業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社および連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

なお、当連結会計年度より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しています。

①  財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けながらも、回復傾向で推移しました。一方、インフレの進行と対応する金融政策の変更、ウクライナ情勢、政治的な対立の顕在化等、経済への影響が懸念され、先行き不透明な状況は継続しています。

日本経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により経済活動の制限と緩和を繰り返しながら緩やかな回復傾向で推移しましたが、インフレや円安の進行により経済への影響が懸念される状況となりました。

このような情勢下、当社グループは従業員の健康・安全を最優先に配慮した上で、感染対策を徹底して事業の継続に注力しました。加えて、成長を持続するため各事業において、拡販・価格改定等の営業体制強化、設備投資計画の推進、既存設備の維持・強化、原料の安定確保、コストダウンや効率化による供給体制の強化、新製品開発の推進等の研究開発体制の強化の取り組みを進めました。さらに、就業環境の整備、ガバナンス体制の強化を進め、経営基盤の一層の強化に取り組みました。

 

a. 財政状態

(資産の部)

当連結会計年度末の流動資産は、前連結会計年度末に比べ6,946百万円増加し、52,078百万円となりました。これは主に、売上高の増加、円安の進行により売掛金が増加したほか、原料価格の上昇、円安の進行により棚卸資産が増加したためです。

固定資産は、前連結会計年度末に比べ9,030百万円増加し、39,931百万円となりました。これは主に、鹿島事業所の超高純度コロイダルシリカ製造設備の工事の開始に伴い建設仮勘定が増加したためです。

以上の結果、資産合計は前連結会計年度末に比べ15,977百万円増加し、92,009百万円となりました。

(負債の部)

当連結会計年度末の流動負債は、前連結会計年度末に比べ6,831百万円増加し、14,667百万円となりました。これは主に、鹿島事業所の超高純度コロイダルシリカ製造設備の設備投資に係る設備関係未払金が計上されたほか、利益の増加に伴う未払法人税等の増加、およびその他の負債が増加したためです。

固定負債は、前連結会計年度末に比べ12百万円増加し、2,038百万円となりました。これは主に、退職給付に係る負債が増加したためです。

以上の結果、負債合計は前連結会計年度末に比べ6,843百万円増加し、16,706百万円となりました。

(純資産の部)

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ9,133百万円増加し、75,303百万円となりました。これは主に、自己株式の取得を行ったものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により、利益剰余金の増加額がこれを上回ったためです。

b. 経営成績

当連結会計年度の売上高は55,760百万円(前連結会計年度比32.1%増、13,551百万円増)となりました。営業利益は15,034百万円(同56.1%増、5,402百万円増)、経常利益は15,509百万円(同59.1%増、5,763百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益は10,890百万円(同60.0%増、4,082百万円増)となりました。

売上高、営業利益は、後述の各セグメントの要因により増収増益となりました。経常利益は、営業利益増加の要因に円安効果も加わり増益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券売却益計上の影響も加わり増益となりました。

 

当社グループの報告セグメントの業績は、次のとおりです。

(ライフサイエンス事業)

ライフサイエンス事業の業績は、外部顧客に対する売上高が31,430百万円(前連結会計年度比34.2%増、8,012百万円増)、営業利益は4,940百万円(同49.1%増、1,627百万円増)となりました。

日本においては、原料価格の高騰は継続し、原料価格に連動して販売価格が変動する契約となっている製品の販売単価が上昇しました。その他の製品においても、原料価格、輸入価格の高騰に対応して販売価格の改定を随時実施しました。鹿島事業所のリンゴ酸新設備の稼働に伴いリンゴ酸の売上は輸出を中心に大幅に増加し、国内景気の持ち直しによる需要の増加に円安効果も加わり、売上高は増加しました。海外子会社においても、中国、米国の需要の回復、販売促進の取り組みによる各国でのシェアアップ、円安による円換算後の増加効果もあり、セグメントの売上高は前連結会計年度を上回りました。営業利益は、世界的な原料価格の高騰や円安による輸入価格の上昇の影響があったものの、売上高の増加に加え、新規設備の減価償却費の減少、稼働率向上による製造原価の低減効果により前連結会計年度を上回り、増収増益となりました。

 

(電子材料および機能性化学品事業)

電子材料および機能性化学品事業全体の業績は、外部顧客に対する売上高が24,329百万円(前連結会計年度比29.5%増、5,538百万円増)、営業利益は11,612百万円(同51.9%増、3,966百万円増)となりました。

