(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものであります。
①経営成績の状況
当社グループは、「すべての人を、創造する人に。」のミッションのもと、勤怠管理の高度化、勤務状況の可視化、経費精算等各種業務フローのデジタル化を1つのサービス内で実現し、クラウド環境を通してお客様に提供するERPのフロントウェア「TeamSpirit」並びに「TeamSpirit EX(注1)」を提供しております。
当社グループが提供するサービス領域における短期的な事業環境といたしましては、残業時間上限規制等を定めた「働き方改革関連法」(2019年4月施行)の中小企業への適用が2020年4月から開始されたことによる、「勤怠管理」の高度化ニーズの高まりが継続しています。さらに昨今、従来どおりのオフィスワークと在宅によるテレワークが混在したハイブリッドワーク等の多様な働き方に対応するため、労働時間の正確な把握だけでなく、仕事の見える化によるチームの活性化や非対面でのマネジメントの最適化を可能にする「工数管理」への需要も高まっています。
中長期的な事業環境といたしましては、人的資本経営に対する国内企業の関心が高まる中、経営戦略と適合的な人材戦略を実現するための生産性指標として「勤怠管理」や「工数管理」データの活用が期待されます。また引き続き、多くの企業において生産性向上に向けたDX(デジタルトランスフォーメーション)への取組みがさらに加速することが予想されます。特にエンタープライズ企業(注2)では、2000年頃に一斉導入されたERP並びに、それに付随したデータのエントリー機能を担う「勤怠管理システム」や「経費精算システム」といったERPのフロントウェアシステムのリプレイス需要が高まっています。従来、これらのシステムは各社独自の仕様で構築されるケースが一般的でしたが、昨今は更新投資やシステム保守費をかけることなく最先端のサービスを利用することができるSaaS(注3)への関心が高まっています。当社グループは、このようなエンタープライズ企業におけるDXニーズに応えるため、エンタープライズ企業向けの「TeamSpirit EX」を2021年3月1日より本格的に販売しております。そして、「エンタープライズ市場開拓戦略(注4)」を成長戦略の柱に据えて、製品開発、マーケティング、営業の各領域に積極的な投資を行っております。
2022年8月期の経営成績は以下のとおりです。
ライセンス受注状況に関しては、GBセグメント並びにMMセグメント(注5)の新規・追加受注が堅調に推移しました。エンタープライズ企業向け製品の「TeamSpirit EX」についても、GBセグメントにおいて複数の新規受注を獲得し、エンタープライズ市場開拓戦略の加速に向けた手ごたえを感じております。さらに、カスタマーサクセスの活動を通じて既存顧客の解約率が低位に推移したことで、契約ライセンス数は382,046ライセンス(前連結会計年度末比18.8%増)となり、ARR(注6)は2,900百万円(同17.4%増)となりました。また、契約社数は1,644社(同113社増)となりました。
以上の結果、当連結会計年度における売上高は3,261百万円(前連結会計年度比12.6%増)となりました。内訳として、ライセンス売上高は2,706百万円(同14.9%増)、プロフェッショナルサービス売上高(注7)は555百万円(同2.4%増)となりました。ライセンス売上高はGBセグメント並びにMMセグメントが牽引し堅調に推移いたしました。プロフェッショナルサービス売上高は前連結会計年度において、一部機能の開発を伴う大口のスポットサポート売上を計上した反動もあり小幅な増収となりました。損益面に関して営業損失は118百万円(前連結会計年度は営業利益169百万円)となりました。主な要因は、「TeamSpirit EX」の機能強化を目的とした外部開発の利用拡大に伴う業務委託費の大幅な増加です。また、エンタープライズ市場開拓戦略を推進するために開発部門を中心に積極的な採用を行ったことによる人件費の増加、展示会イベントへの出展やWebマーケティング強化による広告宣伝費の増加等、計画どおりに成長投資を拡大させました。経常損失は126百万円(前連結会計年度は経常利益174百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失は、一部の開発に伴う費用を損金不算入で処理しており、税務上の課税所得に対し法人税等を計上したことで90百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純利益122百万円)となりました。
なお、当社グループはSaaS事業の単一事業であるため、事業セグメント別の記載を省略しております。
(注1)TeamSpirit EX:2018年より一部のエンタープライズ企業のお客様に先行導入し機能拡張を行ってきた「TeamSpirit WSP(Workforce Success Platform)」を名称変更し、2021年3月1日より本格販売を開始したクラウドサービス。EXは、Enterprise Experience、Expansion、Extend、Exceedを連想させる略語。
(注2)企業規模毎の定義は以下のとおり。
名称 |
定義 |
エンタープライズ企業 |
従業員が1,000名以上の企業 |
ミッド企業 |
従業員が100~999名の企業 |
スモール企業 |
従業員が99名以下の企業 |
(注3)SaaS:Software as a Serviceの略称で、サービスとしてのソフトウエアを指す。クラウドサーバーにあるソフトウエアを、インターネットを経由して利用できるサービス。
(注4)エンタープライズ市場開拓戦略:エンタープライズ企業におけるERPのフロントウェア(勤怠管理、工数管理、経費精算、ワークフロー等)は、手組みのスクラッチシステムやオンプレ型のパッケージシステムなどの利用が大半であり、それらのシステムをリプレイスしていく戦略。
(注5)セグメントの定義は以下のとおり。
名称 |
定義 |
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GB/EBUセグメント |
General Business/Enterprise Business Unit の略称で、1社当たりの契約ライセンス数が500ライセンス以上の企業から構成されるセグメント |
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|
EBUセグメント |
Enterprise Business Unit の略称で、1社当たりの契約ライセンス数が4,000ライセンス以上の企業から構成されるセグメント |
GBセグメント |
General Business の略称で、1社当たりの契約ライセンス数が500~3,999ライセンスの企業から構成されるセグメント |
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MMセグメント |
Mid Market の略称で、1社当たりの契約ライセンス数が100~499ライセンスの企業から構成されるセグメント |
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SMBセグメント |
