当社グループの研究開発活動は、主に当社(提出会社)が担っており、その内容は以下のとおりであります。
(1) 研究開発方針
今、我々を取り巻く環境は大きく変化しつつあります。地球温暖化、海洋プラスチック問題等の地球規模の環境問題が深刻化する一方、中間所得層の拡大によりQOL(生活の質)向上への欲求が世界的に高まっています。さらに、IoTやAI技術の普及によりモビリティ分野を中心に技術革新が期待される等、世の中のニーズが高度化、多様化しています。
この様な背景の中、当社は、これらのニーズに応えるため、これまでに蓄積した当社コアおよびコア周辺技術を深く追求するだけでなく、オープンイノベーション等により外部との技術協創活動を促進することで、環境に配慮し、豊かな暮らしに貢献する新素材の開発に挑戦していきます。
また、当社が掲げる価値創造ストーリーにおいて、研究開発活動として社会課題解決に貢献する事業を目指すべく、イノベーションの促進および知的財産戦略の強化をマテリアリティに掲げています。
(2) 研究開発戦略
当社の研究開発は、「世界で輝くスペシャリティケミカル企業」を目指し、社会的な潮流や市場動向を踏まえた研究開発活動を通して高付加価値ファインケミカルズを創出、さまざまな産業分野の幅広いニーズに応える新素材の開発に取り組みます。
VISION 2030で掲げる「環境」、「ヘルスケア」、「エレクトロニクス」の3分野を中心に既存事業の拡張に加えて新規事業を展開し、新技術・新製品の開発を進めます。
第4次中期経営計画では、研究開発活動のマイルストーンとしてのKPIを「外部機関との協業件数10件以上/年」として設定し、自前主義にこだわることなく、外部との協創を深める取組みを加速してまいります。加えて、既存事業周辺および新規事業創出に向けた技術やナレッジ獲得を目的としたベンチャー及びスタートアップ企業に対する投資についても推進していきます。
(3) 研究開発体制
2021年4月より研究開発本部制を廃止し、既存事業及び周辺事業の戦略立案と推進を担う「事業戦略部」、既存技術の強化による工場の生産性向上への貢献やコア技術を応用した新たな素材や用途の探索から事業化までを推進する「R&D総合センター」及び新事業創出に向けたオープンイノベーションを推進する「イノベーション戦略部」の3部門に再編しフラットな組織体制に改めるとともに、各部門長に権限を委譲し、研究開発活動の効率性を高めていきます。加えて、特許等の知的財産に関する業務についてはR&D総合センターに機能を統一し、無形資産の価値向上と活用をこれまで以上に進めていきます。
(4) 既存事業周辺への取り組み
当社は、コア技術である高圧法と低圧法の2種類のオキソ反応技術や、精密蒸留等の精製技術、炭酸ガス回収や高度制御による省資・省エネ技術、超高純度維持管理技術等を駆使し、高品質で低コストな化学品を製造しており、R&D総合センターでは、化学的な生産性改善、生産プロセスの改変、新製法の研究等、既存製品の競争力強化に継続的に取り組んでいます。
また、これらの技術に、研究開発部門が持つ高度な各種評価技術を組み合わせて進化させ、天然由来製品、機能性製品など、「環境」、「ヘルスケア」、「エレクトロニクス」分野を視野に幅広い開発を進めております。顧客との対話や、展示会等での新製品候補群の提案等を通じて潜在ニーズを洞察し、仮説・検証サイクルをより早く回しながら、新事業立ち上げを目指しています。さらに、当社独自の技術、中間体、製品といったいわゆるシーズを起点とした新たな価値創造にも取り組んでおり、他社や大学との委託・共同研究を推進しています。
(5) 新規事業・新製品探索機能強化への取り組み
2019年に新川崎・創造の森(AIRBIC)に開設したオープンイノベーション拠点「KH i-Lab(KH Neochem innovation Laboratory)」では2021年4月に「オープンラボ」を構築し、有望な技術を持つベンチャー企業や研究機関と共同実験を通じて、新規事業創出を加速させています。産学官連携の先端研究開発拠点である新川崎地区のネットワーク等を通じてマーケットイン型での社会課題解決に資する新技術およびビジネスについて仮説立案と検証を繰り返しています。また、新事業探索に必須な人材多様化の施策として、新規採用、社内ローテーションに加え、2020年には異業種企業との人財交流プログラムを開始、異なる専門領域を掛け合わせることで、イノベーターの育成を図っています。特に、ゲノム技術の発展やカーボンニュートラルへの取組みが進み、化学プロセスからバイオプロセスによる物質生産の転換が加速する中、バイオインダストリーに対応できる人財の獲得および育成も進めています。これら活動により、海洋分解性樹脂や医薬品原料の開発において、取り組んできたベンチャー企業や大学などとの共同研究での成果が着実に具体化しております。
今後も、より一層外部とのネットワーク構築に注力し、自前主義にこだわらず協創、協業を図ることにより、スピード感をもった新規事業の創出に取り組んで参ります。
(6) 当連結会計年度の研究開発活動
当連結会計年度においては、潤滑油分野での展開が期待される当社新規素材を顧客に提案いたしました。
研究開発費の総額は
当社グループは、化学品事業の単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載を省略しております。
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