研究開発活動

 

5 【研究開発活動】

 当社グループ(当社および連結子会社)は、事業拡大と収益向上に寄与すべく、独自の優位性ある技術の確立を基本方針とし、各社が独自に研究開発活動を行っているほか、当社グループ全体としての効率性を念頭に置きながら、互いの研究開発部門が密接に連携して共同研究や研究開発業務の受委託等を積極的に推進しております。

 当連結会計年度においては、2019年度から2021年度までの中期経営計画に従い、ヘルスケア、食糧、環境負荷低減、ICTの4分野に研究資源を重点投入するとともに、異分野技術融合による新規事業の芽の発掘とその育成に取り組んできました。

 これに基づき、当連結会計年度に計上された研究開発費は、前連結会計年度に比べ37億円減少し、1,749億円となりました。

 

 セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。

 

  石油化学分野では、事業のグローバル競争力強化のために、モノマー製品の触媒・プロセスの改良、合成樹脂の製造プロセスの改良、既存素材の高性能化や新規高付加価値製品の開発に取り組む一方で、環境負荷低減に資する資源循環技術の確立に注力しております。

 当連結会計年度において、ライセンス関連プロセスに用いるプロピレンオキサイド単産法、MMAモノマー用触媒の高性能・長寿命化と塩酸酸化、ポリオレフィン用触媒の安全性・安定生産性の向上を目指した改良研究を継続実施しました。資源循環技術では、リサイクルが容易な包装用ポリオレフィン材料として、素材メーカーとして強みを活かした材料設計を駆使し、剛性と耐熱性を単一の樹脂で両立するモノマテリアル包材の開発を推進しております。次年度早期に事業化を目指している高剛性ポリエチレン「スミクル®」は、特殊配合技術により高い剛性を実現し、従来、ナイロンやPETが使われていたプラスチック容器包装の基材層に適用し、ポリエチレンのシーラント層と組み合わせることで、ポリエチレンのモノマテリアル容器包装を作ることができます。また、総合リサイクル企業であるリバーホールディングス株式会社とは自動車に使用され廃棄されたポリプロピレンを再資源化するマテリアルリサイクルの技術開発も行っております。アクリル樹脂では、ケミカルリサイクル技術の開発を株式会社日本製鋼所と共同で進め、二軸混練押出機を利用してアクリル樹脂を熱分解し、原料となるMMAモノマーとして再生する独自の基本技術を確立しました。現在、実証設備を愛媛工場内に建設しており、2022年秋に実証試験に着手し、2023年のサンプル提供開始を目指しております。

 なお、石油化学部門における当連結会計年度の研究開発費は 71 億円であります。

 

 エネルギー・機能材料分野では、環境・エネルギー関連事業を拡大させるため、リチウムイオン二次電池用部材、スーパーエンジニアリングプラスチックス、無機材料、機能性樹脂材料などの幅広い製品領域で、既存製品の競争力強化や新規製品創出に向けた研究開発に取り組んでおります。
 当連結会計年度において、リチウムイオン二次電池用各種部材は、自動車向けを中心に、性能向上の要請や需要拡大に応えるため、開発を鋭意進めました。耐熱セパレータでは、性能向上とコスト削減を両立させる技術開発が進捗しており、新規顧客獲得に向けて検討を進めています。正極材は独自技術・プロセスを組み込んだ量産実証設備を愛媛工場に建設中であり、2023年度稼働を予定しています。併せて、廃電池から分離回収した正極材を金属に戻さずに再生する「ダイレクトリサイクル」技術の開発に取り組んでいますが、本年4月、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業/次世代蓄電池・次世代モーターの開発プロジェクト」に採択されました。また、2020年4月に開設した京都大学産学共同研究講座「固体型電池システムデザイン」では、固体型電池の実用化に向けた材料および要素技術の開発が進捗しており、学会発表を通じて成果を公表しています。

 

 機能樹脂分野では、電気・電子部品分野向けや自動車部材向けにスーパーエンジニアリングプラスチックスの需要が増大しております。ポリエーテルサルホン(PES)では、電動車部材や半導体工程部材、高機能膜向けの開発・拡販を積極的に進めております。液晶ポリマー(LCP)では、高流動性や高剛性を活用した電動車用エレクトロニクス材料に加え、高周波特性に優れたグレードによる高速通信コネクタやフィルム用途グレードの開発を進めており、次世代移動通信(5G)用途で顧客採用が進んでおります。また、LCPの旺盛な需要に応えるべく、愛媛工場において生産能力増強を決定しました。

