業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルスの感染者数が減少したことにより、まん延防止等重点措置は解除され、個人消費は持ち直しの兆しが見られるようになりました。世界経済については、東欧や東アジアでの地政学リスクが高まったことにより、資源や穀物等の価格の高騰やサプライチェーンが混乱したことから、世界経済の減速が懸念されており、先行きについては不透明な状況が続いています。

当社グループを取り巻く経営環境について、アニメーション産業は、一般社団法人日本動画協会による「アニメ産業レポート2021サマリー」2021年12月1日発表によれば、10年連続で伸長していたアニメ市場は、コロナ禍に直撃された2020年は2兆4,261億円(前年比96.5%)となりました。一方、海外市場は拡大しており、アニメ業界全体では制作タイトル数は増加し、配信ビジネスの拡大による制作費は上昇しております。

出版産業は、全国出版協会・出版科学研究所による2022年1月25日付発表によれば、紙と電子を合算した出版市場は、前年比3.6%増の1兆6,742億円となりました。紙の出版市場が同1.3%と小幅なマイナスに留まった一方、電子出版市場が同18.6%増と大きく伸長したため、3年連続のプラス成長となっております。電子出版市場における電子コミックは同20.3%増の4,114億円となり、電子出版市場における電子コミックの市場占有率は88.2%となっております。

このような情勢のもと当社グループは、テレビ・配信・ビデオ用アニメーション、劇場用アニメーション、その他にゲーム用、プロモーション用、実写等の制作を行う映像制作事業、コミック誌、書籍(コミックス、ノベルス、原作ガイドブックを含む)の企画・製造・販売及び電子コミックスの配信を行う出版事業、映像作品等へ出資することによる二次利用から生じる収益分配を主とする版権事業を中心に行い、前期に比べ増収減益となりました。

これらの結果、当連結会計年度の売上高は11,872,358千円、経常利益は574,468千円(前期比22.6%減)、映像マスター及びコンテンツ資産の減価償却費の一部については税務上の損金計上が翌期以降に繰延べられるため法人税額が大幅に増加した一方で、繰延税金資産の回収可能性を保守的に検討した結果、当該一時差異に対する繰延税金資産の計上を見送った事により、親会社株主に帰属する当期純利益は5,751千円(前期比99.0%減)となりました。

なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用した数値となっており、当該会計基準の適用により大きな影響の生じる売上高の前年同期比は記載しておりません。

 

各セグメントの業績は次のとおりであります。

 

(映像制作事業)

映像制作事業におきましては、テレビ用アニメーション「SPY × FAMILY」「アオアシ」「王様ランキング」「銀河英雄伝説 Die Neue These 激突」「プラチナエンド」等、配信用アニメーション「攻殻機動隊 SAC_2045」SEASON2、「ULTRAMAN」Season2、劇場用アニメーション「バブル BUBBLE」「サイダーのように言葉が湧き上がる」「DEEMO サクラノオト-あなたが奏でた音が、今も響く-」、配信用実写ドラマ「湯あがりスケッチ」、その他プロモーションビデオ・CМ・ゲーム・遊技機のアニメーションを納品しました。映像制作事業では、物価の高騰により人件費やCG制作費、外注費等が高騰しており、制作期間の長期化により厳しい状況が続いています。新規受注や納品しました一部の作品について改善がみられましたが、受注損失引当金を計上する作品もありました。

以上により、当事業の売上高は5,956,841千円、営業損失は402,799千円(前期は127,285千円の営業損失)となりました。

 

(出版事業)

出版事業におきましては、コミック誌の定期刊行物は「月刊コミックガーデン」(12点)を刊行しました。書籍(コミックス、ノベルス、原作ガイドブックを含む)は「魔法使いの嫁」「転生貴族の異世界冒険録」「魔道具師ダリヤはうつむかない~Dahliya Wilts No More~」の最新刊等、125点を刊行しました。書店向け出版売上はほぼ前年並みとなりましたが、電子書籍売上は従来のオリジナル作品に加え、市場のトレンドに合った作品(なろう系、異世界転生モノ、悪役令嬢モノ等)を適切なタイミングでコミカライズした結果、前年対比40%増を超える成長率となり好調に推移しました。

