当連結会計年度における当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」といいます。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中における将来に関する事項は、当社グループが当連結会計年度末現在において判断したものです。
ⅰ 業績全般
当社グループの当連結会計年度( 2021年4月1日 ~ 2022年3月31日 :以下同じ)における事業環境は、新型コロナウイルス感染症による影響から各国の経済活動に持ち直しの動きがみられる中で、国内外の需要が前期に比べ回復基調で推移しました。一方で、資源価格の動向を背景に原燃料価格は継続的に上昇しており、当第4四半期においてはウクライナ情勢の影響を受けて高騰するなど、先行きに対し不透明感のある状況が続いております。
このような状況下、売上収益は、3兆9,769億円(前連結会計年度比7,194億円増)となりました。利益面では、コア営業利益は2,723億円(同976億円増)、営業利益は3,032億円(同2,557億円増)、税引前利益は2,904億円(同2,575億円増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は、1,772億円(同1,848億円増)となりました。
(注)1 当社グループは、IFRS(国際会計基準)に基づいて、連結財務諸表を作成しております。
2 コア営業利益は、営業利益(又は損失)から非経常的な要因により発生した損益(事業撤退や縮小から生じる損失等)を除いて算出しております。
3 それぞれ、 2020 年4月~ 2021 年3月、 2021 年4月~ 2022 年3月の平均
各セグメントにおける売上収益及びコア営業利益の状況は、以下のとおりです。
(金額単位:億円)
(注)1 セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2 第1四半期連結会計期間より、一部の事業及び連結子会社の所管セグメントを見直しております。これに伴い、前連結会計年度の実績を組み替えております。
<コア営業利益 増減要因>
(金額単位:億円)
(注) その他差には、利益増加要因として在庫評価損益の前連結会計年度(△75億円)と当連結会計年度(471億円)の差額546億円や持分法投資損益の前連結会計年度(129億円)と当連結会計年度(214億円)の差額85億円が含まれており、減少要因として研究開発費の増加や販売活動回復に伴う固定費増加等の金額が含まれております。
(金額単位:億円)
セグメント別の業績の概要の詳細は、以下のとおりです。
イ 機能商品セグメント(ポリマーズ&コンパウンズ、フィルムズ&モールディングマテリアルズ、アドバンストソリューションズ)
当セグメントの売上収益は1兆1,363億円(前連結会計年度比1,417億円増)となり、コア営業利益787億円(同190億円増)となりました。
ポリマーズ&コンパウンズサブセグメントにおいては、自動車向け等の販売数量が増加したことに加え、ポリマーズの一部製品において市況が上昇したことにより、売上収益は増加しました。
フィルムズ&モールディングマテリアルズサブセグメントにおいては、需要の回復に伴いモールディングマテリアルズの自動車向け等を中心に販売数量が増加したことに加え、フィルムズのディスプレイ向け光学用途等が上期を中心に好調に推移したことにより、売上収益は増加しました。
アドバンストソリューションズサブセグメントにおいては、経済活動の回復に伴い販売数量が増加したこと等により、売上収益は増加しました。
当セグメントのコア営業利益は、原料価格上昇の影響を受けたものの、自動車向けを中心に総じて販売数量が増加したこと等により、増加しました。
当連結会計年度に当セグメントにて実施又は発生した主な事項は、以下のとおりです。
・炭素繊維・複合材料事業の強化・拡大を図るため、炭素繊維強化プラスチック製自動車部品の製造販売会社である、持分法適用会社のC.P.C.社(本社:イタリア・モデナ市)において、世界最大級となる5,000トン容量大型プレス成形機の増設を含む設備投資を2021年4月に決定しました。2023年中の設備稼働を目標としています。
・ポートフォリオ改革の一環として、ビスフェノールA及びポリカーボネート樹脂の製造販売会社で、持分法適用会社であった中石化三菱化学聚碳酸酯(北京)有限公司(本社:中国・北京市)の株式を、2021年10月に中国石油化工股份有限公司(本社:中国・北京市)に譲渡しました。
