文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「勝てる分野」における事業の確立により安定した経営基盤を獲得しつつ、今後大きな成長が見込まれるIoT(注)・AI市場における事業を拡大することで、同分野で世界をリードする「AI Computing Company」となることを目標としております。卓越した知識・経験さらに情熱を持つ人材による研究開発と顧客中心の市場アプローチとのバランスを保ち、顧客課題、社会課題の解決に求められる最適かつ先進的なソリューションを提供することを通じて、企業価値の向上に努めてまいります。
(2)経営環境
当社グループの属する半導体業界では、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う巣ごもり需要はピークアウトしたものの、様々な産業における旺盛な需要による半導体の供給不足が継続し、自動車も含め半導体を使用した電子機器の生産に影響が出ています。中期的にも、あらゆるモノがインターネットにつながるIoT、人工知能(AI)、ビッグデータ、次世代高速通信規格、自動運転向けの需要の拡大が見込まれます。
当社グループの事業領域であるAI分野においては、足下の困難を含めた社会課題の解決や安心安全社会の実現に向けたイノベーションの加速やAIの果たす役割の増大が予想されます。市場の規模拡大を背景に、異業種を含めた新規参入や既存プレーヤーの事業強化の動きが顕著な競争環境にあります。AI業界には、AI導入に関する課題・戦略のサポートを行うコンサルティング企業、AIアルゴリズム/ソフトウエア提供に特化する企業、顧客からAI開発を受託する企業、クラウドサービスや機械学習アルゴリズムの開発環境を提供する大手クラウド事業者等、様々なプレーヤーがいます。また、当社の注力分野・市場であるロボティクス(低速自動運転車両等の自律走行ロボット、協働ロボット等)分野や安全運転支援システム(ドライバーモニタリングシステム、ヒヤリハット解析等)分野は市場拡大が予想されています。
当社グループは主要事業の一つとして、アミューズメント(パチンコ・パチスロ遊技機)業界向けに画像処理プロセッサーの開発・製造・販売を行っております。遊技人口の減少や足下の新型コロナ感染症流行の影響により、遊技機の販売は年々減少しており、市場としては成熟・減少期にありますが、販売台数は依然年間百万台を超えており、市場の絶対的規模はまだまだ大きいとも言えます。当社は、遊技機市場のボラティリティを注視しつつ、当社のユニークな2D・3D統合チップの優位性を発揮できる市場セグメントにおけるシェア拡大を目指してまいります。
(3)経営基本戦略と優先的に対処すべき課題
世界的な社会・環境の大きなトピック・課題である「少子高齢化」、「コロナ禍」、「気候変動」等に対して、その克服に社会や政界・経済界全体として取り組む機運が高まっています。当社グループは、これらの社会環境の変化をチャンスと捉え、社会・環境課題、顧客課題の解決に貢献することによって、利益を獲得し企業価値を向上させるCSV (Creating Shared Value)経営を実現することを、中長期的な経営戦略の基本方針としております。
①顧客製品・サービスの開発サイクル全体に亘る付加価値提供
企画から量産までの顧客製品・サービスの開発ライフサイクル全体に亘り、アルゴリズム、ソフトウエアから、当社の強みであるハードウエアまでの一貫開発体制をもって、IPコアライセンス事業、製品事業、プロフェッショナルサービス事業を展開、付加価値を提供することで、LTV(顧客生涯価値)の最大化を図ってまいります。また、顧客プロジェクトで培ったテクノロジー・ノウハウに基づく標準製品・サービスの開発・提供により、顧客開発に柔軟、迅速に対応するとともに、利益率の向上を図ってまいります。
②注力市場での取り組み
当社は、創業以来の強みであるグラフィックス技術と同技術から派生、涵養したAI(人工知能)・ディープラーニング技術を活用することで差異化が可能で、市場成長が期待でき、社会・環境課題解決にも貢献する、安全運転支援分野(セーフティ分野)、ロボティクス分野に対して、それぞれの市場ライフサイクルに合わせた基本戦略を実行してまいります。
a. 安全運転支援分野(セーフティ分野)
本分野は、改正道路交通法の施行やドライブレコーダー特約付き自動車保険の拡充等もあり、ドライブレコーダーを活用したリアルタイムの事故防止やヒヤリハット事象を活用した安全運転教育の需要が拡大しており、市場としては成長期にあると認識しております。
