文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営の基本方針
当社グループは、「私たちは国際化社会の中で、社員ひとり一人の個性を尊重し、誠実を旨とし、情報技術の先進的活用により顧客企業と社会の発展に貢献する。」ということを企業理念として掲げており、経営方針は以下のとおりです。
・顧客に信頼される会社となる。
・創造性あふれる専門家集団であり続ける。
・社会への貢献、個人への還元バランスをはかる。
(2)経営戦略等
ITシステムやITサービスの管理機能をクラウドサービスとして提供するServiceNowを初めとするシステム/サービス管理SaaS市場は高い成長を続けており、2020年実績は前年比40.9%増の219億900万円となり、2021年は前年比39.8%増の306億2,500万円を見込んでいます。2020年~2025年の年間平均成長率は32.0%、2025年には877億300万円に達すると予測しています。IDC Japan株式会社(以下「IDC Japan」という。)の「国内システム/サービス管理ソフトウエア市場予測、2021年~2025年」によると、2021年の国内システム/サービス管理ソフトウエア市場は前年比5.4%増の3,029億7,300万円になる見込みです。2020年~2025年の年間平均成長率は6.3%となり、2025年の市場規模は3,899億800万円になると予測しています。
IDC Japanの「国内BDAテクノロジー/サービス市場予測、2020年~2024年」によると、2019年の国内BDA(Big Data and Analytics)テクノロジー/サービス市場は売上額ベースで前年比10.0%増の1兆799億5,100万円でありました。また、2019年~2024年においては、2020年および2021年において新型コロナウイルス感染症(以下「COVID-19」という。)の流行の影響により一時的に成長が鈍化するものの、以降回復し、年間平均成長率は11.7%、2024年の市場規模は1兆8,765億7,400万円になると予測されております。
また、IDC Japanの「国内プライベートクラウド市場予測、2021年~2025年」によると、2021年の国内プライベートクラウド市場規模は、前年比35.8%増の1兆2,216億円になると予測しています。また、2020年~2025年の年間平均成長率は25.3%で推移し、2025年の市場規模は2020年比3.1倍の2兆7,815億円になると予測されております。
一方、IDC Japanの「国内パブリッククラウドサービス市場予測、2021年~2026年」によると、2021年の国内パブリッククラウドサービス市場規模は、前年比28.5%増の1兆5,879億円となりました。また、2020年~2026年の年間平均成長率は18.8%で推移し、2026年の市場規模は2021年比2.4倍の3兆7,586億円になると予測されております。
以上により、デジタル革新推進事業、ビッグデータ分析事業、及びクラウド基盤事業は、主要顧客との長期にわたる信頼関係も相まって需要が高い水準で成長すると予想しており、成長戦略の中核と位置付けております。
なお、当社グループは、上記の基本方針及び市場の動向に基づき、安定的かつ継続的な企業価値の向上を目指し、次の姿勢を貫いてまいります。
・お客様の業務を深く理解し、ニーズを汲み取った良質なエンジニアリングサービス、更に上流からのサービス(コンサルティングや各種提案)提供を行っていく
・デジタル革新技術を活用し、お客様の経営戦略実現のための業務統制の適正化と業務活動の効率化、そして経営リソースの有効活用を実現するエンドユーザ志向の新しいビジネスモデル(新事業)を構築し提供する
・社員がシイエヌエスで働くことを誇りに思える魅力を提供し、その魅力のもと高いサービス精神、チームワークを発揮し続け、顧客企業及び社会の発展に貢献する
これらの展望の下、次の3つの基本戦略を推進してまいります。
①事業基盤の強化
・ビジネス拡大に必要な体制の強化
今後の成長領域であるデジタル技術の領域の技術変化に対応した優秀な人材の獲得に向けて、コンサルティングの活用や広告等に、また人材育成に向けて研修等の教育施策の強化への投資を積極的に行います。
②新たな取引先拡大のための強化施策
・重点顧客(ビジネスパートナー含む)の連携強化による取引先(エンドユーザ)の拡充
当社の重点事業を支える技術の展開を進めておりますが、重点顧客自身及び重点顧客各社が持つ顧客(エンドユーザ)には、当社技術の活用が期待できる潜在顧客が多数あり、各社の社内部署及びエンドユーザへの展開の計画を共有頂き、提案等の推進の取り組みを支援することで売上の拡大を行います。
・新たなビジネスパートナーとの協業関係整備による新規顧客数の拡大
成長戦略の中核となるデジタル変革技術のノウハウを活用し、現在連携を始めている次のアライアンスパートナーをターゲットに当社の中核ビジネスであるデジタル技術のソリューション化や販売活動の支援を行い、連携を強めることで、アライアンスパートナーの先にある新規顧客の獲得を行います。
③技術サービスの拡充による市場拡大
・デジタル変革ソリューションの取り組み・拡充
顧客へのデジタル変革の最適な提案をするために、ITにおけるデジタル変革の流れをキャッチアップし、当社のデジタル変革ソリューションを拡充いたします。また、将来の事業の中核となる新たな技術、ソリューションの整備を行います。
・デジタル変革ソリューションの活用整備