・窒化ガリウム(GaN)単結晶基板の量産に向けた実証設備を、株式会社日本製鋼所(本社:東京都品川区)と共同で日本製鋼所 M&E 株式会社室蘭製作所構内に2021年5月に竣工し、量産に向けた実証実験を開始しました。高品質なGaN基板の供給を通じ、燃費・発電効率向上といったエネルギーミニマム社会への貢献を目指します。
・需要の増加に対応するとともにサプライチェーンの強化を図るため、シュガーエステルの新たな製造設備(生産能力:2,000トン/年)を、福岡事業所(所在地:福岡県北九州市)において建設することを決定しました。2023年央の稼働を目標としています。
・ポートフォリオ改革の一環として、結晶質アルミナ繊維事業を、Apollo Global Management社(本社:米国・ニューヨーク州)の関連会社が投資助言するファンドが保有する特別目的会社へ2022年3月に譲渡しました。
・今後も世界的に需要拡大が見込まれるポリエステルフィルムの生産能力を、ドイツにおいて増強(ドイツ生産能力:55,000トン→82,000トン/年)することを決定しました。2024年末の稼働を目標としています。
・旺盛な需要に対応するとともにサプライチェーン強化を図るため、半導体封止材・電子材料向け特殊エポキシ樹脂の新たな生産拠点を福岡事業所(所在地:福岡県北九州市)に設けることを2021年12月に決定しました。2023年4月の商業生産開始を目標としています。
・エンジニアリングプラスチックス事業の強化に向け、持分法適用会社の三菱エンジニアリングプラスチックス㈱(以下、「MEP」)の一部株式を2023年4月に三菱ガス化学株式会社(本社:東京都千代田区)へ譲渡し、同時にMEPの一部事業を吸収分割により取り込むことを2022年2月に決定しました。これに伴い、当社グループのMEP株式保有比率は25%となり、MEPは三菱ガス化学株式会社の子会社となります。
当セグメントの売上収益は1兆2,879億円(前連結会計年度比3,968億円増)となり、コア営業利益は1,022億円(同864億円増)となりました。
MMAサブセグメントにおいては、需要が堅調に推移する中、MMAモノマー等の市況が上昇したことにより、売上収益は増加しました。
石化サブセグメントにおいては、原料価格の上昇等に伴い販売価格が上昇したことに加え、エチレンセンターの定期修理の影響が縮小したことや需要の回復により販売数量が増加したことにより、売上収益は増加しました。
炭素サブセグメントにおいては、需要の回復に伴い輸出コークスの販売価格が上昇したことにより、売上収益は増加しました。
当セグメントのコア営業利益は、石化製品における販売数量の増加と原料価格上昇に伴う在庫評価損益の改善に加え、MMAモノマーや輸出コークス等の市況が上昇したこと等により、増加しました。
当連結会計年度に当セグメントにて実施又は発生した主な事項は、以下のとおりです。
・JNC石油化学株式会社との合弁会社である日本ポリプロ㈱が保有し、ポリプロピレンコンパウンド及びガラス長繊維強化熱可塑性樹脂事業を展開する海外グループ会社6社を2021年7月に完全子会社としました。国内外の技術力と事業基盤の活用を通じ、自動車軽量化に貢献する有力材料等の需要増加に応え成長を加速させていきます。
・アクリル樹脂のケミカルリサイクルの事業化に向け、2021年6月に日本国内で実証設備を建設し、事業化に向けた実証試験を進めることを2021年5月に決定しました。廃車からのテールランプなどのアクリル樹脂の回収、そのケミカルリサイクル及び再利用について、本田技研工業株式会社(本社:東京都港区)とともにスキームの検討を進めており、今般の実証設備を用いたリサイクルシステムの実証試験についても共同で実施していきます。
・廃プラスチックから化学製品や燃料油の原料を製造する技術のライセンス契約を、Mura Technology社(本社:英国・ロンドン市)との間で2021年6月に締結しました。サーキュラーエコノミーの実現に向けてケミカルリサイクルの事業化検討を加速していきます。
・プラスチック油化共同事業の開始に向けて、ENEOS株式会社(本社:東京都千代田区)と商業ベースでは国内最大規模となる年間2万トンの処理能力を備えたケミカルリサイクル設備を茨城事業所(所在地:茨城県神栖市)に建設することを2021年7月に決定しました。2023年度の稼働を目標としています。また、本設備の建設に伴い、リファインバース株式会社(本社:東京都中央区)との間で原料となる廃プラスチックを調達する基本合意書を2021年7月に締結しました。
ハ 産業ガスセグメント(産業ガス)
