業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の経営成績等の状況の概要は次のとおりです。

 

① 財政状態および経営成績の状況

(経営成績の状況)

当期のわが国を含む世界経済は、新型コロナウイルス感染症の影響による厳しい状況が緩和し、持ち直しの動きがみられました。今後、感染拡大の防止策を講じての経済社会活動の継続等を受け持ち直しの動きが続くことが期待されますが、同感染症の影響が未だに残っていることに加え、原燃料価格の高騰、半導体の不足、ウクライナ情勢の動向等による影響が懸念され、先行きが不透明な状況が続いております。

このような状況のなか、当社グループは、新型コロナウイルス感染症に対し感染予防と感染リスク低減に努めて安定的に事業活動を継続しております。同感染症の再流行に伴う中国でのロックダウンにより、機能製品事業の炭素製品分野の現地工場が稼働を停止していますが、影響は軽微でした。また、機能製品事業を中心に、原燃料価格の高騰による業績への悪影響はあるものの、これに対し適宜、製品価格への転嫁等の対策を進めております。

当連結会計年度は、機能製品事業のリチウムイオン二次電池用バインダー向けのフッ化ビニリデン樹脂を中心に売上げが伸張し、米国のPGA(ポリグリコール酸)樹脂製造会社での当期の生産活動を中止したことによる損失があったものの、セグメント営業利益合計は増益となりました。また営業利益でも、その他の費用で機能製品事業に係る固定資産の減損損失を計上しましたが増益となりました。

売上収益は前期比16.4%増1,683億41百万円、営業利益は前期比16.7%増201億42百万円、税引前利益は前期比14.9%増203億98百万円、当期利益は前期比5.0%増142億93百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比5.0%増141億64百万円となりました。

 


 

セグメントの業績は次のとおりです。

(単位:百万円)

 

売    上    収   益

営    業    利    益

前期

当期

増減

前期

当期

増減

機能製品事業

44,465

66,687

22,222

3,473

9,953

6,480

化学製品事業

23,543

26,157

2,613

2,228

1,432

△795

樹脂製品事業

42,352

44,773

2,421

7,708

9,862

2,153

建設関連事業

13,919

12,174

△1,745

1,077

985

△91

その他関連事業

20,294

18,547

△1,746

4,363

3,069

△1,293

セグメント合計

144,575

168,341

23,765

18,850

25,304

6,453

調整額 (注)

△1,587

△5,161

△3,574

連結合計

144,575

168,341

23,765

17,263

20,142

2,879

 

(注) 営業利益の調整額には、報告セグメントに配分していないその他の収支が含まれております。詳細は、連結財務諸表注記「24.その他の収益」および「25.その他の費用」に記載しております。

 

 


 

 

機能製品事業

 


機能樹脂分野では、リチウムイオン二次電池用バインダー向けのフッ化ビニリデン樹脂、PPS樹脂、シェールオイル・ガス掘削用途向けのPGA(ポリグリコール酸)樹脂加工品、その他の樹脂加工品等の売上げが増加し、当期に米国のPGA樹脂製造会社において生産活動を中止した影響はありますが、この分野での売上げ、営業利益はともに増加しました。

炭素製品分野では、高温炉用断熱材および自動車部品用摺動材向けの炭素繊維の売上げが増加し、この分野での売上げ、営業利益はともに増加しました。

この結果、本セグメントの売上収益は前期比50.0%増666億87百万円となり、営業利益は前期比186.6%増99億53百万円となりました。

 

 

 

化学製品事業

 


農薬・医薬分野では、農業・園芸用殺菌剤の売上げは前期並みとなり、慢性腎不全用剤「クレメジン」の売上げは増加し、この分野での売上げは増加しましたが、原燃料価格高騰の影響により営業利益は減少しました。

工業薬品分野では、有機薬品類の売上げが増加し、この分野での売上げは増加し、営業損失は減少しました。

この結果、本セグメントの売上収益は前期比11.1%増261億57百万円となり、営業利益は前期比35.7%減14億32百万円となりました。

 

 

樹脂製品事業

 


コンシューマー・グッズ分野では、家庭用ラップ「NEWクレラップ」およびフッ化ビニリデン釣糸「シーガー」の売上げが増加し、この分野での売上げ、営業利益はともに増加しました。

業務用食品包装材分野では、塩化ビニリデン・フィルムはアジア地域で売上げ、営業利益がともに増加したとともに、欧州の熱収縮多層フィルムは売上げが増加して営業損失が減少し、この分野での売上げ、営業利益はともに増加しました。

