課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであり、達成を保証するものではありません。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、2030年に目指す姿・目標として「2030ビジョン」を2021年に策定しました。『木とともに未来を拓く総合バイオマス企業として持続的な成長を遂げる』を目指す姿として“成長事業への経営資源のシフト”“CO₂削減、環境課題等の社会情勢激変への対応”を基本方針としています。グラフィック用紙の需要減少に適切に対応しながら、経営資源を成長事業・新規事業にシフトし、同時に様々な社会的要請にも耐えうる、筋肉質の体質に変えていきます。

今後も当社グループは、持てる経営資源をフルに活用し、厳しさを増す国際競争を勝ち抜くとともに、グループの成長を実現し、株主価値の持続的拡大を追求していきます。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループは、「2030ビジョン」の前半にあたる2021年4月から2026年3月までの5年間を「中期経営計画2025」の期間とし、『事業構造転換の加速』を基本戦略に、“成長事業への経営資源シフト”“新規事業の戦力化加速”“基盤事業の競争力強化”の3つを重点課題に取り組んでいきます。

 

 <中期経営計画2025 - 目標>

・売上高           1兆1,000億円  (2025年度)

・営業利益            400億円以上(早期に)

・EBITDA           1,000億円  (安定的に)

・D/Eレシオ             1.5倍台  (2025年度)

・ROE            5.0%以上 (2025年度)

 

(3) 会社の対処すべき課題

① 中期経営計画2025(2021年度~2025年度)の達成に向けて

足もとの世界経済を見渡すと、ロシアのウクライナ侵攻に端を発した不安定な国際情勢が長期化の様相を見せており、サプライチェーンの混乱による急激な物価上昇が進行するなど、世界レベルでの景気後退が懸念されています。国内に目を転じても、予測を超える原燃料価格の高騰や日米の金融政策の違いによる急激な円安が進行しており、当社グループを取り巻く経営環境は非常に厳しい状況にあります。

このような経営環境の変化に対しては、収益改善対策の実行が急務であり、2022年度の重点課題として「石炭使用量削減の加速」、「洋紙事業の構造改革」、「Opalの収益改善」に取り組みます。まずは、燃料転換や省エネの推進に加え、休転集約などによる生産計画の最適化によって、石炭使用量の削減を加速させます。同時に、生産品目の絞り込みなどによる生産効率の最大化や各種製品の更なる価格修正によって、洋紙事業の収益構造改革を進めます。また、Opalにおいては追加の価格修正や原価改善の実施に加え、パッケージ一貫体制の強化によって収益拡大を実現します。

上記の重点課題に加え、成長事業の拡大や新規事業の早期戦力化、温室効果ガスの削減といった重要な経営課題への対応も加速させ、中期経営計画2025の目標の達成に向けて取り組んでいきます。

 

② 事業構造転換の加速

(イ)パッケージ

紙パック事業では、ストローレス学乳容器「School POP®」の環境性能と教育効果が高い評価を受け、170を超える区市町村に採用が拡がりました。また、「軽量口栓の装着」、「操作性向上」、「全自動洗浄」など、様々なニーズに対応可能な新型充填機(四国化工機株式会社と共同開発)の販売は、当初計画以上に拡大しています。2021年6月にはElopak社の一部株式を取得し、それ以降幅広く協議を重ね、2022年に入って包括的協業に関する覚書やオセアニア地域におけるライセンス契約を締結しました。今後も同社との連携をさらに深め、国内外での新たなビジネスチャンスを追求していきます。

海外事業は、Opalが、新型コロナウイルス感染症や物流混乱の影響を大きく受けましたが、旧オーストラリアンペーパー社とオローラ社から買収した板紙・パッケージ事業のシナジー効果は、ほぼ計画通りに発現しました。また、伸長が見込まれる豪州段ボール需要を取り込み、加えて原紙から製品までの一貫体制を更に強化するため、豪州ビクトリア州において新たな段ボール工場を建設する計画です。今後は、オセアニア地域での需要に対応した生産体制を構築し、収益拡大を図ります。

北米の日本ダイナウェーブパッケージング社では、ドライパルプマシンなどの設備投資が効果を発揮し、パルプ価格の高騰という追い風によって利益拡大につながりました。欧州の十條サーマル社をはじめとする他の海外拠点においても、環境配慮型の様々なパッケージ製品を市場投入するとともに当社グループ各社との連携強化も進め、事業の拡大を加速させます。

(ロ)家庭紙・ヘルスケア

日本製紙クレシアでは、「長持ちロール」の省スペース化や持ち運びの便利さなどがお客様に支持され、包装フィルムや芯のゴミ減少、輸送効率向上によるCO₂削減にも寄与し、業界全体の長尺化の流れに先鞭をつけました。

また、富士工場に続き石巻工場でも洋紙設備の既存インフラを有効活用した新設備の稼働による事業の拡大を計画しています。価格修正やグループ内での融通パルプ使用拡大による収益向上も進めます。

