業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りとは異なる場合があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

(2)経営成績等の概況及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

①経営成績の概況及び経営者の視点による分析・検討内容

当社グループが提供するサービス領域は、Fintech(注1)市場と呼ばれており、近年では、Embedded Finance(埋込型金融)などと呼ばれる、金融以外のサービスを既存サービスに組み込み、一体として提供する形が注目されるなど様々なビジネスが活発に生まれております。当社グループの主要サービスである『マネーフォワード クラウド』及び『マネーフォワード ME』は、近年急速な成長が見込まれる、SaaS(注2)という形態にてサービスを提供しております。SaaS市場は近年大きく成長しており、富士キメラ総研「2021 クラウドコンピューティングの現状と将来展望 市場編/ベンダー編」によると、国内SaaS市場は、2024年度には1兆6,054億円(2019年度比192.2%)に達すると見込まれております。加えて、2022年1月の改正電子帳簿保存法の施行、2023年10月からのインボイス制度導入といった法的整備によって企業のバックオフィス業務の電子化に向けた法的な整備が進み、決済領域においても国内メガバンクにより小口の資金決済のための新たな決済インフラの設立が進められるなど、キャッシュレス決済の普及を後押しする動きが見られます。

今般の新型コロナウイルス感染症の影響により、わが国経済は景気の見通しが不透明になる一方、クラウドサービス導入及びキャッシュレス化のニーズや、個人や企業におけるお金に関する新たな不安が増している状況で、当社グループの提供サービスへのニーズはより一層高まっているものと認識しております。

このような環境において、当社グループは「お金を前へ。人生をもっと前へ。」というMissionの下、法人向けサービスを提供するMoney Forward Businessドメイン、個人向けサービスを提供するMoney Forward Homeドメイン、金融機関・事業会社のお客様向けにサービス開発を行うMoney Forward Xドメイン、新たな金融ソリューションの開発を行うMoney Forward Financeドメインの4つのドメインにおいて、事業を運営してまいりました。

Businessドメインでは、バックオフィス向けの業務効率化クラウドソリューション『マネーフォワード クラウド』において、新たに6つの新規サービスをリリースし、主に中堅企業向けのサービスラインナップの強化に努めております。引き続き対面での商談機会は制限されておりますが、SEO対策の強化やウェビナー等のオンラインでの顧客獲得施策を実施した結果、新規ユーザーが順調に増加し、売上は順調に推移しております。当第4四半期連結会計期間より、個人事業主・法人向けの事業用プリペイドカード『マネーフォワード ビジネスカード』の提供を開始し、事業に関する支払いのキャッシュレス化を実現するとともに、『マネーフォワード クラウド』との連携により、リアルタイムでデータを取得し、会計業務の効率化を実現しております。加えて、加えて、SaaSサービスのIDの一元管理を実現する『マネーフォワード IT管理クラウド』も正式提供を開始しております。『BOXIL』におけるリード件数の増加や、オンライン展示会『BOXIL EXPO』の開催等により、スマートキャンプ社の売上も好調に推移しております。

Homeドメインにおいては、自動でオンラインバンキング等から金融機関データの取得・仕訳を行うPFM(注3)サービス『マネーフォワード ME』において、プレミアム課金ユーザーが36万人を突破し、プレミアム課金売上が順調に推移しました。メディア/広告売上に関しましては、新型コロナウイルス感染症の影響でオフラインイベントは制限されたものの、イベントやセミナーのオンライン化等の対応を行いました。また、ファイナンシャルプランナーに家計や資産形成の相談ができる『マネーフォワード お金の相談』や電気料金をはじめとする固定費の切り替えができる『マネーフォワード 固定費の見直し』等の金融関連サービスの収益が増加しています。

Xドメインにおいては、金融機関やそのお客様のDX化推進に資する便利なサービスの開発に努めており、新たなサービス提供先が増加しております。

Financeドメインにおいては、企業間請求・決済代行サービス『マネーフォワード ケッサイ』及び売掛金早期資金化サービス『マネーフォワード アーリーペイメント』において、引き続き審査体制を強化して運営をしておりますが、新規顧客の獲得等により、売上は回復基調にあります。また、翌連結会計年度からは、株式会社三菱UFJ銀行との合弁会社である株式会社Biz Forwardを通じて、中小企業向けのオンラインファクタリング事業及び請求・決済代行事業の提供を開始いたします。

