当社は、次の3点を経営の基本理念としています。
① 金融サービス業におけるベストカンパニーを目指すこと。
② 中立な姿勢と公正な思考に徹すること。
③ 個の価値を尊び、和の精神を重んじること。
当社は社会的資産の最適な配分実現のため、あらゆる状況下の金融や投資に係る市場の調査・分析・予測結果を情報(コンテンツ)やアドバイスとして提供し、来るべき成熟社会の一翼を担いたいと考えております。そのため、専門性はもとより利益相反を徹底的に排除する中立公正な思考に徹する企業姿勢、そして優れた「個」の力が発揮される社内環境を維持してまいります。
(2) 経営環境
当社の事業である情報サービスと関連性の高い国内株式市場におきましては、2020年がコロナショックでの暴落後に急上昇した「大荒れ」だったことと対照的に、2021年の日経平均は、上値は重いが下値は堅く往来を繰り返した年でありました。そのような中においても、2021年9月14日の東京株式市場では日経平均株価は3万670円10銭と1990年8月以来約31年ぶりの高値を付け、新型コロナウイルスのワクチン接種の進展で投資家心理の改善が伺われました。また、同様に当社事業と関連性の高い2021年の暗号資産業界は、11月にビットコインとイーサリアムが過去最高値を更新し、それに伴い暗号資産の時価総額が史上最高値を更新するなど、マーケット全体が拡大する年になりました。こうした経済動向の中ではありますが、当社グループでは中期経営計画(2021年12月期~2023年12月期)を指針として、既存事業の規模拡大、底上げによる安定した収益の確保及び、新規事業での事業領域の拡大と収益の創出を目指して事業を推進してまいりました。
(3) 目標とする経営指標
当社グループは、高付加価値による収益性の高い企業グループを目指しており、収益拡大と持続的成長の競争力を高めるため、資本効率を意識した経営に取り組んでおります。2021年12月16日公表の「事業計画および成長可能性に関する事項」において、長期的な成長目標として、既存事業をベースに、フィスコブランド活用並びに新規事業(M&Aの活用)により、事業規模拡大を目指しております。
また、当社グループの経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標(以下「KPI」といいます。)として収益拡大および持続的成長についてのKPIを掲げており、2022年度以降の具体的な数値目標として、収益拡大のKPIについては、売上高前期比15%増、売上高営業利益率および売上高経常利益率は15%以上を目標とし、持続的成長のKPIでは、自己資本比率60%以上の維持およびIR支援企業数を2023年12月期までに1,000社契約を目指すことを目標としております。2022年12月期における目標値は、売上高1,313百万円(前期比13.5%)、売上高営業利益17.7%、売上高経常利益率17.6%となり、持続的成長のKPIについては、自己資本比率67.6%、IR支援契約社数は、2021年12月期では、約600社の契約社数となっておりますが、2022年12月期には約800社を目標としております。なお、当該KPIの各数値については有価証券報告書提出日現在において予測できる事情等を基礎とした合理的な判断に基づくものであり、その達成を保証するものではありません。
(4)中長期的な会社の経営戦略
① 情報サービス事業
主力事業である金融・経済情報配信サービス分野において、個人投資家向け販売サイト「クラブフィスコ」では、サイトリニューアル以降、売上も堅調に増加しております。自社の投資レポートのほか、投資教育、暗号資産など今後も個人投資家の関心が高い分野において、フィスコソーシャルレポーターをはじめとした著名な個人投資家の投資手法をまとめた投資教育教材の拡販の推進、「Zaif Research」への暗号資産コンテンツ提供を行ってまいります。また、従来の金融機関に加え、機関投資家向けのアナリストレポートの販売にも注力いたします。また、投資教育、暗号資産など今後も個人投資家の関心が高い分野において、動画による投資教育講座、アナリスト養成講座など収益化に向けたサービスメニューのラインナップを増強することで、販売の拡大につなげてまいります。さらに、フィスコブランドを活用した広告収入が大きく売上を伸ばしたことから、幅広い広告主へフィスコブランドを訴求するなど、今後もブランド価値を活かせる事業を探求し、安定的な収益の確保に努めてまいります。
