当社は、「私たちは、“働く”にもっと「楽しい」を創造します。」をミッションとし、お客様の課題を解決していく喜びや楽しさを通じて仕事にもっと夢中になれる世の中を作り続けていくことを目標にしています。
私たちは、“働く”を心底楽しいと思えることが最も生産性を向上させると信じています。「楽しい」を創造していくことが、私たちの壮大なるミッションです。
当社は、熱絶縁工事を提供するエンジニアリング事業にて創業し、自社の生産性改善に真摯に向き合った結果、ITを活用する必要性を感じ、自社のみならず建設業全体の生産性改善に貢献すべくICT事業を開始いたしました。その結果、当社はICT事業及びエンジニアリング事業の2つのセグメントを下記のとおり構成するに至っております。
ICT事業では、建設業の現場業務をDX(デジタルトランスフォーメーション)によって生産性向上に寄与するSaaS(注1)を開発・販売しております。
具体的には、主に総合建設業及び電気・空調設備業に対して、建築図面・現場管理アプリ「SPIDERPLUS」を中心としたサービスの提供を行っております。「SPIDERPLUS」は、タブレット/スマートフォンで建設現場の図面のペーパーレス化を図るとともに、検査機器と連携してアプリの中で計測値を取り込むことで業務の効率化ができるサービスです。
建設業界は人手不足と働き方改革の喫緊の課題を抱えており、厚生労働省「毎月勤労統計調査」によると、2021年の建設業の年間労働時間は1,984時間と、調査対象全産業の年間労働時間1,633時間に比べ高い水準にあり、また年間出勤日数は243日と、調査対象全産業213日に比べ多くなっております。また、国土交通省「令和3年度(2021年度)建設投資見通し」によると、国内の建設投資額は2017年の61兆円(実績)から2021年の63兆円(見通し)で横ばいに推移しておりますが、日経BP「建設テック未来戦略(2020年3月16日発行)」によると、建設業界における人手不足と高齢化の影響により、建設需要に対して今後100万人の労働者が不足すると言われております。これらを背景として、一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査報告書2015」及び「企業IT動向調査報告書2021」によると、2014年から2020年にかけて建設業界のIT投資額は約3倍に増加しております。
その中で、当社の「SPIDERPLUS」は、現場のペーパーレス化と情報共有の促進を図っていくことから、労働時間の短縮化、ひいては年間出勤日数の短縮など、建設業界の生産性向上に一定の寄与ができると考えております。また、建設業の生産体制を将来にわたって維持していくためには、若年層の入職促進と定着による円滑な世代交代が不可欠であり、当社の「SPIDERPLUS」により、建設業のIT化を推し進めることで一定の貢献ができると考えております。
ICT事業の各指標は、上記のような建設業界の環境下で、営業力及び開発力の強化を行った結果、以下のとおり順調に推移しております。
「SPIDERPLUS」は1ID毎に月額利用料をお支払いいただくサブスクリプションモデルとなっており、利用開始後は継続的な売上高となります。
また、当社は、当社自身が建設業として長年培ってきた経験から「SPIDERPLUS」のユーザーに対する充実したフォローアップ体制が特に重要であると考えております。そのため、営業が直接建設現場に赴いて現場説明会を実施、更に建設現場のニーズをヒアリングし、開発チームと連携して「SPIDERPLUS」の機能に反映するとともに、カスタマーサポートが顧客の困りごとをメール並びに電話で対応するなど、フォローアップ体制を強化しております。その結果として、導入初期及び日々の問合せ対応について顧客満足度が高く、契約社数に対する2021年12月期の月次平均解約率(注4)は0.7%と低い水準であり、2021年12月期における既存顧客のNRR(注5)は120%超となっております。
