(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルスによる経済活動停滞に一部で持ち直しの動きがみられるものの、新型コロナウイルスの感染再拡大や半導体不足による自動車減産、物流の混乱、ウクライナ情勢など、先行き不透明な状況のうちに推移しました。
このような環境の中、当社グループでは、需要の回復による販売機会を着実に捉えるとともに、販売価格の是正、徹底したコストダウンを実施してまいりました。
新型コロナウイルスの影響を大きく受けた前年度と比較し、売上高は4,679億37百万円(前年度比18.9%増)、営業利益は506億97百万円(同59.8%増)、経常利益は572億91百万円(同65.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は312億54百万円(同58.5%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
[メディカル・ヘルスケア事業部門]
コスメ・健康食品事業は、化粧品原料や健康食品素材の販売数量増加などにより、増収となりました。
キラル分離事業は、海外でのキラルカラムの販売が増加したことなどにより、増収となりました。
当部門の売上高は、194億94百万円(前年度比20.3%増)、営業利益は、販売数量の増加などにより、34億35百万円(同120.1%増)となりました。
[スマート事業部門]
液晶表示向けフィルム用の酢酸セルロースや高機能フィルムなどのディスプレイ事業は、液晶パネル需要の好調や高機能フィルムの新規採用などにより販売数量が増加し、増収となりました。
電子材料向け溶剤やレジスト材料などのIC/半導体事業は、半導体材料市場の需要が好調に推移し販売数量が増加したことや、原料価格上昇に伴う販売価格の上昇により、増収となりました。
当部門の売上高は、324億90百万円(前年度比31.5%増)、営業利益は、販売数量の増加などにより、57億99百万円(同70.0%増)となりました。
[セイフティ事業部門]
自動車エアバッグ用インフレータ(ガス発生装置)などのモビリティ事業は、半導体不足などによる自動車減産の影響を受けたものの、前年度比では新規受注などにより販売数量が増加し、増収となりました。
当部門の売上高は、694億55百万円(前年度比3.3%増)、営業利益は、販売数量の増加や稼働率の回復などにより、51億89百万円(同132.6%増)となりました。
[マテリアル事業部門]
酢酸は、会計基準の変更により販売数量は減少しましたが、市況の上昇により、増収となりました。
酢酸誘導体は、酢酸市況の上昇などにより、増収となりました。
アセテート・トウは、会計基準の変更により販売数量は減少しましたが、為替の影響により、売上高は微増となりました。
カプロラクトン誘導体やエポキシ化合物などは、電子材料用途などの需要回復により販売数量が増加し、増収となりました。
当部門の売上高は、1,228億20百万円(前年度比17.9%増)、営業利益は、販売価格の上昇などにより、247億71百万円(同38.2%増)となりました。
[エンジニアリングプラスチック事業部門]
ポリアセタール樹脂、PBT樹脂、液晶ポリマーなどポリプラスチックス株式会社の事業は、自動車、スマートフォンなどの需要回復により販売数量が増加したことや、販売価格の是正などにより、増収となりました。
ABS樹脂、エンプラアロイ樹脂、フィルム、水溶性高分子などダイセルミライズ株式会社の事業は、需要の好調による販売数量の増加などにより、増収となりました。
当部門の売上高は、2,122億67百万円(前年度比25.9%増)、営業利益は、販売数量の増加や販売価格の是正などにより、257億58百万円(同21.7%増)となりました。
[その他事業部門]
その他部門は、防衛関連事業での販売数量の減少などにより、減収となりました。
当部門の売上高は、114億9百万円(前年度比10.0%減)、営業利益は、17億66百万円(同19.2%増)となりました。
財政状態は、次のとおりであります。
総資産は、現金及び預金等の減少がありましたが、棚卸資産及び有形固定資産等の増加により、前連結会計年度末に比し584億51百万円増加し、6,988億36百万円となりました。
負債は、主に支払手形及び買掛金や短期借入金等の増加により、前連結会計年度末に比し239億8百万円増加し、4,192億92百万円となりました。
また純資産は、2,795億44百万円となりました。純資産から非支配株主持分を引いた自己資本は、2,720億17百万円となり自己資本比率は38.9%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比し27億60百万円減少し、879億86百万円(前連結会計年度末比3.0%減)となりました。
営業活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における営業活動による資金の増加は429億93百万円(前年同期は、578億69百万円の増加)となりました。資金増加の主な内容は、税金等調整前当期純利益462億83百万円および減価償却費274億90百万円であり、資金減少の主な内容は、棚卸資産の増減額274億80百万円および法人税等の支払額135億58百万円であります。
投資活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における投資活動による資金の減少は465億28百万円(前年同期は、342億20百万円の減少)となりました。資金増加の主な内容は、投資有価証券の売却及び償還による収入28億9百万円であり、資金減少の主な内容は、有形固定資産の取得による支出434億94百万円であります。
財務活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における財務活動による資金の減少は54億52百万円(前年同期は、170億50百万円の減少)となりました。資金増加の主な内容は、短期借入金の純増減額146億96百万円および長期借入れによる収入17億4百万円であり、資金減少の主な内容は、長期借入金の返済による支出50億37百万円および配当金の支払額96億45百万円であります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
|
生産高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
メディカル・ヘルスケア事業 |
13,092 |
18.64 |
スマート事業 |
29,102 |
30.97 |
セイフティ事業 |
68,654 |
8.69 |
マテリアル事業 |
101,530 |
0.03 |
エンジニアリングプラスチック事業 |
