当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度における世界経済は、各国の経済対策やワクチン接種の進展により経済・社会活動の正常化が進み、概ね回復基調で推移しましたが、半導体不足等の供給制約により後半は回復ペースが鈍化しました。また、日本経済におきましても、海外の景気回復を受けた輸出増加や企業生産・設備投資が持ち直しの動きを見せ、回復基調が継続しましたが、新型コロナウイルス感染症の再拡大や原材料価格の急騰により後半は足踏み状態となりました。足元では、急激な為替変動やウクライナ情勢の悪化に伴うエネルギー価格の上昇など懸念材料もあり、国内外ともに先行きは不透明な状況となっております。
当社グループの主要な供給先であります自動車業界では、期前半は景気回復に伴う旺盛な需要を背景に、生産・販売ともに回復基調で推移しておりましたが、徐々に半導体不足等による生産調整の影響が出始め、期後半では世界の主要国で自動車生産台数が前年を下回る月が続きました。もう一つの柱であります鉄鋼業界では、製造業の生産回復に伴い鋼材需要は総じて回復基調で推移し、国内外の年間粗鋼生産量は前年を上回る水準となりました。一方で、足元では部品供給不足等による製造業の生産調整を背景に、国内の粗鋼生産量は前年割れする月が続いており、鋼材需給はやや緩和傾向にあります。
このような状況のなか、当社グループにおきましては、2028年の創業100周年へ向け、当社の企業理念を実現し、持続可能な社会の実現に貢献するため、新たに「Vision2030」を策定いたしました。Vision2030では、「あらゆる表面をカガクで変える」をキャッチフレーズに、あらゆる素材に、様々な機能を付与する表面改質技術の開発に取り組み、コア事業である、薬剤、装置、加工の3つの事業領域で、社会課題の解決に貢献し、社会と共に持続可能な成長・発展を目指しております。「既存分野の深耕と新規分野の開拓」「グローバル展開の加速」「グループ・ガバナンスの強化」「多様な人材の活躍推進」を基本戦略として掲げ、新たな成長ステージを目指した諸施策を推進しております。
この結果、当連結会計年度の連結業績は次のとおりとなりました。
売上高は1,177億52百万円(前年同期比17.8%増)となりました。事業の種類別セグメント毎の売上高は、前年同期に比べ薬品事業が14.8%、装置事業が36.6%、加工事業が14.6%の増収、その他が11.8%の減収となりました。また、地域別セグメントは、国内が8.9%、アジアが37.2%、欧米が8.5%といずれも増収となりました。
営業利益は133億70百万円(前年同期比25.2%増)と、売上高の増加に伴い増益となりました。経常利益は170億3百万円(前年同期比19.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は90億46百万円(前年同期比9.5%減)となりました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等の適用により、売上高は1億95百万円、売上原価が1億36百万円、営業利益、経常利益及び税金等調整前当期純利益が58百万円それぞれ増加しております。
この結果、当連結会計年度の総資産経常利益率(ROA)は7.6%と前年同期と比べ1.1ポイント増加いたしました。また、自己資本利益率(ROE)は5.8%と前年同期と比べ1.0ポイント減少いたしました。
海外業績の換算による損益計算書に与える影響額は、売上高で22億99百万円程度の増収、営業利益で1億82百万円程度の増益となっています。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
外部顧客に対する売上高は466億31百万円(前年同期比14.8%増)となり、営業利益は76億56百万円(前年同期比20.0%増)となりました。当事業部門は、あらゆる産業分野における素材の洗浄、防錆、塗装下地、潤滑、意匠などを目的とした表面処理剤の製造・販売と、これにともなう最新のノウハウ、技術サポートを提供しております。当期は主要顧客による生産調整の影響があったものの、金属表面処理剤の販売は前期後半からの回復基調が継続したため、売上高は期を通じて順調に推移しました。一方で、営業利益については、前年同期比では増益となったものの、リン酸、ニッケルなど主要原材料の価格急騰の影響などにより、四半期ごとに減少幅が大きくなり収益性は悪化しました。地域別では、国内および中国・タイ・インドネシア・インドなどアジア地域での販売回復が大きく、薬品事業全体としては増収増益となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高と売上原価はそれぞれ4億60百万円減少しております。
装置事業
外部顧客に対する売上高は239億14百万円(前年同期比36.6%増)となり、営業利益は1億51百万円(前年同期比64.7%減)となりました。当事業部門は、輸送機器業界を中心に前処理設備、塗装設備及び粉体塗装設備などを製造・販売しております。国内外ともに設備投資持ち直しの動きが見られ、自動車メーカー向け前処理装置の工事が進捗するなど順調に推移し、売上高は増収となりました。主に国内およびタイ、インドの販売回復が目立ちました。収益面では、鋼材価格の上昇やオミクロン株の感染拡大による工期の遅れなどが影響し、営業利益は減益となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は5億15百万円、売上原価は4億60百万円、営業利益は54百万円それぞれ増加しております。