企業IR支援サービス分野では、組織力強化やブランドの強化を図ることで、統合報告書ならびに英文翻訳業務の拡大を図り、気候関連財務情報開示(TCFD)支援サービス、環境情報開示(CDP)質問書支援サービス、株式報酬制度支援サービス、コーポレートガバンス対応支援サービス等、企業のIR に関する課題をワンストップで解決できる体制構築と事業拡大を目指しております。このほか、バーチャル株主総会および議決権行使アプリケーションサービスや株主優待サポートサービスの新規受注、サービス提供による新たな事業収益の獲得を図ってまいります。
利益面につきましては、個人投資家向けのサービスの復調が見込まれる他、利益率の高い案件の獲得および広告収入の増加に加え、継続的に取り組んでいる費用削減や外注先の見直し等の施策を実施することにより、安定的な利益確保、黒字幅拡大を見込んでおります。
② 広告代理業
広告代理業では、新型コロナウイルス感染症による企業広告およびクライアント企業の広告活動の自粛の緩和に伴い、契約案件数も回復傾向にあります。従来の紙媒体での広告に代わり、オンライン広告の割合が増加傾向にあるため、引き続きバナー広告、ネット動画制作等の広告におけるトレンドや媒体特性なども踏まえて、企業IRや広告において、提案力の強化を進めながら、利益率の高い案件の獲得につなげてまいります。セグメント売上高については43百万円を見込んでおりますが、売上および利益の確保を目指し、広告制作の収益性の向上につなげてまいります。
③ 暗号資産・ブロックチェーン事業
フィスコ・コンサルティングでは、引き続き暗号資産に対する自己勘定投資を予定しており、暗号資産の価格の推移を見極め、慎重にトレーディングを行ってまいります。当社発行暗号資産フィスココイン(FSCC)の株主優待による配布による利用促進など、認知度向上を図りつつ、暗号資産分野における新規ビジネスの創造、フィスココイン(FSCC)の価値向上を通じて、当社の企業価値の向上を目指しています。
また、フィスココイン(FSCC)の取扱い交換所である「Zaif」を中心に、今後もCAICA DIGITALグループとの暗号資産分野において、営業促進の連携、暗号資産ビジネスの強化、フィスココイン(FSCC)の利用範囲の拡大を図り協業体制を継続していきます。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、経営方針に基づく経営戦略の実践において、投資家の皆様のご期待にお応えし、友好かつ継続的な関係を維持していただくためには、健全な財務体質強化と持続的な成長拡大が必要であると認識しております。そのため、下記の当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題を掲げ、その対応に取り組んでまいります。
① コンテンツ制作体制の増強・整備と品質管理体制の強化
当社グループは、既存事業の中核である情報サービス事業におけるコンテンツの品質を高めるため、オペレーションの最適化を進めております。
主力事業である情報サービス事業において、コンテンツ制作の多極化に取り組み、より専門化、より多様化する商品を開発するため、持続的なアナリスト教育とスタッフ個々のレベルアップに取り組むと同時に、客員アナリスト等の外部アナリストによるコンテンツ制作等もより積極的に取り組み、安定的な収益確保に努めます。企業IR支援サービス分野では、統合レポート、アニュアル・レポート、ESGレポート、及び英文翻訳業務の拡大と、スポンサー型アナリストレポート(企業調査レポート)を起点とした、企業の非財務情報を適時配信するソリューション提供サービス、企業のIRに関する課題をワンストップで解決できる体制構築を目指します。
② 販売・マーケティング体制の強化
