文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、1914年の創業以来、「誠実」「社会貢献」「開拓者精神」からなる「創業精神」を経営理念に掲げ、事業に挺身してまいりました。当社グループは、この「創業精神」に基づき、時代が求める様々なニーズに応え新しい価値を提供し続ける開拓者として、誠実な企業活動を通じ持続的に成長を続け、社会に貢献することを経営の基本方針としております。
(2)中長期的な会社の経営戦略及び目標とする経営指標
当社グループは、「事業ポートフォリオの転換による新たな成長と企業体質の変革」を主題とした、2026年3月期を最終年度とする5ヶ年の第8次中期経営計画を策定し、「5GやDXを支える事業の展開」「SDGsに資する製品の展開」「構造改革、体質改善を通じた企業価値の向上」を掲げ、新製品の立上げ加速やビジネスモデルの構築、構造改革、風土改革の推進等に取り組むことにより、最終年度には連結売上高360億円以上、営業利益20億円以上、ROA3%以上を目指しております。
初年度となる当連結会計年度は、7号抄紙機の停機、米国のトナー生産からの撤退をはじめとした構造改革の着実な進行に半導体・電子材料関連事業やトナー事業の市況改善や特需案件が加わり、当初計画を大きく上回る結果となりました。2年目となる翌連結会計年度は、電子部品や半導体製造装置関連をはじめとする各種新製品の立ち上げと量産化への移行による売上・利益の積み上げを着実に進め、中期経営計画の着実な推進によりさらなる企業体質の強化につなげてまいります。
(3)経営環境
世界経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により、一時期は大恐慌以来最悪と言われる景気の落ち込みを記録するなど、経済活動はいまだ回復途上にあります。加えて、2022年にはロシア・ウクライナ情勢に端を発する世界的なエネルギー不足や原材料価格の高騰への影響が広がるなど、予断を許さない状況で推移しております。
日本経済においても、感染者数は増減を繰り返し、緊急事態宣言やまん延防止措置が断続的に発出されるなど、収束の見通しは立っておらず、経済への影響は長期化しております。
このような状況のなか、当社グループにおいては、構造改革の着実な推進に、前連結会計年度後半に回復した当社が競争力を有する半導体・電子材料関連事業やトナー事業が年度を通じて堅調に推移し、当初計画を大きく上回る結果となりました。
主要セグメントにおける経営環境等は以下のとおりであります。
①トナー事業
モノクロトナー事業は、世界市場では数量が減少に転じ、2011年頃をピークに年率約3%で減少していることに加え、中国メーカーの市場参入もあり業界全体での需給バランスが崩れ、価格競争が激化しているものの、当連結会計年度においては、前連結会計年度後半の販売数量の回復基調が年度を通じて継続したほか、為替相場の円安傾向も追い風となりました。当社は、独立系トナーメーカーとして売上、開発力、品質、原材料購買力、供給安定性などNo.1のポジションを活かし、縮小する市場の中で価格競争に打ち勝ってシェアを伸ばすことを引き続き目指してまいります。
一方、カラートナー事業は、マシンメーカーの純正トナー値下げ影響による価格低下が一部で見られるものの、全体として年率約4%成長が続いております。今後伸び率は下がるものの成熟市場化するまでには数年かかるものと見込まれ、積極的に新製品開発などを進め、売上、数量、シェアの伸長を引き続き目指してまいります。
なお、ロシア・ウクライナ情勢に端を発する世界経済への影響が懸念される中、トナー事業全般の需給環境に先行き不透明感が漂うほか、原燃料価格高騰の継続が見込まれることなど当事業を取り巻く環境変化への対応も対処すべき課題として認識しております。
②電子材料事業
半導体実装用テープ事業は、主力のリードフレーム固定テープが高い信頼性と採用実績から車載用途を中心に使用されており、家電、自動車のエレクトロニクス化の流れにおいて半導体産業が成長している状況で、中期的な成長が見込まれます。また、半導体製造に使われるQFN用接着テープについても、市場の成長に加え、当社シェアを伸ばすことでリードフレーム固定テープに次ぐ主力製品に育成していくことを目指しております。当連結会計年度においては、半導体市況の好調の影響を受け、堅調な受注が継続いたしました。
