課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、提出日現在において、当社が判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

 ・創業に至る思い

「『個人』がもっと自由に、自らを表現し、活躍できる社会を目指す」という思いから当社は始まりました。

「個の時代」と言われて久しい時世ながら、「努力しても報われない」「働く意義が見出せない」と多くの同僚が嘆いているのを見てきました。「目の前の仕事に夢中になり、クライアントやユーザーの為に自由な発想で価値提供をできる場所を作る」という想いから創業し、「個」が自由な発想で、活躍できる環境を生み出し続ける為に、当社は存在しております。

 ・ミッション及びビジョン

当社は、「現状維新のパートナー」であることをミッションに掲げ、現状維持に立ち向かいます。何かに夢中で取り組むことは「カッコ悪い」、「やるだけ損する」、「努力しても報われない」、だから「いまのままでいい」といった諦めの状況を打破します。そのために維新を起こすくらいの気概を持った会社でありたいと考えております。現状維持から現状維新へ。新しい事業を興し、本当に夢中になれることを創り出します。同時に、当社はクライアントの維新を推し進めるパートナーであり続けたいと考えております。

その方針のもと、「『できっこない』に挑み続ける」ことをビジョンに掲げ、インフルエンサーセールスやオンライン広告、ファンコミュニティビジネスに限定することなく、テクノロジーの力を最大限に活かして、公序良俗に反することなく「できっこない」に立ち向かい、挑戦し続ける企業・組織・人を目指します。

 ・「三方よし」のエコシステム

当社は、「三方よし」を実現するエコシステムの構築に尽力しており、クライアント(広告主)、ユーザー(ファン)、そしてインフルエンサー(アイコン)をそれぞれ繋ぎ、双方の関係値を最大限にすることが当社の重要な役割だと認識し、日々活動をしております。

 

また、当社のミッション及びビジョン達成のために活動の指針となるValueを以下のとおり設定しております。

6つのValue

①Enjoy&Fun:心、踊ってる?

自分自身/一緒に仕事をしている人/ユーザーなど、THECOOに関わっているみんなが楽しい・嬉しい・ワクワクするような、心が躍る仕事をしよう。

②Professional:できるを力に

一人ひとりの「できる」を力にTHECOOはブーストしていく。キミだからできることがTHECOOの大きな価値になる。

③Learn:学び続けよう

将来なりたい自分をお手本に、いま自分にとって必要とされていることを学び続けていこう。

④Collaboration:コラボで導く、コラボでやり抜く

「自分だけでは解決できない」、「もっといいものにしたい」と思ったら、本当の信頼関係が生まれる。

⑤Belief:任せていこう、任されていこう

いつも積極的に仕事を任せ、任される関係があってこそ、本当の信頼関係が生まれる。

⑥Essential(Disruptive):当たり前から外れよう

「いままでそうだったから」「昔からこうやってきたから」――当たり前とされているやり方や考え方は、今も本当に正しい?一度疑ってみよう。

 

(2) 中長期的な会社の経営戦略

当社の中長期的な経営戦略は、Fanicon事業を中心に据え、エンターテインメント市場において、アイコンとファンにとってなくてはならないプラットフォームとしての地位を国内、そして国外(特にアジア地域)において築きあげ、「パッションエコノミー」(注)の世界を創造することです。そのために、スポーツなどのより広いカテゴリーにおいてアイコン獲得を進めるだけでなく、魅力的なプラットフォームであり続けるために開発を進め、また、カスタマーサクセス機能をより強化してマネタイズの機会を創出してまいります。加えて、エンターテインメントビジネスに必要な商材やサービスをプラットフォーム内外で整備するために、当社の法人クライアント向けインフルエンサーセールス事業とオンライン広告事業とのシナジーを目指し、従来のビジネスに加えて「Fanicon」のプラットフォームを使って展開可能な新しい法人ビジネスを開発してまいります。

(注) 「パッションエコノミー」とは、米国の著名なベンチャーキャピタル、アンドリーセン・ホロヴィッツのパートナーである、Li Jin氏が2019年に執筆した記事において提唱した、「SNSの普及で発信力を持った個人が、自分の個性や情熱に興味を持ってくれるオーディエンスを独自に構築できる新しいデジタルプラットフォームによって作り出される経済圏」を意味する。

