文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルスの感染症の拡大長期化により厳しい状況が続いております。一方で、ワクチン接種が進み、経済活動正常化に向けた動きがみられるものの、新たな変異種による感染拡大が懸念されるなど、先行きは不透明な状況が続いております。
2021年9月に発行されたぴあ総合研究所株式会社の調査「ライブ・エンタテインメント白書」の「NEWS LETTER」によると、音楽ライブや舞台ステージ等、ライブエンターテインメントの2020年の市場規模は新型コロナウイルス感染拡大に伴い、前年比82.4%減の1,106億円と大幅に下落し、2021年も引き続き厳しい状況が続いております。一方では新しい市場も創出され、2020年7月30日に発表された株式会社CyberZ、株式会社OEN、株式会社デジタルインファクトの共同調査「デジタルライブエンターテインメント市場規模予測2020年-2024年」によると、デジタルライブエンターテインメント(注)の市場規模は、2020年は140億円、2021年は前年比2倍以上の314億円、2022年は492億円と予測されております。
当社のファンコミュニティプラットフォーム「Fanicon」においても、そうしたデジタルライブエンターテインメント市場の動向を捉え、2020年3月より、チケット制ライブ配信プラットフォーム「Fanistream」を開始(2021年4月に「Cassette」にリニューアル)しております。さらに2021年4月にはアイコンが無料で利用できるライブ配信専用スタジオ「BLACKBOX³」をオープンするなど、デジタルライブエンターテインメントというファンにとっての新しい選択肢を提供するべく、インフラを整備してきております。以上より、ライブエンターテインメント市場の成長に伴い、Fanicon事業は今後も拡大余地があるものと当社は考えております。
また、法人セールス事業の市場環境としては、株式会社電通の「2021年 日本の広告費」によると、2021年のインターネット広告市場は2兆7,052億円、前年比121.4%と成長しており、総広告費に占める割合は前年比3.6ポイント増の39.8%に達しており、当社としては今後も同市場は堅調に推移すると予想しております。
このような環境の中、当社は、Fanicon事業においてはスタジオ設立やチケット制ライブ配信サービスのリニューアル等によるサービス強化、また、新規アイコンの獲得等、様々な施策によるファン数の増加及びARPU(1ファンあたりの平均売上金額)の向上、法人セールス事業においては国内外の顧客との取引増加による事業基盤の強化に努めることにより、着実に成長してまいりました。
以上の結果、当事業年度の売上高は3,482,025千円(前年同期比50.1%増)、営業損失は100,754千円(前年同期は営業損失59,034千円)、経常損失は119,690千円(前年同期は経常損失60,667千円)、当期純損失は109,200千円(前年同期は当期純損失65,673千円)となりました。
(注)「デジタルライブエンターテインメント市場規模予測2020年-2024年」では、アーティストが音楽ライブや演劇などを主にステージ上で演じ、ライブ配信で提供されるコンテンツを、「デジタルライブエンターテインメント」と定義し、その市場規模を推計・予測しております。
Fanicon事業においては、「Fanicon」の運営に加え、サービス拡大に向けて、2021年4月にオープンしたライブ配信専用スタジオ「BLACKBOX³」が本格稼働し始め、より様々な分野のアイコンとファンの交流を可能とすることで、「Fanicon」を通じて新しい価値の提供を進めております。その結果、「BLACKBOX³」は、アイコンの新規コミュニティ開設に大きく寄与しており、熱心なファンを抱えるアイコンに選ばれるファンコミュニティを提供できる体制が整ってきております。また、2020年3月に開始したチケット制ライブ配信プラットフォーム「Fanistream」の事業をリニューアルし、2021年4月にチケット制ライブ配信サービスとアーカイブを提供する「Cassette」のサービス提供を開始し、新型コロナウイルス感染症の影響により活動縮小を余儀なくされたライブ業界を救うための取り組みも開始いたしました。
2021年12月末時点において、1人以上のファンが登録しているアイコン数は2,213、ファン数(有料課金ユーザー数)は161,099となり、多くのファンを抱えるアイコンの新規開設の増加に伴い、会員数も順調に増加しております。また、コミュニティ内でのアイコンへのイベント提案やファン体験の価値を高めるカスタマーサクセスの強化を通じて、アイコンの解約率はサービス開始以来低水準で推移しております。
以上の結果、当事業の売上高は1,922,427千円(前年同期比74.7%増)、セグメント損失は165,104千円(前年同期はセグメント損失151,382千円)となりました。
法人セールス事業においては、数回に及ぶ緊急事態宣言が発出され、一部の業界においては広告需要が低迷している状況が続いております。しかしながら、当社は国内外の顧客に対してインフルエンサーを用いた広告施策等の提案及びオンライン広告の運用とコンサルティング共に高い評価を得ることで、売上高を着実に成長させてまいりました。
