事業の内容

3【事業の内容】

(1)事業の概要

 当社グループは「すべての人を、創造する人に。」というミッションのもと、「個を強く。チームを強く。」というビジョンを掲げ、ERP(注1)のフロントウェア「TeamSpirit」並びに「TeamSpirit EX」というサービスを(以下、総称して「TeamSpiritシリーズ」と記載)、SaaS (Software as a Service)(注2)と呼ばれるクラウド上のサービスを通して提供しています。また本サービスの導入や運用に関してユーザー企業を有償で支援するプロフェッショナルサービスを提供しております。

 ERPのフロントウェアとは、すべての従業員が日常的に利用する業務システムの内、ERPのフロント側(従業員側)でデータの登録機能を担う勤怠管理、就業管理、工数管理、経費精算、電子稟議、カレンダー、SNSといったシステムを総称した当社が定義した造語です。従来このフロントウェアの領域は、ERPと組み合わせて一から開発するか、ERPのオプション機能として提供されたシステムを個社仕様にカスタマイズして使用されていましたが、「TeamSpiritシリーズ」は、これらの様々な利用者機能(データの登録機能)を一つのサービスに纏めSaaSとして独立させました。異なる分野の利用者機能が一つのデータベース及びワークフローで展開されることで、それぞれのデータをかけ合わせて分析することや、各種決裁フローをデジタル化することが可能となり、企業に求められる高度な内部統制を実現することができます。

 このERPのフロントウェアが、独立したSaaSとして提供されることにより、利用企業が法制度改正に伴うシステム改造や情報セキュリティ対策の手間から解放されるだけでなく、使い慣れた利用者機能を変更することなく企業のステージに合わせたERPのリプレイス(システムの置き換え)を実施できるようになります。

 日本は少子高齢化による労働力人口の減少という社会課題に直面しており、多くの日本企業にとって生産性の改善や多様な人材が活躍できる労働環境の整備が重要な経営課題となっています。とりわけ、日本はOECD加盟国の中で労働生産性が最も低いとされています。こうした環境下で企業が成長し続けるためには、既存の組織及びビジネスモデルの根本的な構造改革に挑戦することに加えて、イノベーションを実現することが必要不可欠であり、多くの日本企業にとって、「デジタルトランスフォーメーション」(以下、「DX」という)(注3)による生産性の向上は避けては通れない重要な課題となっています。

 「TeamSpiritシリーズ」は、業務の効率化や可視化を通じ、個人やチームの生産性向上を実現するためのサービスです。足下では、ポストコロナ時代の“場所や時間にとらわれない新しい働き方”が急速に広まりを見せており、働き方そのものに対するパラダイムシフトが起こり始めています。そのような事業環境の中で、「TeamSpiritシリーズ」の需要は着実に高まっており、2022年8月末時点で「TeamSpiritシリーズ」の契約ライセンス数は382,046ライセンス、契約社数は1,644社となりました。なお、当社グループはSaaS事業の単一事業となります

 

(2)当社グループのサービスについて

<主な当社グループが提供するサービス>

 

サービス種別

サービス名称

サービス内容

ライセンス

TeamSpirit

TeamSpirit EX

勤怠管理、就業管理、工数管理、経費精算、電子稟議、カレンダー、SNS等を一体化したSaaS

TeamSpirit Leaders

「TeamSpirit」のファミリー製品のひとつで、「TeamSpirit」と組み合わせて使用する、プロジェクト原価管理サービス

TeamSpirit PSA

「TeamSpirit EX」と連携して、タレントアサインメントを最適化するサービス

プロフェッショナルサービス

スポットサポート

プレミアサポート

顧客の本番稼働や着実な運用のために、担当コンサルタントが実施する有償支援業務

 

 

a.「TeamSpiritシリーズ」

 当社グループの中核サービスで、勤怠管理、就業管理、工数管理、経費精算、電子稟議、カレンダー、SNSなど従業員が日々利用するシステムをひとつにまとめたサービスです。インターネット経由で必要な期間に応じて利用できる SaaS という形態で提供され、テレワークやフレックスタイム等の多様なワークスタイルをサポートします。

