当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しております。
連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載しております。
連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り、判断および仮定を行っておりますが、実際の結果は、見積りおよび仮定に関する不確実性があるために、翌連結会計年度に係る連結財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの財政状態または経営成績等に重要な影響を及ぼす会計上の見積り、判断および仮定は、以下のとおりであります。
・非金融資産の減損
有形固定資産、のれん及び無形資産の減損テストにおいて、資金生成単位を判別したうえで、当該資金生成単位における使用価値と処分コスト控除後の公正価値のうちいずれか高い方を回収可能価額として測定しております。当該処分コスト控除後の公正価値算定上の仮定、あるいは使用価値算定の基礎となる資金生成単位の使用期間中および使用後の処分により見込まれる将来キャッシュ・フロー、割引率等の仮定は、将来の不確実な経済条件の変動によって影響を受ける可能性があり、将来にわたり、有形固定資産、のれん及び無形資産に係る減損損失額に重要な修正を生じさせるリスクを有しております。
・繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産については、将来減算一時差異等を利用できる将来課税所得が生じる可能性が高い範囲内で認識しております。当該回収可能性の判断は、当社グループの事業計画に基づいて決定した将来の各事業年度の課税所得の見積りを前提としております。当該将来の課税所得の見積りは、将来の不確実な経済条件の変動によって影響を受ける可能性があり、将来にわたり、繰延税金資産の計上額に重要な修正を生じさせるリスクを有しております。
・引当金の測定
引当金は、将来において債務の決済に要すると見込まれるキャッシュ・フローの期末日における最善の見積りに基づいて測定しております。将来において債務の決済に要すると見込まれるキャッシュ・フローは、将来の起こりうる結果を総合的に勘案して算定しております。これら引当金の測定において使用される仮定は、将来の不確実な経済条件の変動によって影響を受ける可能性があり、将来にわたり、引当金の測定額に重要な修正を生じさせるリスクを有しております。
・金融商品の公正価値
特定の金融商品の公正価値を評価する際に、市場で観察可能ではないインプットを利用する評価技法を用いております。当該観察不能インプットは、将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、見直しが必要となった場合、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
なお、当連結会計年度においては、新型コロナウイルス感染症による当社グループの業績等への重要な影響はありませんでした。新型コロナウイルス感染症の収束時期は見通せないものの、翌連結会計年度以降の当社グループの業績等への影響はないとの仮定を置いて、会計上の見積りを行っております。また、ロシアのウクライナ侵略に関する今後の情勢は不透明であるものの、当社グループと当該地域との取引は僅少であるため、翌連結会計年度以降の当社グループの業績等への直接的な影響は軽微であるとの仮定を置いて、会計上の見積りを行っております。
(2) 経営成績
当連結会計年度の世界経済は、年末からのオミクロン株の感染急拡大、ロシアのウクライナ侵略による資源価格の高騰やサプライチェーンの混乱、さらに米国を中心とした急激なインフレ等により勢いはやや鈍化したものの、回復基調が続きました。国内経済についても、景気の下振れ懸念が強まる局面はあったものの、緩やかに持ち直し、年間実質GDPは前年比プラスに転じました。
このような中、当社グループは、「次世代事業の創出加速」、「デジタル革新による生産性の向上」、「事業ポートフォリオの高度化」、「強靭な財務体質の実現」等を基本方針とする中期経営計画(2019年度~2021年度)に基づき、生産性の飛躍的向上とイノベーションの加速により、サステナブルな社会の実現と当社グループの持続的な成長を目指すべく、全社を挙げて取り組んでまいりました。
この結果、当社グループの当連結会計年度の売上収益は、前連結会計年度に比べ4,783億円増加し、2兆7,653億円となりました。
コア営業利益は2,348億円、営業利益は2,150億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,621億円となり、それぞれ前連結会計年度を上回りました。
売上収益は、主に石油化学において市況が上昇しました。前連結会計年度は、持分法適用会社であるペトロ・ラービグ社の定期修繕による石油化学での出荷減少の影響に加え、新型コロナウイルス感染症拡大により石油化学およびエネルギー・機能材料において自動車用途を中心に出荷が低調でしたが、需要の回復が見られました。さらに、情報電子化学や健康・農業関連事業においても出荷が堅調に推移しました。また、医薬品において、大塚製薬株式会社との共同開発・販売提携契約による一時金の計上や、新規品目の販売開始がありました。この結果、売上収益は、前連結会計年度の2兆2,870億円に比べ4,783億円増加し、2兆7,653億円となりました。
コア営業利益は、石油化学において市況が上昇したことに加え、前連結会計年度の持分法適用会社であるペトロ・ラービグ社の定期修繕による影響や新型コロナウイルス感染症拡大の影響からの回復により出荷が増加しました。また、情報電子化学において、前連結会計年度から続いた巣ごもり需要、在宅勤務需要等を背景に出荷が堅調に推移しました。さらに、健康・農業関連事業においても、農薬の出荷増加やメチオニン(飼料添加物)の交易条件の改善が見られました。一方、医薬品においては、共同開発・販売提携契約による一時金を計上したものの、新規品目にかかる販売費及び一般管理費が増加しました。この結果、コア営業利益は、前連結会計年度の1,476億円に比べ872億円増加し、2,348億円となりました。
金融収益及び金融費用は、為替相場が円安で推移し為替差益を計上したことにより、361億円の利益となりました。前連結会計年度の7億円の利益に比べ354億円改善しました。この結果、税引前利益は、前連結会計年度の1,378億円に比べ1,133億円増加し、2,511億円となりました。
(法人所得税費用/親会社の所有者に帰属する当期利益及び非支配持分に帰属する当期利益)