当セグメントの売上収益は9,501億円(前連結会計年度比1,383億円増)となり、コア営業利益は989億円(同138億円増)となりました。
産業ガスにおいては、国内外の需要が総じて回復したことにより、売上収益及びコア営業利益はともに増加しました。
当連結会計年度に当セグメントにて実施又は発生した主な事項は、以下のとおりです。
・当社グループの日本酸素ホールディングス㈱は、日本、韓国、中国において、半導体デバイスの製造プロセスで使われる電子材料ガスであるジボランガスの製造能力を、2023年末までに順次増強することを2021年11月に決定しました。今後もエレクトロニクス産業の需要に応えるとともに、サプライチェーンを強化していきます。
当セグメントの売上収益は4,036億円(前連結会計年度比130億円増)となり、コア営業利益は70億円の損失(同249億円減)となりました。
医薬品においては、国内医療用医薬品で薬価改定等の影響を受けたものの、重点品の販売数量が伸長したこと等により、売上収益は増加しました。コア営業利益は、新型コロナウイルスワクチンの研究開発費の増加等により減少しました。なお、Novartis Pharma社に導出した多発性硬化症治療剤「ジレニア®」のロイヤリティ収入については、2019年2月に仲裁手続きに入ったためロイヤリティ収入の一部について、IFRS第15号に従い売上収益の認識を行わないこととしました。当連結会計年度におきましても、仲裁手続きが継続しているため、ロイヤリティ収入の一部について、売上収益の認識を行っておりません。
当連結会計年度に当セグメントにて実施又は発生した主な事項は、以下のとおりです。
・Muse細胞製品「CL2020」について、急性心筋梗塞、脳梗塞、表皮水疱症、脊髄損傷、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に加え、2021年4月に新型コロナウイルス感染症に伴う急性呼吸窮迫症候群を対象とした臨床試験を開始しました。
・新型コロナウイルス感染症の予防をめざして開発をしている植物由来のウイルス様粒子(Virus Like Particle)ワクチン(開発コード:MT-2766)について、連結子会社であるメディカゴ社(本社:カナダ・ケベック市)がカナダにおいて2022年2月に承認を取得しました。新型コロナウイルス感染症ワクチンとして世界初の植物由来ワクチンとなります。また、日本において2021年10月に第1/2相臨床試験を開始しました。
・「ジスバル®カプセル40mg」(開発コード:MT-5199、一般名:バルベナジン)について、遅発性ジスキネジアを適応症とした日本における承認を2022年3月に取得しました。日本において遅発性ジスキネジアの治療剤として初めて承認された医薬品となります。
その他部門の売上収益は1,990億円(前連結会計年度比296億円増)となり、コア営業利益は150億円(同31億円増)となりました。
なお、当社グループの生産品目は広範囲かつ多種多様であり、また、受注生産形態をとらない製品も多く、セグメント毎に生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
また、主な販売先別の販売実績及び総販売額実績に対する割合については、当該割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。
② キャッシュ・フロー
(金額単位:億円)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、原料価格上昇等による運転資本の増加等があったものの、税引前利益や減価償却費等により、3,469億円の収入(前連結会計年度比1,202億円の収入の減少)となりました。
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、事業譲渡による収入並びに投資の売却及び償還による収入があったものの、有形固定資産及び無形資産の取得2,577億円等により、1,288億円の支出(同882億円の支出の減少)となり、フリー・キャッシュ・フロー(営業活動及び投資活動によるキャッシュ・フロー)は、2,181億円の収入(同320億円の収入の減少)となりました。
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、有利子負債の返済による支出2,759億円や配当金の支払い542億円等により、3,363億円の支出(同1,935億円の支出の増加)となりました。
これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物残高は、前連結会計年度末と比べて1,038億円減少し、2,458億円となりました。