 「勤怠管理・就業管理」の機能においては、単なる出退社時刻の記録だけでなく、残業時間の推移・36協定の順守状況・インターバル時間・有給休暇の取得状況・必要な休日確保の状況など、近年特にニーズの高い長時間労働の抑制や健康確保措置としての労働時間管理を実現します。また「工数管理」の機能では、「勤怠管理」と組み合わせることで精緻な原価管理が実現できることに加え、リアルタイムに従業員の働き方を可視化し、トップパフォーマーの時間や経費の使い方などの行動を分析する等して、従業員が生産性高く働くための質の高いコーチングを提供するといったような、真の「働き方改革」の実現をサポートします。

 「TeamSpiritシリーズ」は4つのステップで、生産性の高い働き方を実現するためのソリューションを提供します。

 ステップ1は「間接業務の効率化」です。勤怠管理、就業管理、工数管理、経費精算、電子稟議、カレンダー、SNSなど従業員が日々行わなければいけない煩わしい登録業務を、一つのシステムに纏めることで、入力負担を軽減します。

 ステップ2は「内部統制の高度化」です。例えば、原価管理の面では、プロジェクト別の工数を「TeamSpiritシリーズ」で自動集計できるため、その精度が向上します。また、勤怠管理で集計した労働時間を上限とした工数登録の仕組みによって作業工数の水増しを防止できます。さらに、工数の日次承認機能の利用により、事後的に他プロジェクトへ工数を付替えることを防止できるため、不正入力への牽制が働き、統制がとれた原価管理が実現できます。労務管理の面では、「TeamSpiritシリーズ」に入力された情報を活用して、36協定に基づいたレポートの生成が可能であるため、「全社」「部門」「個人」の単位で勤務状況をリアルタイムで可視化・分析でき、法制度違反や未払い残業の発生を防止することができます。また、交際費やタクシーなどの経費精算を勤務・工数データとカレンダーの両方を確認することで業務利用として妥当であるかを判断することもできます。さらに、各種決裁で用いる電子稟議はもちろん、残業や経費精算の承認などの決裁フローをデジタル化することも可能です。

 ステップ3は「従業員の活性化」です。働く人の活動に関する基礎情報(ビッグデータ)が体系的に格納されているため、レポート・ダッシュボード機能で手軽に働き方を可視化でき、この分析から得られた気付きをコーチングに活かすことで、チームメンバーの能力向上をサポートします。

 ステップ4は「生産性向上」です。「TeamSpiritシリーズ」の各機能を使って働き方を可視化することで、従業員一人ひとりの間接業務を効率化してタイムマネジメントの質を向上させ、アウトプットの増大を実現します。

このように「TeamSpiritシリーズ」では各機能が連携し、ひとつのサービスとして提供されていることにより、「働き方改革」で求められている本質的な問題を解決することが可能となります。

 

「TeamSpiritシリーズ」の契約ライセンス数の推移は以下のとおりです。

 

契約ライセンス数

(ライセンス)

契約社数(社)

2012年8月

2,811

34

2013年8月

11,736

116

2014年8月

23,691

250

2015年8月

46,335

423

2016年8月

71,593

616

2017年8月

98,900

795

2018年8月

139,171

973

2019年8月

208,615

1,232

2020年8月

277,714

1,409

2021年8月

321,534

1,531

2022年8月

382,046

1,644

 

 

<TeamSpirit>

 2011年3月にβ版をローンチして以来、スモール企業(注4)からエンタープライズ企業(注4)まで幅広い顧客層から支持される中核サービスです。

 

<TeamSpirit EX>

エンタープライズ企業のDXニーズに応えるため、2019年6月に「TeamSpirit WSP」としてローンチし、2021年3月に、「TeamSpirit EX」に名称を変更し、本格販売を開始した、エンタープライズ企業向けサービスです。EXは、Enterprise Experience、Expansion、Extend、Exceedを連想させる略語です。