半導体市場は、米中対立の長期化や原材料不足による供給不安の懸念材料はあるものの、デジタル化の進展に伴い、引き続き堅調に推移しています。当社主力製品の超高純度コロイダルシリカは、半導体の微細化の進展および需要の増加に伴い採用は増加しています。下期より原料価格が大幅に上昇し、加えて世界的な海運の混乱は輸出に大きく影響を及ぼしましたが、販売価格の改定と円安効果により売上高は増加しました。在宅勤務の普及によるトナー需要減退の影響を受けたナノパウダー需要は、回復傾向で売上が増加に転じ、セグメントの売上高は前連結会計年度を上回りました。営業利益は、原料価格が大幅に上昇し製造コストに大きく影響があったものの、売上高の増加、新規設備の減価償却費の減少、増産によるコストダウン効果により、前連結会計年度を上回り増収増益となりました。

②  キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、税金等調整前当期純利益および減価償却費の発生により取得した資金を有形固定資産の取得、法人税等の支払、配当金の支払に充てた結果、前連結会計年度末に比べ1,375百万円減少し、23,460百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果取得した資金は、10,199百万円(前連結会計年度は12,820百万円の取得)となりました。これは主に、売上債権、棚卸資産の増加および法人税等の支払いによる支出が発生したものの、税金等調整前当期純利益および減価償却費による収入が発生したためです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、9,375百万円(前連結会計年度は2,620百万円の使用)となりました。これは主に、鹿島事業所の設備投資に係る支払が進み、有形固定資産の取得による支出が発生したためです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は、2,882百万円(前連結会計年度は1,639百万円の使用)となりました。これは主に、自己株式の取得および配当金の支払いを行ったためです。

③  生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2021年4月1日

至  2022年3月31日)

前年同期比

ライフサイエンス

23,583,167千円

31.8%

電子材料および機能性化学品

28,462,634

36.7

合計

52,045,801

34.5

(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっています。

b.受注実績

当社グループは、見込み生産を行っているため、受注高および受注残高を把握していません。

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2021年4月1日

至  2022年3月31日)

前年同期比

ライフサイエンス

31,430,947千円

34.2%

電子材料および機能性化学品

24,329,534

29.5

合計

55,760,482

32.1

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しています。

2.最近2連結会計年度の主要な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりです。

相手先

前連結会計年度

(自  2020年4月1日

至  2021年3月31日)

当連結会計年度

(自  2021年4月1日

至  2022年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

A社

4,771,371

11.3

5,928,602

10.6

B社

4,385,594

10.4

3.当連結会計年度のB社に対する販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、記載を省略しています。

4.A社、B社との契約において秘密保持条項が存在するため、社名の公表は控えさせていただきます。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

①   重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。

当社グループの連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度末における資産、負債の報告金額および収益、費用の報告金額に影響を与える見積り、判断および仮定を使用することが必要となります。当社グループの経営陣は連結財務諸表作成の基礎となる見積り、判断および仮定を過去の経験や状況に応じ合理的と判断される入手可能な情報により継続的に検証し、意思決定を行っています。しかしながら、これらの見積り、判断および仮定は不確実性を伴うため、実際の結果と異なる場合があります。

なお、連結財務諸表の作成のための重要な会計方針等は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりです。

また、新型コロナウイルス感染症による影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載のとおりです。

②  連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の経営成績等は以下のとおりです。

a. 経営成績等の状況

経営成績の分析

(ライフサイエンス事業)

 「Ⅰ.果実酸コンビナート構想の実現」、「Ⅱ.生産体制の再構築及び設備増強」、「Ⅲ.次世代製品の早期戦列化」、「Ⅳ.FFAトップメーカへの挑戦」の各テーマに取り組みました。

Ⅰ. 果実酸コンビナート構想の実現

 2017年11月に鹿島事業所の承継を完了し、リンゴ酸、フマル酸の原料である無水マレイン酸から製品までの一貫生産体制が確立され、国内№1のフマル酸メーカーとなりました。2019年7月には、鹿島事業所にリンゴ酸新製造設備が竣工し、日本唯一のリンゴ酸メーカーとして供給体制が強化されました。中期目標として、リンゴ酸年間20,000トンの販売体制の確立、鹿島事業所をメインプラントとした生産体制の確立を目指しました。2021年度において、鹿島事業所のリンゴ酸プラントは、国際認証であるFSSC22000の取得を完了し、本格的な商業連続生産を継続し、メインプラントとしての体制を確立しました。当社グループの販売力を結集し、海外顧客の新規獲得、既存顧客のシェア拡大に努めた結果、販売量は大幅に増加し、前倒しで目標を達成しました。引き続き、鹿島事業所の新設備、大阪工場の既存設備を有効活用することでコスト競争力を強化し、日本品質を活かしながら、当社グループの販売網により、アジア市場の拡大する需要を確実に取り込みつつ、欧米市場で獲得した新規顧客の定着を図ります。また、世界№1のリンゴ酸メーカーの地位を確立するため、安定操業を継続し生産数量の増加を目指します。

