業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

① 経営成績

当連結会計年度における当社グループの経営成績は次のとおりであります。

 

2022年3月期

前連結会計年度比

売上高(百万円)

80,135

△5.6%

営業利益(百万円)

7,494

74.1%

経常利益(百万円)

8,840

120.3%

親会社株主に帰属する当期純利益(百万円)

6,747

 

 当社グループは、当連結会計年度(2022年3月期)で中期経営計画『SAKAINNOVATION 2023』の3年目を迎え、医療事業を除き、注力分野である電子材料を中心として、好調に推移しました。

 化学事業では、上期は電子材料が好調だったうえ、酸化チタンや樹脂添加剤での採算是正も早くに浸透し、有機化学品の医薬品原薬・中間体の主力中間体の出荷が集中したことから、売上・利益ともに伸長しました。下期からは原材料・燃料の高騰が大きく影響しましたが、低迷していた化粧品材料が回復し、堅調に推移しました。

 医療事業では、新型コロナウイルスや薬価切り下げによる影響を受け、既存事業が低調に推移し、減収・減益となりました。

 この結果、売上高は「収益認識に関する会計基準」等の適用によって前連結会計年度比5.6%減の80,135百万円となりましたが、営業利益は前連結会計年度比74.1%増の7,494百万円、経常利益は前連結会計年度比120.3%増の8,840百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は6,747百万円となりました。

 セグメントの業績は以下のとおりです。

 なお、各セグメントの営業利益は全社費用等調整前の金額であります。

 

(化学事業)

売上高は前連結会計年度比6.0%減の72,243百万円となりましたが、営業利益は前連結会計年度比60.3%増の9,190百万円となりました。

 

電子材料

誘電体材料(高純度炭酸バリウム)は、5G基地局やパソコン等通信機器向けを中心に堅調に推移しました。誘電体(チタン酸バリウム)についても、顧客の業績回復とともに売上高は増加しました。

 

酸化チタン・亜鉛製品

酸化チタンは、経済活動の回復と、貨物輸送の混乱等による海外品の品薄を背景に、販売は好調でした。原材料の高騰が顕著であったため、価格是正を実施した結果、売上高も大幅に増加しました。

亜鉛製品は、販売数量と売上高は当初計画より減少しましたが、景気の回復と亜鉛地金建値の高騰に支えられ、2021年5月に発生した湯本工場火災事故に起因する亜鉛末事業撤退の影響は軽微なものとなりました。

化粧品材料の超微粒子酸化チタン・酸化亜鉛は、世界的な経済活動の再開に伴う需要回復により、売上高・利益ともに増加しました。

 

樹脂添加剤

国内向けにおいては、景気回復に合わせて、主用途のパイプ・継手向けPVC安定剤が好調に推移しました。更にIT関連設備用PVC工業板が大きく伸長しました。また、金属石鹸等の機能性添加剤の出荷も堅調であり、売上高・利益ともに大きく改善しました。

海外においては、上期は非鉛系安定剤や中国向けハイドロタルサイトが堅調であり、下期は中国の景気減退により出荷が減少しましたが、対前年度比では回復しました。

 

衛生材料

コロナ禍による大幅な需要増は一段落しましたが、引き続き販売は堅調に推移しました。しかし、原材料の高騰を製品価格に転嫁し遅れたこと等により、利益は減少しました。

 

有機化学品

有機イオウ製品は、主用途のプラスチックレンズ向けなどの伸長、新型コロナウイルスの影響による日本製品への回帰、開発チオール製品の増販等があったうえ、コストダウンと生産効率の向上が実現し、原材料高騰の影響を最小限に抑制できました。また、有機リン製品等も回復したことから、売上高・利益ともに大きく伸長しました。

医薬品原薬・中間体の生産受託は、主力中間体が堅調に推移し、開発品のスポット生産・販売が業績に寄与して売上高は微増しましたが、受託製品の原価率の違いにより減益となりました。

 

触 媒

ニッケル触媒は、水添石油樹脂向けに予定していた主要顧客の新工場立ち上げが大きく遅れ、売上高・利益ともに伸びませんでした。

脱硝触媒は、海外でごみ焼却炉向け大型案件がまとまったことで、年間を通して低コスト・安定生産が可能となり、売上高・利益ともに増加しました。

 

受託加工

加工顔料については、入浴剤製品は巣ごもり需要が継続し、好調に推移しました。着色剤製品につきましては自動車・日用品関連は需要がコロナ前の水準にまで回復したことにより売上高・利益ともに増加し、特に利益は大幅に改善しました。

焼成、混合、乾燥等の工程受託については、電子材料向けが好調に推移した結果、売上高・利益ともに増加しました。

 

(医療事業)

売上高は前連結会計年度比2.5%減の7,892百万円となり、営業利益は前連結会計年度比7.6%減の418百万円となりました。

 

