課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)会社の経営方針

当社グループは、「第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載のとおり「お金を前へ。人生をもっと前へ。」というMissionの下、「すべての人の、『お金のプラットフォーム』になる。」というVisionを掲げ、4つのドメインにおいてプラットフォームサービス事業を展開しております。

 

(2)経営環境及び経営戦略

当社グループの主な事業モデルは、サービスの利用に応じて収益を計上する、いわゆるSaaSモデルとなっています。導入時に売上の全額が計上されるモデルに比べ、黒字化までに時間を要する一方、解約率が低く、中長期では非常に収益性が高いのが特徴です。

市場環境としましては、今般の新型コロナウイルス感染症の影響により、クラウドサービス導入及びキャッシュレス化のニーズの高まりや、個人や企業におけるお金に関する不安が増す等、当社グループの提供サービスへのニーズはより一層高まっているものと認識しております。また、2022年1月の改正電子帳簿保存法の施行、2023年10月からのインボイス制度導入といった法的整備によって企業のバックオフィス業務の電子化に向けた法的な整備が進み、決済領域においても国内メガバンクにより小口の資金決済のための新たな決済インフラの設立が進められるなどキャッシュレス決済の普及を後押しする動きが見られ、当社グループの事業運営に追い風となるような動きが活発化しております。

このような事業モデル、市場環境を踏まえ、当社は創業以来積極的に先行投資を行い、新規ユーザーの獲得及び新たな市場のニーズに応えるイノベーティブなサービスの開発に注力しております。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社は、上記「(2)経営環境及び経営戦略」に記載のとおり、中長期的なキャッシュ・フローの現在価値最大化を最重視し、経営の意思決定を行っております。経営指標としましては、売上高及びEBITDAを重視しております。また、翌連結会計年度より新たに重視していく経営指標としてSaaS ARR(注1)を追加し、見通しの開示も開始いたします。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループは創業以来、「お金を前へ。人生をもっと前へ。」というMissionを掲げ、世の中からお金に関する課題や悩みをなくすことを目指しております。お金は人生において道具にすぎませんが、正しい知識がないためにお金に振り回され、やりたいことにチャレンジできない人や企業が多く存在しております。当社グループは、サービスや事業を通じて一人ひとりの人生に寄り添い、人々の生活を飛躍的に豊かにすることで、チャレンジできる社会をつくりたいと考えています。

当社グループが目指す社会を実現し、持続的に企業価値を向上させるため、当社グループは、3つの重点テーマ(マテリアリティ)を設定し、これを支える土台である経営基盤とあわせて、具体的な取り組みを進めてまいります。

これらの取組を全社一体として推進していくため、サステナビリティ担当責任者として執行役員、CoPA(Chief of Public Affairs)の瀧俊雄を任命し、経営企画本部、法務知的財産本部、広報部からなるサステナビリティ推進のための全社横断的なプロジェクトチームによる活動を推進しています。サステナビリティについて取締役会や経営会議等で議論を行い、方針等の策定を行うとともに、プロジェクトチームを中心に、関連部署との連携や情報収集、社内での啓発活動に取り組んでおります。

 

①重点テーマ(マテリアリティ)

<User Forward:ユーザーの人生をもっと前へ。>

●多様なユーザー(企業、個人事業主、個人)に向けて、お金の課題を解決するサービスを提供

日本の企業や個人事業主は、労働人口の減少、低い労働生産性、煩雑なバックオフィス業務、資金繰り等、様々な課題を抱えております。これらの課題に対し、当社グループは、『マネーフォワード クラウド』等のビジネス向けサービスを通じて、バックオフィス業務の効率化や生産性向上を実現し、中長期的な企業価値の向上と持続的成長に貢献してまいります。

また近年、少子高齢化や老後2,000万円問題等により、個人の将来に関する漠然としたお金の不安は増す一方となっております。当社が提供する『マネーフォワード ME』をはじめとする個人向けサービスを通じて、お金の流れや現在の状態を見える化し、家計の改善や将来に向けた資産計画の作成に繋げることで、不安を解消することが可能になります。

