文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
一般的な業務効率化を目的としたシステムは、手軽でリスクが少ない方法として汎用パッケージシステムをクラウド上で利用する形態に進んでいきます。一方、個々の企業における「競争力の源泉の一つ」である独自の経営ノウハウ、独自の技術、独自の文化(生産方法や営業手法、経営管理方法、顧客サービス手法等)をシステムとして組上げ、最新技術を咀嚼しながらシステムを構築し運用していくことは簡単ではありません。当社は、顧客企業の「競争力の源泉の一つ」となる顧客独自の情報システム構築を実現すること、そして、その道がたとえ困難であっても一歩踏み出す勇気を持つこと、をポリシーとし、以下の経営理念として定めております。
「勇者たらんと。」 小さな僕等が持ち得るものは、一人一人の知恵と勇気と諦めない強い心だけだ。
どんな時でも、「その一歩」が踏み出せるように。
勇者たらんと。
(2)目標とする経営指標
当社は主力事業であるセキュアクラウドシステム事業を継続的に成長させ、エモーショナルシステム事業の収益力を確立することにより、持続的な企業価値の向上を目指しております。
2022年10月6日の東証グロース市場への上場を機に「営業利益率」を重要な経営指標に加え、「売上高」「営業利益」「営業利益率」を重要な経営指標に位置づけております。下記「(4) 経営環境及び優先的に対処すべき課題」を解決することにより、これらの経営指標の向上を図ってまいります。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社は、事業のコアである仮想化技術をベースとしつつ、顧客企業に差し迫っているリアルなニーズ(障害からの回復性、強靭性の確保:必須のレジリエンス、2025年の崖対策、DX(デジタルトランスフォーメーション)への対応等)に対応した高品質な技術サービスを提供するとともに、技術サービスに付随する高付加価値な製品・商品を顧客へ販売することで、主力事業であるセキュアクラウドシステム事業の継続的な成長を目指しております。
また、エモーショナルシステム事業においては、「体験共有型VRシアター」である4DOHを市場に広めるため、販売パートナーの確保及び育成を進めておりますが、営業損益において赤字を解消できなかったことを踏まえ、2022年9月期より、固定費を抑制して全社収益に与える影響を好転させ、事業セグメントを継続しております。
(4)経営環境及び優先的に対処すべき課題
わが国経済全般の見通しは、2022年10月25日付内閣府月例経済報告において「先行きについては、ウィズコロナの新たな段階への移行が進められる中、各種政策の効果もあって、景気が持ち直していくことが期待される。ただし、世界的な金融引締め等が続く中、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、物価上昇、供給面での制約、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要がある。」という先行き予想が出されています。
当社の属する情報通信業界は、企業のデジタルトランスフォーメーションに向けた戦略的IT投資や、経済産業省が「2025年の崖」と表現して警告してきた古い情報システムの刷新需要の高まり、働き方の変化を踏まえたセキュリティ対策の見直しの動きや、企業の人材不足による一層の業務効率化需要などにより企業経営者のIT投資に向けた意識が高まっています。2022年9月の日銀短観によるとソフトウエア投資額の計画値が全産業平均で前年度比17.8%増と、企業のIT投資意欲は高い水準で推移しています。
ランサムウェアや不正アクセスなどのサイバー攻撃の脅威の高まりから、製造業を中心に、サプライチェーン全体でのセキュリティ対策の必要性が顕在化しており、サイバー攻撃を防御する仕組みや、サイバー攻撃のダメージからシステムとデータを回復するレジリエンスを備えたクラウド基盤の重要性が高まっています。このような変化を踏まえ、当社のセキュアクラウドシステム事業は「必須のレジリエンス」という事業コンセプトのもと、回復力と強靭化を意味する「レジリエンス」を、「基幹システムのクラウド化」と並ぶセキュアクラウドシステム事業のもうひとつの柱として、引き続き発展させて参ります。
エモーショナルシステム事業は、営業損益において赤字を解消できなかったことを踏まえ、固定費を抑制して事業セグメントを継続しており、メタバース分野への応用を前提とした4DOHの技術開発及び製造販売と、4DOHを活用したイベント運営サービスの事業の推進により、黒字転換を図って参ります。
当社の対処すべき課題として以下の施策に取り組んでまいります。
①セキュアクラウドシステム事業の営業利益率の向上
当社は2022年10月6日の東証グロース市場への上場を機に、「強い会社」を目指すため、主力事業であるセキュアクラウドシステム事業の営業利益率16%(※1)を2027年9月期までに達成するというKGI(経営目標達成指標)と、2つのKPI(重要業績評価指標)を設定しました。国内のシステムインテグレーター企業131社における営業利益率の平均値は7.3%(※2)であり、当社がKGIに設定した16%は、その上位5位に入る優良な利益水準です。
