業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

なお、当連結会計年度の期首より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を適用しております。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度は、半導体・電子材料関連事業やトナー事業において新型コロナウイルス感染症の影響による前連結会計年度の低迷から大きく売上高が回復した他、当連結会計年度前半においてはスマートフォン向け光学フィルムの新規受注案件が加わったことなどから、売上高は32,785百万円と、前年同期に比べ2,016百万円の増収(前年同期比6.6%増)となりました。

なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を適用したことによる影響は1,911百万円であり、従来の基準による売上高は34,696百万円と前年同期と比べ3,928百万円の増収(前年同期比12.8%増)となりました。

利益面では、前連結会計年度までに実施した構造改革が奏功し固定費その他コストの削減が進んだところに、大幅な増収となり、第2四半期以降は対ドルでの円安も追い風となったことに加え、新製品関連の試作・試験入金も当初予想を大きく上回りました。原燃料価格の高騰や、前連結会計年度より継続した一過性のコスト抑制策終了に伴う労務費の増加等があったものの、原燃料価格上昇分の販売価格へ転嫁を進め、急激な需要変動に伴う生産対応を多能工化及び柔軟な人材配置で対応したことでコストアップを最小限に留めることが出来たことなどから、営業利益は1,982百万円の利益(前年同期は15百万円の損失)となりました。

なお、収益認識会計基準等を適用したことにより、営業利益は4百万円減少しております。

経常利益は、ディスプレイ向けフィルム加工事業を手掛ける持分法適用関連会社の好調が加わり、2,310百万円と、前年同期に比べ2,164百万円の増益となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は、関係会社株式売却益や洋紙事業の資産等の譲渡に伴う特別利益の計上の影響もあり、当連結会計年度中に予定していた米国トナー工場跡地の遊休資産売却が2022年4月にずれ込んだ影響はあったものの1,650百万円の利益(前年同期は1,152百万円の損失)となりました。

また、連結貸借対照表における資産の部は、前連結会計年度末に比べ2,916百万円増加し、43,574百万円となりました。

負債の部は、前連結会計年度末に比べ613百万円増加し、25,957百万円となりました。

純資産については2,302百万円増加し、17,616百万円となりました。

 

セグメントの業績は以下のとおりであります。

 トナー事業

 トナー事業においては、前連結会計年度後半の販売数量の回復基調が年度を通じて継続し受注が堅調に推移したほか、年度後半における為替相場の円安傾向も追い風となりました。

 利益面では、原燃料価格上昇分の一部を販売価格に転嫁したことや、2020年9月のトナー米国工場閉鎖に伴う固定費削減効果が通期で貢献しました。

 この結果、売上高は12,303百万円(前年同期比20.1%増)となり、セグメント(営業)利益は1,198百万円(前年同期は291百万円の損失)となりました。

 なお、収益認識会計基準等を適用したことによる影響額は1,177百万円であり、従来の基準による売上高は13,481百万円(前年同期比31.6%増)となりました。

 電子材料事業

 電子材料事業においては、半導体、電子材料関連市況が年度を通じて好調に推移しました。

利益面では、新型コロナウイルス感染症の影響による前連結会計年度の低迷から大きく売上高が回復した他、年度前半にはスマートフォン向け光学フィルム案件が寄与、また、年度を通じた新製品の試作・試験入金も当初予想を大きく上回り、前年同期比で大幅な増益となりました。

 この結果、売上高は6,121百万円(前年同期比8.9%増)となり、セグメント(営業)利益は970百万円(前年同期比67.7%増)となりました。

 なお、収益認識会計基準等を適用したことによる影響額は473百万円であり、従来の基準による売上高は6,594百万円(前年同期比17.3%増)となりました。

 

 機能紙事業

 機能紙事業においては、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた前連結会計年度と比較してコロナ禍からの市況回復が見られたものの、洋紙事業や磁気乗車券販売などの既存事業の縮小が進んだほか、洋紙事業製品のうち「トモエリバー」関連製品の製造及び販売を移管したことにより前年同期並みの売上高に留まりました。