医療用医薬品

バリウム造影剤は、2016年度厚生労働省発出の「がん検診実施のためのガイドライン」による受診間隔の延長および受診年齢の引き上げ、胃内視鏡検査への移行等厳しい環境のもと、大口検診機関のニーズ対応を強化して市場シェア拡大に努め、国内販売の減少を最小限にとどめるとともに、韓国・台湾への輸出を強化しました。その結果、新型コロナウイルスの影響はなお大きく残りつつも、国内・海外ともに売上高は増加しました。

消化性潰瘍用剤「アルロイドG」は堅調な需要により販売数量は維持しましたが、薬価引き下げによる影響が大きく、売上高・利益ともに減少しました。

 

医療機器

新型コロナウイルスの影響で営業活動が制約される中、内視鏡洗浄消毒器はキャンペーンを打つなど積極的な販売促進活動を進めて販売台数を維持し、メンテナンス契約数および関連する消耗品の販売も好調に推移しました。

また、2019年からリリースした内視鏡手術用の粘膜下注入材「リフタルK」および注入材用穿刺針「リフテインニードル」は新規採用が進み、一定の売上増に寄与しました。「リフタルK」はタイでも承認を取得し販売を開始しました。

 

 

一般用医薬品・その他

かぜ薬「改源」等一般用医薬品は、新型コロナウイルスの影響を大きく受け、風邪の罹患者減少により主力のかぜ薬が低調に推移したことから、売上高・利益ともに減少しました。

新規事業として位置付けている美容医療機関向けのサプリ事業は拡大基調であり、紫外線対策サプリメント「ソルプロ」シリーズに続き、体臭予防サプリメント「アプローラ」を投入し売上に大きく寄与しました。

認知症予防の機能性表示食品素材である「タモギ茸エキス(エルゴチオネイン)」の製造は順調に受託数量を伸ばしました。併せてエルゴチオネイン配合の自社のNB製品である認知症予防サプリメント「メモエル」の開発が完了し、自社ECサイトを構築し販売を開始しました。

 

 

② 財政状態

当連結会計年度における当社グループの財政状態は次のとおりであります。

 

当連結会計年度末

2022年3月末

前連結会計年度末 増減

総資産(百万円)

123,919

912

負債合計(百万円)

41,211

△2,530

純資産合計(百万円)

82,708

3,443

自己資本比率

63.6%

2.0ポイント

 

(資産)

当連結会計年度末における総資産は123,919百万円となり、前連結会計年度末に比べ912百万円増加いたしました。

主な増減項目として、流動資産においては、受取手形及び売掛金が2,738百万円、商品及び製品が924百万円、原材料及び貯蔵品が956百万円それぞれ増加し、現金及び預金が293百万円減少いたしました。また、固定資産においては繰延税金資産が878百万円増加したものの、投資有価証券が4,518百万円減少しました。

・売上債権の増加は、グループ全体として販売が好調に推移したことにより売上が増加したことによるものです。

・棚卸資産の増加は、原燃料の高騰に加え、世界情勢を鑑み原燃料の安定的な調達が困難になる恐れがあるため在庫を確保していることによります。

・投資有価証券の減少は、コーポレート・ガバナンスに関する基本方針における政策保有株式に関する方針に従い、政策保有株式の売却を進めたことによるものです。

・繰延税金資産の増加は、投資有価証券を売却したことにより投資有価証券の評価差額金に係る繰延税金負債の金額が減少したことで、相殺後の繰延税金資産に影響を与えたことによります。

 

 

(負債)

当連結会計年度末における負債合計は41,211百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,530百万円減少いたしました。

主な増減項目は長期及び短期借入金の純減少額3,479百万円となっております。

・減少額の主要因としては、長期借入金の新規借入300百万円及び約定弁済を含む返済3,330百万円の差額3,030百万円です。

 

(純資産)

当連結会計年度末における純資産合計は82,708百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,443百万円増加いたしました。この結果、自己資本比率は63.6%(前連結会計年度末は61.6%)となりました。

主な増減項目として、利益剰余金が6,001百万円増加し、自己株式が1,462百万円増加いたしました。

・利益剰余金の増減内訳は、親会社株主に帰属する当期純利益6,747百万円及び剰余金の配当589百万円です。

・自己株式の増加の主な要因は、自己株式の取得1,500百万円によるものです。

 

 

③ キャッシュ・フロー

当連結会計年度における当社グループのキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

2022年3月期

前連結会計年度

増減

営業活動によるキャッシュ・フロー(百万円)

6,567

△1,258

投資活動によるキャッシュ・フロー(百万円)

△1,654

5,767

財務活動によるキャッシュ・フロー(百万円)

△5,654

△7,321

現金及び現金同等物の増減額(百万円)

