業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(経営成績等の状況)

(1) 当期の経営成績の状況

当期の世界経済は、新型コロナワクチン接種の進展などにより国や地域によるばらつきはあるものの、総じて経済活動の回復が継続しました。しかし足元では新たな新型コロナウイルス変異株の流行や資源価格の高騰など依然として予断を許さない状況が続いていることに加え、ウクライナ情勢の悪化によりエネルギー価格の更なる上昇などが景気減速の懸念となっております。

当社グループを取り巻く経営環境は、半導体分野においては、5Gスマートフォンの普及に加え各種サービスのデジタル化の加速とそれに伴うインフラ整備の拡充により、データセンター関連機器やパソコン・タブレット端末などが活況を呈したことから、半導体の需要拡大が継続しました。自動車分野においては、期初では回復の兆しが見えたものの、世界的な半導体不足やサプライチェーンの混乱などの影響を受け減産を余儀なくされたことにより、新車販売台数は、中国、米国、欧州、国内ともに前年度実績を下回りました。また、国内の新設住宅着工戸数は、国土交通省の発表によりますと2021年度は前年度比6.6%増となりました。

このような経営環境の中、当社グループは“プラスチックの可能性を広げ、お客様の価値創造を通じて、「未来に夢を提供する会社」”をビジョンとし、“SDGsに則し、機能性化学分野で「ニッチ&トップシェア」を実現、事業規模の拡大を図る”を基本方針に掲げて、変化する社会のニーズや課題の解決に貢献することで持続可能な社会の実現を目指して事業運営に取り組んできました。

この結果、当期の売上収益は、半導体関連や高機能プラスチックの売上増加に加えて、2020年10月から連結子会社となったSBカワスミ株式会社(2021年10月1日付で川澄化学工業株式会社より社名変更)の貢献もあり、前期比で25.9%増加の2,631億14百万円と、541億12百万円の増収となりました。損益につきましては、事業利益は、原料価格高騰に対して継続的な販売価格改定や原価改善および固定費の適正化に努めたことに加え、各セグメントでの売上増加が寄与し、前期比で59.2%増の264億89百万円となり、営業利益は、前期比で25.0%増の248億87百万円となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は、前期比で38.6%増の182億99百万円となりました。

当社としましては、現今の原料価格高騰やサプライチェーンの逼迫を念頭に、顧客への安定供給を第一に考え、調達先の複数化、安全在庫の確保などによるリスクの低減に努めるとともに、サプライチェーン動向の情報収集活動強化、新規顧客・用途開拓活動の推進により収益水準の維持・強化を進めているところであります。また企業の重要な目標としてカーボンニュートラルの実現に向けて取り組むとともに、DXを意識した経営を推進し、競争力ある製品やサービスを創出していきます。

 

(セグメント別販売状況)

① 半導体関連材料

  [売上収益75,787百万円(前期比32.3%増)、事業利益16,506百万円(同74.9%増)]

 

半導体封止用エポキシ樹脂成形材料は、世界的な半導体需要の拡大により売上収益は大幅に増加しました。既存の顧客・用途での強い需要に加えて、中国での新規顧客開拓やECU向け一括封止材料などの車載用途の拡販が大きく寄与しました。更なる需要拡大に備えるべくグローバルな生産能力の増強を実行しており、当年度は2022年初頭に中国で増設した設備が稼働を開始しました。今後も2022年中に欧州、2023年には台湾で新たな設備が稼働を開始する予定です。

感光性ウェハーコート用液状樹脂は、主要用途であるメモリー需要が好調で売上収益は大きく増加しました。

半導体用ダイボンディングペーストについても、旺盛な半導体需要により売上収益は大幅に増加しました。

また、半導体パッケージ基板材料「LαZ®」シリーズは、5Gスマートフォンの需要増加等で売上収益は増加しました。

 

 

② 高機能プラスチック

  [売上収益92,244百万円(前期比27.1%増)、事業利益5,934百万円(同70.0%増)]

 