 利益面では、2019年12月に実施した抄紙製造設備の一部停機(7号抄紙機)を含む構造改革の効果等により、前年同期に比べ赤字幅を圧縮しております。

 この結果、売上高は10,195百万円(前年同期比0.1%減)となり、セグメント(営業)損失は162百万円(前年同期は370百万円の損失)となりました。

 なお、収益認識会計基準等を適用したことによる影響額は237百万円であり、従来の基準による売上高は10,432百万円(前年同期比2.3%増)となりました。

 セキュリティメディア事業

 セキュリティメディア事業においては、主要製品であるカード関連、通帳類等の需要の停滞が継続したものの、証書類の特需による販売増加が利益に貢献しました。

 また、当連結会計年度の期首より日本カード株式会社が連結対象から外れたこともあり、売上高は前年同期比で547百万円減少し、営業利益は60百万円減少しました。

 この結果、売上高は3,928百万円(前年同期比12.2%減)となり、セグメント(営業)利益は257百万円(前年同期比19.1%減)となりました。

 なお、収益認識会計基準等を適用したことによる影響額は23百万円であり、従来の基準による売上高は3,951百万円(前年同期比11.7%減)となりました。

 新規開発事業

 主にiCas関連製品の開発と販売を進める中で、新製品上市が始まり、売上高は97百万円(前年同期比0.9%増)となり、セグメント(営業)損失は438百万円(前年同期は350百万円の損失)となりました。

 その他の事業

 売上高は139百万円(前年同期比6.0%増)となり、セグメント(営業)利益は113百万円(前年同期比92.8%増)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ748百万円増加し、4,737百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は、前期に比べ849百万円減少し3,364百万円となりました。これは主に、棚卸資産の増加1,177百万円があったものの、税金等調整前当期純利益2,537百万円や減価償却費1,717百万円、仕入債務の増加1,321百万円などがあったことによるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、前期に比べ1,088百万円減少し217百万円となりました。これは主に、連結範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入550百万円や商標権譲渡による収入200百万円があったものの、有形固定資産の取得による支出919百万円があったことなどによるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は、前期に比べ228百万円増加し2,651百万円となりました。これは主に、長期借入れによる収入4,711百万円があったものの、有利子負債の圧縮に努め短期借入金の純減少額2,674百万円や長期借入金の返済による支出4,629百万円などがあったことによるものです。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

  至 2022年3月31日)

前期比(%)

トナー事業(百万円)

9,700

16.7

電子材料事業(百万円)

4,542

9.3

機能紙事業(百万円)

10,028

8.2

セキュリティメディア事業(百万円)

3,142

△9.2

新規開発事業(百万円)

50

8.1

合計(百万円)

27,464

8.8

 (注)金額は製造原価によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

 

b.受注実績

 当社グループ(当社及び連結子会社)は、一般市況及び直接需要を勘案して生産を行っております。

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

  至 2022年3月31日)

前期比(%)

トナー事業(百万円)

12,303

20.1

電子材料事業(百万円)

6,121

8.9

機能紙事業(百万円)

10,195

△0.1

セキュリティメディア事業(百万円)

3,928

△12.2

新規開発事業(百万円)

97

0.9

報告セグメント計(百万円)

32,646

6.6

その他の事業(百万円)

139

6.0

合計(百万円)

32,785

6.6

 (注)セグメント間の取引については、相殺消去しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計方針及び見積り

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績等

1)財政状態

当連結会計年度末の資産の合計は43,574百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,916百万円の増加となりました。流動資産は21,394百万円で、前連結会計年度末に比べ2,912百万円の増加となり、その主な要因は、需要回復に伴う生産増加により製品等の棚卸資産が増加したことなどによるものです。固定資産は22,180百万円で、前連結会計年度末に比べ3百万円の増加となり、その主な要因は、経年による減価償却により有形固定資産等が減少したものの、持分法投資利益の計上により投資有価証券が増加したことなどによるものです。

当連結会計年度末の負債の合計は25,957百万円となり、前連結会計年度末に比べ613百万円の増加となりました。このうち流動負債は14,843百万円で、前連結会計年度末に比べ1,009百万円の減少となり、その主な要因は、受注増加に伴う生産設備稼働率向上による原材料調達及び使用燃料費の増加に仕入価格高騰も加わったことから仕入債務が増加したものの、運転資金としての短期借入金等が減少したことなどによるものです。固定負債は11,114百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,622百万円の増加となり、その主な要因は、シンジケートローンによる長期借入金等が増加したことなどによるものです。なお、当連結会計年度末における有利子負債残高は12,654百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,800百万円の減少となりました。