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

Fanicon事業においては、ストック型の収益モデルとなっており、主な収益はファン(ユーザー)からの月額課金によるサブスクリプション売上と購入されたポイントの消費によるサブスクリプション外売上から構成されております。ファン(ユーザー)数については、「Fanicon」の売上構成要素のひとつではありますが、アイコン自身が行うコミュニティ開設の告知活動に影響される傾向があり、当社が直接的にファン(ユーザー)のコミュニティ加入に深く関わることがないため、アイコン数を経営上の目標の達成状況を判断するための重要な経営指標と位置付けております。加えて、「Fanicon」のもうひとつの売上構成要素である、ARPU(Average Revenue Per Userの略称であり、1ファンあたりの平均売上金額を指します)も同様に重要な経営指標と位置付けております。

また、法人セールス事業においては、事業全体の安定成長を目指すことから、重要な経営指標としては、法人セールス事業部全体の売上高と法人セールス事業部の主力事業であるインフルエンサーセールス事業の売上総利益額と捉えております。

 

(4) 経営環境・市場の拡大について

当社の主要なビジネスであるFanicon事業では、ファンコミュニティアプリ「Fanicon」を提供し、アーティストや俳優、インフルエンサー、スポーツ選手など幅広いジャンルのアイコンが、熱量の高いコアなファンとオンライン上の安心できる空間で交流できるサービスを提供しております。

2021年9月に発行されたぴあ総合研究所株式会社の調査「ライブ・エンタテインメント白書」の「NEWS LETTER」によると、音楽ライブや舞台ステージ等、ライブエンターテインメントの2020年の市場規模は新型コロナウイルス感染拡大に伴い、前年比82.4%減の1,106億円と大幅に下落し、2021年も引き続き厳しい状況が続いております。一方では新しい市場も創出され、2020年7月30日に発表された株式会社CyberZ、株式会社OEN、株式会社デジタルインファクトの共同調査「デジタルライブエンターテインメント市場規模予測2020年-2024年」によると、デジタルライブエンターテインメント(注)の市場規模は、2020年は140億円、2021年は前年比2倍以上の314億円、2022年は492億円と予測されております。

当社のファンコミュニティプラットフォーム「Fanicon」においても、そうしたデジタルライブエンターテインメント市場の動向を捉え、2020年3月より、チケット制ライブ配信プラットフォーム「Fanistream」を開始(2021年4月に「Cassette」にリニューアル)しております。さらに2021年4月にはアイコンが無料で利用できるライブ配信専用スタジオ「BLACKBOX³」をオープンするなど、デジタルライブエンターテインメントというファンにとっての新しい選択肢を提供するべく、インフラを整備してきております。これらの取り組みの結果、今期に入ってアーティスト活動を主とする多くのアイコンにコミュニティを開設いただいております。以上より、ライブエンターテインメント市場の成長に伴い、Fanicon事業は今後も拡大余地があるものと当社は考えております。

また、「Fanicon」は、アイコンとファン双方がクローズドなオンライン上のコミュニティ内で、アイコンとの会話又はファン同士の会話などを安心して楽しむことができるプラットフォームです。従来のファンクラブとは異なり、アイコンとファン間の双方通行の会話がオンライン上で可能となっておりますので、タレントからファンへの一方通行の情報提供が主である従来のファンクラブ市場に一石を投じるものと考えております。

コミュニティごとにその規模や特色は異なりますが、有名無名を問わず、アイコンの世界観をファンとともに分かち合う場を提供することはファン拡大につながるものであり、当社の成長のためにはアイコンに対する収益化のサポートだけでなく、アイコンの活躍の場を広げていくことが重要であると考えております。