当社グループは、今後も多様なユーザーに寄り添ったサービスを提供し、お金に関する課題や悩みを解決してまいります。

 

●ユーザーの課題をテクノロジー×デザインで解決

変化のスピードが速く不確実性が高い時代において、世の中が求めるよりも早く課題を見出し、解決できるようなイノベーションを創出していくためには、テクノロジーの力が不可欠と認識しております。また、社会とテクノロジーの間には大きなギャップがあることから、それをデザインにより埋める必要があると考えております。当社グループは、先端テクノロジーによって将来の課題を予測して、解決に向けたアクションを提案するため、「自律化・ユーザビリティ」を注力領域として研究開発を推進し、ユーザー視点を取り入れたサービスをリリースしてまいります。

 

●安心してご利用いただくためのセキュリティへの投資促進

当社グループが提供するサービスにおいては、ユーザーのお金に関する様々な情報を多く預かっており、その情報管理を継続的に強化していくことが重要であると考えております。情報セキュリティ及び個人情報保護、第三者からの不正アクセス防止に関しては、CISO(Chief Information Security Officer、最高情報セキュリティ責任者)を設置しております。また、当社では「情報セキュリティ基本方針(セキュリティポリシー)」「個人情報保護方針(プライバシーポリシー)」その他社内規程を策定し、これらに基づき管理を徹底するとともに、漏えいリスク等に対して適切な防御措置を講じております。情報セキュリティ等に関しては、CISOより代表取締役CEO及び取締役CTOへ毎月活動報告を行い、その活動が内部監査によりモニタリングされるとともに、取締役会にも適宜報告がなされています。今後もユーザーにより安心してご利用いただくために、セキュリティへの投資を継続して行ってまいります。

 

<Society Forward:社会をもっと前へ。>

●多様なパートナーとの共創により、社会のDX化に貢献

近年、ビジネス環境が激しく変化するなか、企業の競争力を高め、生産性を向上させるデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが、加速しています。当社グループでは、全国の金融機関、会計事務所、事業会社、商工会議所等、多様な事業パートナーとともに事業を進めております。今後も、既存の事業パートナーとの提携の強化、新たな事業パートナーの拡大によって、強固なエコシステムを構築し、多様なパートナーとの共創により、社会のDX化への貢献を目指してまいります。

 

●より良い社会システムの実現を目指した活動

当社グループは、マネーフォワード Fintech研究所での調査研究・情報発信や官庁設置の会議等における政策提言、当社グループにおける具体的取組の公表といった様々な活動を通じて制度的改革をリードしております。また、Fintech協会や電子決済等代行事業者協会等の業界団体における勉強会や交流会等の活動の運営を通じてエコシステムの拡大を図っております。加えて、世代や年齢を超えて一人ひとりがお金と向き合うきっかけを提供するため、お金に関する課外授業やイベント、ユーザー向けコミュニティイベントを実施しております。今後もこのような活動を積極的に行い、経済的格差等の社会問題の解決にも取り組むとともに、個人の人生の可能性を広げる後押しをすることで、より良い社会システムの実現を目指してまいります。

 

●環境に配慮した経営の実践

当社グループは、リモートワークを基本とした新しい働き方を導入し、社内稟議、経費精算、契約締結等の業務をクラウド上で行うことにより、ヒトやモノの移動、紙資源の利用の削減に取り組んでおります。また、当社が提供している『マネーフォワード クラウド』は、バックオフィスのペーパーレス化を促進できるサービスであり、当社サービスの提供を通じて社会のDXに貢献することで、さらに環境にやさしい社会を実現することができると考えております。当社グループは、今後も社内業務の見直しや事業の成長等を通じて、世の中のヒトやモノの移動、紙資源の利用削減をさらに促進し、環境に配慮した経営を実践してまいります。

 