今後も建設業界のプラットフォームとなるべく、IoT(様々な機器との連携)やAIの活用によって、音声入力や検査記録の自動入力といった新機能開発を行うことで、建設業界の業務効率最大化を図っていきます。
(注) 1.SaaS:Software as a Serviceの略称。IDを発行されたユーザー側のコンピュータにソフトウエアをインストールするのではなく、ネットワーク経由でソフトウエアを利用する形態のサービス。
2.MRR:Monthly Recurring Revenueの略称。対象月の月末時点における顧客との契約において定められたID単位で毎月課金される月額利用料の合計額(一時収益は含まない)。
3.ARR:Annual Recurring Revenueの略称。各年12月のMRRを12倍して算出。
4.月次平均解約率:「(n月の解約社数)÷(n-1月末時点の契約社数)」により算出した月次解約率の年平均。
5.NRR:Net Retention Rateの略称。既存顧客の売上高継続率を表しICT事業の「(2021年12月期売上高)÷(2020年12月期売上高)」により算出。既存顧客からの売上高のみから算出(新規顧客からの売上高を含まない)。
当社が提供する「SPIDERPLUS」は、建設現場で「SPIDERPLUS」があれば完結できるオールインワンソリューションを目指したサービスを提供しており、下記の特徴がユーザーに支持されています。
これまで、紙ベースで行っていた図面を用いた施工管理並びに検査は、「SPIDERPLUS」の図面管理機能を使うことで、便利に、かつ効率的に行うことができるようになります。タブレットに図面を取り込み、「SPIDERPLUS」を用いて閲覧することで、今まで紙で持ち運んだり、ファイルで管理していた大量のデータがタブレット1つで持ち運びできるという最大のメリットがあります。更に、図面管理機能自体の特徴として図面の拡大、縮小が簡単に行え、図面自体に直接書き込みや、検査が必要な箇所にアイコンを設置し、設置したアイコンにメモや写真を貼り付けることで検査内容の記録ができます。
② 写真管理機能
これまでは、現場管理者がデジタルカメラで各種検査箇所を撮影、保存し、作業完了後オフィスに戻り、写真の突き合わせや、検査場所への貼り付けなどを行い、作業時間としても非常に負担がかかり残業時間も増加しておりました。「SPIDERPLUS」を使うことで、タブレットに付属しているカメラから撮影した画像を直接図面に貼り付けることができます。更に、「SPIDERPLUS」は写真撮影時に黒板を添付する電子小黒板機能にも対応しており、国土交通省が推奨している電子納品の指定フォーマットにも対応しています。また、「SPIDERPLUS」は撮影した方向を矢印で表示できる点にも特徴があります。本機能により、どこから、どういう視点で撮られたのかが一目瞭然となります。写真管理機能は外部のカメラとも機能連携しており、高所での撮影や360度の写真を撮ることもできます。
③ オプション機能
「SPIDERPLUS」は、総合建設業及び電気・空調設備業の現場で検査を行う際のオプション機能が充実しています。標準機能で最低限必要な機能は網羅しておりますが、以下のオプション機能を追加することにより、更に現場の効率化、省力化が図られます。現時点では14種類のオプション機能があり、それぞれ個別での提供と各業種向けに機能をまとめたパッケージでの提供もしております。数あるオプション機能の中で、特徴的である総合建設業向けの「杭施工記録機能」「工事進捗管理機能」「指摘管理機能」を下記で紹介いたします。
杭施工は、新しく建物を建築する際に、杭を地中に打ち込むことで、安定をさせる重要な工事です。「SPIDERPLUS」では杭施工の記録が残せるだけでなく、施工前、進行中、未完了などで検査項目の進捗によって色分けされて表示されます。更に各検査項目も未完了の項目が表示されることで、紙で行っていた際に頻繁にあった検査種目漏れ、検査漏れが未然に防げるようになりました。また、本機能もエクセルで簡単に出力できるため、労働時間の削減、業務効率化に貢献できます。
b.工事進捗管理機能