 

b.「TeamSpirit Leaders」

 「TeamSpiritシリーズ」のひとつで、「TeamSpirit」と組み合わせて使用するプロジェクト原価管理サービスです。主に人の作業時間が原価となるプロジェクト型のビジネスにおいて、見積りを作成するための工数計画を作成することができ、受注後には「TeamSpirit」で登録された工数実績との比較により原価の予実管理を行うことができます。

 

c. 「TeamSpirit PSA」

 「TeamSpirit EX」と連携してタレントアサインメントを最適化するサービスです。個人のスキルや経験に基づいた最適なアサインや、勤怠管理と連動することでメンバーの負荷状況を考慮したアサインが可能となります。また、過重労働の防止や納期の正確な予測も可能となります。

 

d. プロフェッショナルサービス

 「TeamSpiritシリーズ」は、原則としてユーザー企業自らで、導入から運用までを実施いただけるようデザインされておりますが、SaaSの普及に伴いITの基礎知識の少ないお客様への導入事例が増えてまいりました。導入目標日に確実な本稼働を迎えたい、導入に係わる担当者の負荷を極力抑えたい、運用段階のシステム設定や新規帳票のレイアウト作成の人材が不足しているなどのお客様の課題に対して、高度なIT及び業務スキルをもったコンサルタントがユーザー企業を有償で支援するサービスを提供しております。

 

なお、販売体制については、ユーザー企業から直接受注する直販ビジネスを中心としておりますが、一部大企業のお客様向けの販売を目的として、パートナーにサービスを卸しユーザー企業に再販でご利用いただく再販パートナーや、既存で取引のある顧客を紹介いただく紹介パートナーとの協業があります。

 

(3)ビジネスモデルについて

《サブスクリプション型リカーリングレベニューモデル(注5)による安定性と成長性》
 「TeamSpiritシリーズ」は顧客企業に対し、使用した期間に応じたサービス料をユーザー人数分のサブスクリプション(定期購入)として課金する、リカーリングレベニュー(継続収益)方式を採用しています。サブスクリプションが複数年にわたり継続して利用されることで、新規・追加の契約数を解約・削減数が上回らない限り、収益が前年度を上回るという安定性がありながら、高い成長も目指すことができるビジネスモデルです。当連結会計年度での当社グループの売上におけるリカーリングレベニュー(ライセンス売上+プレミアサポート売上)の比率は約9割となっています。

 収益の安定に重要な契約の継続のために、エンジニア、デザイナー、カスタマーサポートが一丸となって「働く人の創造的な時間を生み出し、チームの力を引き出す」機能を提供すべく定期的なバージョンアップを実施しております。切れ目のない顧客価値向上を実現することで高い継続率を維持しています。また当社グループでは既存のお客様に対する活用促進を行う営業体制を構築しており、「TeamSpiritシリーズ」の追加導入などにも注力し継続的なリカーリングレベニューの成長を目指しております。

 成長性の実現に重要な新規の受注に関しては、標準化されたサービスを月額料金ですぐに提供できることから、受託開発型のサービスや高価なソフトウエアを売り切り型で販売するサービスに比べて、受注までの平均商談期間を短縮でき企業規模に関わらず契約数の拡大が可能になります。無償トライアル利用の機会を提供し導入前に効果を確認していただくことで、ユーザー企業は安心して導入の意思決定ができ、定着率の増加にも寄与しています。

 サブスクリプション型リカーリングレベニューモデルの単一事業であることから、経営の安定性と成長性が両立できることに加え、年間の契約金額を一括前払いで回収しているため経常的な運転資金は発生しません。キャッシュ・フローの面でも非常に安定していることが当社グループのビジネスモデルの特徴です。

 

《シングルソース・マルチテナント形式(注6)による顧客価値の最大化とコストダウン》
 「TeamSpiritシリーズ」は、インターネット経由で必要な機能を必要な分だけ利用できるSaaSという形態で提供しており、2022年8月末時点で1,644社の企業に導入されていますが、「TeamSpiritシリーズ」をご契約いただいたすべてのお客様が、それぞれ共通のソースコードで作られた1種類のアプリケーションを使用しています。これを、シングルソース・マルチテナント形式と言います。日々増加するお客様からの要望にお応えして、年間複数回の定期メジャーバージョンアップを提供するなど、常に機能を強化・拡大させることができるので、お客様にとっての価値を継続的に向上させることができます。さらに開発者は特定のソースの開発に集中できるので比較的少ないリソース(コスト)で高機能なサービスを開発することが可能です。