③ 財政状態
(金額単位:億円)
当連結会計年度末の資産合計は、有利子負債の返済に伴い現金及び現金同等物が減少したこと等がありましたが、円安の進行に伴う在外連結子会社の資産の円貨換算額の増加や、原料価格上昇等による棚卸資産の増加及び売上収益増加に伴う営業債権の増加等により、前連結会計年度末に比べ2,867億円増加し、5兆5,739億円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、有利子負債の返済に伴う減少等がありましたが、原料価格上昇等による営業債務の増加等により、前連結会計年度末に比べ135億円増加し、3兆7,296億円となりました。
なお、当連結会計年度末のリース負債を含む有利子負債は、前連結会計年度末に比べ1,925億円減少し、2兆2,899億円となりました。
当連結会計年度末の資本合計は、配当による減少がありましたが、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上等により、前連結会計年度末に比べ2,732億円増加し、1兆8,443億円となりました。
これらの結果、当連結会計年度末の親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末と比べて2.8ポイント増加し、26.2%となりました。なお、ネットD/Eレシオは、前連結会計年度末と比べて0.33減少し、1.40となりました。
(2) 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
① 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
新たな経営方針「Forging the future 未来を拓く」(以下、新経営方針といいます。)で設定した財務目標に対する達成・進捗状況については、以下のとおりです。
売上収益・コア営業利益・EBITDA推移
収益性・安定性指標推移
EPSは継続事業に係る1株当り利益を表示しています。
*1 結晶質アルミナ繊維事業譲渡益相当額を控除して算定したEPSは96.92円です。
2021年度は、新型コロナウイルスの影響を受けた2020年度から大きく回復し、コア営業利益は2,723億円となりました。加えて、新経営方針で掲げたポートフォリオ見直しの一環としての「結晶質アルミナ繊維事業譲渡」を実行し、財務体質の改善(ネットD/Eレシオ 0.33改善:期首1.73→期末1.40)も進捗しております。
② 経営環境と今後の見通し
当社グループを取り巻く事業環境は、新型コロナウイルス感染症による影響が緩和される中で、景気の持ち直しが続くことが期待されます。一方で、地政学的リスクに伴う国内外の経済の下振れや、原燃料価格の高騰、サプライチェーンの混乱等に十分留意する必要があります。
このような状況下、当社グループにおいては、ケミカルズセグメントにおける一部製品の市況の下落や在庫評価益の縮小が見込まれるものの、機能商品セグメントにおける自動車用途等での堅調な需要の継続や原料価格上昇分の製品価格への転嫁の浸透、産業ガスセグメントにおける堅調な需要の継続が見込まれます。ヘルスケアセグメントにおいては、国内医療用医薬品の薬価改定影響がある一方、新型コロナウイルスワクチンの実用化を見込んでおります。
以上を踏まえ、翌連結会計年度の連結業績につきましては、売上収益は4兆4,360億円、コア営業利益は2,750億円、営業利益は2,770億円、税引前利益は2,660億円、当期利益は1,940億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,530億円となる見込みです。
2022年度以降、新経営方針で掲げた諸施策の実行を加速し、2025年度目標の達成に向けて努力してまいります。
上記の見通しにおける主要指標の想定値は以下のとおりです。
(金額単位:億円)
(注)それぞれ、2021年4月~2022年3月、2022年4月~2023年3月の平均
(3) 資本の財源及び資金の流動性
① 財務方針及び企業価値の向上
当社グループは、新経営方針で定めた財務目標を達成すべく、策定したロードマップに従って諸施策を実施することにより、企業価値の向上をめざしてまいります。(ロードマップの詳細は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)新経営方針「Forging the future 未来を拓く」 Ⅲ. ロードマップ」をご参照ください。)
