文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、組込みソフトウェア技術をコアコンピタンスとしてグループを拡大・発展させるため、2011年11月に経営理念としての『eSOL Spirit』を制定しております。
(2)当社グループの現状の認識について
当社グループの主たる事業の1つである組込みソフトウェア事業が対象とする組込み市場の規模は、公的機関による調査が近年行われておりませんが、政府が掲げる「日本再興戦略2016(2016年6月2日発表)」にも組込みソフトウェアの重要性が謳われており、またコネクテッドカーや自動運転等による一層の自動車の電子化や、今後の産業革新の大きなテーマであるIoT技術の浸透に従って、その市場規模と重要性は益々増大していくと思われます。
他方のセンシングソリューション事業は、従来ハム・食肉や冷食メーカや卸小売り等、事前発注を行わない商習慣市場に対して車載プリンタ、また、倉庫業等に対して常温/耐環境ハンディターミナルを提供してまいりました。車載プリンタの実質的な競合他社は認識しておりません。しかしながら、顧客市場の成熟化や流通システムの再編成等により、この市場は衰退期を迎えていると判断しております。今後は、耐環境技術等、既存技術を活かしつつ、組込みソフトウェア事業とのシナジーを見込みながら、放牧や農業、水産業等、コンピュータ化の遅れている分野に各種センサによるIoTシステムを提案し、成長させる必要があると考えております。
(3)当面の事業上及び財務上の対処すべき課題の内容
当社グループが当面対処すべき課題の内容として、以下の点を認識しております。
① 組込みソフトウェア事業の拡大
組込みソフトウェア事業は当社グループを支える基幹事業で、主にソフトウェア製品の開発及び販売と、エンジニアリングサービスの2つのビジネスから構成されております。開発した製品を顧客の要望に応じたエンジニアリングサービスとともに提供するという、ワンストップサービスが当社グループの特徴であり、これらの成長が事業規模拡大の上で非常に重要であります。その競争力の源泉である優れた製品の開発に、継続的に開発投資を行っております。
当社グループでは自動車関連の売上高が伸びてきております。自動車の電子化は著しく、当社グループでは最も重要な市場と考えております。近年は、コネクテッドをキーワードとしたMaaS(Mobility as a Service)という言葉も現れており、自動車が単なる移動手段ではなく、社会インフラの一部に変わりつつあります。その変化においても当社技術を活かせるものと考えております。
今後、社会のIoT化がますます進み、私たちとインターネット空間の接点はパソコンやスマートフォンから車や家といった生活空間に広がります。インターネット空間に収集されたデータはあらゆる分野と連携し、生活をより豊かにするとともに、私たちが抱える社会的な課題の解決へも繋がっていきます。その情報の収集とあらゆる分野との連携においても、当社がこれまで培ってきた組込みソフトウェア技術を活かせるよう、技術の開発を進めてまいります。
② 組込みソフトウェアエンジニアの確保・育成と生産性の向上
組込みソフトウェア事業での最大のビジネスはエンジニアリングサービスであります。このビジネス拡大のためには開発エンジニアの数の拡大が求められますが、ソフトウェア業界に限らず、様々な業界で人材採用難が語られております。優秀な人材の獲得を目的の一つとして、2019年に東証第一部へ市場変更を果たしました。今後も「働きがいのある魅力的な会社」となるよう待遇を整備していくとともに、多様化する労働形態に応じて柔軟に対応していく必要があると考えております。同時に、「一緒に働きたい会社」として、パートナー企業の開拓も今まで以上に注力してまいります。
企業の力は、人材の力であります。優秀な人材を採用し、人材の能力をできるだけ早期に向上させ、付加価値の高い人材に育て上げていく事が重要であると考えております。
③ センシングソリューション事業における既存市場からの出口戦略
1991年に開始した車載プリンタの販売は、加工食品市場、乳製品市場の成熟化、ロジスティクスのセンター納品化、EDI(Electronic Data Interchange)の浸透、販売ルートの統廃合等により、今後の成長を見込むことは難しい市場と考えております。これまでピーク時には年間1,000台以上の需要も、今後は200台~300台前後と小規模ながら一定程度、存在すると予想されますので、その需要を取り込みつつ、従来の販売に加え、新たに一定期間、製品やサービスを提供するサブスクリプションによる販路拡大により、利益の確保に努めてまいります。
④ センシングソリューション事業における新規市場の開拓
車載プリンタに代わる新たな市場として、自動販売機等、まだコンピュータによるスマート化がされていない市場や、農業等、ICT(情報通信技術)が採用されていない市場に、各種のセンサと既存事業のなかで獲得した耐環境技術を応用したIoTソリューションを提供いたします。また、これまで培った耐環境技術を応用した新たなデバイスとして防災システムを開発しました。この防災システムによって、地域住民の安全や企業の事業継続性確保に貢献していくことに努めてまいります。
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