 さらに「TeamSpiritシリーズ」は従業員1,000名以上のエンタープライズ企業にもご利用いただいておりますが、仕様が複雑な大規模なお客様であってもアプリケーション本体の改造をせずにシングルソース・マルチテナントで提供できる充実した機能性や優れたサポート体制がビジネス上の大きな優位点であると考えています。

 

《エンタープライズ企業に選ばれるSaaS》

 「TeamSpiritシリーズ」は、パブリッククラウド(注7)で利用できるPaaS (Platform as a Service)(注8)である、Salesforce,Inc.(注9)が運営しているLightning Platform上に構築されております。基盤となるサーバーなどのシステム機器の提供・情報セキュリティ対策・バックアップなどの運用は、すべてSalesforce,Inc.が実施します。そのため株式会社セールスフォース・ジャパンとのOEMパートナー契約(注10)を基に1ライセンス当たり月額課金の仕入が発生する以外、サービス提供に関わる設備投資や運用投資をほぼゼロに抑制することができます。その上、ワークフローやSNS及びデータ連携機能、レポート・ダッシュボードなどの分析機能、さらにはAI(機械学習・ディープラーニング)機能やIoTとの接続機能など、システムで使う共通機能もPaaSに実装されています。そのため開発リソースをすべて業務アプリケーションに投下できるメリットがあります。そのことによりサービス改善サイクルを高速化し、SaaSビジネスで最も重要な持続的な顧客体験価値の向上が可能になると考えています。

 また、世界中で利用されているSalesforce,Inc.が提供するクラウドプラットフォームにより、金融機関からグローバルに活動するエンタープライズ企業まで、安心して「TeamSpiritシリーズ」をご利用いただける環境を提供できているものと考えています。

 

(注)1 ERPとは、企業内の経営資源を有効活用するために、生産、販売、物流、会計、人事などの情報を統合的に管理するための情報システムのことです。

2 SaaSとは、Software as a Serviceの略称で、ソフトウエアをインターネット経由のサービスとして提供することです。

3 デジタルトランスフォーメーションとは、情報システムによる業務効率化の域を超え、人工知能(AI)やIoT(Internet of Things)などデジタル技術を活用して新たなビジネスを生み出し、人々の生活をあらゆる面でより良くするという概念のことです。

4 企業(市場)規模の定義は以下のとおりです。

名称

定義

エンタープライズ企業(市場)

従業員が1,000名以上の企業(又はその企業を対象とした市場)

ミッド企業(市場)

従業員が100~999名の企業(又はその企業を対象とした市場)

スモール企業(市場)

従業員が99名以下の企業(又はその企業を対象とした市場)

5 サブスクリプション型リカーリングレベニューモデルとは、使用した期間に応じたサービス料をユーザー人数分のサブスクリプション(定期購入)として課金するリカーリングレベニュー(継続収益)型ビジネスモデルのことです。

6 シングルソース・マルチテナント形式とは、ひとつのシステム環境を複数企業で共同利用することです。

7 パブリッククラウドとは、クラウド上のサービスのうち不特定多数の利用者を対象に広く提供されている形態のことです。特定の利用者を対象として提供される「プライベートクラウド」との対比で用いられます。

8 PaaSとは、Platform as a Serviceの略称で、ソフトウエアを稼動させるための土台となるプラットフォームを、インターネット経由のサービスとして提供することです。

9 Salesforce,Inc.とは、米国カリフォルニア州に本社を置く、クラウドコンピューティング・サービスの提供企業です。株式会社セールスフォース・ジャパンは、Salesforce,Inc.の子会社です。

10 OEMパートナー契約とは、Lightning Platformを仕入れ当社グループ商品に結合して販売することができる契約のことです。

 

[事業系統図]

0101010_001.png

 

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得

お知らせ

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得