当社グループは、当社(イーソル株式会社)、連結子会社(イーソルトリニティ株式会社、eSOL Europe S.A.S.)、持分法適用関連会社(株式会社オーバス)から構成されており、「組込みソフトウェア事業」と「センシングソリューション事業」の2つを主たる業務としております。
なお、次の2事業は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」に掲げるセグメントの区分と同一であります。
* RTOSについては後記「(1)組込みソフトウェア事業 ① 組込みソフトウェア製商品
(ア)RTOS(リアルタイム・オペレーティング・システム)」をご覧下さい。
(1)組込みソフトウェア事業
当社グループは、1975年の設立以来、組込みソフトウェア事業を主要な事業基盤としております。
組込みソフトウェア事業の具体的な内容は、国内外の顧客(自動車関連メーカ、デジタル家電メーカ、産業機器メーカ、医療機器メーカ等を含む)に対して、当社と連結子会社eSOL Europe S.A.S.が「RTOS(リアルタイム・オペレーティング・システム)の開発・販売」、組込みソフトウェアの受託業務としての「組込みソフトエンジニアリングサービス」を、連結子会社イーソルトリニティ株式会社が「組込みソフトウェア開発のためのツールの販売」、「組込みソフトウェア開発にかかわるコンサルティング」、「組込みソフトウェア開発エンジニアの教育」を実施しております。これら当社グループの提供するソリューションは、今後の成長を期待しているIoT(Internet of Things)の基盤技術であり、下図のイメージのように、個別の応用市場に特化しない産業横断的な技術要素からなる組込みソフトウェア市場において、様々な顧客層を対象としております。加えて、2016年には株式会社デンソー、日本電気通信システム株式会社と3社で、当社が成長著しいと考えております自動車向けソフトウェア(車載ソフト)市場に特化した、株式会社オーバスを合弁会社として設立し、日本国内外の自動車メーカや部品メーカへ、製品とサービスの提供を行っております。
なお、当社グループはソフトウェアエンジニアリング会社への開発委託や派遣の受入れ、開発ツールメーカ等からのソフトウェア商品の仕入れを行っております。
●組込みソフトウェアとは
PCやタブレット等、汎用用途向けに多種多様な機能を果たすことを目的とした機器ではなく、特定用途向けに特化、限定した機能を果たすことを目的とした機器を組込み機器と呼びます。一方で、スマートフォン等の登場により、現在はその境界が曖昧になってきております。そして、組込み機器上で動作するソフトウェアのことを組込みソフトウェアと呼びます。一般的に、組込み機器は長時間の動作が要求され、また、自動車の自動運転等人命にかかわる部分を担う関係上、信頼性や堅牢性、保守性、セキュリティ等、品質で高いハードルが要求されます。加えてハードウェアの制御を行う部分を含むため、知見のない企業からの参入障壁も高くなります。組込みソフトウェアは様々なモノ、コトがネットワーク化され、それらが協調動作するIoT世界実現のための必須の技術基盤であると当社では考えております。
組込みソフトウェアを理解していただく上で、当社グループの考える組込みソフトウェアの構造を以下に示します。
上図の組込みソフトウェアは、すべて組込み機器内で動作しますが、効率的に高品質な組込みソフトウェアを開発するためには、開発支援のための各種「ツール」や「コンサルティング」、より高品質な「エンジニアリングサービス」等の支援環境が必要となります。当社グループは、顧客が必要とするこれらの製品やサービスを顧客製品の企画段階から量産開始まで、下図のようにワンストップで提供しております。当社グループは、多くの国内の組込みソフトウェア企業の中でも、RTOSやツール等の自社製ソフトウェアを持っており、かつ、エンジニアリングサービスも提供できる独立系企業グループであります。
① 組込みソフトウェア製商品
(ア)RTOS(リアルタイム・オペレーティング・システム)
組込み機器向けに特化したオペレーティング・システムで、ネットワーク等の通信機能、ハードディスクやSDカード等のストレージデバイスにデータを書き込むためのファイル機能や各種デバイスドライバ等を備えています。自社製のソフトウェア製品と仕入れの発生する他社商品の2種類があります。収益モデルとしては、顧客に対して開発に対する使用許諾を与える開発ライセンスと、組込み機器を販売する場合に組込み機器上での使用許諾を与えるロイヤリティ、保守活動のための保守ライセンスの3種類が存在します。いずれも当社グループにおける他の製商品、サービスと比較して利益率が高く、エンジニア数に直接には関連しない収益モデルであり、当社グループの成長のためには、この売上規模を大きくすることが重要と考えております。
