業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

①経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の断続的な感染拡大を背景に、外出自粛や飲食店等の営業時間短縮など経済活動の抑制が長期化したことにより個人消費が低迷した一方、ワクチン接種の進展に伴い徐々に行動制限が緩和され、経済活動が正常化に向かうなかで、5GやAI等を活用した最先端分野における技術・品質の高度化、働き方やライフスタイルの変化・多様化に対応した製品やサービスへの新たな需要もみられました。

 製造業においては、年初より自動車や半導体及び電子部品などを中心に需要の回復がみられましたが、半導体不足の影響、資源価格の高騰及び物流の逼迫などにより、旺盛な需要に対して供給不足となる状況が継続しました。

 このような環境のもと、当社グループは、徹底した感染対策を行いながら工場をはじめとする各拠点の事業活動を安定して継続してまいりました。また、原料調達において供給元との連携を強化することで需要に見合った生産と適正在庫の確保を図るとともに、原油やナフサの価格変動、製品の需給バランスに応じた価格への見直しを行い利益確保に努めてまいりました。

 第3次中期経営計画の戦略に基づいた取り組みとしては、冷凍機油原料や次世代半導体向け材料の新設備も活用して伸長する需要を着実に取り込み、収益拡大を図りました。また、千葉工場における冷凍機油原料等の生産能力を増強するため、総投資額が約95億円となる設備投資を決定しました。加えてオープンイノベーション拠点であるKH i-Lab(ケイエイチ アイラボ)にオープンラボを開設し、異分野での共同実験を進めるなど新規ビジネス創出に向けた動きを加速しております。さらに、CO排出削減効果が見込まれる自家発電設備を千葉工場に新設したことをはじめ環境負荷低減に取り組んだほか、統合報告書を発行し非財務情報の開示を充実させるなど、ビジネス基盤の強化に向けた施策を着実に推し進めました。

 その結果、当連結会計年度における当社グループの業績は、売上高1,171億10百万円(前連結会計年度比51.4%増)、営業利益196億85百万円(同248.9%増)、経常利益198億9百万円(同252.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益136億91百万円(同238.3%増)と増収増益となり、各利益の段階で過去最高となりました。

 

 事業分野別には、次のとおりであります。

 基礎化学品は、溶剤、可塑剤原料ともに当連結会計年度を通じて堅調な需要が続きました。また、需給バランスのタイト化による海外市況の高騰により輸出の採算性が大きく向上したことに加え、国内においても価格の見直しを行ったことが寄与し、売上高578億1百万円(前連結会計年度比68.1%増)、営業利益93億55百万円(同597.1%増)となりました。

 機能性材料は、冷凍機油原料については中国等で環境配慮型のエアコンの生産・販売が増加し、当連結会計年度を通じて当社製品の販売も好調に推移しました。化粧品原料においてはインバウンド需要が戻らず国内の需要は低迷したものの、一部の海外向け需要に回復がみられました。これらの結果、売上高442億48百万円(前連結会計年度比45.3%増)、営業利益99億76百万円(同94.5%増)となりました。

 電子材料は、半導体向けを中心に前連結会計年度からの好調な需要が当連結会計年度においても継続しました。また、需給バランスのタイト化や原燃料価格の高騰、高品質ニーズの高まりにより製品価格が上昇し、売上高143億90百万円(前連結会計年度比25.1%増)、営業利益34億18百万円(同91.7%増)となりました。

 その他は、売上高6億69百万円(前連結会計年度比32.5%減)、営業利益1億8百万円(同50.1%減)となりました。

 

(注)上記の事業分野別の「営業利益」には、全社に共通する管理費用等を配分しておりません。

 

②財政状態

(資産)

 当連結会計年度末における流動資産は702億91百万円となり、前連結会計年度末に比べ263億52百万円増加いたしました。これは主に、現金及び預金が78億68百万円、受取手形及び売掛金が111億28百万円、たな卸資産が71億64百万円それぞれ増加したことによるものであります。

 固定資産は517億78百万円となり、前連結会計年度末に比べ2億7百万円増加いたしました。これは主に、建物及び構築物が4億58百万円、機械装置及び運搬具が18億1百万円それぞれ減少しましたが、リース資産が12億68百万円、建設仮勘定が11億12百万円それぞれ増加したことによるものであります。