当社においても、前年度からランニングロイヤリティ収入やサブスクリプション収入を計上するなど、初期ライセンスやプロフェッショナルサービスの提供に加えて、リカーリングビジネスの展開が始まっています。当社は、クラウド(ZIA™ Cloud SAFE)からエッジ(ZIA™ SAFE)までの一貫サービスが提供できる競争優位性により、既存顧客案件の深耕と新規顧客への参入を果たし、マーケットリーダーを目指してまいります。
また、ドライブレコーダーの活用に留まらず、市場拡大が期待できるより広範なセーフティ領域である公共交通機関の危険検知・予知やスマートシティ関連(人の属性・流れ・数、危険検知・予知等)の分野において、エコシステムとの連携により、PoC案件の発掘・獲得から将来的な商用化時のビジネス獲得に備えます。
b. ロボティクス分野
本分野は、労働人口の減少に伴い、製造業、運輸物流業、農業を始めとした様々な産業における省人・省力化、生産性向上の流れの中で、自律走行ロボットや協働ロボットの市場拡大が予想されていますが、多くの顧客がPoC(概念実証)の段階にあり、市場としては導入期にあると認識しております。市場全体は非常に大きく、かつ広範に亘りますので、攻略すべき産業分野、自社の強みを活かして何を行い、エコシステムとの連携により何を補完、強化していくかを明確にして、自律走行ロボット、協働ロボット、さらにその二つを組み合わせた先端的なロボットの領域を中心に、メリハリの利いたビジネス展開と収益・利益獲得が肝要であります。
まず、自社技術の磨き込み、絞り込みに注力します。具体的には、既存のロボティクス分野向けZIAシリーズであるZIA™ SLAMやZIA™ MOVE等の精度、機能の更なる向上と、競争優位性を発揮できる要素技術の開発、製品化を図ります。
続いて、他社との協業、エコシステム構築においては、まずは本分野のリードカスタマーかつ業務資本提携先のヤマハ発動機株式会社とのビジネスについては、引き続き開発ロードマップに沿った様々な製品のAI化に貢献し、協議のもと協業成果の外販化にも取り組んでまいります。また、技術商社、SIer、サービス/テックプラットフォーマー等のエコシステムとの協業により、ロボット導入効果の高い製造業、運輸物流業等へのリーチを広げてまいります。
協働ロボットの目の役割を果たすCambrianビジョンシステムのビジネスについては、精度、速度、ピッキング対象の広範さ、コストパフォーマンス等の強みを活かし、顧客案件の最大化を図ります。
さらには、Cambrianビジョンシステムと当社OCR機能、Non-CADピッキング機能等の組み合わせや付加価値の取れるIPコアライセンスビジネスへの比重を高めること等によって、事業の高付加価値化、高収益化を追求してまいります。
③持続的な競争優位性・成長の確保
当社は、安全運転支援分野において、アマゾン ウェブ サービス(AWS)を利用したSaaS型安全運転支援サービスであるZIA™ Cloud SAFEによるSaaS (Software as a Service)、安全運転支援システム開発プラットフォームであるZIA™ SAFEによるPaaS (Platform as a Service)、顧客のドライブレコーダーを活用したサービスをインフラとしたIaaS(Infrastructure as a Service)を展開しております。今後は、同様の取り組みをロボティクス分野やその他の成長分野に水平展開し、各種プラットフォーマーやサービス提供事業者等のエコシステムとの緊密な連携によるネットワーク効果を発揮し、注力分野におけるXaaSを幅広い顧客に提供するプラットフォーマーとして、持続的でオルガニックな成長を目指してまいります。また、注力事業分野におけるサービスの競争力の強化・補完に資する
M&Aや事業提携により、ノンオルガニックな成長も積極的に検討してまいります。
以上の取り組みにより、持続的な競争優位性の確保、持続的成長を目指してまいります。
(注)IoT(Internet of Things)とは、パソコン、スマートフォン・タブレット、ゲーム機等の情報通信機器にとどまらず、社会で利用される様々なモノに通信機能を持たせ、インターネットに接続したり、相互に通信することにより、自動認識、自動制御、遠隔計測などが行われることをいいます。
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