課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、個人資産の最適なアセットアロケーションと次世代への不安無き移転を実現することを目標として、ファイナンシャルウェルネスを実現するためのプラットフォームを創造することを企業ミッションに掲げております。

このミッションに基づき、1990年4月の設立以来、IT(Information Technology)とFT(Financial Technology)の統合による金融リテールビジネスの業務プロセスを最適化するためのシステムを開発・提供してまいりました。

金融リテール、すなわち個人金融市場をターゲットドメインと定義し、情報通信技術と金融ノウハウの双方のバランスを重視する金融ITブティックを目指すことを基本方針としております。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループは、事業の継続的な拡大を通じて企業価値を向上させていくことを経営の目標としております。経営指標としては、事業の収益力を表す経常利益を重視し、拡大を目指してまいります。

 

(3) 経営環境

当連結会計年度におけるわが国の経済は、新型コロナ感染症に対するワクチン接種や治療薬の普及、経済活動の再開やサプライチェーンの回復などもあり、持ち直しの動きがみられました。一方、大幅な円安や物価上昇に加え、ウクライナ情勢の長期化をはじめとする地政学上のリスク、さらに米国や欧州におけるインフレ圧力と金融引き締め、中国の景気減速などが経済動向に不確定要素を与えており、世界経済は依然として先行き不透明な状況が続いております。

 

(4) 中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、個人資産の最適なアセットアロケーションと次世代への不安なき移転を実現するファイナンシャルウェルネスを実現するためのプラットフォームを創造することをミッションに掲げています。新型コロナウイルスの影響による新しい生活様式の定着やシステムソリューション市場の競争激化など事業環境が大きく変化するなか、これを実現するために金融機関のレガシーシステムのDX化と日本人のゴールベースプランニングをDX化することを基本的な手段と考え、以下の経営戦略で事業を推進してまいります。

当社グループにおいては、引き続き主力顧客先である生命保険会社に対して、人生100年時代、大相続時代のためのニーズ分析システムの再構築に注力してまいります。日本人の平均寿命が長くなる中、①死亡保障、医療、がん、介護等あらゆるリスクに備え、老後資金設計等生涯にわたる資金繰りを見える化するトータルライフプランニングシステムの開発を推進します。また、②複数の保険会社で医療、がん、介護等新商品対応作業が復活し、設計書申込書作成システムの開発が回復すると想定されています。その際、変額個人年金保険などの投資型保険商品を加えたトータルライフプランをマルチデバイスによるリモートコンサルティングにより提供するシステムの開発が想定されます。それに加え、③生命保険会社のCOBOL等旧開発言語で構築された契約管理システムのオープン言語化・クラウド化プロジェクトが保険業界の今後10年拡大する巨大マーケットであると認識するとともに、ビッグデータ解析等レガシーシステムのDX化事業を推進してまいります。

事業ポートフォリオの集中を回避するため、銀行や証券会社に対しては、人生100年時代、大相続時代の到来を前提に、資産形成層から資産保全・承継層といった幅広い年代に向けて当社の相続・財産承継システム、ゴールベースプランニングシステムを受託開発で納品するとともに、多様な機能をAPIで提供する事業を拡大してまいります。これにより、今後受託ビジネスと使用料課金ビジネスのバランスを改善していく方針です。また、新事業領域として、①当社グループが開発した豊富な計算ライブラリをAPIで提供し、企業の福利厚生サイトに組み込んで、保険商品の申込みから契約成立までオンライン上で完結する組込型金融ビジネスの展開、②現在拡大しつつある少額短期保険の設計契約管理システムの拡大、③相続・財産承継提案書の代行入力、代行出力によるバックオフィス事業、④金融商品仲介業・会計事務所やファイナンシャルプランナー、さらには今後認可されると予想される個人富裕層向け投資顧問業等のためのプラットフォームの提供活動を推進してまいります。

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループでは、金融リテールビジネスに必要となるシステムを金融機関等及びその顧客に提供することにより、売上高の拡大及び収益性の向上を図り、持続的かつ安定的な成長及びより強固な経営基盤の確立を目指しております。

この目的を実現させるため、当社グループは以下の事項を重要な課題と認識し、その対応に引続き取り組んでまいります。

 

① 市場のニーズに応えるシステムの開発及び提供

当社グループは、主に生命保険会社・銀行・証券会社をはじめとする金融機関にシステムを開発・提供しております。金融機関は、取り扱う金融商品の増加及び消費者ニーズの多様化に対応するため、金融商品の販売に関する業務プロセスを効率的に運営する必要に迫られているほか、金融商品取引法及び保険業法等、関連する法令諸規則を遵守しなければなりません。

