課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項につきましては、当連結会計年度末現在において当社が合理的と判断した一定の前提に基づいたものであります。これらの記載は実際の結果とは異なる可能性があり、確実性を保証するものではありません。

 

(1) 会社経営の基本方針

 世の中が変化しても変えてはいけない当社グループが大切にする考え方を示すため、基本理念の表現を「価値共創によって人々を幸せにする会社 ~ Sustainable Value Together ~ 」と改めるとともに、新たにサステナブル経営方針を2020年度に定めました。

 

<サステナブル経営方針>

・Sustainable Product:人々の豊かな生活を実現する新しい価値を創造し提供します

 

・Sustainable Process:全てのステークホルダーとともに地球環境と共生する循環型プロセスを構築します

 

・Sustainable People:多様な社員が全員、存在感と達成感を味わいながら成長する「人間中心の経営」を進めます

 

 私たちダイセルの経営方針の最上位にあるのが基本理念です。SDGs実現のために「サステナブル経営方針」を基本理念の直下に位置付けました。またこのサステナブル経営方針をProduct、Process、Peopleの3つの要素で実現します。そして、それを実現するための戦略が長期ビジョンと中期戦略になります。

 

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(2) 中長期的な会社の経営戦略及び目標とする経営指標

 当社グループが変わらず大切にする思いとともに、今後大胆に変えなければならないことを、2020年度を開始年度とする新長期ビジョン『DAICEL VISION 4.0』および新中期戦略『Accelerate 2025』、『Accelerate 2025-II』で明確にいたしました。

 

① 長期ビジョン『DAICEL VISION 4.0』の概要

注力するドメイン

 サステナブル経営方針の具現化に向け、以下の四つのトリガーと注力する市場で価値を提供し、人々の幸せの実現と、当社グループの持続的な成長を目指します。

 

四つのトリガー

注力する市場

健康(ヘルスケア)

コスメ・健康食品・メディカル

安全・安心(セイフティ)

モビリティ・インダストリー

便利・快適(スマート)

ディスプレイ・IC/半導体・センシング

環境

水処理・生分解性樹脂

 

長期ビジョン実現への道のり

 Operation-I(原ダイセル)では自社の現状の事業に加え、注力するドメインを含めた領域で、事業構造の転換とアセットライト化(徹底したコストダウン)を進めます。

 Operation-II(新ダイセル)では、既存事業の周辺領域でのM&Aや提携による領域拡大、既存事業の再編や合弁会社の抜本的見直しに取り組むとともに、グループ全体でのアセット・スーパーライト化を目指します。

 Operation-III(新企業集団)では、グループの枠を超えて、まず垂直統合方向のバリューチェーン(サプライチェーン)を強化し、その共通顧客に対する価値創造(共創)に取り組むとともに、同業他社や大学など、水平方向にも共創を拡大することで、より大きな価値の提供を目指します。

 

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② 中期戦略『Accelerate 2025』および『Accelerate 2025-II』の概要

 基本理念実現に向けて、以下の基本的な戦略に沿った取り組みを推進することで、既存事業の強化・成長による価値の提供と、「循環型社会構築への貢献」を目指します。

 

1.全社戦略

 クロスバリューチェーン実現に向けた取り組みとしてバリューチェーンの垂直/水平方向との連携を推進し、新企業集団を見据えた、組織変更に対して柔軟に組み替え可能なバーチャルカンパニーの実現を図り、その基盤となるデジタルアーキテクチャの構築を進めます。

 また、事業ポートフォリオとして「健康」「安全・安心」「便利・快適」「環境」における価値提供型事業へシフトし、ビジネスユニット(BU)の特性に応じた KPI の設定とその進捗に応じた資源配分により、売上高、営業利益ともに「次世代育成」事業と「成長牽引」事業のシェアを高めてまいります。

 

2.事業戦略

 ヘルスケアSBUでは、化粧品原料である1,3BGの生産2拠点化による安定供給と世界No.1品質を提供するとともに、アジア域内における強固な販売ネットワークも生かして既存製品のシェア拡大を図ってまいります。さらに、生分解性のある酢酸セルロース真球微粒子などサステナブル素材のラインアップも拡充し、新製品の拡販を進めます。