また、期初時点の計画通り、将来を見据え、いずれのドメインにおいても広告宣伝・人材採用等の先行投資を実行いたしました。

 

以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上高15,632百万円(前年同期比38.1%増)、EBITDA(注4)429百万円(前年同期は△1,956百万円のEBITDA)、営業損失1,062百万円(前年同期は2,804百万円の営業損失)、経常損失1,432百万円(前年同期は2,538百万円の経常損失)、親会社株主に帰属する当期純損失1,482百万円(前年同期は2,423百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。当社が目標として重視している経営指標である売上高及びEBITDAは、それぞれ期初見通しである売上高14,750百万円~15,750百万円、EBITDA100百万円~500百万円のレンジ内での着地を達成しております。

 

また、SaaS ARRに関しては11,227百万円(前年同期比33.0%増)となり、特にBusinessドメインにおいては課金顧客数及びARPA(注5)の拡大により、法人顧客に対するSaaS ARRは7,374百万円(前年同期比37.0%増)、個人事業主顧客に対するSaaS ARRは1,092百万円(前年同期比27.4%増)となりました。

各ドメインのSaaS ARR及びBusinessドメインにおける課金顧客数とARPAの推移は以下のとおりであります。

 

(SaaS ARR)

(単位:百万円)

 

2017年11月期末

2018年11月期末

2019年11月期末

2020年11月期末

2021年11月期末

Business 法人

1,395

2,383

3,827

5,381

7,374

Business 個人事業主

314

472

818

857

1,092

Home プレミアム課金

659

920

1,139

1,428

1,769

X ストック売上高

300

319

435

587

710

Finance ストック

売上高

10

71

99

186

283

合計

2,677

4,164

6,319

8,439

11,227

(注)上記表中のSaaS ARRの額は、百万円未満を四捨五入しております。

 

(Businessドメイン)

 

単位

 

2019年11月期末

2020年11月期末

2021年11月期末

SaaS ARR

(百万円)

法人

3,827

5,381

7,374

 

 

個人事業主

818

857

1,092

 

 

合計

4,645

6,238

8,466

課金顧客数

(顧客数)

法人

56,007

69,713

88,548

 

 

個人事業主

61,637

72,501

94,755

 

 

合計

117,644

142,214

183,303

ARPA

(円)

法人

68,337

77,189

83,281

 

 

個人事業主

13,274

11,821

11,523

 

 

全体

39,488

43,864

46,187

(注)上記表中のSaaS ARRの額は百万円未満を、ARPAの額は小数点以下第1位を四捨五入しております。

 

 

(注1)Fintech

FinanceとTechnologyを組み合わせた概念で、金融領域におけるテクノロジーを活用したイノベーションの総称をいいます。

(注2)SaaS

「Software as a Service」の略称であり、サービス提供者がソフトウエア・アプリケーションの機能をクラウド上で提供し、ネットワーク経由で利用する形態を指します。一般的に初期導入コストを抑えた月額課金のビジネスモデルとなります。

(注3)PFM

「Personal Financial Management」の略称であり、個人の金融資産管理、家計管理をサポートするサービスをいいます。

(注4)EBITDA

「Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization」の略称。営業利益+償却費+営業費用に含まれる税金費用+株式報酬費用。

(注5)ARPA

「Average Revenue per Account」の略称。ARPAは各期最終月のBusinessドメインのARRを課金顧客数で割った値。

 

②財政状態の概況及び経営者の視点による分析・検討内容

(資産)

当連結会計年度末における流動資産は44,025百万円となり、前連結会計年度末に比べ30,565百万円増加いたしました。これは主に現金及び預金が27,300百万円、買取債権が2,011百万円、営業投資有価証券が854百万円増加したことによるものであります。固定資産は12,916百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,665百万円増加いたしました。これは主に投資有価証券が2,775百万円、ソフトウエアが1,690百万円増加したことによるものであります。

