当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」といいます。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社の経営成績等に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、以下の記載事項のうち将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
当社が属する国内AIビジネス市場において、市場規模は2019年の9,601億円から2025年には1兆9,356億円まで拡大することが見込まれており、その年平均成長率(CAGR)は12.4%と見込まれております。(出所:富士キメラ総研「2020 人工知能ビジネス総調査」)
国内AIビジネス市場の中で、当社事業は分析サービス、構築サービス及び人材育成サービス等から構成されるサービス市場並びにアプリケーション市場を主たる市場と捉えており、いずれの市場も今後拡大が見込まれております。
一方、市場を支えるデータサイエンティスト(AI人材)の不足数は、3.4万人(2018年現在)であり、2025年には9.7万人、2030年には14.5万人にまで拡大する見込みです(出所:経済産業省及びみずほ情報総研株式会社)。これに対して、政府は2020年7月に「統合イノベーション戦略2020」を策定し、2025年までにAIの基礎知識を持つ人材を年間25万人育成する目標を掲げ、AI技術等の社会実装を目指しています。
加えて、政府は2020年12月にデジタル庁の創設方針を含む「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」を策定し、2021年9月よりデジタル庁が中心となり行政のデジタル化に向けてデータの蓄積・共有・分析の上、行政サービスの質的向上を目指す等、従来の想定を超える形でDX機運が高まっております。
以上のような環境下、企業内においても、蓄積されたデータを活用し、DXを加速させる企業が増加しております。DXに向けた事業アクションとして、自動運転、AI搭載ロボット、情報銀行、地方創生、スマートグリッド、スマートシティ等、各産業におけるAIとビッグデータを活用した新たな事業テーマへの取組みが活発化しており、当社が提供するビッグデータ分析及びAIアルゴリズム開発等を支援する「AI実装支援事業」へのニーズが高まってきております。また、各産業でデータサイエンティストをはじめとする企業内で事業のデジタル化を推進するデータサイエンティスト(DS人材)を含むDX人材の不足が顕在化する中、蓄積された実績やノウハウに裏打ちされた独自のプログラムを活用した当社の「データサイエンティスト育成支援事業」へのニーズも高まってきております。
このような中、当社事業においては、重点産業における提携先を含む既存顧客との取引拡大が進行していること、また継続的な取引が見込みやすいシステム実装案件や育成支援事業が拡大していることを背景に、当事業年度において過去最高の売上高及び利益を計上し、順調に事業が成長しております。特に大企業における全社的なDX推進を支援する大型案件が複数稼働しており、分析の企画から実行、システム実装まで当社が一気通貫で支援する「AI実装支援事業」による収益貢献は今後も増加が見込まれます。加えて、DX人材の内製化ニーズの高まりに伴い「データサイエンティスト育成支援事業」が高い成長率を実現しております。
一方、当社が受注しているAIシステム実装案件の一部において、実装スケジュールが遅延し、追加作業が発生することが明らかになったことから、2021年12月期第1四半期決算より受注損失引当金を計上しております。当事業年度末時点において遅延が継続していることから、追加計上分を含めた受注損失引当金は230,364千円になります。なお、現時点では納品に向けて着実にプロジェクトは進捗しており、2022年3月末を目途に実装が完了する見込みです。
以上の結果、当事業年度の売上高は3,338,207千円(前事業年度比23.5%増)、営業利益は436,900千円(前事業年度比74.5%増)、経常利益は435,424千円(前事業年度比59.7%増)、当期純利益は353,704千円(前事業年度比142.1%増)となりました。
なお、当社は単一セグメントのため、セグメント毎の記載はしておりません。
(当期の業績)
当社の当事業年度末における資産合計は、4,551,340千円となり、前事業年度末に比べて801,867千円増加いたしました。これは主に現金及び預金が642,341千円、仕掛品が184,598千円、前払費用が31,765千円増加した一方で、売掛金が57,902千円減少したこと等によるものであります。
当事業年度末における負債合計は、 763,969 千円となり、前事業年度末に比べて 376,262千円増加 いたしました。これは主に、受注損失引当金が 230,364 千円、未払法人税等が 161,185 千円増加したこと等によるものであります。
当事業年度末における純資産合計は、3,787,371千円となり、前事業年度末に比べて425,605千円増加いたしました。これは、利益剰余金が353,704千円増加したこと等によるものであります。
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前事業年度末に比べて642,341千円増加し、3,246,135千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。
営業活動により獲得した資金は691,650千円(前事業年度は87,474千円の獲得)となりました。これは主に税引前当期純利益の計上、受注損失引当金の増加があったこと等によるものであります。
投資活動により使用した資金は8,686千円(前事業年度は6,157千円の使用)となりました。これは主に投資事業組合からの分配金による収入、敷金及び保証金の回収による収入があった一方、先進技術の研究に備えた有形固定資産の取得による支出があったこと等によるものであります。
財務活動により使用した資金は40,621千円(前事業年度は96,528千円の使用)となりました。これは主に新株予約権の行使による株式の発行による収入があった一方、借入金の返済による支出があったこと等によるものであります。
当社の事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
当社の事業は、受注から売上高計上までの期間が短期であるため、当該記載を省略しております。
当事業年度における販売実績は、次のとおりであります。
なお、当社は、単一セグメントであるため、セグメント別の販売実績の記載はしておりません。
(注) 1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
(注) 1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満の場合は記載を省略しております。
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。財務諸表の作成にあたり、期末時点での状況を基礎に、貸借対照表及び損益計算書に影響を与える会計上の見積りを行う必要があります。
当社の財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (重要な会計方針)」に記載しております。当社の重要な会計方針のうち、見積りや仮定等により財務諸表に重要な影響を与えると考えている項目は次のとおりであります。
当社は、受注案件のうち請負契約のソフトウエア制作において、当事業年度末までの進捗部分について成果の確実性が認められるものを工事進行基準により収益及び費用を計上し、その他のソフトウェア制作は工事完成基準により収益及び費用を計上しております。また、受注案件のうち準委任契約の案件については、役務提供完了時点で収益及び費用を計上しております。
当社は、繰延税金資産の回収可能性の判断に際しては、将来の課税所得の見積額と実行可能なタックス・プランニングを考慮して、将来の税金負担額を軽減させる効果があると合理的に考えられる範囲で繰延税金資産を計上しております。
当社は、受注契約に係る将来の損失に備えるため、当事業年度末時点で将来の損失が見込まれ、かつ、当該損失金額を合理的に見積もることが可能なものについては、翌事業年度以降に発生が見込まれる損失額に対して、受注損失引当金を計上しております。
なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載しております。
当社の将来の経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりです。当社は、これらリスクの発生を回避し、または発生時の影響を抑制するため、事業環境の変化等を注視しつつ、人材確保・育成及び情報セキュリティ対策等に努めてまいります。
当社の資金需要は、営業活動については、データサイエンティストをはじめとする社員の採用費や人件費、本社等の賃料等、受注獲得のための広告宣伝費等の運転資金であります。投資活動については、本社移転や拠点設置に伴う内装工事や保証金等であります。また、今後、戦略的な事業規模拡大を図るために資金需要が発生することもあります。
調達資金の内訳及び使途は以下のとおりであります。
当社は、運転資金、投資資金については、手許現預金や営業キャッシュ・フローで獲得した資金を使用し、不足分については有利子負債での調達を行います。また、余剰資金は具体的な充当機会が発生するまでは安全性の高い金融商品等で運用すると同時に資金効率を図ってまいります。
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