 

 スマートSBUのIC/半導体分野では、マーケットニーズに沿った品質管理体制と独自のモノマーを使用したレジスト用ポリマーを生かして、最先端のニーズに即した半導体関連事業の強化を図ってまいります。また、ディスプレイ分野では過去から培ったコーティング技術と特異性のある素材を生かした機能フィルムの多機能化や事業拡大とともに、品質改善、コストダウンを通じた液晶表示向けフィルム用途の酢酸セルロースの収益力強化を目指してまいります。

 

 セイフティSBUのエアバッグ用インフレータ事業については、トヨタ生産方式(TPS)で培ったコストダウンやガス発生剤から一貫生産できるパイロ技術を生かしたコスト競争力強化と、それによる市場シェア拡大を図ってまいります。また、民生用事業については、インフレータ事業で培ったパイロ技術を意訳・応用することで、従来とは異なる新用途を開拓するとともに、顧客との共創による新事業創出を目指してまいります。

 

 マテリアルSBUでは、世界シェア、製造能力No.1の脂環式エポキシについて、新たな生産拠点の確立と、素材・機能提案力の強化を目指してまいります。また、酢酸セルロースについては、強みである分子設計コントロール技術を駆使し、誘導品であるアセテート・トウも含めた用途開発を進める一方、生産革新で培ったコストダウンノウハウを生かして安定したキャッシュフローの創出を図ってまいります。

 

 エンジニアリングプラスチック事業では、ポリプラスチックスがアジアで培った技術力と製品/サービス供給網、そして顧客ニーズに迅速に対応するテクニカルソリューション体制を生かして、欧米プレミアム市場での販路拡大を進めるとともに、迅速な意思決定による供給力増強とプロダクトポートフォリオの拡充や新規事業の創出を図ってまいります。

 また、ポリプラスチックスの完全子会社化に伴うシナジー効果を最大化するために、新たにパフォーマンス・マテリアルズ事業本部を新設し、ポリプラスチックスの社長が当社の専務執行役員として本部長を兼務し、グループ全体の樹脂事業の強化に取り組みます。具体的には、ポリプラスチックスのグローバル展開の加速(将来需要取り込みのための増産投資、欧米市場への拡販)、コストダウンシナジーの実現(ダイセル式生産革新の展開加速、間接部門の効率的運営)、グループシナジーの最大化(ポリプラスチックスのマーケティング力の活用、R&Dリソースの相互活用、触媒効率改善など既存事業の改善および改良)などに取り組み、2025年度までにEBITDAで200億円のシナジー効果を見込んでおります。

 

 事業創出戦略の一つとして、メディカル・ヘルスケア領域では、ヘルスケアSBUのバイオ発酵技術、セイフティSBUの新規薬剤投与デバイス、CPIカンパニーのキラル分割技術や診断薬関連製品、事業創出本部によるDDSキャリア開発などについて、協業やM&Aによるプラットフォームの獲得により、関連する技術や製品を集約し、遺伝子薬・バイオ医薬やそれに対応する投与デバイスや診断システム領域を強化することで大きく伸ばしていきたいと考えております。

 

3.機能別戦略

 事業創出力の向上のため、R(Research:ユーザー目線によるシーズの掘り起こし)とD(Development:事業化力の強化)の自立を図り、Proactive IP(開発、事業化のアンテナ機能)、R、D の相互作用による事業創出を目ざしてまいります。

 

 生産(プロダクション)については、安全・品質のあくなき追求、究極のアセットライト、現場活躍の基盤強化を実践し、現場の力を結集してバーチャルカンパニーでパートナーに価値を提供することを目指します。

 

 デジタルトランスフォーメーションについては、権限委譲を進める組織改革やそれに伴う働き方改革をサポートすることを主眼に、あらゆる業務領域への AI、IoT の活用を進めてまいります。

 

 人事については、多様な社員が存在感と達成感を味わいながら成長できる、変える!変わる!人事を目指してまいります。

 

4.全社業績・経営指標

 中期戦略最終年度となる2025年度に以下の全社業績および経営指標をターゲットとしております。

 

 全社業績:

  売上高 5,000億円、営業利益 700億円、親会社株主に帰属する当期純利益 480億円、

  EBITDA 1,160億円

 経営指標:

