課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)企業理念、行動指針、必達

当社グループでは、創業者である高橋 義博が1968年に制定した<必達>を経営方針の中心に据えて経営に取り組んで参りました。職場の目に付くところに掲示し、役職員で毎朝唱和することにより、<必達>に込められた精神、考え方を常に確認すると同時に、従業員への浸透を図ることを行ってきました。

<必達>の精神は、現在においても何らその価値を失っていないものと考えますが、既存の仕事、製品を軸に、役職員個々人の心構えや行動に重点を置いた内容としているため、近年の社会環境、経済環境の変化をみたとき、社内外の人との関連性、新しい技術革新、製品開発への一層の目配り、社会の中における当社の連環という視点に不十分さをぬぐえない状況にありました。

そのため、2015年12月開催の当社取締役会において、<必達>の考え方に加える形で、新たに<企業理念>、<行動指針>を規定し、経営方針を一層充実したものといたしました。

これは、すべての経済原則や経営理論は「人」の行動原理に基づくものであるとの理解に立ち、まずは社内外を問わず全ての「人」に興味を持つべきであるとし、技術革新や商品開発など新しいことへの取り組みが、人や企業の活性化につながるという点を改めて確認し、一方、未来に目を向けると、人も企業も他者との連環(関連)の中で生き抜いていかざるをえないことを再認識した上で、社会に必要とされ、社会の発展に資する姿勢を打ち出していくべきとしたものであります。比較的平易な表現とすることで、若手従業員から経営トップに至るまで、<必達>と合わせて、浸透を図ることを企図したものであります。

 

これらを踏まえ、当社グループは以下の<企業理念>、<行動指針>、<必達>の社是の下、事業活動を行い、社会に対する企業責任を積極的に果たしてまいります。

 

<企業理念>

・人に興味を持とう

・新しいことに興味を持とう

・未来に興味を持とう

 

<行動指針>

人間は面白い。

その面白い人間が作っているのが企業であり、また顧客である。

全ての経済原則、経営理論は、人の行動原理に基本がある。

人に興味を持とう。

新しいことはワクワクする。

技術革新や商品開発は顧客や市場を開拓すると同時に、人間も活性化する。

新しいことに興味を持とう。

未来を考えることは楽しい。

未来は子供たちのものだ。

未来を考えれば、人も企業も自分だけでは生きて行けないことが分かる。

顧客の発展が無ければ、当社は富んでも長続きしない。

更に、社会に生かされなければ、人も企業も存続し得ない。

未来に興味を持とう。

 

一方、当社には1968年に制定した、社是「必達」が存在します。上記の企業理念と共に、歴史ある社是「必達」を誇りを持って遵守しています。

 

<必達>

私たちはカラーエイジを担う大日精化の社員として<必達>の社是のもとに誇りを持って仕事をすすめよう

1.仕事は必ず目標を立てこれを必達しよう

1.正しい製品知識を身につけ製品普及のチャンスを積極的に求めよう

1.仕事を通じ製品を通じて会社の信用を更に高めよう

1.社会人として常に教養を高め反省を深める機会を持とう

1.仕事を通じて社会に貢献し大日精化を最高の企業体としよう

(2)経営理念

創業者 高橋 義博の「自分の生活が好きな色彩によって包まれたいと思うのが私たちの念願」との言葉にもありますように、世界中の「もっと自由に彩りたい」という願いをかなえるために、当社グループは、彩りと機能性を持った素材をさまざまな分野での企業活動を通じて提供し、社会やお客様の願いに貢献することとしております。お客様の声に十分に耳を傾け、これまで培ってまいりました3つのコア技術、すなわち、①有機無機合成・顔料処理技術、②分散加工技術、③樹脂合成技術と、これらを組み合わせ、素材が持つ特性や機能を生かした製品開発、すなわち、ファンクションテクノロジーを一体となって機能させることにより、お客様の課題解決を提案してまいりました。その結果、生み出してまいりました製品は、色材、機能材、合成樹脂、天然物由来高分子など多岐にわたっており、自動車・電気機器・建材などの部品から日常生活に関連する繊維・パッケージ・情報関連素材まで広範囲な製品に利用・活用されております。今後とも、地道で着実な研究開発とものづくりを通して、お客様や社会の課題解決に貢献することにより、持続的な成長と中長期的な企業価値の創出を目指してまいります。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、昨年、中期経営計画の公表に合わせ、ROA(総資産経常利益率)5%、ROE(自己資本利益率)9%を中長期的な経営目標として掲げましたが、初年度が経過した2022年3月末時点では、ROA4.2%、ROE5.9%の結果となりました。 

 

(4)経営環境及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題等

当社グループの置かれている経営環境については、下記のとおりと認識しております。

 