 無機材料分野では、半導体製造装置用セラミックス等向けの超微粒高純度アルミナの開発が進捗しました。従来よりも強度や耐薬品性、審美性に優れるセラミックスが得られることが特長であり、実プラントへの適応を準備中です。

 なお、エネルギー・機能材料部門における当連結会計年度の研究開発費は 83 億円であります。

 

 情報電子化学分野では、日本国内に留まらずグローバルな技術・研究開発能力を結集し、IT関連の先端技術進化を支える新規材料・部材・デバイスに関する新製品の開発に、引き続き積極的に取り組んでおります。
 当連結会計年度において、まず、ディスプレイ材料分野においては、次世代ディスプレイの主流になりつつあるOLEDパネルに対し、当社独自のキーコンポーネントである「液晶塗布型位相差フィルム」を用いたOLED用偏光フィルムの適用範囲を、大型テレビ用途から中小型モバイル用途まで拡大いたしました。加えて、薄型化に寄与し、耐久性や折り曲げ特性に優れた「液晶塗布型偏光板」の開発・市場投入を進めております。
 また、当社の高分子有機EL材料を用いた中型パネルは、国内外の主要セットメーカーによって、各種モニター・ディスプレイ用途での認定・採用の動きが拡大しています。大型パネルにおいても、主要パネルメーカーとの間で第8世代以上の大型基板を用いた印刷法パネル量産の共同開発が大きく進捗し、実証ステージがさらに上がってきております。
 半導体材料分野においては、半導体集積度向上という命題に対し、微細加工分野において現在主流の液浸ArFレジストのラインナップ拡充に加え、次世代製品であるEUVレジストや多層配線用厚膜レジストの開発・市場投入を進めております。化合物半導体材料分野においては、高速・大容量通信、省エネ、自動運転等の技術を支え、より高度な社会の実現に貢献すべく、高周波デバイス用各種エピウェハの設計開発を行っております。
 IoTの主要構成ツールとして拡大が見込まれるセンシングデバイス分野においても、既に事業確立しているディスプレイ用タッチセンサーのさらなる高機能化や複合化を進めるとともに、薄膜形成を中心とした要素技術を活用し、新規センサーの開発に取り組んでおります。また、モバイル端末等に使用されるイメージセンサー用途に対して、ディスプレイ(光学)・半導体双方の領域で蓄積した技術とノウハウを活用し、高解像度/高感度化に貢献する多様な機能材料の開発を行っております。

 なお、情報電子化学部門における当連結会計年度の研究開発費は 199 億円であります。

 

 健康・農業関連事業分野では、世界の食糧増産、健康・衛生や環境の改善といった課題解決を通じてサステナブルな社会の実現に貢献するため、技術イノベーションが急速に進むIoTやバイオテクノロジー技術を活用し、新製品やアプリケーション、競争力のある製造プロセスの開発に取り組むことで、コア事業の強化と周辺事業への展開および川下化を推進しております。

 当連結会計年度において、国内農業関連事業については、水稲用新規殺虫剤であるオキサゾスルフィル含有製品を上市しました。先般上市しました新規殺菌剤のインディフィリン®も含めて、当社新規有効成分を用いた新用途および新製品の開発を進めております。また、コメ事業においては消費者や生産地のニーズに合う特徴のある新品種の開発を継続しております。さらに、画像診断技術を活用した病害虫画像診断アプリを開発するなど、農業生産者への総合的ソリューションの提供に向けて、農薬、肥料、コメ事業の製品ポートフォリオ拡充および付随するサービスに関する研究開発を進めております。海外農業関連事業においては、新規殺菌剤であるインディフリン®を米国、カナダに加えパラグアイで上市しました。引き続き本剤を活用した新用途および新製品の開発を進めております。本剤は、南米における重要病害であるダイズさび病の防除にも有効であり、その最大の市場であるブラジルでの登録を取得し、本市場での上市に向けて準備を進めております。また、欧州市場を中心とした展開が期待される当社新規殺菌剤メチルテトラプロール(Pavecto®)の開発も進めております。バイエル社との雑草防除体系の創出プロジェクト(当社が新規除草剤、バイエル社が耐性作物の開発を担当)では、新規PPO除草剤であるラピディシルTMの登録申請を米国、カナダ、ブラジルおよびアルゼンチンで完了し、大きく開発を進展させました。コルテバ・アグリサイエンス社との種子処理技術の開発、商業化プロジェクトにも引き続き取り組んでおります。さらに、当社が戦略的分野と位置付けているバイオラショナル事業では、新規植物生長調整剤アクシードTMの米国での上市をいたしました。引き続きバイオラショナル製品のポートフォリオも拡充しております。化学農薬およびバイオラショナルの両領域でサステナブルな農業に貢献するための研究開発を加速してまいります。 

