課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

当社グループを取り巻く事業環境は大きく変化し、化学製品のグローバル化、コモディティ化が進む一方、求められる機能も多様化しております。激しい変化に柔軟に対応し、さらなる成長を実現するため、2021年4月策定の長期ビジョン「TechnoAmenity for the future」並びに2022年3月策定の新中期経営計画「TechnoAmenity for the future-Ⅰ」のもと、スピード感をもって3つの変革を進めてまいります。
 

( セグメント別の概況 

マテリアルズ事業では、アクリル事業・吸水性樹脂(SAP)事業の競争激化により収益性が低下する中、収益力強化を目的に「SAPサバイバルプロジェクト」を推進し一定の効果を上げてまいりました。2021年度からは酸化エチレン(EO)及びその誘導品への水平展開(EOレジリエンスプロジェクト)も開始し、収益性改善に取り組んでおります。
 また、社会要請が高まっているカーボンニュートラル対応に関しては、当社グループが貢献できる機会が多くあると考えており、「環境対応への変革」として推進しております。
 ソリューションズ事業では、保有技術・既存製品を活かした用途展開余地があると考えており、成長分野の注目10市場において戦略製品群等の拡販を推進します。
 顧客課題の複雑化や市場変化のスピードが加速する中、多様なニーズに対して強みを活かしたソリューションを提供するために、2021年度からマーケティング機能の強化を始めました。

 

 長期ビジョン「TechnoAmenity for the future」の概要 

長期ビジョンでは、「人と社会から必要とされる素材・ソリューションを提供」、「社会の変化を見極め、進化し続ける化学会社」、「社内外の様々なステークホルダーとともに成長」を「2030年の目指す姿」とし、その実現に向けた3つの変革を掲げております。
 


 

( 新中期経営計画「TechnoAmenity for the future-Ⅰ」 )

長期ビジョン実現に向けた最初の3ヵ年(2022~2024年度)計画として、新中期経営計画を策定しました。2024年度までの3年間を、各分野における基盤作りを行うとともに、変革に向けたさまざまな取り組みのスタート期間と位置付けております。新中期経営計画を着実に実行することにより、長期ビジョンで定めた「2030年の目指す姿」のマイルストーンとして、2024年度には過去最高益を目指します。
 
 

 

〔 企業理念体系 〕

長期ビジョン実現に向けて理念体系と内容を整理し、企業理念を頂点とする価値観、行動規範の体系に見直しました。

 


 

〔 経営目標 〕

「事業の変革」としてソリューションズ事業の営業利益割合を50%まで高め、過去最高益となる営業利益330億円を目指します。また「環境対応への変革」、「組織の変革」及び「資本政策」に関する目標も定め、各取り組みを着実に進めてまいります。

 

 

 

2024年度

2030年の目指す姿

財務目標

営業利益

330億円

600億円規模

ソリューションズ事業営業利益

170億円

400億円規模

ROE

7.5%

9%以上

ROA

6.9%

9%以上

総還元性向

50%

-

新規製品売上収益

(単体・SAP除く・5年以内上市)

280億円

-

投資額

成長投資及び

競争力維持投資

1,200億円

(FY2022-2024累計)

4,000億円

(FY2022-2030累計)

カーボン

ニュートラル目標

CO 2 排出量削減

(2014年度比・国内・Scope1&2)

-

30%削減

環境貢献製品売上収益

550億円

1,350億円

D&I目標

(単体)

事務系・化学系女性採用比率

30%

-

女性管理職(基幹職)比率

6%

-

男性の育児休職取得率

30%

-

 

<前提条件>2024年度:ナフサ50,000円/kL、ドル110円、ユーロ130円

 

当社は事業の収益性や成長性を表す営業利益を重視していることに加え、新中期経営計画では、既存分野から成長分野へのポートフォリオ変革を目指しているため、ソリューションズ事業営業利益を財務目標として設定しております。
 また、当社は装置産業であること等から、従来から収益性と資産効率を重視し、ROA(資産合計税引前利益率)を財務目標のひとつとしております。さらに、株主に対する十分な還元を行うことを目指しており、自己資本に対する経営の効率性を表すROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)も新中期経営計画より財務目標のひとつとしております。
 

 

3つの変革 〕

① 事業の変革

ポートフォリオ変革として、ソリューションズ事業の営業利益割合50%を目指します。

 