以上の結果、当事業の売上高は1,559,598千円(前年同期比27.9%増)、セグメント利益は64,350千円(前年同期比30.3%減)となりました。
当事業年度末における流動資産は、前事業年度末に比べ1,411,468千円増加し、2,915,266千円となりました。主な要因は、現金及び預金の増加1,445,754千円、貸倒引当金の減少7,566千円であります。
なお、売掛金には、売上高には計上されていないオンライン広告事業のサービスにおける顧客の媒体費用の立替分が含まれております。そのため、売上高に対し売掛金の規模が大きく、また、同事業の売上増に伴い増加する傾向があります。
当事業年度末における固定資産は、前事業年度末に比べ90,379千円増加し、304,853千円となりました。主な要因は、スタジオ建設に伴う建物の増加89,137千円及び機械及び装置の増加159,784千円、繰延税金資産の増加13,120千円、スタジオ完成に伴う建設仮勘定の減少130,155千円であります。
当事業年度末における流動負債は、前事業年度末に比べ354,313千円増加し、1,475,489千円となりました。主な要因は、買掛金の増加206,901千円、Fanicon事業におけるファン数の増加等に伴う前受金の増加199,292千円、未払金の減少131,868千円であります。
当事業年度末における固定負債は、前事業年度末に比べ68,064千円減少し、48,225千円となりました。主な要因は、1年内返済予定の長期借入金への振替及び長期借入金の返済64,960千円であります。
当事業年度末における純資産は、前事業年度末に比べ1,215,598千円増加し、1,696,406千円となりました。主な要因は、東京証券取引所マザーズ上場に伴う新株発行により資本金及び資本準備金がそれぞれ662,400千円増加、当期純損失を109,200千円計上したことによるものであります。
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は2,044,935千円(前事業年度比1,445,754千円増加)となりました。各キャッシュ・フローの状況とその主な要因は以下のとおりであります。
営業活動の結果獲得した資金は275,365千円(前事業年度は24,259千円の獲得)となりました。主な増加要因は減価償却費の計上50,873千円、Fanicon事業におけるファン数の増加等に伴う前受金の増加額199,292千円、売上債権の減少額20,177千円、仕入債務の増加額206,901千円、未払費用の増加額36,101千円、主な減少要因は未払金の減少額150,707千円、税引前当期純損失の計上119,689千円であります。
投資活動の結果使用した資金は127,993千円(前事業年度は162,679千円の使用)となりました。主な減少要因はスタジオ建設に伴う有形固定資産の取得による支出127,820千円であります。
財務活動の結果獲得した資金は1,298,382千円(前事業年度は606,949千円の獲得)となりました。主な増加要因は株式の発行による収入1,323,342千円、主な減少要因は長期借入金の返済による支出24,960千円であります。
当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
この財務諸表の作成にあたり、資産、負債、収益及び費用の報告額に不確実性がある場合、作成時に入手可能な情報に基づいて、その合理的な金額を算出するために見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
当社の財務諸表作成のための会計方針については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (重要な会計方針)」に記載しております。
また、財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
a 財政状態
財政状態の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財務状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要」に含めて記載しております。
(売上高)
当事業年度における売上高は、3,482,025千円(前事業年度比50.1%増)となりました。
セグメントごとの状況及び分析・検討内容は次のとおりであります。
(Fanicon事業)
Fanicon事業においては、サービス開始以来の地道なマーケティング及び営業活動の結果、順調にアイコンの獲得が進み、2021年12月末時点において、1人以上のファンが登録しているアイコン数は2,213(前事業年度末は1,740)、ファン数(有料課金ユーザー数)は161,099(前事業年度末は102,760)となりました。また、新規開設コミュニティにおいて、月額500円前後の通常サービス機能を利用できるプランに加え、プレミアムサービスがついた高価格料金プランの2種類の価格プランを設定したことで、平均の月額料金向上を図りつつ、カスタマーサクセスにおいて継続的にARPU向上の取り組みを続けたことにより、当事業の売上増加に繋がっております。この結果、売上高は1,922,427千円(前年同期比74.7%増)と大きく伸長いたしました。
(法人セールス事業)