主力ソリューションであるクラウド、ビッグデータ、ServiceNowのソリューションをパートナー各社がエンドユーザへ展開する際や当社が新規顧客へアプローチする際に、エンドユーザに分かりやすく、効率的にご活用いただけるように当社のノウハウを標準化、体系化し、サービスメニューの整備や方法論のフレームワーク化を行います。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、企業価値の向上及び財務体質の強化を図るため、具体的な数値目標は設定しておりませんが、
売上高成長率及び営業利益率を重要な経営指標としております。
(4)経営環境
当社グループは、システムエンジニアリングサービス事業の単一セグメントでありますが、サービス事業としてデジタル革新推進事業、ビッグデータ分析事業、システム基盤事業(オンプレ基盤事業、クラウド基盤事業)、業務システムインテグレーション事業を展開しております。
当社グループが属する情報サービス産業においては、DXを推進する動きが活発化しております。これまで情報システムはお客様ビジネスの構成要素の一部として扱われておりましたが、昨今の急激な環境変化に対応し、ビジネスの成長を拡大する上でデジタル技術を駆使した情報システムを経営の基本骨幹とされるように変化しております。
DXの市場動向については(2)経営戦略等に記載しているとおりであり、ビッグデータ分析事業、デジタル革新推進事業の需要は堅調であり、デジタル技術を活用する基盤としてクラウド基盤事業の成長も後押ししております。
COVID-19の影響はワクチン接種等、感染対策に万全を期すことでCOVID-19との共生が進み景気回復の程度は産業により異なるものの、経済活動の再開が進められている状況となっています。一方で、ウクライナ情勢等による各国の経済制裁など、景気の先行きについては、依然として不透明な状況にあります。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①新ビジネスモデルの構築
当社グループは受託型のエンジニアリングサービスやシステム開発に特化し、お客様との取引を拡大してまいりましたが、一方で受託型以外のビジネスモデルの構築が課題であると認識しています。ビッグデータ分析、クラウドサービス技術の強化を継続するとともに、デジタル革新技術の拡大に注力し、基盤系新サービス(IaaSソリューション)やIT技術教育サービスに着手しています。お客様のビジネス戦略の実現に貢献できる新しいビジネスモデルの構築を進めてまいります。
②新規顧客の獲得
受託型のエンジニアリングサービスやシステム開発では、お客様のビジネスを深く理解したサービスを提供できる企業へ発注が集中する傾向にあります。既存のお客様に対するニーズの深掘りを強化するとともに、ITベンダーやお客様とのパートナーシップの改善と増強を進めることで対応可能な技術や製品の幅を広げ、また、ブランドイメージを構築して、情報を発信することで、新しいお客様の開拓にも注力いたします。
③人材の確保と育成・働き方改革の推進
企業成長には優秀な人材の確保・育成は不可欠であり、情報サービス産業は人材こそが全ての業界と言えます。とりわけ、資格の取得につきましては、従業員のトライを全面的にサポートし、最先端技術の習得と活用に力を入れてまいります。また、人材の確保については、当社グループの技術力やサービス力の向上、新しいビジネスモデル構築の加速のためにも、新卒採用だけではなく即戦力のキャリア採用にも重点を置いて取り組んでまいります。加えて、協力会社との関係強化を進め、当社グループと協力会社が一体となって人材強化を実現できる関係を構築してまいります。社員の働き方については、ワークライフバランスに配慮しつつ、生産性及び品質の向上を実現することが重要な課題であると認識しております。社員の健康や意欲を損なわない環境を保ち続けることが、事業の健全な継続には不可欠であると考え、働き方改革を推進することで仕事へのやりがい、誇りを高めていきます。
④品質維持向上
情報サービス業界における受託型システム開発は、プロジェクトマネジメントや製造成果物の品質に関連した問題により業績に多大なる影響を与えるリスクを常に抱えております。当社グループにおいては、過年度に発生した課題の発生原因の追求と対策を行い継続的な再発防止に努めております。品質保証委員会によるプロジェクトの監視とマネジメント品質の向上、プロジェクト推進に必要な各種チェックツールの増強、管理職育成の改善・強化により、安定的な品質を確保する仕組みづくりと改善を進めてまいります。
⑤感染症対策
ワクチン接種等によりCOVID-19との共生が進む中、回復基調を辿ることが期待されますが、依然として先行きは不透明です。感染予防対策の指示やリモートワークの導入等、感染リスクの低減に取り組んでいるため現時点での業績への影響は軽微であると考えております。しかし、今後、COVID-19感染拡大により、社員やビジネスパートナーに感染者が多数発生した場合は、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥内部管理体制の強化
業務運営の効率化やリスク管理、また安定的に事業を拡大するためには内部管理体制のさらなる強化が必要不可欠であると考えております。今後も引き続き、内部管理体制の整備を推進するとともに、労務管理上の問題や情報漏洩、ハラストメントなどが発生しないようコンプライアンスの強化にも努めてまいります。
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