この結果、総資産は56,942百万円となり、前連結会計年度末に比べ35,230百万円増加いたしました。

(負債)

当連結会計年度末における流動負債は12,276百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,035百万円増加いたしました。これは主に短期借入金が2,190百万円、1年内返済予定の長期借入金が744百万円、未払法人税等が260百万円増加したことによるものであります。固定負債は2,333百万円となり、前連結会計年度に比べ900百万円減少いたしました。これは主に長期借入金が926百万円減少したことによるものであります。

この結果、負債合計は14,609百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,135百万円増加いたしました。

(純資産)

当連結会計年度末における純資産は42,332百万円となり前連結会計年度末に比べ32,095百万円増加いたしました。これは主に資本金が16,161百万円、資本剰余金が14,323百万円増加したことによるものであります。

この結果、自己資本比率は71.1%(前連結会計年度末は44.3%)となりました。

 

③キャッシュ・フローの概況及び経営者の視点による分析・検討内容

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度末に比べ27,300百万円増加し、36,020百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動の結果使用した資金は2,327百万円(前年同期は1,119百万円の使用)となりました。主な増加要因は、のれん償却額473百万円、減価償却費394百万円、株式交付費313百万円等であり、主な減少要因は、先行投資を積極的に実施したことによる税金等調整前当期純損失の計上1,430百万円、買取債権の増加2,011百万円等であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動の結果使用した資金は5,199百万円(前年同期は2,606百万円の使用)となりました。主な減少要因は、投資有価証券の取得による支出2,824百万円、無形固定資産の取得による支出2,129百万円等であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動の結果得られた資金は34,797百万円(前年同期は5,256百万円の獲得)となりました。主な増加要因は、株式の発行による収入31,444百万円、組合員からの払込による収入1,140百万円等であり、主な減少要因は、長期借入金の返済による支出1,159百万円等であります。

 

(3)資本の財源及び資金の流動性

当社グループが事業を展開しているFintech市場及びクラウド市場は、近年急速な成長を続けております。このような環境の中、既存事業の成長を継続させるため、主に自己資金及び金融機関からの借入資金を広告宣伝費及び人件費に充当しております。

また、2021年8月に海外公募増資により31,572百万円の資金調達を行いました。本海外募集で調達した資金の使途は、以下のとおりであります。

① Businessドメインにおける新規顧客獲得のためのセールス&マーケティング費用、並びに中堅企業・IPO準備企業/上場企業に向けた『マネーフォワード クラウド』の更なる機能及びプロダクト開発/R&Dへの投資:約15,000百万円

② プロダクトエコシステムの拡充或いは更なるTAMの拡大を実現するためのM&A資金:約12,000百万円

③ 過去に行った株式会社アール・アンド・エー・シー、Mekariグループ及び株式会社sustenキャピタル・マネジメントの株式取得資金につき、取り崩した手元資金である現預金の手当て:約3,500百万円

残額については、将来的なM&Aを見据えた財務基盤の強化及び経営基盤安定化のため、金融機関からの借入金の返済に充当する予定であります。

 

(4)生産、受注及び販売の実績

当社グループは、「第5経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 セグメント情報等」に記載のとおりプラットフォームサービス事業の単一セグメントであります。

①生産実績

当社グループは生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

②受注実績

当社グループは受注生産を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

③販売実績

当連結会計年度の販売実績は次のとおりであります。

ドメインの名称

当連結会計年度

(自 2020年12月1日

至 2021年11月30日)

金額(千円)

前年同期比(%)

Businessドメイン

10,559,090

144.6

Homeドメイン

2,465,372

130.1

Xドメイン

1,830,744

133.4

Financeドメイン

768,715

103.5

その他

8,678

103.8

合計

15,632,601

138.1

(注)1.当社グループの事業セグメントは、プラットフォームサービス事業の単一セグメントであるため、ドメイン別の販売実績を記載しております。

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(5)経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおり、事業環境、事業活動、法的規制等様々なリスク要因が当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。

そのため、当社グループは常に市場動向に留意しつつ、市場のニーズに合ったサービスの普及拡大、優秀な人材の確保及び育成、内部管理体制の強化等により、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切に対応を行ってまいります。

 

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