(ハ)ケミカル・新素材

ケミカル事業では、機能性コーティング樹脂や高機能性セルロースの設備を2021年に増強し、今後の拡販に向けた供給体制が整いました。引き続き、需要動向を見据えたタイムリーな投資の継続と研究開発リソースの拡充により、お客様のニーズに的確に応える体制を確立します。

江津工場のCNF「セレンピア®」が多くのお客様に採用され、量産機のフル稼働化に目途が付いてきました。また、養牛用の高消化性セルロース「元気森森®」や抗菌・抗ウイルス性能を付与した製品など、セルロースを起点とした新たな製品開発を幅広く進め、社会課題の解決にも寄与する製品を提供していきます。

これらの製品を早期に事業化するために、既存事業の人材再配置を含めた開発・製造・販売体制の強化に加えて、共同開発企業との外部連携や行政・大学等の研究機関を交えた枠組み作りも積極的に進めます。

(ニ)エネルギー・木材

2023年1月に、勇払エネルギーセンター合同会社が国内最大級のバイオマス専焼発電設備(75MW)を稼働する予定です。カーボンニュートラル社会の構築に向けた再生可能エネルギーの利用拡大を進めるとともに、当社グループの持つ国産材集荷網や海外のバイオマス燃料調達機能をフル活用した燃料供給ビジネスの拡大も図ります。

(ホ)紙・板紙

新聞・印刷・情報用紙などのグラフィック用紙は需要の回復が見込めないことから、引き続き需要減少を先取りした生産体制再編成に取り組みます。併行して、岩国工場のケミカル事業や富士工場の家庭紙事業のように工場の多様化を進める中で、当社の得意とする木質資源の活用をベースとした新たなセルロース事業の立上げを推進します。

一方で、板紙や包装材料に紙器原紙なども加えた広義のパッケージ系品種の需要は比較的堅調です。紙の持つリサイクル性や生分解性という特長を生かして新たなニーズを発掘し、「紙でできることは紙で。」をテーマに様々な用途への展開を図り、環境に優しく豊かな暮らしに貢献する製品を創り出していきます。

 

③サステナビリティ経営の推進

当社グループは、社会や環境の持続可能性と企業の成長をともに追求するサステナビリティ経営を推進しています。

(イ)温室効果ガス削減

2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、2030ビジョンでは「温室効果ガス排出量(2013年度比)45%削減」を掲げています。さらに、環境意識の高まりなど社会情勢の変化を踏まえ、温室効果ガス削減目標の達成前倒しや削減量の上乗せを検討します。引き続きバイオマス燃料などの活用を推進するとともに、脱石炭を軸としたエネルギー構成の見直しも進め、石炭使用量の大幅削減を目指します。また、NEDOによるCO₂分離回収技術に関する調査事業を受託するなど、脱炭素社会の実現に貢献しています。

(ロ)グリーン戦略

森林価値の最大化と木質資源を利用した製品の拡大によって、循環型社会構築と事業基盤強化の両立を目指します。育種・増殖技術の活用による森林の生産性向上やエリートツリーの普及については、自社林だけでなく他社の森林の生産性向上にも寄与することを目指しており、2022年3月には丸紅株式会社とインドネシア植林事業における戦略的パートナー契約を締結しました。また、生物多様性の保全や水資源の確保などによる公益的機能の発揮、国内社有林の活用を通じた林業の活性化にも取り組みます。

さらに、今後のカーボンクレジット市場創設に向け、森林のCO₂吸収源としての価値創出についても、行政や森林保有企業などと連携を強化していきます。

(ハ)製品リサイクル

これまで再資源化が困難であった紙コップや紙パックなどの未利用古紙を活用するため、2022年9月に富士工場に再資源化設備を導入する予定です。本設備を紙容器リサイクル事業の拠点として、リサイクルチェーンの構築を進めていきます。

また、広島県大竹市や熊本県八代市と連携した古紙リサイクルの輪を拡げ、長期にわたる安定的な資源調達を目指すとともに、総合的なリサイクルシステムを構築していきます。

(ニ)人材リソースの最大活用

当社グループでは人材リソースの最大活用に取り組んでいます。国内の人口減少や少子高齢化をはじめとした人材を取り巻く環境変化に対応し、働き甲斐や働きやすさ、女性活躍を含めたダイバーシティの推進、シニア世代も活躍できる安全な職場づくりなど、エンゲージメントの強化を進めると同時に、事業構造転換の加速に必要な人材の再配置を円滑に進めるため、組織や管理体制を見直していきます。

 

中期経営計画2025の目標達成には、成長事業での収益拡大とセルロースを活用した新規事業の早期戦力化が不可欠です。投資については、事業構造転換の加速に必要な投資を厳選し、財務規律も十分に考慮して進めていきます。

また、資金のみならず当社グループの人材・資産を含むリソースを成長分野へ積極的に振り向けることで、グループ全体の事業価値最大化を追求し、ステークホルダーへの多様な価値提供を実現することによって、永続的に社会から必要とされる企業として持続可能な社会の構築に貢献していきます。

 

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