以上により、当事業の売上高は2,646,940千円(前期比22.5%増)、営業利益は541,427千円(前期比31.9%増)となりました。

 

 

(版権事業)

版権事業におきましては、「攻殻機動隊」「海賊王女」「ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン」「進撃の巨人」「ハイキュー!!」「GREAT PRETENDER」等のシリーズタイトルを中心に、二次利用による収益分配を計上しました。映像マスターとコンテンツ資産の減価償却費は、前期に比べ646,263千円増加しました。

以上により、当事業の売上高は2,932,015千円(前期比37.6%増)、営業利益は590,384千円(前期比19.2%増)となりました。

 

(その他事業)

その他事業におきましては、雑誌のイラスト描きやキャラクターの商品販売等により、当事業の売上高は336,560千円(前期比15.3%増)となり、営業損失は43,788千円(前期は35,725千円の営業利益)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は5,295,244千円となり、前期と比べ799,500千円(前期比17.8%増)の増加となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動による資金の増加は、2,495,851千円(前期は2,145,522千円の増加)となりました。これは主に棚卸資産の減少が2,933,127千円、減価償却費が1,731,043千円、未払印税の増加が398,273千円となり、一方、売上債権の増加が2,047,617千円、前受金の減少が1,572,032千円、法人税等の支払額が276,639千円等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動による資金の減少は、1,443,332千円(前期は1,369,644千円の減少)となりました。これは主に映像マスター等の有形固定資産の取得による支出が1,013,685千円、コンテンツ資産やソフトウェアの無形固定資産の取得による支出が268,208千円等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動による資金の減少は、255,963千円(前期は95,445千円の増加)となりました。これは主に長期借入金による収入が200,000千円となり、一方、自己株式の取得による支出が346,144千円、配当金の支払額が50,314千円、非支配株主への配当金の支払額が48,901千円等によるものであります。

 

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a. 受注制作実績

当連結会計年度における映像制作事業の制作実績及び受注状況を映像制作事業の区分ごとに示すと、次のとおりであります。なお、出版事業及び版権事業は、受注制作ではないため、制作実績及び受注状況を記載しておりません。

映像制作実績

区分

制作高(千円)

前年同期比(%)

TV・配信・ビデオ用アニメ

3,978,613

35.5

劇場用アニメ

790,741

△52.7

その他のアニメ

990,292

27.1

その他

110,418

107.0

合  計

5,870,066

7.9

(注)1.金額は、製造原価によっております。

2.区分を、当連結会計年度よりセグメントごとの売上高及び利益又は損失の金額に関する情報並びに収益の分解情報と合わせた事により、前連結会計年度の区分「劇場アニメ」「TV・ビデオアニメ」「ゲームその他」を組替て前年同期比を記載しております。

受注実績

区分

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

TV・配信・ビデオ用アニメ

6,731,500

30.0

11,227,300

33.5

劇場用アニメ

429,200

△57.9

1,360,000

△25.3

その他のアニメ

1,091,398

35.9

701,967

59.7

その他

105,590

2,461.8

4,400

△87.3

合  計

8,357,688

19.3

13,293,667

24.2

(注)区分を、当連結会計年度よりセグメントごとの売上高及び利益又は損失の金額に関する情報並びに収益の分解情報と合わせた事により、前連結会計年度の区分「劇場アニメ」「TV・ビデオアニメ」「ゲームその他」を組替て前年同期比を記載しております。

b. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

映像制作事業

5,956,841

11.3

出版事業

2,646,940

22.5

版権事業

2,932,015

37.6

その他事業

336,560

15.3

合  計

11,872,358

19.5

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

前連結会計年度

(自 2020年6月1日

  至 2021年5月31日)

当連結会計年度

(自 2021年6月1日

  至 2022年5月31日)