当社ブランドの強みを生かし、IRコミュニケーション・サービスの需要を引き続き取り込むべく、IRコンサルティング事業本部を中核に営業活動を展開しております。投資教育、暗号資産など個人投資家の関心が高い分野及び機関投資家向けのアナリストレポートの販売など、様々なニーズに即応するサービスの開発提供に取り組んでまいります。
③ ウェブサイト及びスマートフォンアプリ運営の拡充
無料スマートフォンアプリ『株・企業報』、『暗号資産ナビ』及びウェブ版『FISCO』並びに有料課金サイト「クラブフィスコ」においては、定性情報とともに定量情報を横断的に提供しておりますが、特に個別銘柄及び個別資産に関してのデータベースの構築、インターフェイス改良及びデータ処理速度の向上、システムトラブルの対応等に経営資源を継続的・計画的に投下してまいります。
④ システムの強化、バックアップシステムの拡充
コンテンツ供給の多様化、個人顧客をはじめとする供給先の増加、社内情報ネットワークの複雑化、今日的にますます重要となったコンプライアンス上の要請などにより、安全な社内インフラをはじめとするシステムの強化と災害等に対応したバックアップ体制の強化を図っております。今後もこのような内外の体制を厳格に維持する必要があるため重点的に資本投下を継続してまいります。
⑤ コンテンツ配信における最新テクノロジーの適正な評価
当社グループのコンテンツ販売にシステム開発や維持は欠かせないものですが、テクノロジーの進化が思わぬ陳腐化や競争力低下を引き起こす可能性があります。当社グループでは、いたずらに新技術を追い求めるのではなく、俯瞰的にこれをとらえ、適時適切に最新テクノロジーを評価した上で設備投資計画を策定、実行すべきと考えております。
⑥ 内部管理体制の強化
当社が業績を回復させるためには、業務運営の効率化や、上場会社及び金融商品取引業者としての法令遵守、リスク管理、IR充実のための内部管理体制の強化が重要な課題であると認識しております。 このため、今後も業務運営上のリスクを把握してリスク管理を適切に行える体制整備に努め、財務報告に係る内部統制システムの整備をはじめとして、定期的な内部監査の実施によりコンプライアンス体制を強化するとともに、監査役監査の実施によるコーポレート・ガバナンス機能の充実等により、企業としての自浄作用が有効に機能するよう図っていく方針であります。
⑦ 暗号資産・ブロックチェーン事業の拡充、安定化
自社発行の暗号資産フィスココイン(FSCC)の認知度向上を図りつつ、暗号資産分野における新規ビジネスの創造、FSCCの価値向上を通じて、当社の企業価値の向上を目指しています。
⑧ 連結子会社とのシナジー効果の追求
当社グループは、それぞれの事業の特性や強みを活かし、グループ全体の最適化を進めることが重要な課題であると認識しております。今後さらに、顧客に付加価値の高いサービスの提供を可能とするため、グループ全体でのシナジー効果を追求し企業価値の増進に努めてまいります。
⑨ グループ会社間のサービスの提供
グループ間でのサービスの提供が拡大するにつれ、その代価の決定に、より客観的な根拠が必要となっております。このため、きめ細かなコスト計算を図るとともに第三者価格などの情報を入手し、合理的な算定根拠を明示して、厳格な承認手続のもとにグループ間の取引を進めてまいります。
⑩ チャイニーズウォールの拡充
当社のみならず、連結子会社にも内部監査体制を充実させ、フロントランニング行為や利益相反を起こす可能性のあるリスクに備えて組織的な内部監査体制のもとにチャイニーズウォールを拡充する必要があります。
⑪ 関係会社の適時適切な計数管理
連結財務諸表作成のための各子会社の適時適切な会計記録の作成と予算管理が課題となっており、月次報告を基礎とする定期的な計数管理の精度を高めるために当社及び各子会社の連携を強化してまいります。
⑫ 全社的な課題
内部統制の運用及びその評価については取締役による検証のほか、一定の計画に従った定期的な内部監査や外部専門家によるチェックを実施しており、継続的に有効な管理体制を維持しております。直近の課題として国際会計基準導入を視野に、全社統制、決算・財務報告プロセスにおける統制及びIT全般統制を整備してまいります。
お知らせ