当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。
当社は、建設業の現場業務をDX(デジタルトランスフォーメーション)する建築図面・現場管理アプリ「SPIDERPLUS」の開発・販売を主力とするICT事業を展開しております。なお、断熱材「アーマフレックス」等を使用した熱絶縁工事を中心に行うエンジニアリング事業を創業期より当事業年度まで運営しておりましたが、エンジニアリング事業については、2022年1月4日にArmacell Japan株式会社に譲渡しております。
ICT事業は、建設業を主な対象としたソリューションをSaaSにより展開しており、また、エンジニアリング事業は建設業でもあるため、当社事業は建設業界、特に国内建設業界の景気動向の影響を受けやすい傾向があります。建設業界は、少子高齢化に加え、若年層の入職率の低下などを背景に労働需給が引き続きひっ迫しており、建設業界各社が生産性向上を求められております。その中で2019年4月に施行された「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」の上限規制の適用は建設業企業においては2024年3月まで5年間猶予されていたものの、その適用が迫っており、加えて上述の生産性向上に対する強い需要から、建設業界においては働き方改革への関心が更に集まり、それに対応するサービスの需要が継続しております。
当事業年度においては、新型コロナウイルス感染症の影響により一部の都道府県で緊急事態宣言が発令されるなど景気の減速懸念となりうる事象は生じましたが、その一方で、当社が関連する建設業界においては、上述の生産性向上に関する課題を解決するためのIT投資への意欲は引き続き旺盛に推移しました。
当社主力サービスである「SPIDERPLUS」は、建設業界のIT化を推し進めることで、上記建設業界の課題解決に対し貢献ができるサービスです。当事業年度において、当社は、建設業界のIT投資需要を取り込んだ結果、主力サービスである「SPIDERPLUS」のID数及び契約社数が順調に増加しました。なお、新型コロナウイルス感染症の影響によるリード及びアポイント獲得遅れや顧客企業内での検討の長期化といった影響が生じているものの、WEB広告を中心としたオンラインマーケティングの拡充や、営業体制の更なる強化に注力し、上記影響を最小限にとどめるとともに、新規顧客獲得の一層の拡大と認知向上を狙ったテレビコマーシャル等のマーケティング活動を実施しております。
なお、「SPIDERPLUS」は、サブスクリプションモデルであり、また顧客のサービス導入後から数年かけて顧客内の導入ID数増加を推進するビジネスモデルでもあります。これらの特長を踏まえると、新規顧客の獲得に加え、既存顧客からの追加ID獲得が重要であり、また、顧客ニーズに即した魅力的なプロダクトを提供し続ける必要があると考えております。そのために、先行的に顧客ニーズに即したプロダクトを提供するためのシステム開発人員及び営業人員にかかる人件費、並びに新規商談の獲得や認知度向上のためのマーケティング活動費用として広告宣伝費を投下し、前事業年度以降、継続的に先行投資を実施しており、今後一定期間については、黒字化よりも売上高成長率を重視していく方針であります。
このような事業環境において、当事業年度の売上高は、当社の売上高は2,206,940千円(前年同期比11.8%増)、営業損失は433,020千円(前年同期は112,984千円の営業利益)、経常損失は503,929千円(前年同期は106,696千円の経常利益)、当期純損失は511,669千円(前年同期は103,089千円の当期純利益)となりました。
セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。
(注) SaaS:Software as a Serviceの略称。IDを発行されたユーザー側のコンピュータにソフトウエアをインストールするのではなく、ネットワーク経由でソフトウエアを閲覧する形態のサービス。
「SPIDERPLUS」を提供するICT事業においては、前事業年度に引き続き、上述のオンラインマーケティングの拡充やテレビコマーシャル等によるマーケティング活動の実施と営業体制の強化を推進したことにより、「SPIDERPLUS」のID数及び契約社数は堅調に推移しました。その結果、2021年12月末における「SPIDERPLUS」のID数は48,767(2020年12月末は38,560)、契約社数は1,204社(2020年12月末は793社)となり、ICT事業の売上高は1,936,684千円(前年同期比30.5%増)、セグメント利益(営業利益)は182,793千円(前年同期比57.7%減)となりました。
熱絶縁工事施工を提供するエンジニアリング事業においては、前年同期に大型の工事案件があった影響により、2021年12月期は完成工事高(売上高)は減少したものの、既存顧客からの「アーマフレックス」等を活用した保温・断熱工事を安定的に受注した結果、エンジニアリング事業の売上高は270,256千円(前年同期比44.8%減)、セグメント利益(営業利益)は32,919千円(前年同期比54.9%減)となりました。
当事業年度末の流動資産は、前事業年度末に比べ3,888,045千円増加し、4,708,729千円となりました。これは主に当社株式の東京証券取引所マザーズ上場に伴う新株式の発行や自己株式の処分、及びオーバーアロットメントによる売出しに関連した第三者割当増資などにより、現金及び預金が3,727,419千円増加したことによるものであります。
また、固定資産は、前事業年度末に比べ632,922千円増加し、717,585千円となりました。これは主にシステムリニューアルの進行に伴いソフトウエア仮勘定が381,245千円増加したことと、本社移転に伴い移転先ビルオーナーに敷金を預託したことなどにより、敷金及び保証金が248,308千円増加したことによるものであります。
この結果、総資産は、前事業年度末に比べ4,520,967千円増加し、5,426,315千円となりました。
当事業年度末における流動負債は、前事業年度末に比べ374,314千円増加し、770,930千円となりました。これは主に上述のシステムリニューアルの進行に伴う未払金が119,777千円増加した他、本社移転に伴い預託した敷金と同額の保証履行証拠金を金融機関との保証契約締結により受領した影響により、預り保証金が243,501千円増加したことによるものであります。
また、固定負債は、前事業年度末に比べ66,455千円減少し、33,279千円となりました。これは主に長期借入金が62,431千円減少したことによるものであります。
この結果、負債合計は、前事業年度末比で307,859千円増加し、804,210千円となりました。
当事業年度末における純資産は、前事業年度末に比べ4,213,108千円増加し、4,622,104千円となりました。これは当期純損失の計上により利益剰余金が511,669千円減少した一方、上述記載の新株式の発行や自己株式処分、及び第三者割当増資などにより、資本金が2,245,062千円、資本剰余金が2,439,146千円増加し、自己株式が40,569千円減少したことによるものであります。