法人所得税費用は647億円となり、税引前利益に対する税効果適用後の法人所得税費用の負担率は、25.8%となりました。
以上の結果、当期利益は、1,864億円となりました。
非支配持分に帰属する当期利益は、主として大日本住友製薬などの連結子会社の非支配持分に帰属する利益からなり、前連結会計年度の220億円に比べ23億円増加し、243億円となりました。
親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度の460億円に比べ1,161億円増加し、1,621億円となりました。
当連結会計年度のセグメント別の業績の概況は、次のとおりであります。
なお、セグメント利益は、営業利益から非経常的な要因により発生した損益を除いて算出したコア営業利益で表示しております。
(石油化学)
(エネルギー・機能材料)
(情報電子化学)
(健康・農業関連事業)
(医薬品)
(その他)
上記5部門以外に、電力・蒸気の供給、化学産業設備の設計・工事監督、運送・倉庫業務、物性分析・環境分析業務等を行っております。これらの売上収益は前連結会計年度に比べ、161億円増加し672億円となり、コア営業利益は前連結会計年度に比べ30億円増加し158億円となりました。
生産、受注および販売の実績は、次のとおりであります。
当社グループ(当社および連結子会社)の生産品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産製品の規模は小さいため、セグメントごとに生産規模および受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
このため生産の状況については、セグメントごとの経営成績に関連付けて示しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 上記販売実績は、外部顧客への売上収益を示しております。
2 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合については、当該割合が100分の10以上の相手先がないため、記載を省略しております。
(3) 財政状態
当連結会計年度末の資産合計は前連結会計年度末に比べ3,179億円増加し、4兆3,082億円となりました。棚卸資産や営業債権等が増加しました。
負債合計は、前連結会計年度末に比べ980億円増加し、2兆6,062億円となりました。有利子負債は、前連結会計年度末に比べ6億円減少し、1兆3,505億円となりました。
資本合計(非支配持分を含む)は、利益剰余金やその他の資本の構成要素が増加したことにより、前連結会計年度末に比べ2,199億円増加し、1兆7,020億円となりました。
親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末に比べて2.8ポイント増加し、28.3%となりました。
(4) キャッシュ・フロー
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、運転資金の増加等により、前連結会計年度に比べ2,027億円減少し、1,717億円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度は当社によるペトロ・ラービグ社への貸付による支出があり、前連結会計年度1,774億円の支出に比べ620億円支出が減少し、1,154億円の支出となりました。
この結果、フリー・キャッシュ・フローは、前連結会計年度の1,971億円の収入に対して、当連結会計年度は563億円の収入となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、814億円の支出となりました。
また、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ45億円増加し、3,654億円となりました。
当社グループの資金需要および資本の財源ならびに資金の流動性は、次のとおりであります。
当社グループの資金需要には、通常の営業活動に必要となる運転資金や既存設備の定期修理のための資金に加え、新中期経営計画(2022-2024年度)の基本方針の一つである「事業ポートフォリオの高度化(事業の強化と変革)」を推進するための投資に必要となる資金があります。前中期経営計画期間(2019-2021年度)中の設備投資・投融資(意思決定ベース)の金額は、ライフサイエンス分野への大幅な経営資源の投下により、当初想定を上回る水準となりました。成長への目配りもしながら案件を徹底的に厳選するとともに、資産売却やCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)短縮などにより財務体質の改善に努めてまいります。
また、当社グループは株主還元についても、経営上の最重要課題の一つと考えています。各期の業績、配当性向ならびに将来の事業展開に必要な内部留保の水準などを総合的に勘案の上、安定的な配当を継続することを基本とし、中長期的に配当性向30%程度を安定して達成することを目指しています。
当社グループの財務活動の方針は、低利かつ中長期にわたり安定的な資金調達を行うこと、および十分な流動性を確保することです。D/Eレシオ(有利子負債/純資産)については、フレキシブルな資金調達が可能な現在の当社格付を維持することを考慮し、中長期的に0.7倍程度を目安としています。当社グループは、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、銀行借入、資本市場における社債およびコマーシャル・ペーパー(当社発行枠1,800億円)の発行等により、必要資金を調達しております。
当社グループは、グループファイナンス等により手元資金の最大活用を図っており、現金及び現金同等物の保有額は事業遂行上必要な水準に維持することを目指しています。当連結会計年度末の現金及び現金同等物は3,654億円であり、流動比率(流動資産/流動負債)は154.5%であります。
また、大手邦銀のシンジケート団による800億円のコミットメント・ラインおよび大手外銀のシンジケート団による230億円のマルチカレンシー(円・米ドル・ユーロ建)によるコミットメント・ラインを有しており、事業等のリスクの顕在化などによる突発的な資金需要に備え、手元流動性を確保しております。
(5) 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 2022-24年度中期経営計画」に記載のとおりであります。
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