当社は、日本において他社に先駆けてオンライン・マーケティング・リサーチを開始し、日本のオンライン・マーケティング・リサーチ市場においてNo.1の市場シェア(注1)を有しています。加えて、当社グループは現在、世界21ヶ国に50の拠点を展開し、世界的な規模でマーケティング・リサーチ業務を提供しています。今後は、日本におけるNo.1の市場ポジショニングをより強化しつつ、グローバルな事業展開を加速させていくことにより、企業価値を安定的に増大させていきたいと考えています。
(注)
(1) オンライン・マーケティング・リサーチ市場シェア=当社単体、株式会社電通マクロミルインサイト、株式会社H.M.マーケティングリサーチのオンライン・マーケティング・リサーチに係る売上収益(2022年6月期)÷一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)によって推計された日本のMR業界市場規模・アドホック調査のうちインターネット調査分(2021年分)(出典:一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)2021年6月17日付 第47回経営業務実態調査)
(2) 経営環境及び当社グループの取り組み
当連結会計年度(2021年7月1日~2022年6月30日)における世界経済及び日本経済は、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種率の向上など、その影響の縮小に繋がる動きが見られ、企業活動にも持ち直しの動きが見られました。他方で足許では、新たな変異株による急速な感染拡大や、ウクライナ情勢の長期化及び原油価格の高騰など、回復の兆しが見えた経済活動について、再び不透明感が増している状況にあります。
こうした中で、グローバルなマーケティング・リサーチ市場は812億米ドル、そのうち当社グループが主に手掛けるオンライン・マーケティング・リサーチ市場は525億米ドルに達し(注1)、日本のマーケティング・リサーチ市場は2,357億円、そのうちオンライン・マーケティング・リサーチ市場は792億円に達する(注2)規模になったと認識しています。グローバル市場と日本市場は共に、一時的に新型コロナウイルス感染症の拡大によるマイナス影響を受けた一方で、コロナ禍を経てマーケティング・リサーチ市場のオンライン化が一段と進むなど、市場は中長期的に堅調に拡大するトレンドに回帰しています。
このような経済・市場環境の下で、当社グループは2021年8月に新たに2024年6月期までの中期経営計画(3ヵ年)を公表し、その達成に向けた戦略を立て、事業規模と利益の拡大を追求しています。また、中期経営計画の更新に先立って、今後の経営環境の変化を見据え、当社グループの経営ビジョンを「Build your Data Culture ~ 私たちは、データネイティブな発想でお客様のマーケティング課題を解決し、ビジネスに成功をもたらすData Culture構築の原動力となることを目指します。」に刷新しました。
当社はこの新ビジョンの下で、特に日本事業においては、顧客企業のリサーチ課題に留まらず、より上流からマーケティング課題全体の解決を支援するため、「総合マーケティング支援企業」へと事業モデルの変革を進めています。今後も、当社が独自に構築した消費者パネルから得られる様々なデータを活用した革新的なサービスを提供し、マーケティングビジネス領域全体にイノベーションを拡げることを目指します。
(注)
(1) 2021年9月にESOMAR(European Society for Opinion and Marketing Research) が発表した「ESOMAR Global Market Research 2021」による。なお、同2020年版レポートよりグローバルなマーケティング・リサーチ市場の定義が拡大されており、本年からは当該新たな定義に基づく市場規模を記載している(2020年版レポートに記載のあった、従来の市場規模に近い数値(シナリオ2)の開示が、2021年版レポートには存在しないため)。また、従来は過年度の実績値のみ開示されていたところ、コロナ禍の影響があることも踏まえ2021年版レポートより新たに2021年の予想値が開示されており、本稿では同市場規模について当該予想数値に基づく記載を行っている。
(2) 2022年6月に一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)が発表した「第47回 経営業務実態調査」による。
(3) 中長期的な経営目標