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」といいます。)は、前事業年度末に比べ3,726,219千円増加し、4,191,195千円となりました。
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
営業活動の結果使用した資金は493,475千円(前事業年度は130,256千円の獲得)となりました。これは主に、ICT事業において先行投資を実施したことによる税引前当期純損失504,044千円の計上と、未収消費税等の増加額113,761千円などによるものです。
投資活動の結果使用した資金は610,355千円(前事業年度は12,909千円の獲得)となりました。これは主に、ICT事業における「SPIDERPLUS」の技術負債を解消すべく実施しているリニューアル投資による支出333,893千円の他、2022年5月に予定しております本社移転等に伴う敷金及び保証金の差入による支出248,130千円によるものです。
財務活動の結果獲得した資金は4,830,050千円(前事業年度は43,670千円の使用)となりました。これは主に、新株式の発行による収入4,425,358千円及び自己株式の処分による収入234,784千円が発生したことによるものであり、これらは主に当社株式の東京証券取引所マザーズ上場によるものです。
当社は、生産に該当する事項がありませんので、生産実績に関する記載はしておりません。
当社は、受注生産を行っておりませんので、受注実績に関する記載はしておりません。
当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 主な相手先別の記載については、相手先別の販売実績の総販売実績に対する割合が
100分の10未満であるため、記載を省略しております。
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において判断したものであります。
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づいて作成されております。この財務諸表の作成にあたっては、当事業年度末における財務状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような会計上の見積りを必要とされております。当社は、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に会計上の見積りを行っております。そのため実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社の財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (重要な会計方針)」に記載しております。
なお、新型コロナウイルスの影響については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 追加情報」に記載しております。
当事業年度の売上高は、2,206,940千円(前年同期比11.8%増)となりました。
ICT事業は、「SPIDERPLUS」の既存顧客の売上高伸長と新規の顧客獲得の結果、ID数が48,767ID(前年同期比26.5%増)、契約社数が1,204社(前年同期比51.8%増)に増加し、売上高は1,936,684千円(前年同期比30.5%増)となりました。
一方、エンジニアリング事業は、2020年度に大型工事案件があった影響等により、2021年12月期は完成工事高(売上高)が減少し、売上高は270,256千円(前年同期比44.8%減)となりました。
当事業年度の売上原価は、944,222千円(前年同期比2.1%増)となりました。
ICT事業は、事業拡大に伴う社員数やSES人員の増加、サーバー費用の増加などにより、710,195千円(前年同期比38.0%増)となりました。
エンジニアリング事業は、売上高が減少したことにより、234,027千円(前年同期比42.9%減)となりました。上記の結果として、当事業年度における売上総利益は、1,262,717千円(前年同期比20.4%増)となりました。
当事業年度の販売費及び一般管理費は、主にICT事業の営業体制の強化に伴う営業人員の増加による人件費及び採用コストの増加や研究開発活動、TVCMの実施などにより、1,695,738千円(前年同期比81.2%増)となりました。上記の結果として、当事業年度における営業損失は433,020千円(前年同期は112,984千円の営業利益)となりました。
当事業年度の営業外収益は、658千円となり、前事業年度から重要な変動はありません。また、当事業年度の営業外費用は、71,567千円となりました。これは主に当社株式の東京証券取引所マザーズ上場に伴う上場関連費用であります。上記の結果として、当事業年度における経常損失は、503,929千円(前年同期は106,696千円の経常利益)となりました。
(特別利益、特別損失、当期純損失)
当事業年度の特別利益は、31千円(前年同期は2,085千円)となりました。これは有形固定資産の売却益であります。また、当事業年度の特別損失は147千円となりました。これは有形固定資産の除却損であります。なお、前事業年度は特別損失は発生しておりません。上記の結果、税引前当期純損失は504,044千円(前年同期は108,781千円の税引前当期純利益)となりました。
上記の税引前当期純損失から法人税等7,625千円を控除した結果、当事業年度の当期純損失は、511,669千円(前年同期は103,089千円の当期純利益)となりました。
(単位:千円)
なお、財政状態の分析については、「第3 経営者による財政状態、経営成績、キャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況 ① 財政状態及び経営成績の状況 」に、キャッシュ・フローの状況はについては、「第3 経営者による財政状態、経営成績、キャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。運転資金は自己資金及び金融機関からの借入金を基本としております。また、持続的な成長を図るため建設ICTをはじめとした既存事業の拡大と新規開発を行っており、これらに必要な資金については必要に応じて多様な資金調達を実施しております。
経営成績に重要な影響をあたる要因については、「2 事業の状況 2 事業上のリスク」をご参照ください。
経営者の問題意識と今後の方針については、「2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
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