  生活環境事業については、重点強化領域の市場セグメントにおける新製品の開発と製品群の拡充を推進しております。引き続き強い市場ニーズのある天然物由来製品に対応すべく、グループ会社と共同で、新規ボタニカル殺虫剤の登録申請、これに続くボタニカル成分の開発および登録申請に向けたデータ取得を順調に進めております。 業務用殺虫剤分野では、アメリカ市場で主要対象害虫の一つであるアリの防除用で上市した新製品の拡販およびさらなる新製品の開発に取り組んでおります。 熱帯感染症対策資材分野では、抵抗性を持つ蚊へ卓効を示す室内残留散布剤の登録国を増やすと同時に、蚊の発生源対策として幼虫防除用新製品の開発・登録を引き続き進めていくことで、長期残効性蚊帳と併せて熱帯感染症を媒介する蚊に対して総合的な防除を可能とする製品拡充に取り組んでおります。 また、グループ会社と共同で感染症拡大防止へ向けた抗ウイルス製品の開発も継続しております。
 アニマルニュートリション事業については、競争力強化のためメチオニンの合理化製法の開発やプロセス改善に加え、機能性飼料添加物分野における製品ラインナップ拡充のため、飼料効率の改善と安心・安全な畜産物生産に貢献できる新規製品の開発に取り組んでおります。また、近年問題となっている家畜排泄物由来の温室効果ガス(GHG)の低減を目的として、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構や国内大学などとの共同研究プロジェクトに参画し、引き続きメチオニンを含むアミノ酸バランス改善飼料の技術普及を推進しております。
 医薬化学品事業については、当社の有機合成プロセスの技術力を駆使した新薬の受託製造品目の拡充、およびジェネリック原薬の製法開発に取り組んでおり、有望な複数の開発品・新製品に対して商業生産へ向けた準備を進めております。また、市場の成長に対応すべく新工場を建設中である核酸医薬原薬の製造において、長鎖RNAを中心にオリゴ核酸のGMP(Good Manufacturing Practice)管理下での生産実績を積むとともに有望な開発品の製造を受託し、競争力のある要素技術の獲得、独自技術の拡張を目的とした研究開発を推進しております。

 なお、健康・農業関連事業部門における当連結会計年度の研究開発費は 278 億円であります。

 

 