ディスプレイ用光学フィルム事業は、スマートフォン、タブレットパソコン、ウェアラブル、車載用途を中心とした中小型パネル市場で展開しております。
特に、高い信頼性を必要とする車載においては、ディスプレイ用飛散防止フィルムの粘着として高いシェアを得ており更なるシェア拡大を進めます。高付加価値を必要とするハイエンドLCD・OLED向けにおいては継続した拡販活動、並びに新製品開発・新規受託の両面からビジネス拡大に取り組んでおります。
③機能紙事業
構造改革を進めている洋紙関連事業は、連結売上高に占める割合は10%以下まで減少しています。このような中、設備の老朽化が進んでいることから、継続的な価値最大化を狙い、マシン統合などの稼働設備の効率化や業務改善を積極的に進めており、2019年末の7号抄紙機の停機に続き、2022年3月末に9号抄紙機の停機したことで、今後さらなる固定費の削減が見込まれます。
成熟事業である塗工紙関連事業は、磁気乗車券等の製品群を取り扱っております。非接触方式に変わる等、システム変更による別素材・方式での代替が徐々に進んでいましたが、新型コロナウィルス感染症拡大の影響に伴い市場縮小が加速いたしました。今後は、2022年4月1日付で完全子会社となった日本理化製紙株式会社を含め、同社と補完関係にある相互の製造設備の有効活用や当社グループの粘接着技術及び塗工・加工技術の強化によるシナジー効果の具現化を加速してまいります。
一方、成長事業として位置付けている機能紙関連事業は、当社の強みである抄紙技術を活かし、パルプ以外の繊維を用いて製品化を進めてまいりました。少量多品種生産への対応が必要とされる為、大手製紙会社の参入がなく、競争環境に恵まれた事業であり、今後様々なビジネスチャンスが期待できます。
④セキュリティメディア事業
有価証券印刷やICカード、ポイントカード、プリペイドカード等の製造、加工及び情報処理関連事業を行うセキュリティメディア事業においては、証書類で特需による販売増加があったものの、カード関連、通帳類等主要製品の需要停滞が継続しております。今後は、デジタル社会におけるセキュリティの追求、キャッシュレスに代表される決済手段の多様化といったニーズへの対応、さらなる事業シナジーの追求を通じて成長戦略の実現に向けた取り組みを推進してまいります。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
経済の先行きには常に不透明感がある中、当社グループは対処すべき主要課題を次のように捉え、重点的に取り組んでまいります。
①中期経営計画の遂行
当社グループは、新たな成長と企業体質強化の同時実現を目指し、「事業ポートフォリオの転換による新たな成長と企業体質の変革」を主題とした2022年3月期から5ヵ年の第8次中計計画を推進しております。
その初年度となる当連結会計年度は、抄紙機の停機、米国のトナー生産からの撤退をはじめとした構造改革の着実な進行に半導体・トナー市況の改善や特需案件が加わり、当初計画を大きく上回る結果となりました。今後も、生産現場の操業改善などの生産性向上施策の更なる進展に加えて、構造改革メニューへの継続的な取り組みを行い、また、半導体市場向けなどの新製品の立ち上げと量産化への移行による売上・利益の積み上げを着実に進めることで、さらなる企業体質の強化につなげてまいります。
②ガバナンス体制の強化
当社グループは、創業精神に「誠実」「社会貢献」「開拓者精神」を掲げ、高い企業倫理のもとにグローバルな企業活動を行っております。引き続き内部統制システムの更なる洗練化に努めるとともに、経営の効率性、透明性及び公正性の確保と更なる充実を図り、もって企業活動を支えている全てのステークホルダーの利益を尊重し、持続的な成長を通じて企業価値を高め社会に貢献する会社を目指してまいります。
③安全な職場環境の整備
当社グループは、従業員により働きやすい職場を提供するため、「安全は利益に優先する」をスローガンに、5Sの徹底、安全対策工事、災害情報共有、危険予知トレーニング、声かけ運動等の安全活動を推進しております。また、新型コロナウイルス感染症対策としては、新型コロナウイルス対策委員会を発足し、当社グループのウイルス対策の指揮を執り、職域接種の実施やテレワーク制度の導入等をはじめとした感染防止策を実施してまいりました。引き続き、状況に応じた感染防止策を継続実施するとともに、労働災害の撲滅、安全な職場環境の整備に取り組んでまいります。
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