当社は、システム開発及びその関連サービスの単一セグメントですが、事業の構成を「相対的に安定した利益体質の事業基盤:ソリューションカテゴリー」と「半導体工場内システムの運用・保守・インフラ構築等を支援する安定分野:半導体カテゴリー」及び「高度なソフトウエア技術により新市場を創出する成長分野:先進技術ソリューションカテゴリー」の3つのカテゴリーによる構造としております。また、先進技術に関連して次世代半導体メモリに関するソフトウエアの研究開発を行っております。
各カテゴリーの内容は次のとおりです。
(1)ソリューションカテゴリー
ソリューションカテゴリーは、大手企業顧客向けの請負(開発・運用保守)を中心としたサービスを展開しております。現在は、キオクシアグループ、東芝グループ、日立グループ等の大手企業グループを中心にサービス展開しており、その経験と実績をもとに他の大手企業や中堅企業への事業開拓を行っております。
本カテゴリーでは、産業領域に特化せず製造業、サービス業など様々な業種のユーザ企業をターゲットとしてサービスを展開しており、請負(開発・運用保守)及び派遣の形態で提供しております。その割合は、売上比で「請負(開発・運用保守):派遣=3:1」であり、請負(開発・運用保守)が主な事業モデルとなっておりますが、お客様の要望にお応えして、どの形態でも対応できる社内体制と人材を用意するよう努めております。
本カテゴリーの特徴は、発注元を特定の業界に依存しないこと及び大手企業を取引先の軸としていること
です。開発だけではなく、コンサルティングから、要件定義(注1)、テスト、検証まで全てのバリューチェーンに対応しております。システム開発後の運用や保守の作業に従事できる社内体制を整備するよう努めておりますので、お客様から見て、ワンストップでの対応が優位性となっているものと認識しております。請負開発だけではスポット取引(単発発注)になり易いため、検証・運用・保守まで広く対応することで、継続的な受注に繋がるものと考えております。加えて、大手企業を取引先の軸にしているため、そのグループ各社との取引にも繋がり、これらの実績と経験が、結果的に大手企業グループ以外のお客様にとって安心感となり、受注の継続と他の企業からの新規受注にも繋がっていると認識しております。
このように、ソリューションカテゴリーは、大手企業とそのグループ各社を中心とした顧客戦略に基づき、事業領域を特定せず、コンサルティング、要件定義、設計、開発、テスト、検証までの全てのバリューチェーンを網羅し、お客様の要求する技術及び人材提供モデルに柔軟に対応するものとしており、当社の基盤となるサービスカテゴリーとして位置付けております。
(2)半導体カテゴリー
半導体カテゴリーが提供するサービスは、半導体工場内のシステム運用及びシステム保守並びにインフラ構築等の支援であります。当社の前身である旧株式会社テックジャパンは、20年以上前から工場を有する顧客との関係強化に努めてきており、安定的に人員を提供できる体制を整えております。半導体工場における当社の役割は、工場内システムの保守及び運用サービスや、ITヘルプデスク等半導体工場のITインフラ運用支援を担当することであり、キオクシアグループ及び東芝グループ各社より受嘱しております。本事業の特徴は、工場に常駐する形態で工場システムの運用や保守業務に従事することであり、工場が存続する限り安定的に事業が継続できるものであると考えております。
システム運用サービスとシステム保守サービスの内容は次のとおりであります。
① 工場内システム運用サービスは、お客様の日々の工場運用業務をシステム上のトラブルなくスムーズに稼働させるために、正常にシステム稼働を維持させる業務です。中でもシステム監視業務は工場内セキュリティ対策において重要性が高く、システム稼働状況の監視、データのバックアップ管理、不正アクセス管理・ウィルスチェック、工場内従業員のためのヘルプデスク業務などが含まれます。お客様が滞りなく安心して工場システムを利用するためには、日々継続的にシステムをチェックする当社の役目は極めて重要であると認識しております。
② 工場内システム保守サービスは、当社の技術者がお客様の工場内で稼働する生産システムや社内インフラシステム等の改良・改修や調整・修理を行う業務であります。工場内で実稼働しているシステムに対して、お客様からの仕様や要望に基づき、当社技術者が実際にプログラム上の変更や追加を加えることで、お客様の要望にお応えいたします。特に、不具合の修正やデータベースのチューニング(注2)作業等のように、不定型な不具合を運用段階から引き取り、根本解決にまで持っていくには高度なプログラミングスキルが必要であり、当社がソリューションカテゴリーで培った全領域網羅型のサービス体制が生きる分野であります。