当社グループでは資本コストを意識した経営に取り組んでおり、経営指標の策定や投資判断に活用してまいりました。新経営方針においても、企業価値向上のため、株主資本コストを上回るROEを経営指標として設定するとともに、ROICを注力事業の選別基準の一つとし、市場の成長性、競争力、サステナビリティにフォーカスしてポートフォリオ運営を進めてまいります。(ポートフォリオ運営の詳細につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)新経営方針「Forging the future 未来を拓く」 Ⅰ.経営戦略における最重要ポイント 1.市場の成長性、競争力、サステナビリティにフォーカスしたポートフォリオ」をご参照ください。)
② 資金調達及び資金配分方針
当社グループは、運転資金及び設備資金については、内部資金に加え借入金、社債等による調達を実施しているほか、複数の金融機関とのコミットメント・ラインの設定に加え複数の金融機関との間のアンコミットメントベースの当座借越契約、コマーシャル・ペーパー発行枠及び国内社債発行登録枠等の確保により資金調達手段の多様化を図り、十分な流動性の確保を行っております。
資金配分の方針につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)新経営方針「Forging the future 未来を拓く」 Ⅰ.経営戦略における最重要ポイント 5.戦略的なキャピタル・アロケーション」をご参照ください。
(4) 重要な会計上の見積り
連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるために、これらの見積りと異なる場合があります。見積り及びその基礎となる仮定は、継続して見直されます。会計上の見積りの変更による影響は、その見積りが変更された会計期間及び影響を受ける将来の会計期間において認識されます。
当社グループの連結財務諸表に重要な影響を与える可能性のある会計上の判断、見積り及び仮定に関する主な情報は、以下のとおりです。
① 非金融資産の減損
ⅰ 当連結会計年度の連結財務諸表に計上した金額
当社グループは、連結財政状態計算書に、有形固定資産1,899,695百万円、のれん705,412百万円、無形資産448,805百万円(うち、耐用年数を確定できない無形資産及び未だ使用可能でない無形資産66,695百万円)を計上しております。
なお、当連結会計年度において減損損失を26,047百万円計上し、連結損益計算書の「その他の営業費用」に含めております。その主な内訳は、変形性関節症の治療薬開発における技術に係る無形資産(開発段階にある導入契約により取得した権利)です。減損損失の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 15.減損損失」をご参照ください。
ⅱ 連結財務諸表利用者の理解に資するその他の情報
(ⅰ)算出方法
当社グループは有形固定資産、のれん及び無形資産について、減損の兆候がある場合、及び資産に年次の減損テストが必要な場合、その資産の使用価値や処分費用控除後の公正価値の算定を行っております。
使用価値の算定にあたっては、貨幣の時間価値及びその資産に特有のリスクについて現在の市場の評価を反映した税引前の割引率を用いて、見積将来キャッシュ・フローの割引現在価値を計算しております。なお、将来キャッシュ・フローの見積りにあたって利用する事業計画は原則として5年を限度とし、事業計画の予測の期間を超えた後の将来キャッシュ・フローは個別の事情に応じた長期平均成長率をもとに算定しております。
(ⅱ)主要な仮定
使用価値の算定における主要な仮定は以下のとおりです。
(技術に係る無形資産(仕掛研究開発費、開発段階にある導入契約により取得した権利))
規制当局の販売承認の取得の可能性、上市後の売上収益の予測及び割引率
(有形固定資産、上記を除く無形資産、のれん)
原則として5年を限度とする事業計画における将来キャッシュ・フローの見積り、割引率及び成長率。
将来キャッシュ・フローの見積額は主として、売上収益の予測及び市場の成長率に影響を受けます。
(ⅲ)翌連結会計年度の連結財務諸表に与える影響
主要な仮定について、経営者は妥当と判断しておりますが、将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、前提とした状況が変化すれば回収可能価額の算定結果が異なる可能性があります。なお、提出日現在において、これらの見積りの見直しが必要となる事象は生じておりません。