(イ)開発支援ツール
組込みソフトウェアの設計・開発、不具合の除去、その動作を検証する際に、組込みエンジニアは様々なツール群を利用します。当社グループは自社製、他社製を併せてこれらのツールを販売しております。開発支援ツールは特に海外ベンダに席巻されている分野で、日本のソフトウェア産業を強くするためにも、この事業を発展させていきたいと考えております。
開発支援ツールはPCやクラウド上で動作するものなので、ロイヤリティは発生せず、収益モデルは開発ライセンスと保守ライセンスの2種類となります。
② エンジニアリングサービス等
エンジニアリングサービス、エンジニア向けの教育/トレーニング、コンサルティングはすべてプロジェクトベースで顧客に提供(役務提供)しております。また、当社グループで最も売上貢献度の高いものがエンジニアリングサービスです。当社グループのエンジニアリングサービスの特徴としては、大企業との直接取引が多いこと、また、顧客との取引期間が非常に長く、10年以上継続して取引している企業を多く抱えているということが挙げられます。RTOSとのシナジー効果も高く、RTOSの売上増はエンジニアリングサービスの売上増にも結びつきます。
●車載ソフト向けソリューション
上記において説明した当社グループが提供する組込みソフトウェア製商品やエンジニアリングサービス等は、産業横断的に様々な産業で利用される技術基盤ですが、近年、電子化が急速に進展する自動車関連向けの事業として特化したビジネスを展開しております。これは主として持分法適用関連会社である株式会社オーバスで実施しており、当社がライセンスしたソフトウェア製品をベースに、欧州発の車載ソフトウェア規格であるAUTOSAR(オートザー:Automotive Open System Architecture)をカスタマイズし、自動車メーカや自動車部品メーカへ販売しております。同時に車載ソフトのエンジニアリングサービスも実施しております。
[事業系統図]
組込みソフトウェア事業の系統図は次のとおりです。
(2)センシングソリューション事業
センシングソリューション事業は大きく2つのビジネスから構成され、そのすべてを当社で行っております。
1つ目のビジネスは、組込み技術の応用製品として、ニッチ市場向けのハードウェアを開発・販売する物流関連ビジネスです。こちらは主にハム・食品メーカ、冷食/アイスメーカ・卸小売り、倉庫・運送業、ハンディターミナルメーカ、フォークリフトメーカ等を顧客としております。当ビジネスの主たる製商品は、指定伝票発行用車載プリンタ(以下、車載プリンタという。)、常温ハンディターミナル、耐環境ハンディターミナル、フォークリフト専用端末ホルダ及び販売支援用ソフトウェア(業務用端末用開発支援ツール)であり、食肉等の不定貫商品(荷姿ごとによって重量が違う商品)や冷菓等、事前発注されない市場に対してルートセールスマンが使用する複写伝票に印字可能な車載プリンタを中心としたビジネスです。車載プリンタや耐環境ハンディターミナルの開発に関しては、その試作・製造を外部に委託し、当社では製品企画・製造指導と販売のみを行っております。常温ハンディターミナルに関しては、他社製のものを仕入れ車載プリンタとともに販売しております。
2つ目のビジネスは、今後、大きな成長を見込むことが難しいと考えられる車載プリンタのビジネスに替わるものとしてセンサネットワーク関連ビジネスであります。主に自動販売機ベンダや地方自治体・農家・漁業組合等に直接または仲介会社を通じて営業活動を行っております。自動販売機、牧畜や水田、水産、防災や減災等、いまだにICT(情報通信技術)化が遅れている市場に対して、温度、湿度、CO2、PH、嗅覚、味覚、河川の水位や警戒雨量等、様々なセンサと当社が培ってきた耐環境技術、センサデータをサーバ上に置いたIoTクラウドシステムを組み合わせることで、効率化、省力化を実現するセンサネットワークシステム(eSOL AGRInk等)を構築するものです。システムがより大規模化、複雑化する際には、組込みソフトウェア事業と協調し、より大きなシナジーを発揮できると考えております。
なお、当社グループはハードウェアを販売しておりますが、ファブレスであり、製品の企画設計と販売を行うのみで、製造はすべて外部に委託しております。また、ソフトウェアエンジニアリング会社への開発委託や派遣の受入れ、各種センサメーカ等からの商品の仕入れを行っております。
[事業系統図]
センシングソリューション事業の系統図は次のとおりです。
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