政府は「資産所得倍増プラン」を掲げ、「貯蓄から投資へ」を実現するべく金融機関へ個人のニーズやライフプランにあった顧客本位の業務運営を実施することを推進しております。また、金融庁は「高齢社会における金融サービスの在り方」等を通じて、個人の資産寿命延長をサポートするために、自助ニーズに応じた資産形成、管理、コンサルティング機能を強化した金融サービスの提供を金融機関に求めています。

加えて、新型コロナウイルスの全世界的な感染拡大により、企業の情報システム投資ニーズは大きく変貌し、非対面でのビッグデータ解析やAIを活用した意思決定など新たな革新が生まれつつあります。このように、金融機関は効率性や遵法性、機能性など適合させた業務プロセスを構築し金融商品を販売することが求められており、ここに当社グループが開発・提供するシステムを導入する必要性があるものと認識しております。

当社グループは、各金融機関が抱える課題を解決するソリューションを提供することに加えて、現状の新型コロナ禍の環境下において、金融機関の多くが現状の対面型金融商品、保険商品の販売から、デジタルテクノロジーを使いながら非対面コンサルティングによるハイブリッド型営業に重点が移行すると想定し、今後の金融商品のニューノーマルな環境下において予想される非対面による遠隔コンサルティングシステムの開発・提供が必須であると認識しております。

さらに、経済産業省は老朽化、複雑化、ブラックボックス化したレガシーシステムが2025年以降毎年最大で12兆円の経済的損失の発生を予想しており、特に当社顧客の金融機関のレガシーシステムのDX化が国家的課題であると認識されています。

この課題に対処するため、当社グループでは業務プロセスの効率化を志向する金融機関との取引関係の維持・強化、最新のAI、ビッグデータ解析等の動向についての情報収集及び金融機関の販売業務に関する法令諸規則についての情報収集に努め、市場をリードする破壊的革新性あるシステムを開発・提供してまいります。

さらに、アフターコロナの環境下においても、金融庁の提言に対応したバンキングアプリケーション、アカウントアグリゲーション及びライフプランの各機能を統合したマスマーケット向け資産形成アドバイスシステムを提供する一方、資産家及び企業経営者をターゲットとして会計事務所、IFA、FP向けに、クラウド上から個人の複数の投資目標を最適化するゴールベースプランニングシステムの提供を拡大してまいります。結果としてシステムを活用しながら、日本人の個人金融資産の成長拡大による豊かな老後、次世代への円滑な財産の移転を実現させるものであります。

 

② 事業ポートフォリオの分散と既存販売先との取引関係の維持及び新規販売先の開拓

当社グループは、生命保険向けシステム開発事業の売上比率が高く、事業ポートフォリオの分散が十分でない状況であります。また、特定の保険会社顧客への販売比率が高い状況にあります。

このため、当社グループの業績は、生保業界の動向及び特定の販売先の取引金額の多寡に影響を受けやすくなり、今後事業ポートフォリオを分散するとともに特定の販売先への売上の集中を緩和により、収益基盤の安定性を確保することが課題であると認識しております。

当社グループでは、これらの課題に対処するため、銀行・証券会社等非保険会社向け売上を拡大するとともに、既存販売先との取引関係を維持・強化し、販売先のシステム投資予算に占める当社グループ受注比率を高めてまいります。特に子会社の株式会社インフォームを通じて、生命保険システム開発の上流、要件定義工程を含む全工程の業務を受託し、長期的戦略パートナーとしての地位を獲得してまいります。

また、資本提携・業務提携先である会計事務所、会計事務所ネットワーク、IFA、FP向け等を通じて非金融機関向け売上の拡大に努める一方で、新規販売先(保険会社、銀行、証券会社等)への提供及び金融サービスプラットフォームを運営する企業や新興フィンテック企業とのさらなる業務提携の推進、API (Application Programming Interface)の連携等によって、生命保険会社以外への売上を増加させる戦略が重要と考えております。

当社システムの新規金融機関、IFA、FP等への業務開発活動においては、「顧客本位の業務運営」を実現するため資産形成層への投資教育、プライベートバンキング、事業承継財産承継に係る書籍の出版や対面及びオンラインセミナーの開催により、当社プロダクトの取得後の活用方法等のプロモーションや啓蒙活動を継続的に行ってまいります。

 