Ⅱ. 生産体制の再構築及び設備増強

 大阪工場を西日本の主要工場として最適化、合理化を進めビジネス拡大を目指しました。新製品であるコート果実酸(油脂でコートした有機酸)の設備は2021年度に完成し、3品目を新たに上市しました。生産性向上、衛生環境強化を目的に製剤類の製造を行う十三工場の機能を大阪工場へ集約するためのプラントは、2022年度完成予定で工事は予定通り進捗しています。引き続き生産体制の見直し、効率化を進め、共有力の強化、コストダウンに取り組みます。

Ⅲ. 次世代製品の早期戦列化

 次世代の主力製品として、優れたコート性能をもち、様々な顧客ニーズへ対応したコート果実酸(油脂でコートした有機酸)の開発および生産体制の確立を目指しました。製造プラントは2021年度に完成し、クエン酸、リンゴ酸、ビタミンCのコート果実酸3品目を上市しました。バイオスティミュラント(ストレスフリー製剤)については、地域農業関連団体、大手農業資材メーカーとの提携による評価を加速し拡販を実施しました。顧客評価においては高評価を得ており、採用実績もあがっています。引き続き開発を継続し拡販を行います。

 

Ⅳ. FFAトップメーカへの挑戦

 食品添加物製剤(Formulation of Food Additives) 、食品素材・食品添加物製剤(Formulation of Food Materials and Food Additives)、機能性食品素材・食品添加物(Functional Food Material and Food Additive)、 機能性果実酸(Functional Fruits Acid)の商品群をFFAと総称しています。Food Tech等の新技術の台頭、食の多様化、フードロス意識の高まり等、食品業界を取り巻く環境は変革期に突入しています。この変革をチャンスととらえ、当社の製品、設備、販売チャネル、技術等のリソースを有効活用してこの領域でのビジネス拡大を目指し、研究、営業のプロジェクトチームを組成し、目標として5年後に3倍の売上を目指します。2021年度において新規製品の開発を進め特許出願を行いました。各拠点において各国の食品事情に適した製品開発を進め、新製品の開発、拡販を行いました。中国上海において上海食品調味料研究開発センターの開設を決定し、中国における調味料ビジネスの確立を進めました。引き続き外部研究機関との共同研究の推進、試験機器の導入により開発スピードを加速させます。

 ライフサイエンス事業の経営成績は、外部顧客に対する売上高は、前連結会計年度に比べ8,012百万円増加し31,430百万円となりました。営業利益は、前連結会計年度に比べ1,627百万円増加し、4,940百万円となりました。

 新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けていた国内外の経済環境は、回復傾向で推移しました。飲料、食品、家庭向け用途の販売は堅調に推移し、工業用途向け販売も回復基調で推移しました。鹿島事業所の生産体制が確立したリンゴ酸は、輸出を中心に拡販を進め大幅に増加しました。米国子会社のPMP社で製造販売するグルコン酸類は北米でのシェアを伸ばしました。原材料、仕入価格の大幅な上昇に対しては、顧客の理解を得ながら複数回に渡る価格改定を実施し対応しました。また、主要原料のベンゼン価格の上昇に伴い、契約販売価格は上昇しました。円安の効果による輸出価格の上昇、子会社業績の円換算の効果も加わり、売上高は前連結会計年度に比べ大幅に増加しました。営業利益は、原材料、仕入価格の大幅な上昇、物流費の上昇によるコストアップはありましたが、売上高の増加、適正な利益確保のための価格改定、円安による円換算後の増加、鹿島リンゴ酸設備の減価償却費の減少等により前連結会計年度に比べ大幅に増加しました。

(電子材料および機能性化学品事業)

 「Ⅰ.半導体研磨:重点顧客との取り組み深化、生産効率最適化、新規砥粒開発推進」、「Ⅱ.生産・研究・品質保証体制堅実化:顧客要望事項への迅速な対応、分析精度・効率向上、コスト削減」、「Ⅲ.機能材料:ナノパウダーのビジネス拡大、生産体制の再構築」「Ⅳ.環境変化への適格な対応:国際輸送の遅滞及びコストアップ」の各テーマに取り組みました。