 この結果、資産合計は1,220億69百万円となり、前連結会計年度末に比べ265億60百万円増加いたしました。

(負債)

 当連結会計年度末における流動負債は532億76百万円となり、前連結会計年度末に比べ180億70百万円増加いたしました。これは主に、短期借入金が3億40百万円、未払金が14億99百万円それぞれ減少しましたが、支払手形及び買掛金が113億77百万円、1年内返済予定の長期借入金が8億50百万円、未払法人税等が55億64百万円、修繕引当金が17億73百万円それぞれ増加したことによるものであります。

 固定負債は112億88百万円となり、前連結会計年度末に比べ31億29百万円減少いたしました。これは主に、リース債務が13億46百万円増加しましたが、長期借入金が32億50百万円、繰延税金負債が4億99百万円、修繕引当金が6億59百万円それぞれ減少したことによるものであります。

 この結果、負債合計は645億64百万円となり、前連結会計年度末に比べ149億40百万円増加いたしました。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は575億5百万円となり、前連結会計年度末に比べ116億20百万円増加いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益136億91百万円及び剰余金の配当22億28百万円によるものであります。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ78億68百万円増加し、169億34百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は174億2百万円(前連結会計年度は69億31百万円の獲得)となりました。これは主に、売上債権の増加額110億89百万円、たな卸資産の増加額70億76百万円及び法人税等の支払額11億55百万円により資金が減少しましたが、税金等調整前当期純利益197億88百万円、減価償却費43億69百万円、修繕引当金の増加額11億14百万円、仕入債務の増加額112億56百万円により資金が増加したことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は43億95百万円(前連結会計年度は111億82百万円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出40億44百万円によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は51億68百万円(前連結会計年度は45億30百万円の使用)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出24億円及び配当金の支払額22億29百万円によるものであります。

 

④生産、受注及び販売の実績

 当社グループは化学品事業の単一セグメントであるため、事業分野別に記載しております。

 

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績を事業分野ごとに示すと、次のとおりであります。

事業分野の名称

当連結会計年度

(自 2021年1月1日

至 2021年12月31日)

前年同期比(%)

基礎化学品   (百万円)

53,543

180.8

機能性材料   (百万円)

41,162

153.8

電子材料    (百万円)

14,336

121.4

合計(百万円)

109,041

159.9

(注)1.金額は販売価格によっております。

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

b.受注実績

 当社グループでは一部受注生産を行っておりますが、売上高のうち受注生産の占める割合が低いため、受注実績は記載しておりません。

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績を事業分野ごとに示すと、次のとおりであります。

事業分野の名称

当連結会計年度

(自 2021年1月1日

至 2021年12月31日)

前年同期比(%)

基礎化学品   (百万円)

57,801

168.1

機能性材料   (百万円)

44,248

145.3

電子材料    (百万円)

14,390

125.1

その他     (百万円)

669

67.5

合計(百万円)

117,110

151.4

(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2020年1月1日

至 2020年12月31日)

当連結会計年度

(自 2021年1月1日

至 2021年12月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

出光興産㈱

9,286

12.0

13,417

11.5

ミヤコ化学㈱

8,613

11.1

10,929

9.3

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当連結会計年度における財政状態及び経営成績の概要は「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載しております。

 新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けた前連結会計年度から回復もしくは良好に推移した当社グループ製品への需要に的確に対応しながら、環境に配慮した製品や品質の高い製品へのニーズを取り込むことで販売シェアを拡大できたものと認識しております。また、原燃料価格の上昇やタイトな需給バランスに応じて、製品価値に見合った価格への見直しを行ってまいりました。

 基礎化学品及び機能性材料で大きく販売数量が増加しましたが付加価値の高い機能性材料の販売数量が大きく伸長したことまた基礎化学品の製品価格の見直しにより利幅の確保ができたことが営業利益の大幅な増加に寄与したものと認識しております

 電子材料においては半導体向けを中心に前連結会計年度に引き続き良好な需要が継続いたしました

 