工業用フェノール樹脂およびフェノール樹脂成形材料は、コロナ禍の影響が最も顕著だった前年度上半期を底に自動車用途向けが回復しました。7月以降は半導体不足などに起因する自動車減産の影響が懸念されましたが、アフター市場の下支えもあり大きな影響とはなりませんでした。また民生用電気部材や銅張積層板などの電子部品向けも堅調に推移したことに加え、原料価格上昇に伴う価格改定の影響もあり売上収益は大幅に増加しました。

航空機内装部品は、行動制限の緩和など市場環境に明るい兆しは見られたものの、本格的な航空機生産の回復には至っておらず、売上収益は減少しました。

 

③ クオリティオブライフ関連製品

  [売上収益94,444百万円(前期比20.2%増)、事業利益7,427百万円(同12.3%増)]

 

医療機器製品は、2020年10月にSBカワスミ株式会社を当社グループに加えたことにより売上収益は大幅に増加しました。同社は、2021年10月に当社の医療機器事業と統合し、本社・研究開発拠点を神奈川県川崎市にある殿町国際戦略拠点キングスカイフロント内に立ち上げました。更なる経営の効率化を進めるとともに、成長領域である低侵襲治療分野において独創性ある高度な医療機器の開発と安心・安全な製品の供給に努めてまいります。

バイオ関連製品は、検体保存容器や細胞培養用のプラスチック消耗品が、検査や医薬開発の活発化などによる世界的な需要の増加により売上収益は増加しました。また新型コロナPCR検査用部材については、自動製造設備の導入により、感染状況を踏まえた顧客の需要に的確に応えられるような生産と供給に取り組みました。

ビニル樹脂シートおよび複合シートは、半導体需要の拡大により電子部品搬送用のカバーテープや半導体製造工程用のダイシングテープなど産業用フィルムで売上収益が増加しました。医薬品包装用途ではジェネリック医薬品メーカー向けが好調を維持し、新型コロナワクチン接種の増加により解熱鎮痛剤の需要も旺盛であったことから売上収益が増加しました。

ポリカーボネート樹脂板および塩化ビニル樹脂板は、新型コロナウイルス感染防止用途の需要が一巡したことで飛沫防止板は減少しましたが、主力の土木建材向けやエクステリア用途が回復したことにより売上収益は前期並みとなりました。

防水関連製品については、新設住宅着工戸数の回復に伴い住宅(新築・リフォーム)向けを中心に売上収益が増加しました。

 

(2) 当期の財政状態の状況

①資産の部

資産合計は、前連結会計年度末に比べ250億73百万円増加し、3,708億36百万円となりました。

主な増減は、営業債権、棚卸資産および現金及び現金同等物の増加と、その他の金融資産の売却および時価下落による減少であります。

②負債の部

負債合計は、前連結会計年度末に比べ49億21百万円減少し、1,387億1百万円となりました。

主な増減は、借入金の返済による減少と、コマーシャル・ペーパーの発行による増加および営業債務の増加であります。

③資本の部

資本合計は、前連結会計年度末に比べ299億95百万円増加し、2,321億36百万円となりました。

主な増減は、当期利益の計上および為替変動影響による増加、配当金の支払による減少であります。

 

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末の現金および現金同等物(以下、資金)は、前連結会計年度末に比べ60億42百万円増加し、1,092億17百万円となりました。

①営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動により得られた資金は279億20百万円となりました。

これは主に、税引前利益および減価償却費による収入の結果であります。前期と比べると5億15百万円の収入の増加となりました。

②投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動に用いた資金は104億68百万円となりました。

これは主に、有形固定資産の取得による支出と、投資有価証券の売却による収入の結果であります。前期と比べると45億25百万円の支出の減少となりました。

③財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動に用いた資金は193億8百万円となりました。

これは主に、長期借入金の返済による支出と、コマーシャル・ペーパーの発行による収入の結果であります。

 

(4) 資本の財源および資金の流動性に係る情報

  ①財務戦略の基本的な考え方

 当社グループは、健全かつ安定した財務基盤の維持を前提に、資産効率の向上を図り、事業活動の成長と拡大のための投資を継続的に行い、安定かつ継続的に株主還元を行うことを財務戦略の基本方針としております。