当社グループでは、2021年8月に2024年6月期までの中期経営計画(3ヵ年)を策定しました。また、この中期経営計画の更新に先立って、今後の経営環境の将来像を見据え、当社グループのビジョンを以下の通り刷新しました。
当社グループの新ビジョンは、上図にある通り「Build your Data Culture ~私たちは、データネイティブな発想でお客様のマーケティング課題を解決し、ビジネスに成功をもたらすData Culture構築の原動力となることを目指します。」としました。当社はこの新ビジョンの下で、特に日本事業においては、顧客企業のリサーチ課題に留まらず、より上流からマーケティング課題全体の解決を支援するため、「総合マーケティング支援企業」へと事業モデルの変革を進めます。今後も、当社が保有する消費者パネルから得られる様々なデータを活用した革新的なサービスを提供し、マーケティングビジネス領域全体にイノベーションを拡げることを目指す方針です。
上記新ビジョンで示された世界観の実現に向けて、また、これまでの中期経営計画でも掲げてきた「グローバル TOP10及び日本及びアジア NO.1」を目指す方針の下で、新たな中期経営計画では下図に示す通り、2024年6月期の売上収益570億円、営業利益率15%、連結ROE10%以上を目標に、過去最高の利益額の更新を目指します。また、財務レバレッジの目標水準は従来目標を引き継ぎ、既存の信用格付を維持しながら、純有利子負債/EBITDA倍率を2.5倍から2.0倍の範囲まで削減することを目指します。また、株主還元を強化する方針も同様に引き継ぎ、当社の再上場以来掲げてきた、20%-30%の連結配当性向の長期目標を堅持しつつ、必要に応じた機動的な自己株取得の実施を継続します。
具体的には、以下に示す4つの事業区分のそれぞれにおいて今後の事業成長を実現する方針です。
まず日本では、市場シェアNo.1 (30%超) の市場ポジショニングを確立しており、今後も安定的な成長が見込まれるオンライン・リサーチを中核とした「リサーチ事業」(中期経営計画公表時の2021/6期の連結売上収益に占める構成比: 56%)において、2024年までの3ヵ年で年平均6%の成長を目指します。加えて、従来から高成長を続けているデジタル領域、新たに本格的な参入を行ったデータ利活用支援(データ・コンサルティング)事業、マーケティング施策支援(広告配信など)事業、ライフサイエンス事業などを集約した「デジタル及びその他の新規事業」(同構成比: 13%)においては、3ヵ年で年平均20%の成長を目指します。
次に海外では、「韓国事業」(同構成比: 10%)において、韓国のオンライン・リサーチでNo.1の市場ポジショニングと、韓国の大手リサーチ企業の中で唯一自社パネルを保有する強みを活かし、2024年までの3ヵ年で年平均16%の成長を目指します。また、「その他の海外事業」(同構成比: 21%)においては、新興勢力でありながらもグローバルに事業を展開し、オンライン/デジタル領域の強みがもたらす早さ・安さ・柔軟さを訴求することで、主にグローバル顧客企業におけるシェアを拡大し、3ヵ年で年平均9%の成長を目指します。
上記の売上成長を実現するため、足許では積極的に人材投資を実施しています。これにより、リサーチ受注案件の内製対応キャパシティを拡充するとともに、必要に応じて外注を拡大して追加的な受注体制を構築することで、足許にかけて想定を上回るペースで回復が進む顧客需要の確実な獲得を目指します。また、データ利活用支援(データ・コンサルティング)事業、マーケティング施策支援(広告配信など)事業などの新規注力事業に関しても、それらのスキルを持つ人材の採用・育成を進めます。このように、中期経営計画の前半には人材への投資が先行しますが、後半には拡充された内製キャパシティを活用することで、外注費の削減を見込みます。また同時に、中期経営計画期間をかけて、業務の自動化やAI、RPAの導入にも積極的に取り組むことで、人件費の上昇ペースを抑え、収益と費用のバランスを図る方針です。
また、当社グループは上記4つの事業区分におけるそれぞれの事業成長を通じて、連結ベースでは2024年6月期に売上収益570億円の達成、2021年6月期からの3ヵ年で年平均9.7%の成長を目指します。この増収率は固定費の増加ペースを上回る伸長であるため、営業レバレッジ効果が発揮され、利益率の向上に繋がる見込みです。当社グループはその効果と、上記の固定費マネジメント施策(内製キャパシティの拡大を通じた外注費の削減、業務の自動化やAI、RPAの積極的な導入による人件費上昇ペースの抑制など)を通じ、2024年6月期における営業利益率15%の達成と、過去最高の利益額の更新を目指します。
