課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)会社の経営の基本方針

 当社は、産学連携により培われた生体認証技術をもとに、"バイバイパスワードカンパニー"として、世の中に氾濫するパスワードに関するトラブルやシステム課題を解決してまいります。また継続的・発展的な研究開発を推進し、広く生体認証技術の普及を目指した国際標準であるFIDO規格に準拠した製品の開発・販売を通じて、パスワードを使わない「いつでもどこでもカンタン」な本人確認による、便利かつ効率的で安全・安心な社会実現に貢献してまいります。

(2)目標とする経営指標

 当社は、情報セキュリティ事業の更なる拡大を目標とし、かかるコア事業を中心に経常利益率といった事業の収益性を重視した事業運営に注力してまいります。

(3)中長期的な会社の経営戦略

 当社が属する情報セキュリティ市場は外部環境要因の変遷が早く、特に当社のメイン市場である生体認証市場については、指紋認証機能搭載スマートフォンの発売およびウェブサービス上での本人確認手段としての利用を契機に急速に変化しております。
 当社は10数年来指紋認証事業を行ってきた蓄積を活かし、市場ニーズにあった要素技術の発掘と実用化のため国内外機関とのアライアンスを通じた新製品の投入、販売からサービス課金への収益モデルの変更などの新事業の推進、他社製品との連携により付加価値を高めた製品販売、マイナンバー制度に対応する新規製品の開発・販売、さらにこれらの活動を支える管理体制の強化、適時開示体制の構築や日本版SOX法に対応する内部統制組織の構築とコーポレート・ガバナンスの強化を中長期的な経営戦略として捉え、それらを総合的に達成する新しい組織体制の構築を行ってまいります。

(4)会社の対処すべき課題

①収益の安定化

 バイオ事業については、自治体をはじめとした官公庁において「自治体強靭性向上モデル」の買換え需要が今後数年にわたって継続すること、ならびに民間企業での採用の増加が見込まれること、および、文教市場においてGIGAスクールに導入されたデバイスに対しての認証強化が求められていることから、市場環境は、拡大基調にあるものと認識しております。それらに対し数年来構築してきた代理店網を活用しさらに売上増加を推進してまいります。

 マガタマ・FIDO事業に関連して、日本証券業協会(JSDA)が発行の「インターネット取引における不正アクセス等防止に向けたガイドライン」において、認証強化が明記され、証券会社やクレジットカード会社と進めている案件が増加しています。また、メタバースやeスポーツなどサイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を融合させる環境において、本人認証を求める問い合わせが増えています。さらに、すでにサービスインをしているサービスも一層の普及とID数の急増が見込まれます。以上の観点から、来期につきましては計画通りの売上を見込んでおります。

 海外事業については、現在の案件実績をふまえ、パートナー企業と協業し更なる案件獲得を行ってまいります。

 センサー事業については、開発面において当該市場での技術は競合他社においても日々進化しており、当社も来期に向けた新しいセンサーの技術開発をさらに進めてまいります。特に、汗孔と隆線を使った認証アルゴリズムに関する海外も含めた14件の特許申請は全て権利化されております。この技術では、偽造指による認証がほぼ不可能になりました。金融業界のシステムなど、成りすましに対する対策が不可欠なシステムにおいての活用が見込まれており、スマートフォンだけでなく強固な本人認証を必要とするシステムへの組み込みを提案してまいります。その他、農業業界でのスマート農業での応用等及び美容業界での皮膚顕微鏡等への応用等の開発を進めてまいります。製造面では中国から国内へのサプライチェーンの追加構築を継続検討しており、新規取引先を開拓しております。それらにより、計画通り進めば大きな売上計上が可能ですが、事業環境が流動的で不確実ゆえに現段階での売上見込みには計上しておりません。

 上記のとおり売上を拡大させ、ここ数年進めてきた費用の見直しを持続していくことにより、収益安定化を目指します。

②FIDO規格の普及

 FIDO(Fast Identity Online)Allianceは、生体認証をはじめとしたオンラインにおける安全な認証の世界標準の提唱と啓蒙を行う国際的な非営利団体です。当社は、FIDOのデファクトスタンダード化の可能性を先取りし、日本初のFIDO加盟企業となりました。またFIDOの創業時からの中核的加盟企業である米国のNNL社と業務提携を行いました。

 情報システムのクラウド化やサービス化が進むことなどにより、利用者が管理するパスワードの数が飛躍的に増加し、日常的な使用の限界を迎えつつあります。昨年は、不正送金問題も多発し、本人の意思によって操作されているかという本人認証の必要性が高まりました。また、犯罪収益移転防止法によりインターネットでの本人確認も可能となりKYC(Know Your Customer)、つまり本人確認業務をインターネットで行うニーズも高まっております。FIDO規格はパスワード使用を生体認証とPKI認証に置き換えることで利用者の安全性、利便性を両立させることを目的とした標準化を目指しており、当社はNNL社及びその他のFIDO加盟企業とも連携してFIDO準拠製品を国内外で販売していくことで当社技術・製品・サービスの市場拡大と普及につなげてまいります。

③研究開発の推進

 当社は産学連携ベンチャーの草分け的存在として、創業以来大学との共同研究により技術的競争力のある製品を生み出してまいりました。生体認証市場において、当社は長年の蓄積があり、現状技術的に優位な立場にあると認識しておりますが、本格的な普及期に入り、他社参入により競争が激化する可能性も十分に想定されます。これまで継続的に中部大学、名古屋工業大学、東京大学の各校との共同研究を進めてまいりました。引き続き他の追随を許さないレベルの技術を確立すべく、中部大学を中心に積極的な研究開発を行ってまいります。

 

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