インフルエンサーセールス事業においては、引き続き安定した営業体制のもと、サービス品質の向上に努めた結果、主に既存クライアント企業からの受注案件が増加しました。
オンライン広告事業においては、人員の採用が進み、サービス提供できる案件数を増やすことができ、オンライン広告のコンサルティング及び運用業務において受注案件数及び案件単価ともに増加いたしました。
この結果、売上高は1,559,598千円(前年同期比27.9%増)となり、伸長しております。
(売上原価、売上総利益)
Fanicon事業及び法人セールス事業のうちインフルエンサーセールス事業の売上高増加に伴い、原価も増加したことにより、売上原価は2,192,742千円(前事業年度比46.7%増)となりました。この結果、売上総利益は1,289,283千円(前事業年度比56.1%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業損失)
販売費及び一般管理費は1,390,037千円(前事業年度比57.1%増)となりました。主な要因としては、人員拡大に伴い人件費が増加したこと、Fanicon事業のサービス拡大のためのPR費用等により販売費及び一般管理費が増加したことであります。この結果、営業損失は100,754千円(前事業年度は営業損失59,034千円)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常損失)
営業外収益は広告収入等により345千円(前事業年度比64.5%減)、営業外費用は上場関連費用の計上等により19,281千円(前事業年度比639.5%増)となり、この結果、経常損失は119,690千円(前事業年度は経常損失60,667千円)となりました。
(特別利益、当期純損失)
新株予約権戻入益を計上したため特別利益は1千円となりました。
法人税、住民税及び事業税並びに法人税等調整額を加減した、当期純損失は109,200千円(前事業年度は当期純損失65,673千円)となりました。
キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に含めて記載しております。
経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標(以下KPIと呼ぶ。KPIは、Key Performance Indicatorの略称であり、重要業績指標を意味する)については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」をご参照ください。注力事業であるFanicon事業のKPIの推移は以下のとおりとなっており、当事業の成長が当社全体の成長ドライバーとなっていることから、当該KPIの進捗を日次ベースで注視し、経営上の目標達成状況を判断しております。
KPIのひとつであるアイコン数はローンチ以来の地道な営業活動を通じ、下記のとおり順調に増加しており、その結果ファン数も順調に増加しております。
アイコン数及びファン数(有料課金ユーザー数)の推移(各四半期末時点)
ARPUについては、サブスクリプション売上及びサブスクリプション外売上で構成され、特に2019年12月期第4四半期以降増加しております。要因としては、サブスクリプション売上においては、新規開設するコミュニティに対して、サービスレベルに応じてプレミアム価格の設定を行うなど複数の料金設定を導入することで、1コミュニティ当たりの単価が上昇しているためであり、サブスクリプション外売上においては、新機能等の積極的開発によるユーザーへの提供価値の向上により、マネタイズの機会が多数創出されたことが挙げられます。
ARPU(1ファン当たりの平均月額売上)の6ヶ月移動平均推移(注)
(注) 各四半期末時点における、直近6ヶ月間の1ファン当たりの平均月額売上金額。但し、当事業は2017年12月に提供開始していることから、2018年12月期第1四半期のみ3ヶ月移動平均。
法人セールス事業においては、安定成長を目指していることから、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、法人セールス事業全体の売上高と法人セールス事業における主力事業であるインフルエンサーセールス事業の売上総利益額を重要な経営指標としております。当該指標の推移は以下のとおりであります。
当事業年度のキャッシュフローの分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社は、当社の資本の財源及び資金の流動性については、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。運転資金は自己資金及び必要に応じて銀行からの借入金を基本としており、借入実績もあることから、過去借入実行した金額の範囲は可能と考えております。また、2021年12月期には、東証マザーズ上場に伴う公募増資により1,324,800千円の資金調達を実施しております。運転資金需要のうち主なものは、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。これらの必要な資金については、必要に応じて多様な資金調達を実施してまいります。
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