また、当社のもう一つの主要ビジネスであるインフルエンサーセールス事業は、クライアント企業に対し、影響力のあるインフルエンサーを起用したマーケティング施策を支援する事業です。株式会社電通の「2021年 日本の広告費」によると、2021年のインターネット広告市場は2兆7,052億円、前年比121.4%と成長しており、総広告費に占める割合は前年比3.6ポイント増の39.8%に達しており、当社としては今後も同市場は堅調に推移すると予想しております。また、Instagram等のソーシャルメディアのユーザーの利用状況は活発化しており、株式会社博報堂DYメディアパートナーズが発表した「メディア定点調査2021」によると、10代・20代男女ともにスマートフォンのメディア接触時間がテレビのメディア接触時間を上回っており、若い世代を中心にスマートフォンでオンライン動画を楽しむスタイルが定着しつつあります。加えて、高速・低遅延の5G通信の普及に伴い、スマートフォン向けのオンライン動画コンテンツはさらに増加し、当事業において用いられる主要なマーケティング施策であるインフルエンサーによる動画プロモーションに関しても、今後より身近なコンテンツになると予想しております。加えて、株式会社デジタルインファクトの「インフルエンサーマーケティング市場動向分析調査2020」によれば、インフルエンサーマーケティング市場は、2020年において327億円と推計され、同市場規模は、2021年に390億円、2022年に448億円と拡大していくことが予想されております。このような環境のもと、インフルエンサーのソーシャルメディア上の影響力も強まる傾向にあるものと考えており、クライアント企業においても、インフルエンサーを活用したマーケティング手法のニーズが今後も高まっていく状況にあると考えております。以上より、好況な広告市場及びインフルエンサーマーケティング市場の環境下において、当社の提供するサービスに対する需要も、堅調に推移するものと考えております。

オンライン広告事業においても、上述の株式会社電通「2021年 日本の広告費」が示すように、インターネット広告市場が成長する中で、クライアント企業のインターネット広告に対する認知とニーズが高まっております。しかしながら、当社がこれまで接した営業先やクライアント企業において、社内にノウハウや人材が不足していることが原因でインターネット広告の効果検証が実施されていない実態が散見されており、インターネット広告の運用並びに社内体制の構築等をコンサルティング会社に依頼したいという要望を多数受けております。以上から、インフルエンサーセールス事業と同様、当社のオンライン広告事業も堅調に推移するものと考えております。

(注) 「デジタルライブエンターテインメント市場規模予測2020年-2024年」では、アーティストが音楽ライブや演劇などを主にステージ上で演じ、ライブ配信で提供されるコンテンツを、「デジタルライブエンターテインメント」と定義し、その市場規模を推計・予測しております。

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① サービスの強化と認知度向上

当社が今後も高い成長率を持続していくためには、Fanicon事業においては、ファンコミュニティアプリ「Fanicon」の認知度を向上させ、ファンにとって魅力ある新規アイコンの獲得を継続していくことが必要不可欠であると考えております。

他のSNSなどを通じ、既にコミュニティを開設したアイコン、入会したファンによって、「Fanicon」の認知は広がりつつあるものの、ジャンルやカテゴリー、年代を問わず、多くの方々にアイコン、ファンとして「Fanicon」を楽しんでいただけるように、マーケティングや広報活動などを通じて、さらなる認知度向上に努めてまいります。

法人セールス事業においては、インフルエンサーセールス事業やオンライン広告事業をさらに強化し、当社のインフルエンサーセールス事業の強みであるサービスのクオリティを高く維持しながら、成長し、変化する市場にてクライアントのニーズを満たし続けることが必要であると考えております。

 

  ② 機能とユーザビリティ向上のための開発体制の構築

アプリ開発の技術革新のスピードは非常に早く、消費者の嗜好も日々変化し、また新たなサービスや競合他社が次々と現れます。当社では、競合優位性の確保及び事業の拡大を図るため、「Fanicon」において新機能の追加開発、ユーザビリティの向上のために投資を継続して行っております。当該開発に際しては、システム開発や優秀な人材の拡充が必要となるため、迅速な開発が行える体制整備や優秀な人材の確保を行ってまいります。

 

  ③ 情報管理体制の強化

当社は、インフルエンサーの個人情報に加え、「Fanicon」を利用する多数の会員の個人情報を取り扱っており、その数はサービスの拡大に比例して増加しております。そのため、今後個人情報の管理体制をより一層厳格に行うことを重要な課題として認識し、その対策の一つとして、プライバシーマークを取得しております。また、それに加え、情報の取扱いに関する社内規程を定め、情報セキュリティに関する社内教育・研修を定期的に実施し、引き続き従業員の情報管理意識を高めてまいります。

