業績

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、前連結会計年度との比較・分析は変更後の区分に基づいて記載している。

(業績等の概要)

(1) 業績

当連結会計年度の世界経済は、エレクトロニクスや自動車などの市場低迷、米中貿易摩擦をはじめとする通商問題の長期化に加え、年明けからの新型コロナウイルス感染拡大の影響により、景気が急減速し、世界的に成長が鈍化した。

 このような経営環境において、当社グループは、経営・事業基盤の質を高めるステージと位置づけて策定した2021中期経営計画の下、「デファクト化されたトップシェア事業の拡大」「新事業・新製品の創出加速」「グローバル先進クラスのコスト構造への再挑戦」を方針に掲げ、諸施策に取り組んできた。

以上の諸施策を鋭意実施したが、半導体や自動車の市況低迷、さらに第4四半期からは新型コロナウイルスの感染拡大により、日本、中国、東南アジア、北米、欧州などにおいて、自動車産業を中心に広範な領域で企業の生産活動が縮小したことの影響を受け、当連結会計年度の売上収益は、6,314億円(前年度比7.3%減)となった。また、利益については、継続的な原価低減が増益要因となったものの、売上収益の大幅な減少が響き、営業利益は231億円(前年度比36.4%減)、親会社株主に帰属する当期利益は164億円(前年度比42.9%減)となった

①  機能材料セグメント
電子材料

半導体用エポキシ封止材及び半導体回路平坦化用研磨材料は、半導体市況が低迷したことにより、前年度実績を下回った

半導体用ダイボンディング材料は、半導体市況の低迷による影響を受けたものの、一部顧客の需要が増加したことにより、前年度実績を上回った

ディスプレイ用回路接続フィルムは、粒子超分散配置型製品の売上が増加したものの、スマートフォン向けの売上が減少したことにより、前年度実績を下回った

タッチパネル周辺材料は、一部顧客の需要が減少したことにより、前年度実績を下回った。

粘着フィルムは、液晶ディスプレイ表面保護用フィルムの売上が減少したことにより、前年度実績を下回った。

配線板材料

銅張積層板は、ICT インフラ向け基板の売上減少に伴い、前年度実績並みとなった。

感光性フィルムは、スマートフォン向けの売上が減少したことにより、前年度実績を下回った

電子部品

 配線板は、産業機器向けの売上が減少したことにより、前年度実績を下回った。

この結果、当セグメントの売上収益は2,383億円(前連結会計年度比4.2%減)、セグメント損益は307億円(同9.9%減)となった

 

②  先端部品・システムセグメント
モビリティ部材

樹脂成形品は、外装発泡技術を用いた製品等の受注獲得があったものの、中国や北米、日本での自動車市況の低迷により、前年度実績を下回った

摩擦材は、銅含有量を極めて抑えた製品等の受注獲得があったものの、中国や北米、日本での自動車市況の低迷により、前年度実績並みとなった

粉末冶金製品は、中国や北米、日本での自動車市況の低迷により、前年度実績を下回った

リチウムイオン電池用カーボン負極材は、環境対応自動車向けの売上が減少したことにより、前年度実績を下回った

電気絶縁用ワニス及び機能性樹脂は、中国での自動車市況の低迷により、前年度実績を下回った。

蓄電デバイス・システム

車両用電池は、欧州や日本での自動車市況の低迷により、前年度実績を下回った。

産業用電池・システムは、東南アジアでのフォークリフト向け電池の拡販が進んだものの、欧州でのICT インフラ向け電池の売上が減少したことにより、前年度実績を下回った。

キャパシタは、産業機器向けの売上が減少したことにより、前年度実績を下回った。

ライフサイエンス関連製品

診断薬・装置は、脂質異常症や糖尿病、アレルギー疾患の診断薬需要が減少したことにより、前年度実績を下回った

再生医療等製品は、第1四半期にドイツ連邦共和国のApceth Biopharma GmbHを連結子会社化したことにより、前年度実績を上回った

この結果、当セグメントの売上収益は3,931億円(前連結会計年度比9.1%減)、セグメント損益は76億円の損失(前連結会計年度のセグメント損益は23億円の利益)となった

(2) キャッシュ・フロー

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末から97億円減少し、916億円となった。

①  営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動によるキャッシュ・フローは、当期利益の減少等から、前連結会計年度実績と比較して112億円少ない660億円の収入となった。

②  投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動によるキャッシュ・フローは、子会社株式の取得による支出が増加したこと等から、前連結会計年度実績と比較して13億円多い487億円の支出となった。

③  財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動によるキャッシュ・フローは、当期に短期借入金を返済したこと等から、前連結会計年度実績と比較して98億円多い225億円の支出となった。

 

(生産、受注及び販売の状況)

当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていない。

このため、生産、受注及び販売の状況については、(業績等の概要)におけるセグメント業績に関連付けて示している。

 

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成されている。この連結財務諸表の作成に当たり、過去の実績や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り及び予測を実施している。しかし、これらには特有の不確実性があるため、実際の結果とは異なる場合がある。