Ⅰ. 半導体研磨:重点顧客との取り組み深化、生産効率最適化、新規砥粒開発推進

 2021年度において、引き続きコロナ禍で対面での顧客とのコミュニケーションが難しくなる中、リモート会議を定着させて新規砥粒開発をさらに推進し、課題解決の迅速化及び供給体制の早期構築が可能となりました。顧客の長期購買計画に基づく供給体制の構築を行い、増加する需要に対応しました。引き続き効率化を進め供給力の強化を図ります。新規砥粒の開発は、半導体の最先端世代向けに採用が進みました。先端世代における品質課題に対しても、新規砥粒への技術フィードバックにより解決に取り組みました。

Ⅱ. 生産・研究・品質保証体制堅実化:顧客要望事項への迅速な対応、分析精度・効率向上、コスト削減

 2021年度において、生産体制は、超高純度コロイダルシリカの顧客需要予測に基づき設備増強を進めました。2021年7月に京都事業所第2工場に新プラント建設を決定し、既に建設が決定している鹿島事業所の設備の工事は順調に進捗しています。研究体制は、顧客ニーズに対応して新規コロイダルシリカの開発を進め、高濃度タイプ、表面修飾グレード等の新製品の拡充を図りました。また、高研磨タイプ、新規表面修飾タイプの開発を進めています。分析体制は、新規分析装置導入による精度向上、効率性の向上を図りました。製造プロセスの安定・最適化により品質の安定化、コスト削減を進めています。今後も供給体制を強化し、増加する需要に引き続き対応します。

Ⅲ. 機能材料:ナノパウダーのビジネス拡大、生産体制の再構築

 ナノパウダーの主要用途であるトナー需要は、テレワークの進展による印刷量の減少に伴い、低調でありましたが、2021年度は回復基調で推移しました。そのような状況のもとナノパウダーの用途先拡大を図り、コア技術をベースに新規市場開拓に努めました。新規用途拡大を企画した組織再編、最適化を進め、引き続き既存顧客との取り組みを深めるとともに、新規顧客の開拓を進めます。

 

Ⅳ. 環境変化への適格な対応:国際輸送の遅滞及びコストアップ

 2021年度において、国際物流の混乱は継続し、コンテナ船の運賃高騰、港の混乱による諸経費の上昇、船便の確保、リードタイムの長期化等、輸出入に大きな影響があり、現在も継続しています。複数航路の確保により供給体制の確立をすすめ、コストアップに対しては顧客の理解の上、価格改定を実施しました。

 電子材料および機能性化学品事業の経営成績は、外部顧客に対する売上高は前連結会計年度に比べ5,538百万円増加し、24,329百万円となりました。営業利益は前連結会計年度に比べ3,966百万円増加し、11,612百万円となりました。

 半導体市場はリモートワークの進展に伴い電子機器の需要増加や、データ通信量・保管量の増加によるサーバー需要増加等により堅調に推移しました。当社の超高純度コロイダルシリカは既存市場に加え、半導体の最先端の製造プロセスの微細化の進展に伴いCMP用途において採用が増加しています。また、半導体の積層数の増加や先端技術向けのウェハ研磨の増加により需要が増加しています。加えて、コロナ禍や半導体の供給状況等の不確実な外部環境へ対応、物流の混乱に対応するため在庫水準は引き上がり需要は増加しています。需要の増加に加え、原料価格の大幅な上昇に伴う価格改定、円安の影響、ナノパウダー等の機能性化学品製品全般の売上も増加し、売上高は前連結会計年度に比べ増加しました。営業利益は、原料価格の上昇、物流費の増加のコストアップ要因はありましたが、売上高の増加、円安の効果、販売量増加に伴う稼働率向上による原価低減効果、減価償却費の減少等により、前連結会計年度に比べ増加しました。

 引き続きデジタル化の進展は加速し、半導体市場においては急速に需要が拡大しています。機能材料分野においてはトナー需要も回復見込みです。先行き不透明な状況は続いていますが、今後の動向を注視し、引き続き、原料等の安定調達に努め、安全操業を継続して増加する需要に対応していきます。

(売上高)

前述のとおり、前連結会計年度に比べライフサイエンス事業、電子材料および機能性化学品事業ともに大きく増加したため、13,551百万円増加し、55,760百万円となりました。