 

  ④ 組織体制の整備

当社の継続的な成長には、事業拡大に応じて優秀な人材を採用し、組織体制を整備していくことが重要であると考えております。当社の理念に共感し、高い意欲を持った優秀な人材を採用していくために、積極的な採用活動を行っていくとともに、従業員が働きやすい環境の整備、人事制度の構築を行ってまいります。

 

  ⑤ 内部管理体制の強化

当社は成長段階にあり、業務運営の効率化やリスク管理のための内部管理体制の強化が重要な課題であると認識しております。このため、当社としては、コーポレート部門の整備を推進し、コーポレート・ガバナンスを充実していくことで、経営の公正性・透明性を確保し、リスク管理の徹底や業務の効率化を図ってまいります。

 

  ⑥ グローバルな事業展開

当社の法人セールス事業は、創業当初は国内のクライアントからの国内でのマーケティング施策の依頼に限られておりましたが、近年、国外のクライアントからのニーズ、また国外での施策支援のニーズも高まりつつあり、2020年3月に始まった中国の大手アプリデベロッパーとの取引が、2021年12月期においても順調に拡大しております。この領域をさらに拡大するため、将来的には中国国内で現地法人を設立することを想定しております。中国国籍のスタッフ、また中国語の堪能なスタッフも既に在籍しており、準備を進めております。また、今後国内に限らず国外でもクリエイターの起用ができるようなネットワークの構築と、ボーダレスでの支援が可能な社内体制を構築してまいります。

 また、「Fanicon」においても、海外在住のファンの入会が増加しており、現在アプリ内でのコミュニケーションは日本語以外に、中国語(広東語、マンダリン)、韓国語、英語でも行うことができます。また、現在世界で認められつつある、ワールドワイドにエンタメビジネスを牽引する韓国の市場を当社の海外展開戦略の一歩とすべく、2020年12月期に市場調査を実施するとともに、2021年12月期にはアイコン獲得のパートナー発掘のために当社営業部員が韓国に渡るなど、その足掛かりを築く準備を進めております。今後はさらに多くのアイコンとファンに、国境を超えて「Fanicon」を楽しんでいただけるように、現地法人設立の検討、採用、パートナー企業の選定等も重要な経営課題として認識しております。

 

  ⑦ 財務上の課題

Fanicon事業においては、現状投資フェーズと捉えており、全社では2021年12月期において営業損失を計上しております。その為、全社での早期黒字化と財務体質の改善が課題と認識しております。

 

  ⑧ 利益及びキャッシュ・フローの創出(収益化)

当社は、事業拡大を目指し、広告宣伝活動等への投資を積極的に進めており、継続して営業損失を計上しております。当社の収益の中心は、継続して利用されることで収益が積みあがるストック型の収益モデルになります。一方でユーザーの獲得費用が先行して計上される特徴があり、短期的には赤字が先行することが一般的です。当社では事業の拡大に伴い、ストック収益を順調に積み上げているため、先行投資であるユーザー獲得費用の売上高に占める割合が低下傾向にあり、利益を計上できる体質へ改善しつつあるものと考えております。

 

  ⑨ 新型コロナウイルス感染症による対応について

当社は新型コロナウイルス感染症による対応として、緊急事態宣言下にて従業員のテレワークを推進し、予定通りに業務を進行してまいりました。緊急事態宣言解除時については、新型コロナウイルス感染対策の一環として執務室内のソーシャルディスタンスの維持、業務に支障がない範囲でのテレワークの推進を実施しております。また従業員の安全確保の観点から、海外への渡航、国内出張の制限、テレワーク等の対応を実施しておりますが、今後、さらなる就業環境や業務プロセスの変容が必要となる可能性があります。

以上より、当社における新型コロナウイルス感染症による影響は限定的であると考えておりますが、今後新型コロナウイルス感染症がさらに拡大し、事態が長期化、深刻化した場合、予定通りに進行しない可能性があるものと認識しております。

 

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