③ 受託開発収入以外の収益形態の拡大

当社グループの売上高は、受託開発収入、使用許諾収入、保守運用収入及びコンサルティング収入で構成されておりますが、受託開発収入の比率が高い状況にあります。

受託開発収入は、案件の獲得、失注及び納期のずれ込み等により収益が大きく変動する可能性があり、これを課題と認識しております。

また、金融機関のレガシーシステムのDX化が進む中、自前主義からの脱却のため当社顧客もクラウドコンピューティングへの移行が進みかつSaaS型ビジネスの拡大により従量制による使用料課金が拡大すると予想されます。

当社グループでは、この課題に対処するため、受託開発収入以外の収益形態による売上高を増やす方針としております。具体的には、当社の計算ロジックをAPIで提供することによる使用料課金収入、システムの使用者数及び登録資産に連動した使用許諾収入を得る収入形態の採用、自社開発した統合資産管理システムを活用したコンサルティング、クラウド上でのゴールベースプランニングシステムを利用したサブスクリプションモデルによる財産コンサルティング等により、顧客から得る収益形態の多様化を推進しております。

 

④ 利益の確保及び利益率の向上

当社グループが開発・提供するシステムは「フロントエンドシステム」であり、システムの利用者(金融機関の営業担当者や金融商品の購入を検討する顧客等)が直接システムを操作することに特徴があります。開発工程において、システム操作者への利便性にも配慮しつつ、販売先ごとに異なるシステム開発・提供を行うため、一般的な基幹系システムよりも比較的多くの作業工数を費やす必要があります。そのため、操作性の向上と厳格な工数管理を実施することが、利益の確保及び利益率を向上させる課題と認識しております。

当社グループでは、この課題に対処するため、社内にプロジェクトの進捗状況を管理する会議体を設置し、運用を徹底することで、プロジェクトの損失を回避してまいります。

また、開発・提供にあたっては、多くの作業工数を必要としない既存システムをパッケージ化して新規取引先に販売することやAPIにより他社アプリとシームレスに連携すること等により、利益の確保及び利益率の向上を実現させる方針としております。

 

⑤ 優秀な人材の確保

当社グループが属する情報サービス産業では、企業のDX戦略拡大による開発人材への需要の高まりを受け人材の獲得競争が激化しており、優秀な人材の確保が一段と難しくなってきております。また、当社グループは金融商品の販売に係わる諸問題を解決するシステムを提供しているため、当社グループ従業員はシステムだけではなく保険数理、金融知識、ポートフォリオ理論、社会保障、税務等に加え、今後はAIやメタバース等の最新技術を習熟していくことが求められます。

こうした中、金融レガシーシステムをDXするという中期経営戦略を実現していくために、新規採用及び中途採用を拡充して戦略的人材の補強を行うほか、リスキリング・学び直しの施策として、CAPユニバーシティという社内教育体系を確立し、総合的人材教育、特にITとファイナンスに係わるフィンテックの領域の最新の教育を継続的に強化してまいります。

また、大学及びビジネススクールさらに公益社団法人日本証券アナリスト協会において、金融教育、事業承継・財産承継に係わる教育セミナー及び寄付講座等を行うなど、人材確保に向け継続的に企業ブランドの向上に努めております。

 

⑥ 海外展開

昨今、日本を除く東アジア地域において、日本に比べ若い世代の資産家が増加しており、特に国家による社会保障制度の整備が遅れている地域の企業家及び富裕層にとって、個人の資産管理は重要な課題となっております。また、スマートフォンによる資金決済、資金運用、ファミリーオフィスに係わる統合資産運用システムは日本以上に進展しつつあり、アセットアロケーションシステムの中国本土の複数の銀行へのライセンス課金が行われています。当社グループは、日本国内において開発したシステムを海外で提供することも視野に入れ、海外現地の視察も含めた情報収集や有力システム会社との提携について継続的に取り組んでまいります

 

⑦ メタバース等3次元仮想空間上での革新的プロダクトの投入

メタバースとは、アバターを介して3次元仮想空間上での相互交流、仮想体験を意味しています。当社がコア事業のひとつと考えている生涯にわたるライフプランニングは、個人が達成したい複数のライフイベントを前提に現実の世界にある物やサービスを売買するシミュレーションシステムであります。

これをデジタル空間上に再現・シミュレーションし、生涯におけるリスクやイベントを体験し、最適化することが新たなライフプランニングといえます。当社グループは、メタバースの環境の中で元々可視できない金融商品・保険商品の機能を体験し、自らの未来を体験するライフプランニングシステムを開発してまいります。

 

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