 当連結会計年度末における有利子負債(リース債務を除く。)残高は前連結会計年度末に比べ27億40百万円減少の184億60百万円となりました。純有利子負債(リース債務を除く。)残高は現金及び預金の増加により前連結会計年度末に比べ106億8百万円減少の15億25百万円となりました。

 当連結会計年度末における自己資本比率は44.99%となり、引き続き安定的な水準にあるものと認識しております。

 

 なお、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、経済環境及び市場環境の変動、原材料の価格変動、為替相場の変動、製造物責任及び産業事故災害等が挙げられます。詳細につきましては「2 事業等のリスク」に記載しております。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況の概要は「(1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 当社は、運転資金及び設備投資に使用するための資金を内部資金または借入金及び社債により調達しております。このうち、有利子負債による資金調達につきましては、運転資金を主に短期借入金及びコマーシャル・ペーパーにより、設備投資などのための長期資金を主に長期借入金及び社債により、それぞれ調達しております。

 当連結会計年度における現金及び預金は169億34百万円となりました。前連結会計年度末の90億66百万円から78億68百万円増加しており、十分な手元流動性を確保しているものと認識しております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

④経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

≪第3次中期経営計画の振り返り≫

 2019年12月期を初年度とする第3次中期経営計画(3カ年)の最終年度である2021年12月期における経営指標の目標値と実績値は以下のとおりであります。

 

売上高

営業利益

ROE

(自己資本利益率)

自己資本比率

目標値

1,100億円

135億円

18%

47%

実績値

1,171億円

197億円

28%

45%

 

 2021年12月期については事業環境の好転もあり過去最高益を達成しましたが、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けた2020年12月期の落ち込みもあり、3カ年累計としては当初の目標に対して売上高、営業利益ともに下回る結果となりました。

 一方で、大きく事業環境が変化するなかで、中長期の成長につながる戦略を着実に実行いたしました。

戦略

<戦略Ⅰ>

<戦略Ⅱ>

<戦略Ⅲ>

新設備の稼働等による

収益拡大

将来の機能化学品事業拡大に

向けた積極投資

ビジネス基盤の強化

・冷凍機油原料で圧倒的シェア獲得に向けた、新設備稼働や新製品の生産

・次世代ニーズを先取りした半導体材料向け設備の稼働

・将来の収益の柱となる、機能化学品の大型投資判断

 

・独立した研究新拠点における、新ビジネスの早期創出

・最新技術(AI・IoT等)を活用したプラント制御システムの導入拡大

・事業拡大を加速するための人財育成・獲得、職場環境の刷新・活性化

主な実績

・冷凍機油原料の新設備稼働と新製品の生産開始

 

・次世代半導体向け材料設備稼働

・冷凍機油原料を中心とした千葉工場全体の生産能力増強を決定

・研究新拠点(KH i-Lab)を立ち上げ、オープンイノベーションによる新ビジネス創出に向けた活動を加速

・プラント制御システムを計画通り導入

・管理職を対象にした新たな人事制度の導入(ジョブ型)

・事業継続計画(BCP)の策定、統合報告書の発行

 

≪第4次中期経営計画について≫

 2022年12月期を初年度とする第4次中期経営計画(3カ年)の経営指標の目標値は以下のとおりであります。

 

期間累計連結営業利益

期間累計

連結EBITDA(注)

第2次中期経営計画

(2016年12月期~2018年12月期)

実績値

313億円

415億円

第3次中期経営計画

(2019年12月期~2021年12月期)

実績値

349億円

465億円

第4次中期経営計画

(2022年12月期~2024年12月期)

目標値

486億円

635億円

前提条件 為替:1米ドル113円

 国産ナフサ価格:60,000円/KL

(注)EBITDA=営業利益+減価償却費+のれん償却費

 

 コロナ禍からの世界経済回復により当社グループ製品への需要は堅調に推移すると見込んでおります。

 一方で、米国におけるインフレの長期化による経済への影響、中国における景気の減速リスク、東欧や中東の地政学的リスクなど、不確実性は急速に増大しているものと認識しております。

 

 なお、第4次中期経営計画における経営戦略等につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。

 

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