  医薬品分野では、精神神経領域、がん領域および再生・細胞医薬分野を研究重点領域とし、また、感染症領域にも取り組み、グローバルヘルスへの貢献を目指し、大日本住友製薬および日本メジフィジックス株式会社が有する自社技術を活かした研究開発に加え、技術ライセンス、ベンチャー企業やアカデミアとの共同研究などによる最先端の外部技術の導入にも取り組み、優れた医薬品の継続的な創製を目指しております。さらに、医薬品以外のヘルスケア領域において、社会課題の解決のための新たなソリューションを提供することを目的として、フロンティア事業の立ち上げを目指しています。
 当連結会計年度においては、精神神経領域で次の進展がありました。①ulotaront(開発コード:SEP-363856)について、米国でのフェーズ3試験および日本・中国でのフェーズ2/3試験を推進しました。②SEP-4199について、米国および日本において、双極Ⅰ型障害うつを対象としたフェーズ3試験を開始しました。③また、新たに2品目のフェーズ1試験を開始しました。
 がん領域では、DSP-7888(一般名:アデグラモチド酢酸塩/ネラチモチドトリフルオロ酢酸塩)について、米国および日本において、再発または進行性膠芽腫を対象としたフェーズ3試験を実施していましたが、中間解析の結果を受け、最終解析で主要評価項目を達成する可能性が低いと判断し、本試験を中止しました。②また、新たに1品目のフェーズ1試験を開始しました。
 再生・細胞医薬分野では、引き続き、産学の連携先と、加齢黄斑変性、パーキンソン病、網膜色素変性、脊髄損傷などを対象に、他家iPS細胞を用いた再生・細胞医薬事業を推進します。当連結会計年度の進捗は以下のとおりです。①「リサイミック」(開発コード:RVT-802)について、米国において、小児先天性無胸腺症を適応症とした承認を2021年10月に取得しました。②他家iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞について、京都大学において実施されているパーキンソン病を対象とした医師主導治験の全7例の移植が完了しました。③他家iPS細胞由来網膜シートについて、神戸市立神戸アイセンター病院において、大日本住友製薬が製造した網膜シートを用いた網膜色素変性全2例に対する臨床研究が実施されており、移植から1年後も生着していることが確認されました。

 感染症領域では、アカデミアなどとの共同研究により、薬剤耐性菌感染症治療薬ならびに大日本住友製薬のワクチンアジュバントを基盤としたマラリアワクチンおよびユニバーサルインフルエンザワクチン(ほとんどの型のインフルエンザウイルスに対し幅広い効力を持つインフルエンザワクチン)の創薬研究を展開しています。当連結会計年度の進捗は以下のとおりです。①薬剤耐性菌感染症治療薬については、北里研究所との共同研究を通じてカルバペネム耐性菌感染症治療薬を目指して創製された KSP-1007(開発コード)のフェーズ1試験を米国で開始しました。なお、本共同研究は、日本医療研究開発機構(AMED)の医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)に係る研究開発課題として採択されており、AMEDからの委託研究開発費を活用しています。②マラリアワクチンについては、愛媛大学、European Vaccine Initiative(EVI)およびInstituto de Biologia Experimental e Tecnológica(iBET)とのマラリア発病阻止ワクチンの共同研究ならびに愛媛大学およびProgram for Appropriate Technology in Health(PATH)とのマラリア伝搬阻止ワクチンおよびマラリア感染阻止ワクチンの共同研究を推進しました。なお、これら3つのプロジェクトについては、それぞれグローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)の助成案件に選定されています。③ユニバーサルインフルエンザワクチンについては、医薬基盤・健康・栄養研究所との共同研究では前臨床研究を推進しました。なお、本共同研究は、AMEDのCiCLEに係る研究開発課題として採択されており、AMEDからの委託研究開発費を活用しています。

 

 その他の領域では、①レルゴリクス配合剤について、米国において、子宮筋腫に伴う過多月経を適応症とした承認を2021年5月に取得しました(製品名「マイフェンブリー」)。さらに、2021年7月に子宮内膜症に伴う中等度から重度の痛みを対象とする適応追加申請を行い、同年9月に受理されました。また、欧州において、中等度から重度の子宮筋腫を適応症とした承認を2021年7月に取得しました(製品名「ライエクオ」)。②「ツイミーグ」(一般名:イメグリミン塩酸塩)について、日本において、2型糖尿病を適応症とした承認を2021年6月に取得しました。③lefamulinについて、中国において、2021年6月にSinovant社から開発・販売権を獲得し、2021年10月に細菌性市中肺炎を対象とした承認申請を行いました。
 フロンティア事業においては、①2021年10月に、ビヘイビア・インクとの間で、社交不安障害、全般不安障害および大うつ病性障害を対象としたVRコンテンツの共同開発および販売提携契約を締結しました。②日本において、株式会社Save Medicalと共同開発を実施していた2型糖尿病管理指導用モバイルアプリケーション(開発コード:SMC-01)について、日本におけるフェーズ3試験の結果、主要評価項目が未達となり、開発を中止しました。③このほかに、手指麻痺用ニューロリハビリ機器、認知症周辺症状用機器、メンタルヘルスVRコンテンツ等の既存テーマの研究開発を提携先と協力して推進しました。
 放射性医薬品については、AMEDによるCiCLE事業の研究開発課題として採択されたセラノスティクス(治療と診断の融合)薬剤開発プロジェクト「CRADLE(Consortium for Radiolabeled Drug Leadership)」を日本メジフィジックス株式会社が中心となって推進しています。
 なお、医薬品部門における当連結会計年度の研究開発費は966億円であります。

