半導体の供給不足が継続し、自動車も含め半導体を使用した電子機器の生産に影響が出ています。中期的にも、あらゆるモノがインターネットにつながるIoTや人工知能(AI)、ビッグデータ、次世代高速通信規格、自動運転向けの需要拡大が見込まれます。
当社グループの事業領域であるAI/ビジュアル・コンピューティング分野においては、少子高齢化に伴う労働人口の減少、コロナ禍、気候変動等の社会・環境課題の解決、安心安全社会の実現に向けたイノベーションの加速やAIの果たす役割の増大が予想されます。
このような環境下において、当社グループは、社会・環境課題の解決への貢献と収益・利益の獲得を両立し、企業価値を向上させるCSV(Creating Shared Value)経営を実現することを、中期経営計画の基本方針としています。注力分野である安全運転支援分野及びロボティクス分野において、企画から量産までの顧客製品・サービスの開発ライフサイクル全体に亘り、アルゴリズム、ソフトウエアから、当社の強みであるハードウエアまでの一貫開発体制をもって、IPコアライセンス事業、製品事業、プロフェッショナルサービス事業を展開し、付加価値を提供することで、LTV(顧客生涯価値)の最大化を図ってまいります。
当連結会計年度の注力分野における具体的な取り組みと成果としては、まず安全運転支援分野において、エッジからクラウドに亘る既存プロジェクトからのリカーリング収益を獲得するとともに、新規顧客や既存顧客の新規プロジェクト向けに新規ライセンスやプロフェッショナルサービスを提供しました。
ロボティクス分野においては、高精度SLAMソフトウエア「ZIA™ SLAM」を包含し、自律走行ロボットの自動・自律運転に必要となる認知・判断・操作に機能拡張したAIソフトウエア「ZIA™ MOVE」のリリースや新たにイメージセンサーのHDR(ハイダイナミックレンジ)機能に対応したイメージシグナルプロセッサ(ISP)コア「ZIA™ ISP」のアップグレード版の提供を行うなど、AIポートフォリオ「ZIA™シリーズ」を充実させました。また、業務資本提携先のヤマハ発動機株式会社の陸海空に亘る製品へのAI実装プロジェクトをはじめとして、フランスProphesee社、株式会社マクニカ等との協業案件を含め、様々な業界に属する顧客のPoCプロジェクトや実用化案件を発掘、推進しました。さらには、資本業務提携先のCambrian社の協働ロボット向けビジョンシステムのビジネスにおいて、協働ロボットのレンタル、販売および導入支援サービスを展開する高島ロボットマーケティング株式会社と「郵便物自動仕分けシステム」を共同開発するなど用途開発を進めるとともに、最終顧客の省人化や生産性向上に向けた具体的案件に進捗がありました。
アミューズメント分野においては、画像処理半導体「RS1」の大型受注に対する量産出荷を継続するとともに、引き続きこのユニークな2D・3D統合チップの優位性を発揮できる市場セグメントにおけるシェア拡大を目指しています。
当連結会計年度の業績につきましては、製品事業において「RS1」の量産出荷を継続するとともに、量産ドローン向けカメラモジュールやCambrian社の協働ロボット向けビジョンシステムの売上を計上しました。IPコアライセンス事業においては、安全運転支援分野およびロボティクス分野向けの新規ライセンスを獲得するとともに、安全運転支援分野においてリカーリング収益を計上しました。また、プロフェッショナルサービス事業においては、NEDOプロジェクトの受託収入は剥落したものの、安全運転支援分野およびロボティックス分野向けのAI受託開発サービスが活発化しました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は、1,667百万円(前年同期比65.2%増)、営業損失は126百万円(前年同期営業損失425百万円)、経常損失は122百万円(前年同期経常損失361百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失は、投資有価証券評価損33百万円を計上したため157百万円(前年同期親会社株主に帰属する当期純損失364百万円)となりました。
当社グループは、単一セグメントであるためセグメント別の記載はしていませんが、事業別業績の概要は以下のとおりです。
①IPコアライセンス事業
ディジタルスチルカメラやOA機器等のディジタル機器向けGPU IPの新規ライセンス収入およびランニングロイヤリティ収入に加え、安全運転支援分野およびロボティクス分野における新規ライセンス収入や安全運転支援分野におけるリカーリング収益の計上により、売上高は173百万円(前年同期144百万円)となりました。
②製品事業
「RS1」の量産出荷による売上、量産ドローン向けカメラモジュールの売上、Cambrian社ビジョンシステムの売上等の計上により、売上高は1,199百万円(前年同期658百万円)となりました。
③プロフェッショナルサービス事業
前年同期に計上したNEDOからの受託収入は剥落したものの、安全運転支援分野およびロボティクス分野向けのAI受託開発案件の活発化により、売上高は295百万円(前年同期206百万円)となりました。
また、分野別業績の概要は以下のとおりです。
①安全運転支援分野
IPコアライセンス事業における新規ライセンス収入およびリカーリング収益やプロフェッショナルサービス事業における新規・既存顧客プロジェクトへの売上等により、売上高は163百万円(前年同期49百万円)となりました。
②ロボティクス分野
IPコアライセンス事業における売上拡大、製品事業におけるドローン量産向けカメラモジュールやCambrian社ビジョンシステムの売上計上、AI受託開発案件の活発化により、売上高は236百万円(前年同期166百万円)となりました。
③アミューズメント分野
「RS1」の量産出荷売上の計上により、売上高は1,155百万円(前年同期646百万円)となりました。
④その他分野
ディジタル機器向けGPU IPの新規ライセンス収入およびランニングロイヤリティ収入等を計上したものの、前年同期に計上したNEDOからの受託収入の剥落等により、売上高は111百万円(前年同期148百万円)となりました。
(2)当期の財政状態の概況
(資産)