 

(営業利益)

前述のとおり、前連結会計年度に比べライフサイエンス事業、電子材料および機能性化学品事業ともに大きく増加したため、5,402百万円増加し、15,034百万円となりました。

 

(経常利益)

当連結会計年度の営業外収益は、前連結会計年度に比べ357百万円増加し、481百万円となりました。これは主に、金利の低下により受取利息が減少しましたが、年度末にかけてドルに対して円安が進行し為替差益が計上されたためです。営業外費用は、前連結会計年度に比べ2百万円減少し、6百万円となりました。これは主に、支払手数料、投資事業組合運用損が減少したためです。

上記要因により、経常利益は前連結会計年度に比べ5,763百万円増加し、15,509百万円となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

当連結会計年度の特別利益は、前連結会計年度に比べ214百万円増加し、227百万円となりました。これは主に、政策保有株式の売却に伴い投資有価証券売却益が計上されたためです。特別損失は、前連結会計年度に比べ7百万円減少し、23百万円となりました。これは主に、固定資産除却損が減少したためです。法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額は、利益の増加により法人税等合計で前連結会計年度に比べ1,902百万円増加し、4,823百万円となりました。

経常利益の増加に加え、特別利益が増加し、特別損失が減少したため、税金等調整前当期純利益は増加しました。法人税等は増加しましたが、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べて4,082百万円増加し、10,890百万円となりました。

 

財政状態の分析

財政状態の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 a.財政状態」に記載のとおりです。

 

キャッシュ・フローの分析

キャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 

b. 資本の財源および資金の流動性についての分析

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、棚卸資産の購入費用、製造経費、販売費及び一般管理費等の営業費用です。運転資金の財源は、自己資金および金融機関からの短期借入等を基本としています。当連結会計年度は、新たな短期借入は行っておらず、当連結会計年度末に短期借入金の残高はありません。

投資を目的とした資金需要のうち主なものは、設備投資、事業買収等によるものです。投資資金の財源は主に、自己資金および金融機関からの長期借入等によります。当連結会計年度は、設備投資に対する資金に対し、新たな長期借入は行っておらず、当連結会計年度末に長期借入金の残高はありません。当連結会計年度に実施した設備投資に係る資金の財源は、自己資金を充当しています。

新型コロナウイルス感染症の拡大に対して、現状は財政状態に大きな影響は出ていませんので新たな資金調達の予定はありませんが、今後の状況を注視して、必要に応じて資金調達等の対策を検討します。

c. 経営成績に重要な影響を与える要因

「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりです。

d. 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当連結会計年度における当社の最重要指標である「償却前営業利益」(営業利益に減価償却実施額を加えた金額)は、前連結会計年度に比べ4,828百万円増加し、19,488百万円となりました。

前連結会計年度に比べ、減価償却費は両事業で減少しました。ライフサイエンス事業における鹿島事業所のリンゴ酸設備投資は、稼働開始後2年が経過し、電子材料および機能性化学品事業における京都事業所の新設備も稼働開始から3年が経過したことが要因です。営業利益が両事業でともに減価償却費の減少額以上に増加したため、全体で償却前営業利益は増加しました。

総資産回転率は0.66回で前連結会計年度に比べわずかに上昇しました。設備投資の効果によって売上高が増加し、総資産の増加を上回ったためです。

自己資本利益率は15.4%で、前連結会計年度に比べて大きく上昇しました。分母である純資産は、配当の増加、自己株式の取得による株主還元策による減少要因はありましたが、利益の計上により増加し、分子である親会社株主に帰属する当期純利益が大きく増加したため、大きく上昇しました。今後、設備投資の計画に伴う減価償却費の増加による一時的な利益の低下が想定されるものの、償却前営業利益の最大化を目指し、純資産は安全性とのバランスを考慮して、自己資本利益率の維持向上を目指します。

自己資本比率は81.8%で前連結会計年度より低下しましたが、水準以上の安全性は確保できています。利益の増加により純資産は増加しましたが、売上増加に伴う支払手形及び買掛金、設備投資の開始に伴う設備関係未払金、利益増加に伴う未払法人税等の増加により負債が増加したため、自己資本比率は低下しました。今後も、増加が見込まれる需要に対応するため、継続的な設備投資や研究開発投資が成長の源泉であり、投資を継続するためにも、一定水準以上の純資産の厚みが必要であると考えています。

投資計画、配当政策を考慮して、効率性、収益性のより一層の向上を目指します。

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