課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 経営の基本方針

当社のミッションは、世界中の人・物にAIを届け、豊かな未来社会に貢献することです。その実現のため、高品質・高価値なユーザ体験を届けることが、当社にとって最優先の事項です。当社の経営は、徹底したユーザ重視を基本方針としています。

 

(2) 目標とする経営指標

リカーリング型売上の成長を最重要指標と定めており、その要因として契約件数や契約の解約率(注1)、AIファンクションのリクエスト数を指標としております。

 

(3) 経営環境及び対処すべき課題

当社が展開する事業と関わりの深い「非IT系の外部委託市場」を例にとると、人によるデータ入力に関する外部委託市場は2020年度実績で5,970億円あり、この市場は今後成長していくと予想されております(市場規模は全て「BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場の実態と展望 2021-2022(株式会社矢野経済研究所)」より)。

 

当社が事業を展開するAI-OCR市場においては、企業は、労働者の在宅ワーク導入など働き方改革をこれまで以上に意識した事業運営が求められていることから、社会的なデジタルトランスフォーメーション(DX)推進に伴い、今後も市場の成長は持続するものと予測しております。このような環境のもと、当社が対処すべき主な課題は以下の通りと認識しております。

 

① 顧客基盤を拡大する

当社は、製品をユーザへ直接販売しておりますが、パートナーを通じた販売も行っております。既にパートナー販売における契約数の割合が直接販売よりも高く、今後さらにその比率を上げていく方針です。また、セリング型の売上に含まれる初期費用などを低価格化し、導入拡大を図ることで、リカーリング型の売上を拡大させていく方針です。

 

② 組織運営について

販売における組織運営方針:当社はエンタープライズ企業への販売と、パートナー販売のサポートのためにアライアンスにフォーカスします。

カスタマーサポートにおける組織運営方針:カスタマーサポートはパートナーが行う場合があります。当社は、ユーザに伴走して課題解決を行う、カスタマーサクセスにフォーカスします。
 開発における組織運営方針:AIの研究、データサイエンス、データエンジニアリング、ハードウェア、UX(注2)にフォーカスします。

 

③ 良い製品を提供する

当社で提供しているAIは、ユーザが日々の業務で使うほど、さらなる追加学習のためにフィードバックがなされ、精度が向上するという特徴を備えております。その学習部分を担う当社内部の仕組みが「Learning Center」です。

「Learning Center」は、好循環サイクルにおいて、より高精度、高価値なAIを提供し続けるために重要な基幹機能です。これにより当社は、ユーザへより良い製品を提供し続けるための活動を行っていく方針です。

 

 

④ 基礎研究

短期的な技術開発の場では、失敗の許されない状況における開発が主となることが多いため、既存技術のブラッシュアップにしか手を出すことができず、抜本的な技術開発には着手しにくくなります。本質的な次世代技術を開発するためには、その基盤を固める知識・経験が必須であり、将来的に確実に必要となる長期的課題にも積極的に取り組んでいかなければ、世界のAIを牽引するような企業に発展することは望めません。そのため、当社は応用研究だけではなく、基礎研究も行い続けます。

 

⑤ 安く提供する

好循環サイクルにおいて、大規模化による低コスト構造の実現と、AIを動作させるためのハードウェアを自社開発、自社利用することにより、ユーザへより低価格での提供が可能となっています。当社は高品質・高価値なAIを安く提供する方針です。

 

⑥ 早く提供する

当社は、製品を「クラウド」「オンプレミス」などのユーザ環境の違いに関わらず、ユーザがすぐにAIの利用を始められる仕組みの構築を「AI inside Cloud」「AI inside Cube」を通じて進めていく方針です。

 

⑦ 広く提供する

「DX Suite」における「Intelligent OCR」は、日本語に限定されないアルゴリズムで構築されています。今後は多言語対応を進め、グローバル市場に向けて、国内外の販売パートナーと共に販売を推進していく方針です。

 また、当社のAIは、クラウド環境、オンプレミス環境共にソフトウェアインフラ基盤「AI inside Computing Engine」の上で稼働しております。 このインフラ基盤を、当社の「AI inside Cube」以外のデバイスにも搭載していくことで、ユーザがより幅広いデバイスを対象にAIを配信できるようにしていく方針です。

 

⑧ より多様な製品群を提供する

「Learning Center」は、当社AIの学習部分を担う内部の仕組みですが、好循環サイクルの中で「AI insideが培ってきた研究技術を結集させた転移学習(注3)とAIの設計図を活用して、ユーザ独自のAIを生成できるサービス」として提供を行っております。機械学習の専門知識が限られていても、シンプルなGUI(注4)操作で、ユーザのデータに基づいたAIのトレーニング・評価・改善・配信ができます。データサイエンティストであれば、より高度な設計図の編集やスムーズな配信を行えます。

具体的事例としましては、ゴミ処理場での危険物仕分けAIの生成があげられます。ベルトコンベア上を流れるゴミの中から、プラントの故障原因となる物体や、火災の危険性などがある危険物を取り除く作業を機械化するため、様々なゴミとその重なりなどの状況下において仕分け判定を行うAIをユーザが「Learning Center」のGUIを操作するだけで生成しました。

このように、特定の業務を行える高品質・高価値なAIを開発・提供することだけでなく、あらゆる種類の業務に対応できるAIが、ビジネスの現場ニーズに沿って数多く開発される機会を提供することは重要であると考えております。当社は、「Learning Center」により、ユーザが自らAIを「開発者」として生成・利用できる機会を拡大していきます。また、「開発者」が望めば、生成されたAIを「AI inside Computing Engine」を搭載したデバイスに配信できる機会を拡大していきます。このように「開発者」「ユーザ」の双方を拡大していくプラットフォーム戦略をとります。

なお、「AI inside Computing Engine」には、「DX Suite」や「Learning Center」で生成したAI以外のアプリケーションやAIも配信していく方針です。

「Learning Center」は、AI開発・学習のための必須機能を提供しています。そのシンプルな操作の背景では、当社の保有するAIの処理に最適なチップや、スーパーコンピュータが稼働し、高速に学習を行います。さらに、生成されたAIを当社のデータセンター「AI inside Cloud」または「AI inside Cube」を選択して配信し、すぐにAIの利用を始められる仕組みとして構築を進めていく方針です。

 

⑨ 情報管理体制の強化

当社は、顧客企業の業務データや公開前の製品企画情報など多くの機密情報や個人情報等を保有しており、その重要性については十分に認識しております。その保護体制構築に向けて、社内規程の厳格な運用、定期的な社内教育の実施、情報セキュリティマネジメントシステムの構築・維持向上に努めることで、今後も引き続き、情報管理体制の強化を図ってまいります。

 

⑩ 優秀な人材の確保

当社は、今後の事業拡大に伴い、当社の企業理念に共感し高い意欲を持った優秀な人材を継続的に採用していく必要があると考えております。労働市場における知名度の向上を図り採用力の向上に努めるとともに、業務環境や福利厚生の改善により採用した人材の離職率の低減も図ってまいります。

 

(注1) 解約率:既存契約の月額課金額に占める、解約に伴い減少した月額課金額の割合であります。

(注2) UXとは、ユーザ・エクスペリエンスの略で、ユーザが製品・サービスを通じて得られる体験を指します。

(注3) 転移学習とは、ある領域で学習されたモデルを別の領域に適応させる技術です。これにより、少ないデータでモデルを構築することができます。

(注4) GUIとは、グラフィカル・ユーザ・インタフェースの略で、コンピュータを操作するために、画面上のボタンや画像などを選択する事でリアクションを発生させる仕組みです。

 

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