上記2つのサービスは、工場が稼働するためには極めて重要な業務であると認識しております。したがって、工場が稼働し存続する限り安定的に継続することを期待しております。今後も工場建設が継続的に行われることにより、工場の増加に伴い当社が供給する技術者数も増加し、継続的に売上が向上することを見込んでおります(*1)。
(3)先進技術ソリューションカテゴリー
先進技術ソリューションカテゴリーでは、ネットワーク・画像認識・画像処理・ハードウエア制御等最新の高度技術を駆使して、ソフトウエアの高機能化及び品質向上を実現するサービスを提供しております。現在はAIテクノロジー業務として論文調査、論文アルゴリズムの実装・評価、アノテーション(注3)サービス、ハードウエアレベルの最適化、さらには画像認識ソフトウエア開発などを行っておりますが、その事業規模は、2021年11月期実績で売上高の6.1%と他カテゴリーと比較すると小さい状況であります。そのため、さらなる事業規模の拡大を目指して、今後市場拡大が見込まれ、かつ高度なソフトウエア開発能力が必要とされる領域をターゲットに新規開拓を行っております。前述したソリューションカテゴリーが当社事業の安定的な基盤の位置付けであるのに対し、先進技術ソリューションカテゴリーは、高度なソフトウエア開発力を武器に、急成長が見込まれる産業領域(AI(人工知能:Artificial Intelligence)、画像処理・認識・機械学習、ロボット、自動運転等)にターゲットを置くもので、当社事業の急成長を狙うサービスカテゴリーであります。
本カテゴリーのサービス形態は請負開発であり、先のソリューションカテゴリーと異なる点は機械学習や画像処理・認識、統計処理等、ソフトウエア専門家による高度ソフトウエア技術が必要であることです。この分野は、お客様にとって容易に開発できる分野ではないため、当社の技術力がお客様の課題を解決する付加価値になると期待しております。このため、当社では博士号又はそれに準ずる知識を有するソフトウエア技術者を積極的に採用しております。
(4)研究開発
先進技術に関連して、スピントロニクス技術を搭載した次世代メモリに関する研究開発を行っております。その研究開発成果を、将来の収益に繋げられるようなビジネスモデルの構築を図ることを目的としております。なお、2020年12月より、従来、先進技術ソリューションカテゴリーで行っていた研究開発業務を独立させ、R&Dセンターを設立しております。研究開発の詳細については「第2 事業の状況 5 研究開発活動」に記載しております。
[事業系統図]
以上述べた事項を事業系統図によって示すと次のとおりであります。
用語解説
本項「3 事業の内容」等において使用しております用語の定義について以下に記します。
注 |
用語 |
用語の定義 |
注1 |
要件定義 |
要件定義とは、システムやソフトウエアの開発において、実装すべき機能や満たすべき性能などを明確にしていく作業のことをいう。 |
注2 |
チューニング |
コンピュータシステムやソフトウエアプログラムなどの設定や構成を調整し、性能を最大限引き出す調整作業のことをいう。 |
注3 |
アノテーション |
あるデータに対して関連する情報を注釈、注記として付与すること。本文の内容について言及する(本文そのものとは別形式の)補足的な情報のことをいう。 |
*1 JEITA(一般社団法人電子情報技術産業協会)が2021年11月に発表した世界半導体市場統計(WSTS)(https://www.jeita.or.jp/japanese/stat/wsts/docs/20211130WSTS.pdf)によれば、世界の半導体市場の成長は、2021年は前年比25.6%増、2022年は前年比8.8%増になると予測されており、日本の半導体市場も2021年には円ベースで前年比22.0%増、2022年は前年比10.3%増、市場規模は5兆2,395億円になると予測されています。 また、キオクシア株式会社は2021年2月25日付プレスリリースにおいて(https://about.kioxia.com/ja-jp/news/2021/20210225-1.html)、四日市工場の第7製造棟の起工式を行い、第1期分の竣工は2022年春を予定している旨を発表しています。このように、好調な半導体市場を背景に今後も設備投資が行われていくものと考えております。 |
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