 

 全社共通およびその他の研究分野においては、上記5事業分野の事業領域を外縁部へ積極拡大するための研究およびマテリアルズ・インフォマティクス等のデータ科学・計算科学をはじめとする共通基盤技術開発の強化により、ヘルスケア、食糧、環境、ICTの重点4分野における次世代事業の創出加速を進め、社会的課題の解決の実現を推進しております。また、カーボンニュートラル実現の視点からの研究開発の重要性が増していることから、当社は、2021年12月に公表した住友化学グループのカーボンニュートラル・グランドデザインに基づき、「責務」として自らが発生するGHG排出量を2030年度までに2013年度比50%削減、さらに2050年度までにネットゼロ達成に向けた取り組みを進めるとともに、「貢献」についてはGHG削減に貢献する製品・技術の開発、社会実装およびライセンスを通じたグローバル展開に取り組んでおります。当連結会計年度においては、次の進展がありました。

  ヘルスケア分野では、再生・細胞医薬や体調モニタリングなどの先端医療・予防・診断に関する技術の開発に引き続き取り組んでおります。
 食糧分野では、当社の保有技術を活かすことが可能と思われる機能性飼料やバイオラショナル資材などの食糧の品質・収量向上に資する技術の開発に取り組んでおります。

 環境分野では、炭素循環やGHG排出削減に関する環境負荷低減の技術開発を加速しております。2030年代前半の商業生産開始を目指し、マイクロ波化学株式会社と共同で、メタンをマイクロ波により熱分解し、ターコイズ水素を製造するプロセスの開発に着手いたしました。また、環境に配慮したエタノールを原料とするエチレンの試験製造設備を千葉工場(千葉県市原市)に新設いたしました。千葉工場に新設した試験製造設備は、サーキュラーエコノミーの取り組みで協力している積水化学工業株式会社が生産する“ごみ”資源由来のエタノールや、バイオエタノールを原料にエチレンを生産するものです。さらに、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構が公募した「グリーンイノベーション基金事業/CO2等を用いたプラスチック原料製造技術開発」に応募し、2件4テーマが採択されました。

 

 ICT分野では、有機ELディスプレイ材料、5G/6G等の通信対応材料、次世代半導体関連材料およびイメージセンサー材料等の技術開発に引き続き取り組んでおります。

 また、デジタル技術の活用により、研究開発活動の生産性向上の取り組みを継続、深化させ、顧客接点強化や顧客満足度向上など事業の競争力強化(DX戦略2.0)に取り組んでおります。材料開発における協創の取り組みとして、国立研究開発法人物質・材料研究機構および旭化成株式会社、三井化学株式会社、三菱ケミカル株式会社との水平連携により、最少の実験回数で高い材料物性予測精度を与える汎用的AIを開発いたしました。
 2021年11月に移転した日本橋の新本社内に「SYNERGYCA(シナジカ)共創ラウンジ」を開設いたしました。SYNERGYCAは、「世界を化(か)える話をしよう~Chemistry for innovation~」をテーマに、産官学のお客さまに住友化学グループのテクノロジーを、見て、触れて、体験していただきながら、新たな価値創造につながるアイデアや気づきを生み出す共創の場です。

 次世代事業の創出加速に向け、2024年秋をめどに大阪地区にインキュベーションとオープンイノベーションの拠点として新たに研究棟を建設することといたしました。千葉地区には環境負荷低減技術や新素材の開発拠点として2024年春に新たな研究棟を稼働開始させる予定であり、筑波地区研究所は大阪地区と千葉地区へ統合し、それぞれ地区の特長を活かして研究体制の強化を図ります。

  なお、全社共通部門における当連結会計年度の研究開発費は 153 億円であります。

 

 このように、事業拡大および競争力強化を図るべく、新製品・新技術の研究開発および既存製品の高機能化・既存技術の一層の向上に取り組み、各事業分野におきまして着実に成果を挙げつつあります。

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得

お知らせ

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得