② 繰延税金資産の回収可能性
ⅰ 当連結会計年度の連結財務諸表に計上した金額
繰延税金資産(純額) 64,596百万円
ⅱ 連結財務諸表利用者の理解に資するその他の情報
(ⅰ)算出方法
当社グループでは、将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金に対して、予定される繰延税金負債の取崩、予測される将来課税所得及びタックス・プランニングを考慮し、繰延税金資産を計上しております。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 (7) 法人所得税」をご参照ください。
(ⅱ)主要な仮定
将来課税所得の基礎となる将来の事業計画における主要な仮定は売上収益の予測及び原料価格の市況推移の見込みです。
(ⅲ)翌連結会計年度の連結財務諸表に与える影響
認識された繰延税金資産については、過去の課税所得水準及び将来減算一時差異と繰越欠損金の解消が予測される期間における将来課税所得の予測に基づき、回収される可能性が高いと考えております。これらの仮定は、経営者は妥当と判断しておりますが、将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、将来課税所得の結果が予測・仮定と異なる場合は繰延税金資産の回収可能性の評価が異なる可能性があります。
③ 確定給付制度債務の測定
ⅰ 当連結会計年度の連結財務諸表に計上した金額
退職給付に係る負債 103,941百万円
ⅱ 連結財務諸表利用者の理解に資するその他の情報
確定給付制度に係る負債又は資産は、確定給付制度債務の現在価値から制度資産の公正価値を控除して算定しております。確定給付制度債務は年金数理計算により算定しており、その前提条件には割引率等の見積りが含まれております。経営者は、使用した仮定は妥当なものと考えておりますが、将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、金利環境の変動等により前提条件と実際の結果が異なる場合又は前提条件に変化がある場合には、確定給付制度債務の評価額が異なる可能性があります。
確定給付制度債務に係る詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 27.退職給付」をご参照ください。
④ 金融商品の公正価値
ⅰ 当連結会計年度の連結財務諸表に計上した金額
公正価値ヒエラルキーがレベル3の株式及び出資金(売却目的で保有する資産を除く) 108,902百万円
なお、上記の金額は、連結財政状態計算書の「その他の金融資産」に含めております。
ⅱ 連結財務諸表利用者の理解に資するその他の情報
当社グループにおいて活発な市場における公表価格が入手できない非上場株式及び出資金の公正価値は、合理的に入手可能なインプットにより、類似企業比較法又はその他の適切な評価技法を用いて算定しております。経営者は選択された価値評価技法と使用した仮定は、金融商品の公正価値を評価する際において適切であると判断しておりますが、これらの評価技法とインプットは将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、予測不能な前提条件の変化等により金融商品の評価に関する見積りが変化した場合には、公正価値の評価額が異なる可能性があります。
詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 35.金融商品 (8) 金融商品の公正価値」をご参照ください。
また、上記のほか、当連結会計年度において見積りを行う上での特に重要な仮定は以下のとおりです。
(新型コロナウイルス感染症の影響に関する仮定)
新型コロナウイルス感染症による影響については、日本を含む各国におけるワクチン接種の進捗により、このところ改善傾向が見られ、先行きについても各種政策の効果や海外経済の改善もあって、持ち直しの動きが続くことが期待されています。依然として不確定要素を孕んでいるものの、翌連結会計年度以降の当社グループの業績等への影響は限定的との仮定を置いて、会計上の見積りを行っております。
(ウクライナ情勢の影響に関する仮定)
ウクライナ情勢について、事業上の直接的な影響は軽微であり、当連結会計年度末での会計上の見積りにおいては、当社グループ業績に重要な影響を及ぼすという仮定は置いておりません。
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