このような計画のもと、中期経営計画の1年目にあたる当期においては、日本の売上収益は「リサーチ事業」において前期比5%成長、「デジタル及びその他の新規事業」において同28%成長を実現し、日本事業全体では中期経営計画の年平均成長率を上回って進捗しています。また、海外の売上収益においても「韓国事業」において同22%成長、「その他の海外事業」は同33%の成長を実現しています。このため、計画初年度のグループ全体の売上収益は、中期経営計画において想定した年平均成長率の目標値を上回って進捗しています。
営業利益については、2024年6月期における営業利益率15%を目標とした取り組みとして、当期は人材投資を積極的に実施し、内製キャパシティの拡大に努めて参りました。足許において、引き続き社内の人的リソースが逼迫し需要過多の状況が継続しているため、人材投資は今後も継続する予定ですが、その軸足を人員数の増加から生産性の向上へと移す方針です。今後は、中期経営計画の最終年度である2024年6月期に向けて、内製キャパシティの拡大を通じた外注費の抑制や、人員の採用ペースを従来の水準に戻すことで、営業利益率の改善に取り組みます。
こうした中、新中期経営計画の2年目にあたる当社グループの2023年6月期通期の業績予想は、以下のとおりです。
2023年6月期についても、一年を通じて強い顧客需要が継続することを見込んでおり、売上収益及び営業利益は共に、前期比で二桁増収・増益を見込んでいます。
費用面では、特に上期において、人材投資及びシステム関連等の投資を継続するため、人件費及びその他の費用の増加を見込んでおり、下期にかけてこれらの費用の増加を売上伸長率以下の増加ペースに抑制していく計画です。また、受注キャパシティ拡大のため外注費も、上期においては積極的な拡大を続けるものの、内製キャパシティが十分に拡充されれば、下期からはその活用度合いを引き下げる方針です。
当社グループの2023年6月期通期の業績予想は以下のとおりです。
日本及び韓国事業、その他の海外事業ともに、想定を上回るペースで進む顧客企業のマーケティング・リサーチ需要に対応できるよう、人材投資を継続し、受注体制を強化することで、サステイナブルな労働環境の構築に努めます。また、顧客企業のDX化が加速する中、様々なデータの利活用が加速しており、データ関連の新たな需要を捉えたサービス開発・提供を強化します。
具体的に、日本事業の「リサーチ事業」においては、繁忙期である第3四半期に向けた受注体制の強化と生産性の向上に努め、内製キャパシティの増大を図ります。また、製販一体となった提案営業やソリューションの提供を加速することで、機動的な受注体制を構築し、サービス品質とリピート率の向上に努めます。
また、成長が見込まれる「デジタル及びその他の新規事業」においては、個人情報を含むデータの取り扱いが重視されるなか、大手プラットフォーマーとの取り組みを強化するとともに、新たなデータの取得を通じた新規サービスの開発を進めます。また、好調に推移しているデータ利活用支援(データ・コンサルティング)事業やライフサイエンス事業等の新規事業において、その取り組みを加速させ、売上収益のさらなる成長を目指します。
「日本事業」においては、引き続き中期経営計画で掲げるビジョンのもと、顧客企業のリサーチ課題に留まらず、より上流からマーケティング課題全体の解決を支援するため、「マーケティング・リサーチ企業」から、「総合マーケティング支援企業」への事業モデルの変革を推進します。
「韓国事業」においては、日本で既に実施しているパネル購買データの販売を開始するなど、多様なパネルビッグデータを整備し、デジタル関連サービスの拡大を目指します。
「その他の海外事業」においては、引き続き、戦略的意義の高い顧客企業からの案件の獲得に注力するとともに、新規顧客の獲得にも注力する方針です。
以上の取り組みにより、2023年6月期の売上収益は、56,000百万円(前期比12.4%増)を見込んでいます。営業利益は6,550百万円(前期比12.6%増)、税引前利益は6,350百万円(前期比13.3%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は3,720百万円(前期比18.2%増)を見込んでいます。
なお、上記業績見通しの前提となる為替レートは1ユーロ135.00円、1ウォン0.1000円を想定しています。
また、当該業績予想は、本資料の作成日現在において入手可能な情報に基づき作成しており、実際の業績は今後様々な要因によって予想数値と異なる場合があります。
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