KGIを達成するためには、ハードウエアやソフトウエア、クラウドサービスや当社の自社製品などのうち、付加価値の高いカテゴリの販売を増やしていくことが重要となります。そのため、当社は第一のKPI(重要業績評価指標)を「売上総利益率が25%以上の高付加価値製商品の売上高」と設定しました。製商品販売の高付加価化を図る戦略として、レジリエンスソリューションの自治体のシステム強靭化や関東圏中堅企業の事業継続(BCP)災害復旧(DR)需要に対して、Dell Technologies社製のバックアップ統合製品であるDP4400を中心とした高付加価値なレジリエンスソリューションの販売を推進するとともに、企業のDXとデータ活用の需要に対してシトリックス製品を核とした基幹システムのクラウド化ソリューションの販売拡大と、ETL製品(データの抽出、変換、格納)によるデータ利活用への対応強化に努めていきます。
次いで、提案営業や受注後の構築に技術力が必要な高付加価値分野の商品の受注力、構築力を高めることが重要であるために、第二のKPIとして「セキュアクラウドシステム事業のエンジニア・セールスエンジニア数」を設定しました。このKPIを実現するための人材採用・育成戦略として、専任の人事担当を採用し、中途採用・新卒採用の推進と人材採用チャネルの拡大を図るとともに、システム構築を担当するエンジニアと顧客提案を担当するセールスエンジニアを社内育成する中長期的な人事・教育制度の整備に努めていきます。
(※1)営業利益率は事業計画に基づき、全社費用配賦後の営業利益率を算定・記載しています。
(※2)売上高10億円以上のシステムインテグレーター131社の2019年8月以降の最新期決算
(変則決算を除く)の営業利益率。2022年9月上旬時点の民間調査会社による当社調べ。
②「必須のレジリエンス」 事業コンセプトの推進
DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展や、コロナ禍を契機としたテレワークの普及により、社会のデジタル依存度が急速に高まっています。情報システムを構成するネットワークやデータベースサーバー類の障害等により、一部でもシステムが停止した場合には、想像以上に甚大な影響を生じ、ひいては社会問題にまで発展しかねません。ランサムウェアなどのサイバー攻撃により復旧困難な障害に陥ることも、近年多発しています。サイバー攻撃や人為的ミスなどによるデータの棄損や改竄に対して、100%防御することは不可能であり、インシデントの発生都度、多くの労力を使い緊急対処せざるを得ない現実があります。こうした中、今、企業経営者に求められていることは、前向きなデジタル化の推進と同時に、障害発生時に極力短時間でシステムを回復する「レジリエンス」の重要性を意識したシステムを構築することです。単に止まらない前提のシステムではなく、万が一止まっても速やかに回復できるシステム、つまり、回復のための選択肢を準備しておくことが必須です。これこそ事業の強靭化であり、その実現には、システム設計の熟慮とともに人的な運用体制まで含めた、高度なノウハウが必要となります。
当社は独立系システム構築会社として様々なシステム障害対応の経験を有しており、それらのノウハウの蓄積と、メーカーを問わず優れた製品やサービスをいち早く検証し、組み合わせることで「レジリエンス」を更に発展させるよう活動しています。
回復力と強靭化を意味する「レジリエンス」の重要性をすべての企業、自治体に向けて発信し、従来からの「基幹システムのクラウド化」と新しい「必須のレジリエンス」というコンセプトを二本柱として関連するサービスを拡張させることにより、セキュアクラウドシステム事業を発展させていくことは当社の重要課題です。
「レジリエンス」は、2025年の崖を乗り越え、様々なDXを外連味なく実行可能にし、持続可能な企業成長を促すことになり、SDGsに対しても必須のキーワードとなります。
③優良顧客の獲得のための営業力の強化
顧客のビジネス進展に応じて、システムに関する様々なご相談を当社に継続して行っていただけるロイヤルカスタマーの数を増加させることが、当社の安定的成長に欠かせない経営課題です。そのために、九州地場優良企業の開拓だけでなく、国内でも経済規模の大きい関東圏のロイヤルカスタマーの増加に対する営業力の強化に努めていきます。
④ストック型売上の拡大
当社は、クラウド基盤構築の受託業務を主体とする会社であり、それらはフロー型の売上となりますが、保守などのストック型売上についても拡大を図っていきます。当社が構築したシステムの保守だけでなく、他社が構築したシステムについても当社が保守サービスを提供できるよう、他社構築システムのアセスメントと保守提供の体制を整備していきます。また、サブスクリプション型(月額料徴収型)のソフトウエア、クラウドサービスを組み合わせたハイブリッドクラウドシステムの構築・販売を推進することで、ストック売上高の拡大に努めていきます。
⑤エモーショナルシステム事業の黒字化
エモーショナルシステム事業は、営業損益において赤字が継続している状態であることから、黒字化を当社の喫緊の重要課題としています。そのために2023年9月期は固定費の低減を継続しつつも4DOHを活用したイベント運営サービスの展開を推進し、早期の事業成長のためメタバースやシニア市場などの新たな需要に向けた研究開発と市場開拓に努めていきます。
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