当連結会計年度末における資産合計額は3,472百万円となり、前連結会計年度末に比べ5百万円減少しました。これは主に、売掛金及び契約資産(前連結会計年度末は売掛金)が231百万円増加し、現金及び預金が63百万円および固定資産が52百万円減少したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債および固定負債は合計で376百万円となり、前連結会計年度末に比べ149百万円増加しました。これは主に、買掛金が128百万円および未払消費税等が41百万円増加したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計額は3,095百万円となり、前連結会計年度末に比べ154百万円減少しました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純損失の計上により利益剰余金が157百万円減少したことによるものであります。
これらの結果、自己資本比率は89.2%となりました。
(3)当期のキャッシュ・フローの概況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ109百万円減少し2,002百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、39百万円の支出(前連結会計年度は36百万円の収入)となりました。主な増加要因は、仕入債務の増加額128百万円および減価償却費71百万円であり、主な減少要因は、売上債権の増加額231百万円および税金等調整前当期純損失155百万円であります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、77百万円の支出(前連結会計年度は68百万円の収入)となりました。主な減少要因は、投資有価証券の取得による支出40百万円および固定資産の取得による支出37百万円であります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、0百万円の支出(前連結会計年度は1百万円の支出)となりました。減少要因は、自己株式の取得による支出0百万円であります。
(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移
|
2018年3月期 |
2019年3月期 |
2020年3月期 |
2021年3月期 |
2022年3月期 |
自己資本比率(%) |
88.2 |
83.8 |
92.2 |
93.5 |
89.2 |
時価ベースの自己資本比率(%) |
834.8 |
548.5 |
162.3 |
250.2 |
128.5 |
2021年3月期より連結ベースの財務数値により計算しております。
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
(注1)株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
③生産、受注及び販売の状況
a.仕入実績
当連結会計年度の仕入実績を事業部門別に示すと次のとおりであります。
事業部門の名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
|
仕入実績(千円) |
前年同期比(%) |
|
IPコアライセンス事業 |
- |
- |
製品事業 |
878,303 |
177.0 |
プロフェッショナルサービス事業 |
2,086 |
582.5 |
合計 |
880,390 |
177.3 |
(注)金額は仕入価格によっております。
b.受注状況
当連結会計年度の受注状況を事業部門別に示すと次のとおりであります。
事業部門の名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
|||
受注高 (千円) |
前年同期比 (%) |
受注残高 (千円) |
前年同期比 (%) |
|
IPコアライセンス事業 |
- |
- |
- |
- |
製品事業 |
2,801,440 |
425.6 |
1,602,300 |
- |
プロフェッショナルサービス事業 |
272,321 |
127.5 |
15,050 |
39.8 |
合計 |
1,471,461 |
352.6 |
1,617,350 |
4,276.6 |
(注)1.金額は販売価格によっております。
2.IPコアライセンス事業には、受注という概念が馴染まないため記載しておりません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績を事業部門別に示すと次のとおりであります。
事業部門の名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
|
販売実績(千円) |
前年同期比(%) |
|
IPコアライセンス事業 |
173,762 |
120.0 |
製品事業 |
1,199,140 |
182.1 |
プロフェッショナルサービス事業 |
295,089 |
142.9 |
合計 |
1,667,991 |
165.2 |
(注)1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
||
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
株式会社レスターエレクトロニクス |
407,073 |
40.3 |
1,195,113 |
71.7 |
加賀電子株式会社 |
216,617 |
21.5 |
- |
- |
ヤマハ発動機株式会社 |
110,977 |
11.0 |
- |
- |
2.当連結会計年度の加賀電子株式会社およびヤマハ発動機株式会社については、当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状況および経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の経営成績の状況は以下のとおりです。
・売上高 1,667百万円(前年同期比65.2%増)