①お客様の国内外の事業展開に対して的確にキャッチアップする必要があることと同時に、販売、生産に係る収益性、効率性などの点から、国内外における積極的な業務展開は引き続き不可欠な状況にあり、国内、海外の一方に偏することなくバランスのよい業務展開をするべきであることは引き続き重要な課題であると認識しております。

 

②持続的な成長のためには、ESGへの取組みがあらゆる事業活動の基本理念であり、環境配慮(E)、社会貢献(S)に対し研究・開発が果たす役割が、引き続き特に重要であると認識しております。このため本項(2)経営理念で前述のとおり、3つのコア技術を更に深化させるとともに、新たな技術を取り入れた上で融合し、社会全体の持続性、安全性、収益性、効率性、採算性などの側面から十分に検証の上で、引き続き資金と人財を投入していく必要があるものと認識しております。

 

③上記②に述べたように、長期的・持続的成長分野への対応にあたりESG、SDGsを念頭に、単なる製品開発という点にとどまることなく、地球規模の環境や社会問題へ取り組む企業姿勢と、透明かつ公正な意思決定を可とするガバナンスが、当社グループの安定的かつ長期的な成長及び将来の企業価値においても大きな影響を与えるものと再認識した上で、お客様や投資家様を始めとするステークホルダーから常に選ばれる企業となるために、全社を挙げて、E(環境配慮)、S(社会貢献)、G(企業統治)の側面から能動的に活動を促進することが必要と理解しております。

 

④上記①乃至③に加え、デジタル技術の活用は、当社グループの競争力の源泉のひとつであり、経営上の目標を達成するための重要な手段であると認識しております。新基幹システムを、2018年10月に国内拠点への導入後、海外拠点においても現地の事情に適応したシステム導入を順次進めており、また、新基幹システムのさらなる活用のための周辺システム整備も着々と進めてきておりますが、より高度化していく外部環境からの要請事項に、これまで以上に、適時に、かつ的確に対応していく仕組みが必要であると認識しております。

 

これらを踏まえ、当社グループの持続的成長と中長期的な企業価値の創出のため、昨年公表しております中期経営計画の施策を重点的に進めることといたします。

ア、技術主導による競争優位性確保

当社グループでは、技術マネジメント手法を用いて保有する技術を再評価し、社会的なニーズ(ESG)への貢献を最優先課題として、オープンイノベーション、セグメント間のシナジー、知財戦略などを組み合わせ、市場規模・収益性・成長性を評価して、保有している3つのコア技術(1 有機無機合成・顔料処理技術、2 分散加工技術、3 樹脂合成技術)を深化させた技術開発に取り組んでおります。 これらを重要な基盤として、昨年、中期経営計画の施策を策定するにあたり、従来の注力4分野(環境、エネルギー、パーソナルケア、IT・エレクトロニクス)を改めて、①IT・エレクトロニクス 機能性材料、②ライフサイエンス・パーソナルケアの二つを新規発展分野、③モビリティ、④パッケージングの二つを継続発展分野として開発対象の中心に据え、資金と人財を積極的に投入することを行い、技術主導による競争優位の確保を目的とした「技術オリエンテッド」体制の構築を目指すことといたしました。これにより、製品の差別化、品質向上により社会貢献度を高め、同時に収益性の確保を図ることといたしました。

初年度を終了し、現時点での状況は以下のとおりと認識しております。

 

①IT・エレクトロニクス 機能性材料

二次電池用部材、導電性部材、熱伝導性材料、機能性ポリマーなどにおいて、基礎技術に目途を付けると同時に、サンプルワークによる性能評価を進め、また、産学連携による新技術を付加することにより、着実な一歩を踏み出すことができました。今後、早期の実績化、生産体制増強に向けて、研究開発を進めてまいります。

②ライフサイエンス・パーソナルケア

生分解性微粒子、化粧品材料において、量産化設備に目途を付け、また、植物由来キトサンの開発に着手するなど一定の進捗を得ることができました。今後、一層の性能面のアップなどを目指して、継続的に注力してまいります。

③モビリティ 

ウレタン、アクリル、シリコーンポリマー、軽量・高強度樹脂コンパウンドなどにおいて、水性化、バイオマス化などの環境配慮強化、リサイクル素材を利用した高強度コンパウンドの生産プロセスに目途をつけることができました。今後、早期の実績化を目指し、引き続き注力してまいります。

④パッケージング

ガスバリア性を付与したインキ、パッケージおよびラベルのリサイクルが可能なインキ、バイオマス由来のインキなどを上市し、サンプルワークを開始しました。現時点でグラビアインキの50%以上をESG製品で占めており、今後もバイオマス由来の原材料の採用を増やし環境配慮製品の開発、販売の鋭意強化に努めてまいります。

 