△603

△2,608

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において、営業活動によるキャッシュ・フローの収入は6,567百万円となり、前連結会計年度に比べ1,258百万円減少いたしました。これは、主に税金等調整前当期純利益が11,261百万円増加したものの、前連結会計年度に計上していた減損損失7,041百万円が減少したことのほか、仕入債務の増減額の1,341百万円の増加、売上債権の増減額の1,354百万円の減少および、棚卸資産の増減額の4,394百万円の減少の影響によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において、投資活動によるキャッシュ・フローの支出は1,654百万円となり、前連結会計年度に比べ支出額は5,767百万円減少いたしました。これは、主に有形固定資産取得による支出が4,502百万円減少したことのほか、投資有価証券の売却による収入が1,178百万円増加したことによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において、財務活動によるキャッシュ・フローの支出は5,654百万円(前連結会計年度は1,667百万円の収入)となりました。これは、主に短期借入金の純増減額による支出が1,451百万円増加したことのほか、自己株式の取得による支出が1,499百万円増加したことによるものです。

 

以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は10,549百万円となりました。

 

 

④ 生産、受注及び販売の実績

(生産実績)

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前連結会計年度比(%)

化学

53,488

4.6

医療

6,063

26.0

合計

59,552

6.5

(注)1 金額は、販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

2 セグメント別の生産高を正確に把握することは困難なため、概算値で表示しております。

(受注実績)

 当社グループの主要製品については主に見込み生産を行っております。

(販売実績)

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前連結会計年度比(%)

化学

72,243

△6.0

医療

7,892

△2.5

合計

80,135

△5.6

(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、いずれの相手先についても当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 経営成績の分析

経営成績の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績」に記載しています。

 

② 財政状態の分析

財政状態の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態」に記載しています。

 

③ キャッシュ・フローの状況分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

キャッシュ・フローの状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フロー」に記載しています。

グループの資金調達については堺商事及び一部の借り入れを除き、当社にて一括調達し、グループファイナンスにて関係会社へ必要な資金を供与しています。

調達方法は取引金融機関が組成するシンジケート団によるコミットメントラインからの短期運転資金と個別取引金融機関からの長期設備資金融資の2種類であります。近時は旺盛な設備投資によるキャッシュ・フロー不足分を補うための長期借り入れを増やしており、当面この傾向は続くものと考えます。現時点では、安定的な財務基盤を背景に取引金融機関の当社に対する融資姿勢に変化なく、スムーズな資金調達を実施しております。

一方、堺商事及び海外子会社を除く国内関係会社を結んだキャッシュ・マネジメント・システムを導入し、グループ各社の流動預金を当社に集中、グループとしての資金効率アップに取り組んでおります。

また、当連結会計年度末における短期借入金の残高は8,202百万円、長期借入金の残高は8,756百万円、現金及び現金同等物の残高は10,549百万円となっております。

 

④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

1.棚卸資産の評価

当社グループでは棚卸資産の評価に関して、取得原価を基礎としながら、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、正味売却価額をもって貸借対照表価額としております。正味売却価額は、直近の販売実績による単価が当面継続すると仮定し、販売単価から販売に要する経費を控除した金額として見積もっております。

また、営業循環過程から外れた滞留棚卸資産については、滞留品の処分・販売状況がこれまでと大きく変わらないと仮定し、過去の処分・販売実績をもとに見込まれる損失額を見積もっております。

随時販売状況を見ながら生産調整を行っておりますので、滞留棚卸資産が急激に増加することはないと考えております。販売単価の下落に関しても、当社グループは多岐にわたる製品を製造販売しており、影響は限定的であると考えております。

2.退職給付引当金

当社では退職給付引当金は、退職金制度ごとに退職給付債務の期末残高から年金資産の期末残高を控除して計算しております。退職給付債務及び費用は、割引率、退職率、予想昇給率などの計算基礎を見積り、年金数理計算により計算しております。割引率は、期末における優良社債の利回りに基づき決定しております。割引率が低下した場合、退職給付債務が増加しますが、数理計算上の差異として発生の翌連結会計年度から一定の年数(5年)による定額法で費用処理されます。また、退職率、予想昇給率は当社の過去の実績をもとに、今後も同様の推移が継続すると仮定して決定しております。

年金資産は期待運用収益率を見積り、退職給付費用の計算に反映させております。期待運用収益率は、金融市場が比較的安定しており、過去の運用実績が今後も継続すると仮定して決定しております。実際の運用実績が期待運用収益率を下回った場合、割引率の低下と同様、数理計算上の差異が発生しますが、発生の翌連結会計年度から一定の年数(5年)による定額法で費用処理されます。

 

(3)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当連結会計年度における中期経営計画『SAKAINNOVATION 2023』の達成状況は次のとおりであります。

 

2018年3月期

2019年3月期

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

営業利益(百万円)

4,690

4,404

4,015

4,304

7,494

ROE(%)

3.0

4.6

3.3

△3.6

8.7

 

 

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