<Talent Forward:社員の才能をもっと前へ。>

●メンバーの可能性を引き出す多様な成長機会の創出

当社グループでは、グループ従業員が失敗を恐れず果敢にチャレンジする目標設定を推奨し、きめ細かい1on1の機会を設けて、個々人への期待値を伝え、適切かつ明確なフィードバックをする文化を大切にしております。また、当社グループは、年齢、社歴、学歴等に関係なく実力や希望に見合う機会を提供し、組織や事業の都合だけでなく、個人の情熱や適性を尊重した配置や異動を行っております。今後も、当社グループを横断した異動・配置の機会を設けることで、従業員の成長機会を幅広く進めるとともに、人事担当部署が主導する教育研修だけでなく、組織を構成する全従業員が一丸となって人材育成に取り組めるような仕組みを構築してまいります。

 

●マネジメントによる、メンバー育成へのコミットメント

当社グループのMissionやVisionを実現するためには、「人」の成長が最も大切であると考えております。そのためには、人事担当部署による育成のみならず、経営陣みずからが従業員に向き合い、従業員一人ひとりが持つ可能性を引き出し、成長にコミットする必要があると認識しております。当社グループは、従業員のパフォーマンス向上だけでなく、モチベーションの維持・向上やキャリア、働き方までを含めて、経営陣が積極的に携わってまいります。

 

●性別・国籍・年齢・学歴等に関係なく、多様な視点を受容する環境づくり

当社グループは、当社グループが大切にするValueのひとつである「Fairness」を徹底し、性別・国籍・宗教・年齢・学歴等で制限しない採用方針を掲げております。入社後も、こうしたバックグラウンドの違い、育児や介護等のライフステージの変化も含めて、多様な状況下にある従業員が働きやすい・働きがいのある職場環境づくりに取り組んでおります。従業員それぞれの個性や成長意欲を尊重し、一人ひとりの能力とアウトプットを最大化し、新たな価値創造を実現するためにも「多様な視点の実現」を人事戦略のベースに位置づけ、ダイバーシティとインクルージョンを重視する各種人事施策を推進してまいります。2021年2月にDiversity and Inclusion担当責任者として取締役執行役員CTOである中出匠哉を任命し、People Forward本部、経営企画本部を中心としたプロジェクトチームを発足させ、取り組みを進めております。

 

②3つの重点テーマを支える土台(経営基盤)

<マネーフォワードのMission/Vision/Value/Cultureの浸透>

当社グループが目指す社会を実現するためには、各従業員が当社のMission、Vision、Value、Cultureを共有することが重要と認識しております。当社では、経営陣を中心に、グループ全体に向けてこれらを繰り返し発信している他、半期に1回のMVP表彰では成果が当社のValueの発揮に繋がっていることを必須の選出基準とし、Cultureを体現した従業員を四半期毎に「Culture Hero」として選出する等、これらのコンセプトの浸透を図っており、今後も推進してまいります。

 

<攻めと守りを両立させるガバナンス>

当社グループが目指す社会を実現するためには、当社グループの事業成長が必要であり、そのためにはコーポレート・ガバナンスの充実が重要と認識しております。当社グループでは、迅速な意思決定やリスクテイクを促す「攻め」の機能と、過度なリスクテイクの回避や透明性・公正性を確保するための牽制を目指す「守り」の機能の両面を充足したバランスの取れたコーポレート・ガバナンスの整備・運用に取り組んでまいります。

 

 

(注1)SaaS ARR

ARRは「Annual Recurring Revenue」の略称。期末時点におけるBusinessドメイン、Homeドメイン、Xドメイン、FinanceドメインのMRR(対象月の月末時点におけるストック収入合計額)を12倍して算出。Business ドメインは『マネーフォワード クラウド』、『STREAMED』、『Manageboard』、『V-ONEクラウド』、『マネーフォワード 公認メンバー制度』等サービスの課金収入。Homeドメインはプレミアム課金収入、Financeドメインは『マネーフォワード ケッサイ』における月額基本料、決済手数料及び付随する手数料を含む。なお、各事業のフロー売上高及びスマートキャンプ社の売上は含まない。

 

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