外部顧客に対する売上高は448億20百万円(前年同期比14.6%増)となり、営業利益は67億81百万円(前年同期比30.3%増)となりました。当事業部門は、金属の強度や耐久性を高める「熱処理加工」、潤滑性・高密着性などの機能性を付与する「防錆加工」、素材表面に薄膜金属を被膜することで高耐食性、耐摩耗性などを付与できる「めっき処理」などの表面処理の加工サービスを提供しております。北米地域では苦戦を強いられましたが、国内および中国・タイ・インドネシア・ベトナムなどのアジア地域では、主要取引先である自動車部品メーカーの生産回復に伴い順調に推移し、加工事業全体では増収増益となりました。
外部顧客に対する売上高は23億87百万円(前年同期比11.8%減)となり、営業利益は29百万円(前年同期比24.2%減)となりました。当事業部門は、ビルメンテナンス事業、太陽光発電事業などを営んでおります。ビルメンテナンス事業では大型の大規模修繕工事を複数件受注したことにより増収となりましたが、前期末にボルトの製造・販売をしている会社を売却したことにより、全体としては減収減益となりました。また、ライフサイエンス事業として、前期より一般消費者向けに抗菌剤「Pal-feel」の販売を開始しました。併せて、医療機器への参入を進めており、自社開発のコーティング技術により、血液や生体組織の付着を低減した電気メス部品「CHIDORI」の製造販売やカテーテルガイドワイヤーの表面処理加工を行っております。なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は1億39百万円、売上原価は1億36百万円、営業利益は3百万円それぞれ増加しております。
第3次グループ中期経営計画(2020年3月期~2022年3月期)の最終年度である2022年3月期は、各国の経済対策やワクチン接種の進展により経済・社会活動の正常化が進み、概ね回復基調で推移しましたが、新型コロナウイルス感染症の影響、半導体不足による自動車生産台数の減少、原材料価格の高騰等により、数値目標は未達となりました。
(単位:百万円)
2023年3月期を初年度とする第4次グループ中期経営計画では、成長戦略、社会課題解決、企業変革の3つを柱として、Vision2030の実現に向けた経営基盤の強化に取り組んでまいります。
当社グループは主として販売計画に基づいた見込生産及び短納期での受注生産によっております。そのため、生産実績及び受注実績は販売実績と重要な相違がないため記載を省略しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2) 財政状態
(資産の部)
資産合計は、前連結会計年度末と比較し87億72百万円増加し2,289億82百万円となりました。流動資産は114億69百万円増加いたしました。主な要因としては、現金及び預金が88億69百万円、受取手形、売掛金及び契約資産(前連結会計年度末においては受取手形及び売掛金)が20億92百万円それぞれ増加したことなどが挙げられます。固定資産は26億97百万円減少いたしました。主な要因としては、有形固定資産が8億72百万円、投資その他の資産が19億2百万円それぞれ減少したことなどが挙げられます。
(負債の部)
負債合計は、前連結会計年度末と比較し22億33百万円減少し413億9百万円となりました。流動負債は3億78百万円減少いたしました。主な要因としては、支払手形及び買掛金が1億72百万円増加した一方で、前受金が17億30百万円減少したことなどが挙げられます。固定負債は18億54百万円減少いたしました。
(純資産の部)
純資産合計は、前連結会計年度末と比較し110億5百万円増加し1,876億73百万円となりました。主な要因としては、利益剰余金が57億93百万円、為替換算調整勘定が37億84百万円、非支配株主持分が22億11百万円それぞれ増加したことなどが挙げられます。
なお、収益認識会計基準等の適用により、利益剰余金の当期首残高へ与える影響額は軽微であります。
以上の結果、自己資本比率は70.0%と前連結会計年度末と比較し1.2ポイント増加するとともに、1株当たり純資産は1,366円47銭と78円46銭増加いたしました。
総資産合計は前連結会計年度末と比較し63億25百万円増加し619億91百万円となりました。流動資産は67億10百万円増加し474億92百万円となりました。有形固定資産は2億57百万円減少し137億87百万円となりました。無形固定資産は44百万円増加し5億53百万円となりました。投資その他の資産は1億72百万円減少し1億58百万円となりました。
総資産合計は前連結会計年度末と比較し20億26百万円減少し185億98百万円となりました。流動資産は21億53百万円減少し164億74百万円となりました。有形固定資産は82百万円増加し9億66百万円となりました。無形固定資産は18百万円減少し57百万円となりました。投資その他の資産は63百万円増加し10億99百万円となりました。
総資産合計は前連結会計年度末と比較し12億22百万円減少し776億88百万円となりました。流動資産は26億67百万円増加し419億36百万円となりました。有形固定資産は8億19百万円減少し302億12百万円となりました。無形固定資産は1億3百万円増加し16億92百万円となりました。投資その他の資産は7億28百万円減少し38億47百万円となりました。
総資産合計は前連結会計年度末と比較し37百万円増加し17億58百万円となりました。流動資産は1億3百万円増加し10億65百万円となりました。有形固定資産は67百万円減少し6億3百万円となりました。無形固定資産は0百万円減少し1百万円となりました。投資その他の資産は1百万円増加し87百万円となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況
現金及び現金同等物は、当連結会計年度の期首と比較し49億75百万円増加し、620億83百万円となりました。なお、当連結会計年度は、現金及び現金同等物に係る換算差額により14億55百万円増加しております。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と増減の要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