相手先

金額 (千円)

割合 (%)

相手先

金額 (千円)

割合 (%)

㈱アニプレックス

1,591,856

16.0

Netflix Global,LLC

1,381,921

11.6

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。

また、当社経営陣は、連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の報告数値及び偶発資産・負債の開示並びに当該会計期間における収益・費用に影響を与える見積りを合理的に行わなければなりません。経営陣は見積りに影響を与える要因を把握し、把握した要因に関して適切な仮定設定、情報収集を行い、見積り金額を計算しております。実際の結果は、見積り特有の不確実性により、見積りと異なる場合があります。

なお、重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

また、新型コロナウイルス感染症拡大による会計上の見積りへの影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a. 概況

概況につましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

b. セグメント別の状況(売上高、営業利益の分析)

セグメント別の状況につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

c. 営業外収益(費用)

営業外収益は54,843千円(前期比31.8%減)となりました。

主な要因は為替差益が25,109千円増加し、持分法による投資利益が24,059千円、補助金収入が22,134千円減少したことであります。

営業外費用は53,868千円(前期比86.6%増)となりました。

主な要因は持分法による投資損失が31,111千円増加したことであります。

d. 特別利益

特別利益の計上はありませんでした。

e. 特別損失

特別損失は28,386千円(前期比26.1%減)となりました。

主な要因は建物及び構築物、その他(器具備品、ハード、ソフト等)、土地において減損損失が10,017千円減少したことであります。

f. 税金等調整前当期純利益

以上の結果、税金等調整前当期純利益は546,082千円(前期22.4%減)となりました。

g. 法人税、住民税及び事業税(法人税等調整額)

法人税、住民税及び事業税の負担額は法人税等調整額を含め567,772千円(前期比119.2%増)となりました。

h. 親会社株主に帰属する当期純利益

以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は5,751千円(前期比99.0%減)となりました。

 

③ 当連結会計年度の財政状態の分析

a. 資産

資産合計は、11,415,446千円(前期比3.7%減)となりました。

流動資産につきましては、主に受取手形、売掛金及び契約資産(前連結会計年度末は受取手形及び売掛金)が2,047,683千円、現金及び預金が799,500千円増加し、一方、仕掛品が2,951,933千円減少し、結果、8,958,421千円となりました。

固定資産につきましては、主に映像マスターが268,762千円増加し、一方、コンテンツ資産が763,092千円減少し、結果、2,457,025千円となりました。

b. 負債

負債合計は、5,957,266千円(前期比1.8%減)となりました。

流動負債につきましては、主に未払印税が398,273千円、未払法人税等が305,842千円増加し、一方、前受金が1,572,032千円減少し、結果、5,450,046千円となりました。

固定負債につきましては、主に長期借入金が200,000千円増加し、結果、507,220千円となりました。

c. 純資産

純資産は、5,458,180千円(前期比5.6%減)となりました。

主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益及び剰余金の配当により利益剰余金が96,709千円、自己株式の取得により自己株式が346,144千円増加したことであります。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因について

「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

⑤ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

キャッシュ・フローの状況

キャッシュ・フローの状況につましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

⑥ 資本の財源及び資金の流動性

a. 資金需要

当社グループの運転資金需要の主なものは、映像制作事業並びに出版事業に係わる売上原価及び、労務費、業務委託費及び外注費が主な部分を占めております。また、版権事業における権利取得のための出資金があります。

設備資金といたしましては、編集機器、コンピュータ購入費やネットワーク費等があります。

b. 財務政策

運転資金につきましては、自己資金で対応することを原則としておりますが、自己資金で賄えない急な資金需要が発生する等の場合は、金利動向を踏まえ必要に応じ長期・短期借入金で調達しております。

設備資金及び作品への出資金につきましては、社債の発行、長期借入金により最適な調達を行っていく方針であり、調達時期、条件について最も有利な手段を選択するべく検討することとしております。

 

⑦ 経営者の問題認識と今後の方針について

「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等及び2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

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