Small and Medium Business の略称で、1社当たりの契約ライセンス数が99ライセンス以下の企業から構成されるセグメント |
(注6)ARR:Annual Recurring Revenueの略で、集計基準日時点の「TeamSpirit」(関連製品を含む)及び「TeamSpirit EX」(関連製品を含む)のライセンス収入から得られる月間収益の合計を12倍したもの。
(注7)プロフェッショナルサービス売上高:スポットサポート売上(新規導入支援等のスポット支援)、プレミアサポート売上(年間契約の有償サポート)、その他売上(初期導入費用等)から構成。
②財政状態の状況
当連結会計年度末における総資産は3,364百万円となり、前連結会計年度末から192百万円増加しました。
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産は2,820百万円となり、前連結会計年度末から66百万円増加しました。これは主に、前渡金の増加によるものであります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産は544百万円となり、前連結会計年度末から126百万円増加しました。これは主に、繰延税金資産の増加によるものであります。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債は1,829百万円となり、前連結会計年度末から235百万円増加しました。これは主に、繰延収益の増加によるものであります。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債はありません。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は1,534百万円となり、前連結会計年度末から42百万円減少しました。これは主に、会計方針の変更に伴い当連結会計年度の期首より前に新たな会計方針を遡及した場合の累積的影響額を当連結会計年度の期首の利益剰余金に加算したことに加え、譲渡制限付株式報酬の付与及び新株予約権の権利行使による新株発行により資本金及び資本剰余金が増加したものの、親会社株主に帰属する当期純損失の計上に伴い利益剰余金が減少し、結果として純資産が減少したものです。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の残高は2,409百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は4百万円となりました。これは主に、受注拡大に伴い繰延収益が240百万円増加した一方で、税金等調整前当期純損失126百万円を計上したことに加えて、法人税等154百万円を支払ったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は55百万円となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出50百万円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果獲得した資金は6百万円となりました。これは、新株予約権の行使による株式の発行による収入6百万円によるものです。
(2)生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当社グループは生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
② 受注実績
当社グループは受注生産を行っておりませんので、受注実績に関する記載はしておりません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をサービス別に示すと次のとおりであります。
サービスの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年9月1日 至 2022年8月31日) |
|
販売高(千円) |
前年同期比(%) |
|
ライセンス |
2,706,335 |
14.9 |
プロフェッショナルサービス |
555,179 |
2.4 |
合計 |
3,261,515 |
12.6 |
(注)1.当社グループはSaaS事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。上記ではサービス別の販売実績を記載しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、その割合が100分の10以上に該当する相手先がないため記載を省略しております。
(3)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び重要な見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては過去の実績や現状等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる可能性があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
また、新型コロナウイルス感染症の影響を含め連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要」に含めて 記載しています。
③ キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要」に含めて 記載しています。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
資金需要及び資金調達につきましては、当社グループの事業規模の拡大を進めるために、次世代プロダクト開発に取り組んでいく考えであります。これらの資金需要は手元資金で補うことを基本として必要に応じて資金調達を実施します。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりと認識しており、これらのリスクについては発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存であります。
⑤ 経営戦略の現状と見通し
当社グループは「すべての人を、創造する人に。」というミッションのもと、事業を展開してまいりました。
働き方改革プラットフォームとしての「TeamSpirit」シリーズを中心に置きながら、幅広い規模や業種の企業に対して適応できるように、商品開発、営業活動の強化などの事業施策に取り組んでまいります。
⑥ 経営者の問題意識と今後の方針について
当社グループの経営者は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、当社グループが今後さらなる成長を遂げるためには、さまざまな課題に対処することが必要であると認識しております。
それらの課題に対応するために、経営者は常に事業環境の変化に関する情報の入手及び分析を行い、次世代商品開発による競合との差別化を推進し、さらなる事業拡大を図ってまいります。
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