この結果、本セグメントの売上収益は前期比5.7%増447億73百万円となり、営業利益は前期比27.9%増98億62百万円となりました。

 

 

建設関連事業

 


建設事業では、民間工事および公共工事の減少により、売上げ、営業利益はともに減少しました。

この結果、本セグメントの売上収益は前期比12.5%減121億74百万円となり、営業利益は前期比8.5%減9億85百万円となりました。

 

 

 

その他関連事業

 


環境事業では、低濃度PCB廃棄物等の産業廃棄物処理は前期並みでしたが、前期にあった災害廃棄物処理等が完了していることにより、売上げ、営業利益はともに減少しました。

運送事業では、売上げ、営業利益はともに前期並みとなりました。

病院事業では、売上げ、営業損失はともに前期並みとなりました。

この結果、本セグメントの売上収益は前期比8.6%減185億47百万円となり、営業利益は前期比29.6%減30億69百万円となりました。

 

 

(財政状態の状況)

当期末の資産合計につきましては、前期末比257億16百万円増2,826億39百万円となりました。流動資産は、現金及び現金同等物、営業債権ならびに棚卸資産が増加したこと等により、前期末比261億81百万円増1,124億18百万円となりました。非流動資産は、無形資産、持分法投資および退職給付に係る資産等が増加しましたが、補助金受領に伴う圧縮記帳を実施したこと、および減損損失を計上したこと等により、有形固定資産が前期末比57億35百万円減1,144億35百万円となり、前期末比4億65百万円減1,702億21百万円となりました。

負債合計につきましては、前期末比105億12百万円増819億14百万円となりました。これは、有利子負債が借入金等の返済により前期末比9億99百万円減285億7百万円となりましたが、営業債務等が増加したこと等によるものです。

資本合計につきましては、前期末比152億3百万円増2,007億24百万円となりました。これは、剰余金の配当を33億18百万円実施した一方で、親会社の所有者に帰属する当期利益を141億64百万円計上するとともに、為替市場での円安の影響によりその他の資本の構成要素が増加したこと等によるものです。

 

② キャッシュ・フローの状況

営業活動によるキャッシュ・フローは285億81百万円の収入となり、前期に比べ18億77百万円収入が増加しました。これは、税引前利益が増加したこと等によるものです。

投資活動によるキャッシュ・フローは109億99百万円の支出となり、前期に比べ71億23百万円支出が増加しました。これは、投資有価証券の売却による収入が減少したこと等によるものです。

財務活動によるキャッシュ・フローは61億5百万円の支出となり、前期に比べ64億10百万円支出が減少しました。これは、短期借入金及びコマーシャル・ペーパーの増減額による収入が増加したこと等によるものです。

以上の結果、現金及び現金同等物の当期末残高は、前期末に比べ128億5百万円増加306億39百万円となりました。これは、今後の資金の流動性の確保のために現金及び現金同等物を積み上げしたことによるものです。

 

 

③ 生産、受注および販売の実績
a. 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

機能製品事業

68,051

+64.0

化学製品事業

15,980

+26.2

樹脂製品事業

37,761

+20.7

合計

121,793

+42.5

 

(注)  金額は平均販売単価によっております。

 

b. 受注実績

当連結会計年度における土木・建築工事の施工請負等の受注実績は次のとおりです。なお、これ以外の製品については見込生産を行っております。

 

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

建設関連事業

10,230

△24.8

4,582

△29.8

その他関連事業

683

△38.0

398

△30.2

合計

10,914

△25.8

4,980

△29.8

 

 

c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

機能製品事業

66,687

+50.0

化学製品事業

26,157

+11.1

樹脂製品事業

44,773

+5.7

建設関連事業

12,174

△12.5

その他関連事業

18,547

△8.6

合計

168,341

+16.4

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容

(経営成績)

当社グループは、「中計ストレッチFinal stage」を「KC2020」で掲げた重点課題を完遂させる(「やり抜く」姿勢(企業風土)を定着させる)とともに、将来に向けて持続的な成長を果たすための具体的目標とアクションプランを策定する期間と位置づけ、事業活動を推進しております。

当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症の再流行に伴う中国でのロックダウンにより、機能製品事業の炭素製品分野の現地工場が一時的に稼働を停止し、原材料等の調達や物流においては、一部で遅延が生じましたがいずれも大きな影響はなく、財務面では資産の健全性を維持し、資金流動性も確保した上で安定的な事業運営にあたりました。