工事進捗管理機能は、現状の工事進捗状況を記録することができ、工事進捗の見える化及びリアルタイムな情報共有が可能になり、現場管理者は、工種間の調整や次工程の計画、取引先への連絡や翌日の材料手配タイミング等のマネジメントをスムーズに行うことができ、管理業務の効率化による働き方改革に貢献できます。現場で記録した進捗情報は、情報共有だけでなく簡単に帳票出力ができるので、事務所に戻ってからの事務作業の時間削減につながります。また、現場で記録した指摘コメントや写真も出力ができるので、的確に指摘事項の共有、記録が行えます。
c.指摘管理機能
指摘管理機能は、図面上の是正工事が必要な指摘箇所をタップ、指摘内容や業者を選択するだけで、指摘事項別や業者別に指摘事項一覧の書類出力が可能です。
是正前・是正後の現場写真を複数登録できるので、是正進捗の確認や再指摘、再是正工事などの写真を指摘箇所毎に記録できます。また、是正後の現場写真撮影時に「是正前に撮影した写真」を「参考写真」として「是正後の工事写真」内に表示させて、是正前同様のアングルで写真が撮影できるので、指摘箇所の是正工事前・是正工事後の比較が容易にできます。
その他、風量測定器、絶縁抵抗器など各種検査機器との連携を進めていくことで、更なる業務の効率化を図っています。また、「SPIDERPLUS」は、利用者数の増加に伴い、顧客内や現場内での情報共有が促進されるなど、より利用価値が高まっていく特徴もあります。
エンジニアリング事業では、当社創業期より熱絶縁工事を中心に運営しています。熱絶縁工事とは、熱を使うビルや工場などでエネルギー効率を高める(省エネルギー)ために装置や配管に断熱材を取付ける工事です。当社は、従来のガラス繊維でできたグラスウールなどの断熱材の他に、「アーマフレックス」も取り扱っております。「アーマフレックス」の特徴としましては、難燃性、耐湿性、圧縮クリープ特性(注1)が高い、フロンを使用していないので環境に優しいなどが挙げられます。当社はアーマセル社(注2)の日本認定工事店として、2002年より多くの「アーマフレックス」を使用した工事を施工しております。
当社は、従来の熱絶縁工事では空調工事、配管工事を行っている企業様からの受注のみでしたが、「アーマフレックス」を使用した工事においては、17年間の施工実績から、同業他社様からの依頼も多くなっております。また、エンジニアリング事業は、建設現場における「SPIDERPLUS」の活用事例を直接収集し、活用事例や発見された課題をICT事業にタイムリーに共有することで、「SPIDERPLUS」の開発に貢献してきました。
しかしながら、昨今の建設業界における人手不足と働き方改革等の課題を背景としたIT投資需要の高まりを受け、当社の主力サービスである「SPIDERPLUS」のID数及び契約社数は順調に増加しております。その結果、当社のICT事業は、建設現場における活用事例や課題を、多種多様な顧客企業から直接収集することが可能となり、熱絶縁工事を中心に行うエンジニアリング事業での建設現場における活用事例等の情報は、あらゆる建設現場で活用される「SPIDERPLUS」にとって、限定的な情報提供となってきておりました。これらの経営環境を踏まえ、当社は、高い成長率が見込めるICT事業に先行投資を積極的に行い、エンジニアリング事業を2022年1月4日にArmacell Japan株式会社に譲渡いたしました。
(注) 1. 圧縮クリープ特性とは、物体に継続的な圧縮負荷がかかったとしてもその物体が圧縮による変形に耐える事ができる性質を指します。なお、クリープとは、物体に一定の負荷が継続的にかかる事で時間の経過とともに物体の変形が進んでいく現象の事であります。
2. アーマセル社は、ルクセンブルクに本拠を置く保温・吸音用弾性断熱材メーカーであり、日本法人であるArmacell Japan株式会社にて実施される認定施工トレーニングを受けることで認定施工店となります。
事業系統図
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