 財務基盤に関しては、親会社所有者帰属持分比率は60%を超え、ネットキャッシュは460億円のプラスという状況で、安定した水準を維持しております。引き続き財務体質の改善、信用力向上のための取組みに努めてまいります。また、資産効率に関しては、以下の施策をこれまで以上に強力に推進してまいります。

・収益性向上による営業キャッシュ・フロー確保のため、低採算・不採算事業の撲滅改善、製造原価の低減に加え、開発効率の向上や間接業務の効率化等の費用削減。

・資産のスリム化のため、売掛債権の回収促進、棚卸資産の適正水準や滞留の管理強化、政策保有株式の適宜見直し、不要・遊休資産の処分・売却の徹底、グローバルおよびリージョナルファイナンスによるグループ内資金の効率的な活用。

 また、当社グループ事業の成長と拡大のための研究開発および設備投資、さらなる成長スピードを加速させるためのM&A、DX等の戦略的な投資を積極的に実施してまいります。自己資金や外部から借り入れた資金をこれらの投資に配分しますが、様々なリスクに見合った財務健全性の確保と、適正な財務レバレッジコントロールの観点から、適切な負債・資本のバランスとして親会社所有者帰属持分比率は最低50%を維持してまいります。さらに株主還元では配当性向30%を目安に、連結業績に応じて安定した配当を継続して実施してまいります。

 

②資金需要

 当社グループの資金需要の主なものは、生産効率および品質の維持向上、生産能力増強を目的とした設備投資等の長期の資金需要と、製品製造のための原材料および部品の購入費、製造経費、販売費及び一般管理費等の運転資金需要のほか、M&A、DX等の戦略的投資のための需要があります。

 

③資金調達

 当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、自己資金および外部資金を有効に活用しております。

 資金調達にあたっては、様々な手段の中から、その時々の市場環境も考慮したうえで、当社グループにとって最適かつ有利な手段を機動的に選択しております。

 当社グループは、主要な取引先金融機関との間で長年にわたり良好な関係を維持しており、長期借入金、短期借入金、シンジケートローン等による資金調達を行っております。さらに金融市場からの安定的な資金調達能力の維持向上に努め、国内2社の格付機関から格付けを取得し、コマーシャル・ペーパーの発行による資金調達も行っております。また緊急時の手元流動性と資金調達枠の確保を目的として、取引先金融機関との間にコミットメントライン契約を設定しております。

 また、当社グループの資金調達を取り巻く環境の急激な変化に備えて、前期に増枠したコミットメントライン契約、コマーシャル・ペーパー発行限度枠を引き続き維持し、不測の事態に対応できるよう体制を整えております。これにより運転資金および設備資金に加え、戦略的な投資に対しても十分な流動性が確保でき、機動的かつ円滑な資金調達が可能となっております。

 

(5) 生産、受注および販売の実績

①生産実績および受注実績

当社グループの生産品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産を行わないため、セグメントごとに生産規模および受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

このため生産の実績については、「第2 事業の状況 3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (セグメント別販売状況)」に関連付けて示しております。

 

②販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

半導体関連材料

75,787

32.3

高機能プラスチック

92,244

27.1

クオリティオブライフ関連製品

94,444

20.2

その他

639

7.6

合計

263,114

25.9

 

(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

(6) 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、売上収益、事業利益、ROEを業績目標の指標に設定しております。

当期は、新型コロナワクチン接種の進展などによる世界経済の回復や、原料価格高騰に対して継続的な販売価格改定や原価改善および固定費の適正化に努めたことなどにより、売上収益、事業利益およびROEは2,631億14百万円、264億89百万円、8.5%となり、いずれも前期を上回る結果となりました。

2021年度よりスタートした3か年の中期経営計画の最終年度(2023年度)の数値目標(売上収益2,500億円、事業利益250億円、ROE10%)については、ROEを除いて初年度である2021年度において達成することができたことから、売上収益3,000億円、事業利益300億円を新たに設定いたしました。詳細は、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

(7) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積りおよび見積りを伴う判断」に記載のとおりであります。

 

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