引き続き、同感染症の再拡大や原燃料価格の高騰、半導体の供給不足、ウクライナ情勢の動向等による影響が懸念され、先行きが不透明な状況ではありますが、各セグメントにおける需要動向を注意深くモニタリングし、適時適切な対応を図る体制を構築し、安定した経営基盤の維持を図ってまいります。

なお、経営成績の分析については、「3. 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態および経営成績の状況」に、分析に基づく検討内容については、「1. 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(3)経営環境、中長期的な会社の経営戦略および対処すべき課題」に記載しております。

 

(経営成績に重要な影響を与える要因)

当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因については、「2.事業等のリスク」に記載のとおりです。

 

(セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容)

機能製品事業

PGA(ポリグリコール酸)樹脂加工品は、米国のPGA樹脂製造会社での当期の生産活動を中止したことによる損失があったものの、販売は増加しました。原油価格や顧客であるシェールオイル・ガス掘削事業者での操業度、市場価格の動向等事業環境の変化、ならびに当社の新製品開発状況等から、今後の収益見通しを見直し、当連結会計年度に5,306百万円の設備減損損失を計上しました。フッ化ビニリデン樹脂は、各国政府による環境規制強化を背景とした積極的な政策導入等による電気自動車普及に支えられ、リチウムイオン二次電池用バインダー向け販売が伸長しております。本用途への潜在的需要は底堅く、競争力のある製品の安定供給ニーズが高まっており、引き続き新工場建設の検討を推進します。PPS樹脂は、自動車向けを中心に需要が底堅く推移しております。

 

化学製品事業

農薬は、販売は堅調に推移しましたが、原材料コスト、物流コストともに上昇が継続しており利益は減少しました。工業薬品は、市況価格の上昇に伴い、有機薬品類の販売が増加しました。

 

樹脂製品事業

コンシューマー・グッズは、在宅時間の長期化に伴い、家庭用ラップ「NEWクレラップ」の好調な販売が継続しました。フッ化ビニリデン釣糸「シーガー」は、アウトドアレジャーが活況であったことから国内外での販売が堅調でした。

業務用食品包装材は、新型コロナウイルス感染症の拡大によるロックダウンの影響を最小限に留め生産を継続し、アジア地域では販売、利益ともに伸長しました。欧州地域では原材料価格の急激な上昇や原料サプライヤーのプラントトラブル、地政学的リスクの増大等厳しい事業環境が続きましたが、販売は増加し、損失は減少しました。

 

建設関連事業

建設事業は、大手ゼネコンの中小案件への参入等受注競争の激化、資材費や人件費の高騰等厳しい事業環境の中、利益率の高い小規模案件の拡充や経費削減等で利益確保に努めましたが、販売、利益ともに減少しました。

 

その他関連事業

環境事業については、福島県内の災害廃棄物処理等が一巡し、販売、利益ともに減少しました。社会的にゼロエミッション、リサイクル推進の流れが進む中、確実な顧客獲得と原価低減等による競争力の強化を推進するとともに、次世代事業開拓を進めております。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容ならびに資本の財源および資金の流動性に関する情報

(キャッシュ・フロー)

「3. 経営者による財務状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 

(資本の財源および資金の流動性)

当社グループは、必要な資金を金融機関からの借入、社債およびコマーシャル・ペーパーの発行により調達しております。また、当社グループとしての資金の効率的な活用と金融費用の削減を目的として、キャッシュ・マネジメント・システムを導入しております。資金の流動性については、現金及び現金同等物に加え、コマーシャル・ペーパーの発行枠の確保、金融機関とのコミットメントライン契約、当座貸越契約等の活用により、流動性を確保できております。

当社グループは、計画利益の確保と資産の効率化による営業キャッシュ・フローの最大化を図り、優先的に新規事業および既存事業拡大のための設備投資、投融資、研究開発投資、および株主への配当等に資金を配分することを基本方針としております。その上で、長期的な資金の確保を第一としながら、長短借入金のバランスについても考慮し、必要な資金調達を実施しております。

重要な資本的支出の予定およびその資金の調達源については、機能製品事業を中心に設備投資を予定し、その資金調達は自己資金、社債及び借入金を考えております。

 

 ③ 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「連結財務諸表規則」という。)第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。

なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定は、「第5.経理の状況 1.連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 4.重要な会計上の見積りおよび判断」に記載しております。

 

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