イ、ESGを重視した経営による企業価値向上に向けた改革の推進

中期経営計画を策定するにあたり、ESGの取組みは、当社グループを取り巻くサプライチェーン全体の重要な課題として認識し、原材料調達段階から当社製品を使用した製品が廃棄される段階までを含めたライフサイクル全体において、(ア)ESG貢献製品開発・拡販、(イ)気候変動への取り組み、(ウ)資源循環促進、(エ)社会貢献の一層の促進、(オ)コーポレート・ガバナンスへの一層の取り組みを実施することといたしました。

初年度を終了し、現時点での状況は以下のとおりと認識しております。

 

(ア)ESG貢献製品開発・拡販

上記アで一部述べたとおり、地球温暖化防止、資源循環促進、水資源保護、フードロス削減などの観点から、二次電池用部材、導電性部材、熱伝導性材料の開発やバイオマス由来製品の開発などを積極的に進めてまいりました。今後も、この分野の製品開発・拡販には注力してまいります。

(イ)気候変動への取り組み

省エネ対策として、太陽光発電設備の設置、ボイラーの運用改善、生産機械の高効率化、照明器具のLED化を実施すると同時に、買電を再生可能エネルギーによる電力に切り換えることを進めました。合わせて、インターナルカーボンプライシングに関する社内整備を進めました。今後も、これらの施策をTCFD提言に沿って鋭意継続することとし、海外生産拠点も含めたグローバルな展開を行うことといたします。

(ウ)資源循環促進

プラスチック製品の原材料のバイオマス化への対応を加速化させると同時に、廃プラスチックの排出量抑制とリサイクル促進を進めてまいりました。今後も、これらの対策を鋭意継続するとともに、生産工程から生じるロスを削減するため工程管理を強化することなども行うことといたします。

(エ)社会貢献の一層の促進

お客様とのかかわりにおいては、適切な化学物質管理(新管理システムの導入、リスクアセスメントなど)、品質管理(ISO9001による全社的なQMS活動実施、内部監査実施)、責任ある原材料調達(CSR調達基準によるサプライヤー調査)、サステナブルな物流業務の展開(輸送ロットアップ、在庫拠点集約など)に取り組んでまいりました。従業員とのかかわりにおいては、ワークライフバランスの充実、女性、外国人、中途採用者の一層の活躍などの点から、人事制度の充実を図っております。合わせて地域社会とのかかわりにおいては、生産拠点の近隣に対する安全・安心を最優先に防災活動と環境負荷低減に努めてきております。これらの諸施策は着実に、継続的に実施することにより効果を得られるものであるため、今後も注力して対応してまいります。

(オ)コーポレート・ガバナンスへの一層の取り組み

単に法令順守、ルール順守に留まるだけでは実質的なガバナンスの向上につながらないとの認識から、コンプライアンスの徹底のために経営層からのメッセージの発信・従業員からのフィードバックを継続的に実施、社内イントラシステムなどを利用した継続的な研修の実施、ガバナンス体制上の委員会活動にESGの視点を大幅に追加するなど、より一層「風通し」のよい組織体制づくりに向けて、今後も地道な活動をひとつずつ積み上げてまいります。

 

ウ、海外事業拡大に向けた事業基盤の強化~海外売上高比率の向上~

当社グループの収益、成長の源泉は、国内・海外双方に存在し、GDP高伸長国での事業展開もバランスよく事業育成をしていく必要があるとの認識の基に、中期経営計画を策定するにあたり、(ア)「地産地消」の推進と海外拠点の拡充、(イ)新規ビジネスの創出に注力することといたしました。

初年度を終了し、現時点での状況は以下のとおりと認識しております。

 

(ア)「地産地消」の推進と海外拠点の拡充

自動車内装材用をはじめとした、環境配慮型ウレタン樹脂製品に対する海外からの強い供給要請に応えるため、積極的な事業展開を実施してきました。今後も、新規採用のための拡販活動に取り組んでまいります。

(イ)新規ビジネスの創出

東南アジア、中国、欧州におけるエンジニアリングプラスチック事業の展開と生産設備の増強、欧州の商業印刷分野におけるデジタル印刷需要取り込みなどの事業を展開いたしました。海外における新規ビジネスの創出は一朝一夕に成就しがたいものであるとの認識に立ち、これらの事業を中心におき、今後とも、鋭意、注力していくことといたします。

 

中期経営計画の公表に合わせ掲げましたROA(総資産経常利益率)5%、ROE(自己資本利益率)9%の経営目標を達成するためにも、以上のような施策を引き続き強力に推し進めていくことといたします。

 

 

合わせて、当社グループの置かれている経営環境と要請される事項に的確に対応するため、DXの推進により、デジタル技術を更に活用し、社内データの整備や業務改善に直結する事象の把握と改善への取組みなど、生産性の向上や経営基盤の強化に積極的に取り組んでまいります。また、デジタルリテラシー向上のための研修や、具体的なプロジェクトなどを活用したOJTなども効果的に行うことなどにより、一層のデジタル人財の基盤強化を図ることといたします。

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