前連結会計年度に比べ19億30百万円収入が減少し142億81百万円の収入となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益158億45百万円、減価償却費59億12百万円、法人税等の支払額47億47百万円、前受金の減少額17億64百万円、減損損失12億60百万円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
前連結会計年度に比べ6億7百万円支出が減少し66億55百万円の支出となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出42億32百万円、定期預金の預入による支出39億54百万円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
前連結会計年度に比べ40億1百万円支出が増加し41億5百万円の支出となりました。これは主に、配当金の支払額32億42百万円の影響によるものです。
(キャッシュ・フロー関連指標)
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、以下のとおりであります。
主な資金需要は、製品製造のための材料・部品等の購入費、製造費用、加工処理費用、商品の仕入、販売費及び一般管理費、法人税等の支払、配当金の支払、運転資金及び設備投資資金等であります。
当連結会計年度は、法人税等の支払額47億47百万円、有形固定資産の取得42億32百万円、配当金の支払32億42百万円等の資金需要がありました。また、現金及び預金同等物の期末残高は、期首に比べ49億75百万円増加いたしました。有利子負債は当連結会計年度は1億5百万円増加しております。
基本的に運転資金については、期限が一年以内の短期借入金で、通常各々の会社で運転資金として使用する現地の通貨で調達しております。設備投資資金については、原則として自己資金を利用しておりますが、一部では借入金によるものがあります。
(4) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その適用においては、過去の実績等を勘案して将来の見積りを計上することが必要とされる場合があります。特に連結財務諸表に重要な影響を与える見積りを必要とする項目は以下のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症の仮定に関する情報は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (追加情報)」に記載しております。
①工事請負契約に係る収益認識
工事請負契約について、期間がごく短い工事を除き、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識しております。進捗度は、当連結会計年度末までに発生した工事原価を工事原価総額の見積りと比較することにより測定しております。工事原価総額は、必要となる資材や技術員、完成するまでの期間等に基づいて算定いたします。工事契約の着手後に判明する事実の存在、現場の状況の変化、市場環境の変化によって作業内容等が変更される結果、進捗度の測定の前提となる工事原価総額の見積りに影響を与え、工事損益に影響を及ぼす可能性があります。
②貸倒引当金
売掛金、貸付金その他これらに準ずる債権を適正に評価するため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については、個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。将来、債権の相手先の財政状態が悪化して支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。
③有形固定資産
償却資産に関しては、一般に公正妥当と認められる減価償却方法に基づき実施しております。また、固定資産の減損に係る会計基準に従い、減損損失の認識と測定を実施しておりますが、資産の市場価格の見積りや将来キャッシュ・フローの見積りは、合理的な仮定や予測に基づいて算出するため、当社グループによる見積りより悪化した場合、減損損失の追加計上が必要となる可能性があります。
④投資有価証券
当社グループは金融機関及び販売、仕入に係る取引先等の株式を保有しております。これらの株式には価格変動性が高い公開会社の株式と、株価の決定が困難である非公開会社の株式が含まれます。当社グループは、投資価値の下落が一時的ではないと判断した場合、合理的な基準に基づいて投資有価証券の減損損失を計上しております。なお、将来の市況悪化や投資先の業績不振等、現在の簿価に反映されていない損失又は簿価の回収が不能となる状況が発生した場合、減損損失の追加計上が必要となる可能性があります。
⑤退職給付に係る負債
従業員の退職給付費用及び退職給付債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されています。これらの前提条件には、割引率、期待収益率、将来の給与水準、退職率、直近の統計数値に基づいて算出される死亡率等が含まれます。当社及び一部の連結子会社が加入する年金制度においては、割引率は安全性の高い長期債券をもとに算出しています。期待収益率は、保有している年金資産のポートフォリオ、過去の運用実績、運用方針及び市場の動向等を勘案し計算されます。実際の結果が前提条件と異なる場合には、将来の費用及び計上される債務に影響を及ぼします。
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