製品(RS1)の売上に加えて、IPの新規ライセンス、ランニングロイヤリティ収入、プロフェッショナルサービスにおけるAI関連の受託開発売上等を計上しました。詳細は、後述の事業別の経営成績(売上高)に関する認識および分析・検討結果に記載のとおりであります。
・売上総利益 604百万円(前年同期比80.3%増)、売上総利益率36.2%
売上原価に製品の仕入原価、プロフェッショナルサービスに係る受託開発原価等を計上したことによるものです。
・販売費及び一般管理費 731百万円(前年同期比3.8%減)
労務費、研究開発費等を計上しました。
・営業損失 126百万円(前年同期営業損失425百万円)
売上利益が販売費及び一般管理費を吸収できず、営業損失を計上しました。
・経常損失 122百万円(前年同期経常損失361百万円)
・親会社株主に帰属する当期純損失 157百万円(前年同期親会社株主に帰属する当期純損失364百万円)
特別損失に投資有価証券評価損33百万円を計上したことおよび法人税等を1百万円計上したことによるものです。
・1株当たり当期純損失(EPS) △49円93銭(前年同期1株当たり当期純損失△116円03銭)
当社グループは単一セグメントでありますが、当連結会計年度の事業別の経営成績(売上高)は以下のとおりです。
・IPコアライセンス事業 173百万円(前年同期144百万円)
当連結会計年度は、ディジタルスチルカメラやOA機器等のディジタル機器向けGPU IPの新規ライセンス収入およびランニングロイヤリティ収入に加え、安全運転支援分野およびロボティクス分野における新規ライセンス収入や安全運転支援分野におけるリカーリング収益を計上したことにより、売上高は伸長しました。
・製品事業 1,199百万円(前年同期658百万円)
当連結会計年度は、当社の画像処理半導体「RS1」の遊技機向け量産出荷、量産ドローン向けカメラモジュールおよび協働ロッボット向けCambrian社ビジョンシステムの売上等を計上しました。主に、旧規則遊技機から新規則遊技機への入れ替え需要に伴うRS1の大型受注により、売上高は伸長しました。
・プロフェッショナルサービス事業 295百万円(前年同期206百万円)
当連結会計年度は、前年同期に計上したNEDOからの受託収入は剥落したものの、安全運転支援分野およびロボティクス分野向けのAI受託開発案件の活発化により、売上高は伸長しました。
当連結会計年度末の財政状況は以下のとおりです。
・流動資産 2,784百万円(前年同期2,736百万円)
主な内訳は、現金及び預金2,002百万円、売掛金及び契約資産388百万円、有価証券300百万円であります。
・固定資産 688百万円(前年同期740百万円)
主な内訳は、投資有価証券507百万円、ソフトウエア50百万円であります。
・流動負債 358百万円(前年同期208百万円)
主な内訳は、画像処理半導体の仕入計上に伴う買掛金260百万円、未払消費税等41百万円であります。
・固定負債 18百万円(前年同期18百万円)
・純資産 3,095百万円(前年同期3,250百万円)
主な内訳は、資本金1,838百万円および資本剰余金1,858百万円、親会社株主に帰属する当期純損失157百万円を計上した結果による利益剰余金△597百万円であります。
・自己資本比率 89.2%
以上の財政状況および経営成績の状況を踏まえた経営者の視点による分析・検討内容は以下のとおりです。
・当連結会計年度の経営成績は、前年同期に計上したNEDOからの受託収入は剥落したものの、アミューズメント市場向けのグラフィックプロセッサーRS1の販売が顧客からの大型受注を受けて大幅増となるとともに、安全運転支援分野、ロボティクス分野の顧客案件も増加したことから、売上高は前年同期比65.2%増となりました。利益面は、売上高の伸長に伴い大幅に改善したものの、営業損失、経常損失および親会社株主に帰属する当期純損失を計上する結果となりました。
・今後につきましても、2021年5月14日に公表した中期経営計画に沿って、社会・環境課題解決への貢献と利益獲得・向上を両立させることで、引き続き企業価値の向上に努めてまいります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容ならびに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ109百万円減少し2,002百万円となりました。活動毎のキャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。
・営業活動によるキャッシュ・フロー 39百万円の支出(前連結会計年度は36百万円の収入)
主な増加要因は、仕入債務の増加額128百万円、減価償却費71百万円であり、主な減少要因は、売上債権の増加額231百万円および税金等調整前当期純損失155百万円であります。
・投資活動によるキャッシュ・フロー 77百万円の支出(前連結会計年度は68百万円の収入)
主な減少要因は、投資有価証券の取得による支出40百万円および固定資産の取得による支出37百万円であります。
・財務活動によるキャッシュ・フロー 0百万円の支出(前連結会計年度は1百万円の支出)
要因は、自己株式の取得による支出0百万円であります。
当社の運転資金需要のうち主なものは、製造委託しているLSI製品の仕入費用および製造費用、販売費および一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資、システム投資等によるものです。当社は、運転資金ならびに投資目的の資金需要には、主として自己資金を充当することを基本方針としております。この方針に従い、当連結会計年度における運転資金、IT機器等の設備投資資金については、自己資金を充当しました。
今後の資金需要のうち、主なものは、運転資金の他、事業拡大に向けた技術優位性の維持向上と開発体制の強化のための人的投資等であります。これらの資金についても、基本方針に基づき、自己資金を充当する予定であります。
③重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に準拠して作成されております。重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
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