個々の項目については「第5  経理の状況  1  連結財務諸表等  (1) 連結財務諸表  連結財務諸表注記  2  作成の基礎」に記載のとおりである。

(2) 財政状態の分析

①  キャッシュ・フローの分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

「第2  事業の状況  3  経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析  (業績等の概要)  (2) キャッシュ・フロー」に記載のとおりである。

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性について、当社グループの資金需要は、製品の製造販売に関わる原材料費や営業費用などの運転資金、設備投資資金及び研究開発などである。資金調達は主としてフリー・キャッシュフロー及び間接調達により十分な資金を調達しており、財務の安定性及び流動性を確保している。

②  資産及び負債・資本の分析
イ.資産

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末から42億円減少7,044億円となった。

現金及び現金同等物の減少等によるものである。

ロ.負債

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末から72億円減少2,718億円となった。

非支配株主に付与している売建プット・オプションの公正価値評価によるその他の金融負債の減少等によるものである。

ハ.資本

当連結会計年度末の資本合計は、前連結会計年度末から30億円増加し4,326億円となった。

非支配株主に付与している売建プット・オプションの公正価値評価による資本剰余金の増加等によるものである。

(3) 当連結会計年度の経営成績の分析

①  売上収益

当連結会計年度の売上収益は、前連結会計年度から496億円(7.3%)減少6,314億円となった。各区分の概況は下記のとおりである。

イ.機能材料セグメント

当区分の売上収益は、前連結会計年度から104億円(4.2%)減少し2,383億円となり、総売上収益に対する比率は1.2ポイント増加し37.7%となった。

ロ.先端部品・システムセグメント

当区分の売上収益は、前連結会計年度から392億円(9.1%)減少し3,931億円となり、総売上収益に対する比率は1.2ポイント減少し62.3%となった。

②  売上原価、販売費及び一般管理費

売上原価は、前連結会計年度から328億円(6.5%)減少4,760億円となり、売上収益に対する比率は0.7ポイント増加し75.4%となった。また、販売費及び一般管理費は、前連結会計年度から33億円(2.7%)減少1,202億円となり、売上収益に対する比率は0.9ポイント増加し19.0%となった。研究開発費は、前連結会計年度から4億円(1.1%)減少し322億円となり、売上収益に対する比率は0.3ポイント増加し5.1%となった。

③  営業利益

営業利益は、前連結会計年度から132億円(36.4%)減少231億円となり、売上収益に対する比率は1.7ポイント減少し3.7%となった。

区分別では、機能材料セグメントのセグメント損益は、前連結会計年度から34億円(9.9%)減少し307億円、同区分の売上収益に対する比率は0.8ポイント減少し12.9%となった。先端部品・システムセグメントのセグメント損益は、前連結会計年度から99億円減少し△76億円となった。

④  親会社株主に帰属する当期利益

法人所得税費用は、前連結会計年度から36億円(33.0%)減少74億円となり、税引前当期利益に対する比率(税負担率)は、3.6ポイント増加し30.9%となった。

これらの結果、親会社株主に帰属する当期利益は、前連結会計年度から123億円(42.9%)減少164億円となった。

(4) 経営指標について

当社グループは、2021年度を最終年度とする中期経営計画において、調整後営業利益率10%以上、ROIC13%以上を目標値としている。調整後営業利益率は、「売上収益」から「売上原価」並びに「販売費及び一般管理費」の額を減算して得られた金額の「売上収益」に対する比率をいう。

当連結会計年度の利益については、継続的な原価低減が増益要因となったものの、売上収益の大幅な減少が響き、営業利益、税引前当期利益、当期利益、親会社株主に帰属する当期利益ともに前連結会計年度から減少した。

この結果、当連結会計年度の調整後営業利益率は5.6%、ROICは5.8%となった。

(5) 経営成績に重要な影響を与える要因について

今後の経済見通しについては、新型コロナウイルスの感染拡大による世界経済への影響が懸念され、先行きは不透明な状況にある

(6) 経営戦略の現状と見通し

当社グループは、5G、CASE、再生医療等の新たな技術革新を成長の機会と捉え、これらの事業・新製品に限りある経営資源を迅速かつ的確に投入することにより、より早期に「高収益基盤の確立」を実現させる方針である。また、お客さまや社会に信頼される会社になるために、「グローバルでのガバナンスの強化」に取り組んでいく。

さらに、当社グループは、昭和電工(株)をパートナー企業として選定し、同社の完全子会社であるHCホールディングス(株)が2020年3月24日より実施した当社の普通株式に対する公開買付けの結果、同年4月28日付で同社の子会社となった。今後、経営統合を迅速に進め、当社事業領域より上流の領域で強みを持つ同社との技術や事業の融合により、「ワンストップ型先端材料パートナー」としてお客さまや社会が抱える課題に対してソリューションを生み出す「世界トップレベルの機能性化学メーカー」をめざしていく。

(7) 経営者の問題認識と今後の方針について

当社グループの経営陣は、現在の事業環境及び入手可能な情報に基づき最善の経営方針を立案するよう努めている。上記(5)及び(6)の問題認識の下、下記の方針により事業を遂行することとしている。

①  高収益基盤の確立

②  グローバルでのガバナンスの強化

③ サステナビリティへの取り組み

 

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