197,446 |
36.22 |
報告セグメント計 |
409,827 |
19.53 |
その他 |
8,978 |
△15.48 |
合計 |
418,806 |
18.48 |
(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
b. 受注実績
受注生産を行っているのは「その他」のうちの特機関連部門であり、主として発射薬等で受注状況は次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
|||
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
その他 |
1,931 |
△71.57 |
3,720 |
△54.87 |
c. 販売実績
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
|
販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
メディカル・ヘルスケア事業 |
19,494 |
20.26 |
スマート事業 |
32,490 |
31.53 |
セイフティ事業 |
69,455 |
3.33 |
マテリアル事業 |
122,820 |
17.87 |
エンジニアリングプラスチック事業 |
212,267 |
25.93 |
報告セグメント計 |
456,527 |
19.86 |
その他 |
11,409 |
△10.02 |
合計 |
467,937 |
18.90 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 経営成績等
新中期戦略『Accelerate 2025』および『Accelerate 2025-II』では2025年度に以下の全社業績および経営指標を
ターゲットとしております。
全社業績:
売上高 5,000億円、営業利益 700億円、親会社株主に帰属する当期純利益 480億円、
EBITDA 1,160億円
経営指標:
営業利益率 14.0%、ROE 18.0%、ROIC 10.0%、ROA 8.0%
株主還元:中期戦略発表時の1株当たり配当金額(年間32円)を下限、総還元性向 40%以上
本中期戦略の2年目である当連結会計年度は、需要の回復による販売機会を着実に捉えるとともに、販売価格の是正、徹底したコストダウンを実施してまいりました。
新型コロナウイルスの影響を大きく受けた前年度と比較し、売上高は4,679億37百万円(前年度比18.9%増)、営業利益は506億97百万円(同59.8%増)、経常利益は572億91百万円(同65.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は312億54百万円(同58.5%増)となりました。
経営成績
売上高および営業利益
売上高、営業利益の概況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
営業外損益
営業外損益は66億円の収益(純額)となり、前連結会計年度に比し36億円改善いたしました。
主に為替損益の改善等によるものであります。
特別損益
特別利益は19億円を計上いたしました。投資有価証券売却益17億円などによるものであります。
特別損失は129億円を計上いたしました。固定資産除却損29億円のほか、減損損失100億円によるものであります。
法人税等
税効果会計適用後法人税の負担率(実効税率)は30.7%と、前連結会計年度に比し1.4ポイント減少いたしました。
非支配株主に帰属する当期純利益
非支配株主に帰属する当期純利益は8億円と、前連結会計年度に比し19億円(70.6%)減少いたしました。
親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は313億円と、前連結会計年度に比し115億円(58.5%)の増益となりました。
また、ROEは12.3%となり、前連結会計年度に比し5.7ポイント改善しました。ROICは6.2%、EBITDAは789億円となりました。
財政状態
資産、負債および純資産の状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
なお、有利子負債比率は40.6%となりました。
また、2021年11月5日取締役会決議に基づく自己株式の取得を49億円実施しております。
② 経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因については、「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
③ 資本の財源及び資金の流動性
キャッシュ・フロー
キャッシュ・フローの状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
資金需要
当社グループにおける主な運転資金需要は、製品製造のための原材料の購入、労務費など製造費用と、製品の仕入、販売費及び一般管理費等の支払いであります。
当社グループでは、製造設備の増強および更新などのほか、安全向上対策ならびに現業各設備の合理化・省力化を継続的に行っております。当連結会計年度の設備投資額は前連結会計年度に比し13億円増加し、408億円(前連結会計年度比3.3%増)、減価償却費は前連結会計年度に比し11億円増加し、269億円(前連結会計年度比4.3%増)となりました。
当社グループでは、既存事業の強化拡大および新事業創出のための研究開発に取り組んでおります。当連結会計年度の研究開発費は前連結会計年度に比し12億円増加し、207億円(前連結会計年度比6.2%増)となりました。
財務政策
当社グループは、設備投資計画に照らして、必要な資金を銀行借入や社債発行により調達しております。短期的な運転資金は、キャッシュマネジメントサービスを通じてグループ内で余剰資金を活用しておりますが、地域、通貨、金利動向等を考慮した結果、銀行借入による調達を行う場合があります。当連結会計年度末における借入金およびリース債務を含む有利子負債の残高は2,835億円であります。
利益配分に関しては、2020年度から6年間の中期戦略『Accelerate 2025-II』におきましては、収益力強化に加え適正在庫化などキャッシュコンバージョンサイクル削減効果で資金創出力向上を図ります。また、政策投資株式売却などにより資金創出力をさらに高め、余裕資金を成長投資や株主還元に活用します。株主還元は総還元性向40%以上とし、自己株式取得も視野に柔軟に対応してまいります。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
お知らせ