また、当連結会計年度末の純資産の合計は17,616百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,302百万円の増加となりました。これは退職給付に係る調整累計額が減少したものの、為替相場変動に伴う為替換算調整勘定の増加や前連結会計年度に比べ大幅に改善した業績による親会社株主に帰属する当期純利益の計上などにより株主資本が増加したことなどによるものです。

 

2)経営成績

 当連結会計年度の経営成績につきましては、当社グループの業績を牽引した半導体関連事業や光学フィルム関連事業、並びにトナー事業における受注が堅調に推移したことなどにより、売上高が32,785百万円となり、前連結会計年度と比べ2,016百万円増加いたしました。営業利益は売上高の増加が影響したことに加え、前連結会計年度までに実施した構造改革等に伴い固定費を中心としたコスト削減や原材料等の価格高騰の販売価格転嫁が進んだことから1,982百万円(前年同期は15百万円の損失)となりました。各事業及びセグメント別の状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

 営業費用のうち売上原価は26,027百万円となり前連結会計年度と比べ245百万円増加し、売上総利益率も売上高増加とコスト削減により前連結会計年度の16.2%から20.6%に改善しました。販売費及び一般管理費は4,775百万円で前連結会計年度と比べ227百万円の減少となりました。

 当連結会計年度の経常利益につきましては、営業外収益に持分法による投資利益459百万円を計上したことなどから2,310百万円となり、前連結会計年度と比べ2,164百万円の増加となりました。

 親会社株主に帰属する当期純利益は、特別利益に洋紙事業の資産等の譲渡に伴う商標権譲渡益を計上したことなどもあり1,650百万円(前年同期は1,152百万円の損失)となりました。

 

3)キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物は、4,737百万円となり、前連結会計年度末に比べ748百万円増加いたしました。なお、当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの経営に影響を与える大きな要因としては、当社グループは様々な業界に製品を提供しております。これらの製品を取り巻く事業環境は変動が激しく、市況変動並びに技術革新等の影響を強く受けます。また、収益面では、特に主要原材料である各種石油化学製品・原紙・パルプ等及び燃料であるLNG等の価格変動が、業績に影響を与える可能性があります。従って、当社グループはこれらの経営成績に影響を与えるリスク要因を分析し、個々に対策を立案し実行に移しております。なお、この詳細は「2 事業等のリスク」に記載しております。

 

c.資本の財源及び資金の流動性

1)資金需要

 当社グループの資金需要のうち主なものは、当社グループ既存製品の製造に係る費用及び製品の品質向上、原価低減のための設備改善並びに新製品開発投資等によるものであります。

2)財務政策

 当社グループは現在、運転資金及び設備投資資金については、内部資金及び借入により資金調達をすることとしております。借入による資金調達に関しては、運転資金としての短期借入金、設備等の長期借入金を当社及び各連結子会社が調達しております。その一部はグループ内資金の効率化を目的とし一部グループ会社間で資金融通を行っております。

 当連結会計年度においては、既存取引のある金融機関6行と総額3,600百万円のシンジケートローンによる長期資金の調達を行っており、資金繰りの安定化と盤石な財務基盤の構築を図っております。また、緊急時の流動性補完枠として同じく既存取引のある金融機関5行と総額5,000百万円のシンジケート形式のコミットメントラインを設定しており、十分な手元流動性の確保に努めております。なお、シンジケートローン契約及びコミットメントライン契約他一部の借入契約には、財務制限条項が付されておりますが、これに抵触する可能性は低いと考えております。

 

d.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループが経営上の目標の達成状況を判断する客観的な指標は、売上高、営業利益、親会社株主に帰属する当期純利益、ROA(総資産利益率)、新製品売上高比率(連結売上高に占める新製品売上高の比率)であります。

 第8次中期経営計画(2022年3月期~2026年3月期)の2年目である2023年3月期の目標値は売上高33,500百万円、営業利益1,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は1,000百万円であり、2026年3月期にはROA3.0%以上、新製品売上高比率16.0%以上まで向上させることを目指します。

 

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