  営業利益率 14.0%、ROE 18.0%、ROIC 10.0%、ROA 8.0%

  株主還元 中期戦略発表時の1株当たり配当金額(年間32円)を下限、総還元性向 40%以上

 

 また、アセットライト方針に基づき、業容拡大期間においても総資産残高をキープしつつ、自己資本比率45%超、ネットD/Eレシオ 0.5以下を実現し財務安定性強化を図ることにより2026年3月末のバランスシートとして以下をイメージしております。

 

  2026年3月期末(見込み)                   (億円)

流動資産

2,900

負債

3,100

 うち現預金

800

 うち有利子負債

1,600

   運転資産

1,900

 

 

固定資産

3,000

純資産

2,800

 うち有形・無形

2,300

 

 

   政策保有株式

300

 

 

資産合計

5,900

負債・資本合計

5,900

 

5.資金創出力

 収益力強化に加え適正在庫化などキャッシュコンバージョンサイクル削減効果で資金創出力向上を図ります。また、政策投資株式売却などにより資金創出力をさらに高め、余裕資金を成長投資や株主還元に活用します。株主還元は総還元性向40%以上とし、自己株式取得も視野に柔軟に対応してまいります。

 

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(3) 経営環境及び会社の対処すべき課題

 世界経済は、新型コロナウイルスによる経済活動停滞に一部で持ち直しの動きがみられるものの、変異株による感染再拡大、半導体不足による自動車減産、物流の混乱、原燃料価格の高騰、インフレーション懸念の増大、ロシアによるウクライナ侵攻とグローバル規模のさまざまな課題が次々に発生し、先行き不透明な状況のうちに推移しております。また、気候変動対策としてカーボンニュートラル実現を巡る世界的な議論が進展するなか、国、業界、企業単位での対応が求められております。

 更に、AIなど新たな技術も加速度的に進歩し、私たちの暮らしや働き方にも大きな変革をもたらしています。

 

 当社グループは、コロナ禍からの回復により増加する販売機会を着実に捉えるべく、サプライチェーンの緊密な連携と、戦略的な在庫の見直しなどにより、顧客への製品供給の確保を最優先に対応してまいります。また世界的な原燃料の高騰や物流費の上昇という課題には、プロセス革新による原燃料コストの抑制や、販売価格の適切な是正にも取り組んでおります。更に聖域を設けることなく全社のあらゆる領域において地道なコストダウンの徹底を実践しております。

 当社グループ力の更なる強化に向け、一昨年完全子会社化したポリプラスチックスとの一体運営や積極的な設備投資計画に取り組むとともに、ドイツEvonik社との合弁体制も見直し、エンジニアリングプラスチック事業におけるポリプラスチックスとのシナジー強化を進めています。

 事業ポートフォリオの再構築では、防衛事業や二軸延伸ポリスチレンシート事業からの撤退を進める一方、主力製品である酢酸セルロースの、バイオマス・生分解性という特徴を生かし、プラスチック資源循環促進法に対応した新しい用途開拓に取り組んでいます。

 育成事業の一つ、民生用火工品は、「ワンタイムエナジー」という新コンセプトの下、電流遮断器「ボルトブレーカー™/Volt Breaker™」や、針を使わず組織内に効率的に薬液を投与する革新的ドラッグデリバリーシステム「アクトランザ™ラボ」など幅広い領域で事業展開しています。なお、「アクトランザ™ラボ」を含めたライフサイエンス・メディカル関連事業推進のため「ライフサイエンス事業企画室」を新設し、キラル分離事業や製剤ソリューション事業との一体運営を目指します。また、電子材料分野を中心に、有機・無機複合材料研究のステージアップを図るため「無機複合材料実装研究所」を新設し、より、お客様に密着した材料開発にも取り組みます。

 更に、長期ビジョン『DAICEL VISION 4.0』と中期戦略『Accelerate 2025』の中核をなすバイオマスプロダクトツリー・バイオマスバリューチェーンの構築に向け、新たに「バイオマスイノベーションセンター」を組織し、京都大学や金沢大学などとの産産学学官官による協創を拡充、加速しています。

 

 

 

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