 

 a. ソリューションズ事業拡大に向けた取り組み

ソリューション提案力強化に向け、企画・開発・マーケティングに関するプラットフォームを整備します。具体的には、1)柔軟かつ機動的なリソース配分、2)自社の強みが活かせる注目市場の設定、3)顧客情報の可視化と共有化などにより課題把握力を強化し、顧客視点での課題解決を実現します。さらにタイムリーな生産体制を構築すべく、研究開発テーマに生産技術部門が早期に関与できる仕組みを構築し、グループ内設備の効率的活用など初期投資を抑制した迅速な製品化を進めます。
 

 b. マテリアルズ事業強靭化に向けた取り組み

アクリル事業では、収益力強化として、前中期経営計画中に取り組んできた「SAPサバイバルプロジェクト」を継続するとともに、高効率生産技術を導入し製造コストの削減を進めてまいります。また、サステナビリティへの取り組みとしては、バイオマス原料アクリル酸(バイオAA)の開発、バイオマス由来高吸水性樹脂(バイオSAP)への取り組み、SAPリサイクルの推進とサプライチェーンを通じた取り組みを進めます。
 なお、インドネシアの年産10万トンのアクリル酸製造設備の増設については、2023年に商業運転開始を予定しております。
 


 
 EO事業では、「SAPサバイバルプロジェクト」の知見をEO及びその誘導品にも活かし、製造所・グループ会社一体での収益性改善を図ります(EOレジリエンスプロジェクト)。また、サステナビリティへの取り組みとして、バイオ原料を使用したエチレン誘導品の製造・販売に向けた取り組みを進めます。 

 

 

② 環境対応への変革

2050年カーボンニュートラル実現に向け、2030年の自社排出CO 2 削減目標30%(対2014年実績、Scope1&2)を設定しました。従来の省エネ活動等に加え、製造プロセス・技術の革新、原料及びエネルギーの転換等、複合的な活動を通じ目標達成を目指します。
 また、社会全体での排出量削減に貢献する環境貢献製品の売上収益目標を設定し、当該製品を拡販する事により事業活動を通じたCO 2 削減(Scope3)にも努めます。
 

 


 

③ 組織の変革

個人と組織が成長できる仕組みの実現を目指し、3つの課題を設定し、さまざまな施策を実施していきます。具体的には、1)人財育成・活躍推進(新人事制度導入、多様な人財の活躍推進、多様な働き方を支える制度・インフラの整備等)、2)組織の成長(間接部門の生産性向上、組織判断の迅速化に向けた権限委譲、経営と従業員の対話強化等)、3)コーポレート・ガバナンスの強化(取締役会の実効性強化、役員に対する中長期のインセンティブ強化等)に取り組み、企業成長の基盤を築いてまいります。

 

〔 DX推進 〕

全社横断で活動を先導・サポートするDX推進組織を設置し、DX推進を加速します。

 


 

 

〔 資本政策 〕

成長投資、競争力維持投資及び株主還元の最適なバランスを取ることで、新中期経営計画最終年度(2024年度)にROE7.5%、ROA6.9%達成を目指します。

 


 

〔 2021年度進捗状況について(新中期経営計画のゼロ年度として) 〕

長期ビジョンのもと、2021年度は新中期経営計画のゼロ年度として、必要な取り組みを順次進めてまいりました。
 「事業の変革」においては、ソリューションズ事業拡大に向け、企画・開発・マーケティング機能強化の中心となる組織の新設と増員を完了し、導入済のマーケティングオートメーション等を活用し情報の収集・分析・共有化を開始しております。また、タイムリーな生産体制構築を目的に、研究開発・事業化の進捗を関連部門で随時共有するシステムの構築を進め、2022年度からの本格運用開始を予定しております。マテリアルズ事業強靭化に向けては、関連するコスト削減プロジェクトを開始するとともに、欧州の子会社ニッポンショクバイ・ヨーロッパ N.V.ではバイオSAP生産の認証取得を完了し、今後、顧客の要望に応じてその供給体制を順次整えてまいります。
 「環境対応への変革」においては、2030年目標に向けたCO2削減シナリオの策定を終え、使用エネルギーの転換を開始し、現在研究開発しているテーマの多くも、環境貢献製品として市場へ投入していく見込みであります。
 「組織の変革」においては、人財育成・活躍推進を目的とした新人事制度や組織の成長に向けた職務権限の見直しを行い、2022年4月より運用を開始しております。
 DX推進は多様な働き方を支えるIT基盤、基幹業務システム(ERP)の更新を計画通りに進めており、新たに設置した組織を中心により効果的な運用を図ります。
 

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